のんのんびより ― ある田舎男子の日常 ―   作:NIZI

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アニメ三期・第五話の話に入ります。
今回はあかねちゃんメインです。


第7話 姉の後輩を連れ歩いた

「うぅ、どうしよう……、やっぱり日付間違えてる……、でも、せっかくここまできたのに……」

 

 今日もいつものように、受験勉強で煮詰まってしまったので、少し気分転換に外でも歩こうと思ったら、家の門の前で不審な動きをしている女の子を見つけてしまう。

 

「こんにちは! どうしたんですか、あかねさん?」

「はわっ!? よ、よしおくん!? み、見つかっちゃった!」

 

 あかねさんは初めてわが家に来た日から定期的に訪れて、姉ちゃんとフルートの演奏をしに来ている。今日もまた練習に来たのだろう。

 オレを見て何か慌ててる様子だけど、かくれんぼでもしていたのかな? 姉ちゃんは出かけてる最中だけど、ここは家の中へ上がってもらうか。

 

「外、暑いでしょう。とりあえず家に上がって上がって! 姉ちゃん、もうすぐ帰ってくると思いますから」

「いい、いやいやいや、そんなご厄介になるわけにはいきません! やっぱり帰ります!!」

 

 え、なんで? そんなまさか! オレ、あかねさんと少しは打ち解けたと思ってたのに、それはこっちの一方的な思い込みで実は避けられていたのか? ……少しショックだ。

 

「いや、本当にもうすぐ姉ちゃん帰って来ますから、……オレと話したくないなら、外に出てますんで……」

「えっ!? いやいやいや! そうじゃないの!! よしおくんが悪いんじゃなくて! 全部私が悪いんですぅ!!」

 

 オレは何も悪くなかったようだ。良かった。あかねさんは顔を真っ赤にしながらしどろもどろだが、事情を話してくれた。

 姉ちゃんとフルートの練習をする為に長時間かけて電車に乗ってここまで来たものの、家の前に来てから何気なく携帯電話を開いたら、約束した日は明日だった事に気づいたようで、途方に暮れていたらしい。

 

「練習日、今日じゃなかったのに、昨日あんなに張り切ってた自分が恥ずかしい……」 

「それはその……、ドンマイです……」

 

 会話の途中で蹲って顔を両手で押さえてしまうあかねさん。なんだか気の毒だし、励まさなきゃ!

 

「大丈夫ですって! そういう事なら姉ちゃんだって、今日で良いって言うと思いますから! ささ、冷たい麦茶でもご馳走しますから、家の中に――」

「や、やっぱりいいよ! 間違ってここまで来た事が先輩にバレたら恥ずかしいし、このまま帰る! ……今日はゴメン、また明日よろしくね!」

 

 どうやら、日付を間違えた事が姉ちゃんにバレるのが嫌なようだ。……まぁ、確かに姉ちゃん『そんなに私に会いたかったんだ♪ うれしいなぁ♪』みたいな感じで悪気無く揶揄ってきそうだしな。そうなるのが嫌なのかもしれない。

 でも、せっかく遠路はるばる来てくれたのに、このまま帰してしまうのは、なんか悪い気がする。……そうだ!

 

「あかねさん、今日、この後時間ありますか?」

「え、練習するつもりで来たから、たっぷりあるけど……」

 

 つまり何をしても良いわけだな! ぐへへ……。……って、そうじゃないだろ! 打ち解けてきたとはいえ、流石に人見知りのあかねさんに対してこのノリで話すのは、まだまだハードルが高い。この場に姉ちゃんやひか姉でもいてくれたら、ツッコミを入れてくれる所だけど。……ん? ひか姉? ……そうだ!

 

「少し場所を変えませんか? ここにいたら姉ちゃんも帰ってきちゃいますから!」

「えっと、うん、わかった……」

 

 

 

 あかねさんは大人しくオレの後ろをついてきてくれている。……これ、このまま人気のない場所にも誘い込めそうだな……なんてね!

 

「よしおくん、なんか悪そうな顔してるけど、何処に行こうとしてるの……?」

 

 おっと、あかねさんを不安にさせてしまったようだ。反省反省! 

