崩壊:スターレイル Another branch   作:$ATO

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スターレイル本編の物語が待ちきれないので、自分でも続きを考えることにしました。細々と書いていきたいと思います。今回ヴェルトの視点ですが、主人公は本編と同じ女性主人公のつもりです。


虚構の地、クリムト
4章プロローグ 「『終焉』からの誘い」


 

「『神々の戦い』についてどう思う?」

 

時刻はシステム時間0時を過ぎ、列車のラウンジは既に静まり返っている。あの子たちのことだから、実は自室で夜更かしをしていても驚きはないが……少なくとも今この場には、自分と姫子の2人しかいない。

 

「そうね……オンパロスでの一件を経て、ますます激化していくと見て間違いないと思うわ。そして勿論、私たち『開拓』もその例外じゃない。」

 

燃えるような赤い髪を靡かせ、姫子はマグカップを片手に答える。

 

「『知恵』のヌースは殞落を免れたけど、それでも一歩手前まで進んでいたことは間違いないわ。『巡狩』は『豊穣』を仕留めようといつにもまして躍起だし、『壊滅』の勢いは留まることを知らない。」

 

「鉄墓一体であれだけの被害が出たんだ。銀河連合軍の協力が無ければどうなっていたか、想像もしたくないな。」

 

ため息を一つ吐くと、自分のマグカップが空になっていることに気づいた。

 

「おかわりはどう?まだコーヒーの余りがあるの。」

 

思わず全身が硬直するのを感じる。彼女の淹れるコーヒーは、なんというか……その……少々個性的で刺激が強い。

 

「いや、いいよ。眠れなくなっても困る。」

 

姫子が苦笑いを浮かべる。

 

「じゃあ私が頂くことにするわね。」

 

彼女は自分のマグカップにコーヒーを注ぐと、ぐいっと一気に飲み干した。

 

「神々の戦い……たとえ何が起ころうと、私たちはただ開拓の精神に従って行動するだけよ。そうでしょ?ヴェルト。」

 

「もちろんだ。しかし、次の目的地についてはしっかりと考える必要があると思うな。」

 

「それについては同意よ。さて……ルサカ、メルスタイン、江戸星……既に候補地はいくつかあるけど、どうしようかしら?」

 

「ふむ……」

 

二人の間に少しの沈黙が流れた瞬間。視界の端にノイズが走り、ここにいるはずのない存在が現れた。

 

「はいはいちゅうもーく。あんたたちの目的地は、そのどこでもないよ。」

 

宇宙空間を走行する列車に侵入する術などない。ましてや開拓の加護を受けた星穹列車だ。しかし、それを可能にする力を眼の前の少女は持っている。

 

「お前……星核ハンターが何の用だ。」

 

星核ハンター銀狼、エーテル編集の能力を持つ彼女に、侵入できない場所など数えるほどだろう。

 

「まあまあそう堅くならずに。私はカフカからの伝言を伝えに来ただけだから。」

 

「カフカの……?」

 

姫子の表情が疑念に歪む。俺達星穹列車と星核ハンターは、いわば敵対関係のようなものだ。姫子の反応は当然だろう。しかし銀狼……彼女を見る度に故郷のあの少女のことを思い出してしまい、なんだか厳しく当たることができない。

 

「そ。『貴方達が向かうのはクリムト。そこで再び私達の運命は交わることになる。18番目の惑星で会いましょう。』だってさ。」

 

「仙舟に向かった時もそうだったわね。でも、今回私たちがそれに従う理由なんてないわ。」

 

「勿論従うかどうかはあんたたちで決めたら良いよ。でも、エリオの脚本は絶対だから。きっとあんたたちはクリムトに来る。じゃ、そういうことで〜」

 

話すべきことはもうないとでも言わんばかりに、銀狼は……正確に言うと銀狼のホログラムは、そこに存在したのが嘘のように消えた。

 

取り残された二人の間に、再びの沈黙が流れる。

 

「クリムト立憲国。かのアキヴィリが建国した国で、17の惑星系を有する国家だが……」

 

気まずい沈黙を破るためにも、クリムト、と言われて思いついた言葉を並べる。……待て、何かがおかしい。引っかかるものがある。

 

「銀狼は、18番目の惑星でと言ったわね。ただの言い間違い?それとも何か意味があるのかしら……」

 

そうだ。カフカは本当に18番目の惑星と言ったのか?そうとすれば自分の持っている知識と食い違う。クリムトの領域にある17の惑星系のうち、人が住める惑星の数はそれぞれ一つずつ、つまり計17個しか存在しないはずだ。

 

「クリムトについて少し調べる必要があるな。丹恒が起きていないか見てくる。列車のアーカイブに何か情報があるだろう。」

 

なんとなく不穏な予感がして、足早に丹恒の部屋へと向かい、ノックをする。

 

「丹恒。すまない、まだ起きているか?少し話があるんだが」

 

ギィ、と椅子を引く音がした。どうやらまだ起きていたようだ。扉が開いて出てきた丹恒は眼を擦っており、かなり眠そうな様子だった。

 

「今寝るところだったが、大丈夫だ。何かあったのか?」

 

「夜遅くにすまない。先程星核ハンターの銀狼がやってきた。そこでカフカからの伝言を伝えてきたんだが、その内容に違和感があってな。クリムト立憲国についてのアーカイブデータを調べたい。」

 

それを聞くと、それまで眠そうだった丹恒は意識を覚醒させたようだ。

 

「星核ハンターが……?わかった。今すぐ調べよう。」

 

そう言うとすぐに、丹恒はアーカイブの確認を始めた。

 

 

※※※※

 

 

アーカイブの端末を持ち出した丹恒を連れ、俺はラウンジへと戻ってきた。

 

