のんのんびより ― ある田舎男子の日常 ― 【ばけーしょん編更新中】 作:NIZI
本来はアニメ二期・第十一話にあたるエピソードを書く予定だったのですが、よしおを絡めたネタがまったく浮かびませんでした。
このままだと冬回がゼロのまま最終話になってしまいそうなので、今回は予定を変更して、アニメ三期の中でも個人的に一番好きな回を前倒しで書いてみました。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
ある冬休みの一日。
宮内家の居間にて。
「ひか姉! お外に遊びにいくん!」
元気よく宣言したのは、れんげだった。
「は? 何言ってんの? 外寒いじゃん……」
こたつに半分沈みながら、ひかげは即座に却下する。
「ひか姉こそ何言ってるん! 子供は風の子なん。寒さくらい、へっちゃらなん!」
「いや、私子供じゃないし。風から生まれた覚えもない」
「えー? なんだよ、ウチより背小さいくせに!」
「高校生は、まだまだ子供だって、父ちゃんも言ってたゾ!」
すると横から夏海が口を挟み、よしおも便乗する。
「おっさんを基準にすんな。あと小鞠じゃあるまいし、そんな煽りにも乗らない」
ひかげはそっぽを向く。
しかし――
「せっかく帰ってきたんに、グチグチ言ってないで一緒に遊ぶのん!」
れんげが腕をつかむ。
「「遊ぶのーん!」」
夏海とよしおも、声を揃えてひかげにまとわりついた。
「だー! 痛っ、痛たた……! 分かった、分かったから引っ張るなって! あと、お前はドサクサに紛れて抱き着いてんじゃねぇっ!」
――ゲシゲシ
「やめたげてよぉ!」
ひかげは空いた足で、背後にいたよしおを蹴り続ける。よしおは、言葉とは裏腹に少し嬉しそうだ。
「ったく……しょうがねぇな。まだ昼だし、少しは暖かいか……」
外、宮内家の庭にて。
――ゴオオオオオオオオオオ!!!!
猛烈な風と雪が、四人を正面から叩きつける。
「「「うおおおおおおお!!!」」」
「思いっきり吹雪いてんじゃねえか!!」
ひかげはバンザイしながら叫ぶ三人に即ツッコミ。
「ちょっとひか姉、雪見たからってテンション上げすぎぃ♪」
「雪ってレベルじゃねぇだろ! 上がってねぇよ! むしろ駄々下がりだよ!」
ひかげは腕をさすりながら言った。
「寒すぎ……。こんな吹雪で遊んでられっか……、早く家に戻るぞ」
「待つのん、ひか姉!」
れんげがぴしっと手を上げる。
「ウチが思うんに、身体を動かせば、すぐポカポカになるん!」
「確かに! みんなで身体を動かそう!」
「決まりだね! れんちょん、何やりたい?」
「いやいや、勝手に話進めないでくれる……?」
ひかげの抗議はスルーされる。
れんげは少し考えて、
「決めたん! “だるまさんがころんだ”をやりますん!」
「よし決定!」
「じゃあ、ひか姉! 鬼役お願い!」
「え? あぁ、うん……分かった」
流れのまま、ひかげは後ろを向く。
「だるまさんが――」
「「「うおおおお!!」」」
「ころんだ!」
――ピタッ。
「だーるーまーさーんが――」
「「「うおおおおお!!」」」
「って、おーい!」
ひかげが振り向く。
「私、全然動けてないじゃん!?」
三人はしっかり停止している。
「身体動かして暖まろうって話だったのに、私、全然動けて……」
――シーン。
「……ってコラ! お前ら、もう動けや! おしまいなんだよ! この企画は!」
「え? ウチら結構暖かくなってきたけど?」
「そりゃそうだろ! お前ら動いてんだから!」
「いや、“だるまさんがころんだ”の途中だし動いてないぞ? ひか姉、ちゃんと見てたか?」
「確かに見てねぇよ! 見てたら見てたでお前らの負けだよ!」
そんな中、れんげが真顔で言った。
「ウチ、気づいてしまったん……。ひか姉は身体を動かすより、ツッコミをさせた方が身体が暖まる気がするん!」
えぇ? と疑問符をつけるひかげに対してれんげが指を差しながら答える。
「今もなんか息切らしてるん。身体暖まった証拠なん!」
「そこに気づくとは……やはり天才か!」
「なるほど、今のひか姉をサーモグラフィで見ると、水色くらいあるって事だね!」
「元々の私は真っ青かよ!」
「おお!? いいよいいよ! 薄水色、エメラルドグリーン!」
「いや、どうせなら景気よく黄色くらいにしろよ!」
「群青色!」
「下げんな下げんな!」
ひかげは、ため息をついた。
「ってかなんだよ、そのジェスチャー……サーモのつもりか?」
「あー、お客さん。サーモンはもう品切れなんですよ……」
「魚屋かよ……。そんなんじゃ、これ以上ツッコめんぞ……」
「むむむ……半透明!」
「もはや色じゃ無くなってるし……、ってかお前は何してんの?」
ひかげはれんげにツッコミを入れつつ、手元で何かを書く仕草をする夏海に問いかける。