 

「別に怪しい場所じゃないですよ。れんげの家に向かってます! 行った事はありますか?」

「れんげちゃんのおうち……、いや、場所もわからないや……、今から行って、迷惑じゃないかな?」

「大丈夫ですよ! れんげもあかねさんの事、気に入ってますから! むしろ喜ぶと思います!」

「そ、そうかな……? えへへ……」

 

 少し照れた様子のあかねさん。れんげも、あかねさんを家まで案内した日からは、時々リコーダーを持ってきて一緒に練習している事も多い。オレの目から見ても、れんげはあかねさんに懐いてるように思える。

 

「れんげちゃんの家ってここから近いの?」

「そうですね、歩いて三十分くらいで着きますから、そう遠くはないと思います」

「えっ、三十分!? それって結構離れてるような……」

 

 あかねさんの表情が少し険しくなる。 しまった。オレ、普段の散歩で何気なく一時間程度は歩いてるから何も考えてなかった。三十分って、人によっては意外と長いのかもしれない。

 

「なんかすいません、寄り道になりますけど、脇道に入った所から行ける駄菓子屋に寄って休んでいきましょうか?」

「あ、いや、大丈夫だよ! 体力は有り余ってるから、寄り道せず真っすぐ行こう!」

「そうですか、疲れたら無理しないで教えてください」

「う、うん……」

 

 少し無理をさせてしまったかもしれない。今後はもっと考えて動かないとな。

 

 

 

 歩いてる最中に会話のネタも尽きてしまい、お互い無言の時間が増えてしまった。あかねさんもソワソワしてて居心地が悪そうだ。れんげの家までまだ半分以上あるのに……、えっと、何か、何か会話のネタは……、そうだ!!

 

「あかねさん、高校での姉ちゃんはどんな感じですか?」

「えっと、学校での、このみ先輩?」

「はい、姉ちゃん家だと高校の事あまり話してくれなくて、実はほとんど知らないんですよね」

「うーん、学年も違うから、部活以外の事は良くわからないんだけど……」

「部活内だけでもいいですから、教えてください!」

 

 吹奏楽の練習の為に、毎日の様に朝早くに家を出て、夜は遅くに帰ってくる事は知ってるけど、それ以外は知らなかったりする。忙しそうではあるけど、特に悩みを抱えてたりしてる様子もないから心配はしていない。でもそれはそれとして、どんな生活をしてるのかは気になる。

 

「いつもニコニコしてて、みんなの相談を良く聞いてるのを見るかな? 私の悩みも聞いてくれて、今は一緒に練習する仲になったし……」

 

 ふむ……、聞いた感じだと特に真新しい情報はないか……、でもせっかくこうして本人がいない所で姉ちゃんの事を聞ける機会だ。なんでもいいから何か気になる事、気になる事……。そうだ!

 

「あかねさんの他に、仲の良い友達とかいます?」

「えっ? 友達? いると思うよ……私と違って、先輩は交友関係広いだろうし……」

「例えば誰と良く話してたりしますか?」

「そうだね……、先輩ソロパートを担当してるから、大会も近いし、打ち合わせとかで部長と話してる事が多いかな?」

「部長さん、どんな方なんですか?」

「私はあまり話した事ないから、見た目の印象になるけど、部長は凄く背が高くて、頼りがいがありそうな男の人だね」

 

 ……ん? 男の、人?

 

「部長さんって男なの!?」

「あ、うん、部内の男女比率は女子の方が多いけど、部長は一年の頃から凄く上手かったらしくて、音大からも推薦の声がかかってるって話なんだよね……」

「そ、そうなんだ……ふーん、男……へー……」

「よしおくん!? 急にどうしたの!?」

「もしかしてですけど……、姉ちゃんと良い雰囲気だったりします?」

「えっ!? いや、そこはよく、わからないかな……」

「あかねさんから見てで良いですから! 教えてください! 二人はどんな雰囲気なんです!?」

「わわっ! ちょちょちょっと落ち着いて、よしおくん……!」

「あっと、すいません」

 

 思わずあかねさんに詰め寄ってしまった……。いかんいかん、クールになれ、富士宮よしお。

 

「その、もしかしてだけど……、よしおくん、やきもち焼いてたり、する?」

「は? いやいや全っ然!? 姉ちゃんが誰と仲良くしようと勝手だし!? 別にいちいちオレに報告するような事でもないですから!?」

「ご、ごめん……! えっと、多分だけど、部長とこのみ先輩はそういう仲じゃないと思う! 部長、幼馴染の彼女がいるって話を聞いた事あるし……」

「ほっ、まぁそうですよね! そんな事だろうと思いましたよ! あはは!」

「……なんか凄く分かりやすいなぁ……。でも、先輩だったら彼氏とかいそうだよね……」

 

「はぁ?」

「ひっ!」

 

 "彼氏"。その二文字を聞いて思わず冷たい声を上げてしまった。あかねさんが怯えている。いかんいかん、クールになれ、富士宮よしお。

 

「……もしそれっぽい人を見たら教えてくださいね♪」

「えっ!?」

「大事なことですから♪」

「わ、わかった……でも、多分何もわからないと思うよ……」

「頼りにしてますね♪」

「あ、あわわわわ……」

 

 

 宮内家に到着したオレ達は、そのまま呼び鈴を鳴らした。

 

 

 

 そして現在、玄関の床にて、オレはひか姉に羽交い絞めにされていた。その光景を呆気にとられながら眺めているあかねさんが一言。

 

「えっと……、私、帰った方が良いのかな……?」

 

「いやいや、帰らないで!? ほら! ひか姉がオレとじゃれてるせいで、あかねさん居心地悪そうじゃん!」

「お、ま、え、が! 抱きついてきたんだろ!!」

「ひか姉が悪いんだよ? れんげを訪ねてきたのにいきなり出てくるから……」

「意味の分からん責任転嫁すんな! あと、れんげは外に行ってて今はいないからな」

 

 帰って来てから大抵家の中でぐーたら過ごしてるらしいひか姉が出迎えてくれるとは思わなかったから、心の準備が出来てなくて、顔を見た瞬間に思わず飛びついてしまった。条件反射って怖いね。

 そしてこれまたいつものノリでひか姉に投げられて今に至る。背中が少し痛い。

 

「それよりそっちの子、ご紹介していただきたいんだけど?」

「もちろん! あかねさん、自己紹介、出来ますか?」

「えっ? あ、その……あの……」

「大丈夫ですよ。ひか姉はれんげのお姉さんなんで! ほら、目元とか、面影あるでしょ?」

「は、はじ、はじめ…ますて……げほ」

「おいおい大丈夫か? 汗びっしょりだけど」

 

 やっぱり初対面の人間相手は厳しいか……。れんげがいれば間を取り持ってくれたんだろうけど、今はいない以上、オレがなんとかするしかないな。

 

「あかねさんはその……、オレの大切な人だ!」

「えぇっ!?」

「……なんか凄ぇ驚いてんだが?」

「あかねさん照れ屋さんだから♪」

「照れてんじゃなくて人見知り!」

 

 顔を真っ赤にしながらキレのあるツッコミを入れるあかねさん。いいぞ、調子出てきたか?

 

「それは冗談で、姉ちゃんと同じ高校の吹奏楽部の後輩さんなんだ」

「へー、このみと同じ高校か。私は宮内ひかげ、よろしく」

「よ、よろしくでしゅ……」

 

 たどたどしくもひか姉にの出した手に握手をするあかねさん。まあ初対面だし、徐々に慣れていければいいかな?