「カルテを書いてるの。えー、診断の結果、ひか姉は半透明になっちゃう病という事で、うちの病院に来てもらう事になります」
「いや、半透明になってねぇから! ってか、さっき魚屋だったじゃん?」
「まぁ安心してください。当医院は半透明の権威なんで。コンビニ付属なんで」
「大学附属みたいに言ってんじゃねぇぞ」
そこへ――
「がらがらー、整体師です! 患者さんはこちらですね!」
よしおが乱入する。
「いや、この流れ続けんの……?」
「そこでじっとしてください。いっぱい気持ち良くして差し上げますね! ぐへへ……」
よしおはニヤつきながら、両手指をしなやかに踊らせた。
「気持ち悪い手つきで笑ってんじゃねぇよ! 何する気だ!?」
「ただのマッサージですのでご心配なく。天井の染みを数えてる間に終わりますから!」
「心配しかねぇよ! 下心ダダ漏れじゃねぇか!」
「仕方ありませんね……それでは医院長、お願いします!」
夏海の言葉で、医院長役のれんげが一歩前へ出る。
「うむ……メス!!」
「展開早えーな! いきなり手術かよ! もっと段階踏めって……」
「それもそうなんな。それじゃあ、お熱を計りますん。ほい」
「あ、うん」
言われるままに、れんげの差し出した体温計を受け取るひかげ。
「ぴぴーっ! お熱計れましたん!」
「持っただけだぞ、やっぱ展開早ぇな……」
「どうですか、医院長?」
れんげは真剣な顔になる。
「これは……」
体温計をじっと見つめて、
「……遠い!」
「遠いってなんだよ!? 体温計って出る単語じゃねぇだろ!」
「どれくらいの遠さですかね? 医院長?」
「うーん……」
少し考えてから、
「よっくんのお家くらいなんな」
「……大して遠くなくない?」
「成程……、という事は、五十年ローンの一軒家くらいですね」
「遠いな!? お前ん家のローン完済……」
やがて夏海は宣告する。
「体温が遠くて無色透明という事で……ひか姉、これ入院ですね」
「無色透明じゃねぇよ! 半透明だよ! ……いや半透明でもねぇよ!」
「では病室はこちらで、相部屋になります」
「ふーん……」
「患者さんが左からアジ、サバ、ブリ、ハマチ……」
「魚類じゃん! 相部屋の患者魚類じゃん! ここは魚屋か!!」
「それとも、こちらでオレと同じベッドに入りますか? そしたらオレ、すっごく元気になります!」
「元気になるの、お前の下半身だろ! お断りだ!」
「ひか姉、れんちょんがいるのに、下ネタは止めて下さい……ドン引きです……」
「こいつが言い出したんだろ!?」
「それよりひか姉、ベッドの寝心地はいかがでしょうか?」
「え、もうベッドで寝てる体なの? ……あぁ、まぁ、寝心地は良いんじゃない?」
「そうでしょうそうでしょう! 温度管理は完璧ですから! あと、濾過機や海水も良い物を使ってますので!」
「生け簀じゃねえか! やっぱ魚屋だろ! ここ!」
「がらがらがらー」
「お、医院長!」
「オペを行う!」
「いや、ここ病室だよな……?」
「むむむ……」
れんげは、おもむろに右手を構えて……
「ずばーっ!」
力一杯、空を切った!
「見事なブリの三枚おろしです! 店長!」
「店長って誰だよ!?」
「もちろん医院長ですよ」
「医者なのか魚屋なのか、どっちなんだよ!?」
「二刀流ですね」
「大谷みたいに言うな!!」
「ってか、やっぱ魚屋じゃねえか、ここ! さっきの魚も患者じゃなくて、陳列された商品だろ!?」
「なんて事を言うんですか! 患者を商品などと……! 人の心とか無いんですか!? 二度と言わないでいただきたい!」
「えっ? じゃあ何? お前ら患者捌いてたの? バカじゃねえの!?」
「ってかひか姉、いつまで生け簀に入ってんの!? 早く出て下さい!」
「お前らが、入れたんだろ!!」
「さっきから魚屋なのか病院なのかハッキリしねぇな! さっさと決めろ!」
「……病院? 魚屋? ウチ、ただのコンビニですけど……?」
「どんなコンビニだよ! 止めさせてもらうわ!」
「どうも」
「「ありがとうございましたー」」
一同、お辞儀をして終了。
――ゴオオオォォォー!
吹雪は、相変わらず激しく庭を叩いている。
「あいつら……吹雪の中で何やってんだ?」
その様子を、家の窓から眺めていた一穂が、ぼそりと呟いた。
アニメ二期は全体的に感動寄りの話が多く、少し重たい話が続いていたので、今回は息抜きも兼ねて軽めのギャグ回を書いてみました。
こういう回は、書いていて楽しいですね。
次回はいよいよアニメ二期の最終話になります。
ただ、例によって一万文字以内に収まらなかったら、前後編になるかもしれません。
最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。