 

「ちなみにひか姉はあかねさんと同い年の高校一年生だから敬語は必要ありませんよ。だよね、ひか姉?」

「まあそうだな。とはいえ、同じ高校生といっても、私は東京の高校なんだけどね!」

 

「え、東京!? 凄い!!」

「お、乗ってきた!? そ、そう、東京!」

「はー、東京ってどんな感じなの?」

「そりゃあ凄いよ、東京だし!」

 

 ひか姉の東京マウントで委縮すると思ってたけど、あかねさんが凄い勢いで食いついた。これは意外。

 

「そうだ! ここじゃなんだし、奥の居間で話そう! あがってあがって!」

「うん、おじゃまします!」

 

 大喜びであかねさんを家の中に招くひか姉。今のやり取りを見た感じ、この二人、結構相性良さそうだな。

 

「よしお、お前は台所で麦茶入れてこい!」

「りょうかーい!」

 

 ひか姉の東京自慢は、ぞんざいに扱われることが多かったからか、素直に関心を示してくれたあかねさんに対して随分嬉しそうにしているな。

 れんげに会えなかったのは残念だけど、これは良い感じの出会いになったみたいだ。オレ、結構いい仕事したよね?

 

 

 

 宮内家の居間に移り、東京の話という事で、ひか姉は東京タワーをバックにして友達と映ってる写真を見せてくれた。

 

「これが、東京タワー……!」

「すごーい! おっきーい!」

「どーよ? 携帯で撮ったのをわざわざプリントアウトしたんだよ?」

 

 携帯電話で撮った写真を現像する事も出来るのか! かがくのちからってすげー!

 

「この隣にいる人、ひか姉と同じ学校の人?」

「ああ、友達だ」

「そうか、ひか姉にもちゃんと新しい友達が出来たんだな。孤立してないか心配してたんだよ。良かった良かった……」

「余計なお世話だ」

 

「この夜景の写真も凄い綺麗だね」

「そうだろうそうだろう! なんたって百万ドルの夜景だしな!」

「東京か……、オレも来年絶対に行ってやる」

「お、なんだよしお! 東京に行きたいのか? だったら案内してやってもいいぜ!」

「ふふ、楽しみにしてるよ!」

 

 そう言ってひか姉とオレは笑いあった。オレは絶対に東京の高校に合格してやるという決意表明のつもりだったけど、ひか姉の耳には東京観光に行くって聞こえていたらしい。

 まあ、ひか姉にはまだオレが東京の高校を受験する事は言ってないからな。特に言ってない理由は無い。ただ今まで言う機会が無かっただけだ。……いっその事、ここで宣言しちまうか?

 

「あー、実はさ、ひか姉……」

「ん、どうした急に?」

「えっと、その……」

 

 いかんいかん、いざ言おうと思ったら緊張してきた……。

 ここで「来年ひか姉を先輩って呼んでやるから待ってろよ!」なんて言えたらカッコつくんだけどな……。

 口に出した瞬間、それは『憧れ』じゃなく『約束』になる。もし落ちたら一生ネタにされそうだ。いや、絶対される。……ダメだ、想像しただけで胃が痛い。

 

「その……、えっと……」

「よしおくん?」

「本当にどうしたんだ?」

 

 自然と場が沈黙してしまう。あかん、人見知りでもないのに声が出ない。冷や汗が浮かんできた……ヤバいヤバい……。

 

「ただいまなのーん!」

「あ、れんげのやつ帰ってきたな。……ちょっと行ってくる」

 

 ひか姉はれんげの声を聞いてそのまま玄関に向かう。た、助かった……。ありがとうれんげ、この空気を変えてくれて。

 

「よしおくん、大丈夫?」

「すいません、あかねさん、あはは、はぁ……」

 

 あかねさんは何も聞かずに、そっと背中を撫でてくれた。その手の暖かさが、さっきまでガチガチだった肩の力を少しだけ抜いてくれた。

 

「オレ、自分が思ってる以上に意気地のない男だったのかもしれません……」

「そ、そんな事ないよ! よしおくんは頑張ったと思うよ!」

「はは、ありがとうございます……」

 

 あかねさんの励ましの言葉に思わず笑みがこぼれる。少し落ち着く事が出来たかな。




あかねちゃんとひか姉。原作より早い出会い。

例によって文章量が増えてしまったので、分割して後半へ続きます。

動くこまぐるみは、私の拙い文章力で、あれを面白く表現できる自信が無いよしおが絡まない場面なので割愛しました。描写してないだけで、現在、村のどこかを元気に動き回っています。
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