「ごめんなさいね。こんな時間に呼び出してしまって。」

 

「問題ない。それよりクリムト立憲国のアーカイブデータだ。確認してくれ。」

 

ラウンジで待っていた姫子に向かって、丹恒が端末を差し出す。

 

「ええと……クリムト立憲国、13の惑星系を有し、優れた行政システムを持つ。千年程前にアキヴィリによって建国された……ちょっと待って。13の惑星系?ヴェルトは17と言っていたけど、それとも食い違うわね。」

 

「俺の記憶違いか?少なくとも18番目の惑星に関する記述が存在しないことは確かだが……」

 

「いや、違うぞヴェルト。俺が以前アーカイブを確認した時は、確かに17の惑星系を有する国家だと記述してあったはずだ。これはおかしい。」

 

丹恒が焦った様子で続ける。

 

「カンパニーのデータベースも確かめよう。列車の誰かがいたずらでデータを改ざんしたのかもしれない。」

 

確かに列車にはいたずら好きな乗客が約2名いるが……丹恒が大事にしているアーカイブにいたずらなんて、彼女らがするだろうか?

 

「何だ、これは……一体何が起こっているんだ?」

 

端末を持つ丹恒の表情が歪む。彼から端末を受け取り、カンパニーのデータベースを確認するとそこには、

 

クリムト立憲国、4つの惑星系を有する国家。とあった。

 

「おかしいわね。あなたたちの記憶、列車のアーカイブ、カンパニーのデータベース、それ全てが異なる情報を記している。念の為もう一度アーカイブを確認して。」

 

再びアーカイブのページを開く。

 

「クリムト立憲国……単一の、惑星系を有する国家。だと……?」

 

「カンパニーの方はどうなってる?丹恒、確認するんだ!」

 

同時多発的にハッキングを受けているとでも言うのか?誰が、一体なんのために?

 

「わかっている!……駄目だ。こちらも単一の惑星系を持つ、となっている。」

 

「っ……!?」

 

列車のラウンジを、またもや沈黙が支配した。

丹恒はカンパニーのデータベース以外にも、様々な方法で、クリムトについて調べようとしたようだが、そのどれからもも、同じ情報しか得られなかったようだ。

 

「このタイミングだ。銀狼の仕業と考えるのが妥当な気がするが……」

 

「カンパニーのデータベースは博識学会が管轄しているはずよ。そうね……Dr.レイシオに一度連絡してみるわ。」

 

姫子はそう言うと、ラウンジから姿を消した。

ラウンジの空気が、一段階重くなった気がした。

 

「ふむ、どういうわけかわからないが、クリムトには何かありそうだと言うことは確かだな。丹恒、紅茶でも淹れようか?」

 

俺は空気を変えようと立ち上がった。

 

「貰おう。」

 

茶葉を煮出すのも面倒なので、ティーバッグを取り出す。

紅茶の良い香りを嗅ぐと、緊張も少しほぐれた気がする。

 

「私も一杯頂いていいかしら?」

 

客室車両の方から、占い師のような容貌をした女性が現れた。

 

「ブラックスワンさん。勿論だ。あなたの分も淹れよう。」

 

彼女はオンパロスでの一件でガーデン・オブ・リコレクションと対立してしまったそうで、一連の出来事が収束した後も列車に同行している。

 

紅茶に口をつけ、微笑を浮かべている。メモキーパーはその体をミームで構成しているというが、紅茶は飲めるんだな、なんて考えが頭をよぎった。

 

「クリムトについて調べているようだけど、それはもう無駄よ。」

 

カップを置いたブラックスワンが述べた言葉に、丹恒が驚いた顔を浮かべる。俺達の記憶を読んだのだろう。彼女に隠し事はできない。まあ、隠すようなことでもないが。

 

「どうやら同時多発的なハッキングを受けたらしい。復旧には時間がかかるかもしれない。」

 

「違うわ、これは……虚構歴史学者による攻撃よ。」

 

「なんだって?」

 

虚構歴史学者。彼らはあまりにも有名だが、同時に余りにも謎である。数々の歴史を改ざんしているとされるが、元の歴史がわからなくなってしまった以上、彼らが何を行ったのかももはやわからない。

 

「ブラックスワンさん、どうしてそんな事がわかるんだ?」

 

「さっき、銀河全体へ影響を及ぼすほどの強大な『神秘』の運命エネルギーによって、銀河の記憶が削り取られたわ。列車の中だけは私の『記憶』の力で守ることができたけど……」

 

その時、どたどたと足音をたてながら、姫子がラウンジへと戻ってきた。

 

「Dr.レイシオと話したのだけど、彼もクリムトは一つの惑星系しか持っていないって言ってるわ……!」

 

「逆に言えば、列車以外の全ては改ざんされてしまったと言っていいわ。」

 

どうやら、思っていた以上に事は大事らしい。銀河全体を書き換えるなんて、『神秘』の使令級でもないと行えないだろう。

 

「オンパロスの一件で、『知恵』はなんとか永らえたけど、確かにダメージは受けている。『知恵』の不倶戴天の敵である『神秘』が、このチャンスを逃すはずも無いでしょうね。」

 

「まさか……いや、すぐにヘルタ達に連絡を取る必要があるだろう。」

 

今度は丹恒がラウンジを出ていった。

 

一難去ってまた一難。とでも言うべきだろうか。どうやら開拓の旅に休息は存在しないらしい。

 

「どうやら今後について、列車の皆で話し合う必要がありそうだな。」

 

姫子が深く頷く。

 

ラウンジにいる皆がそれぞれ不安を募らせる中、ヴェルト・ヨウの心の何処かで、新しい冒険への期待感が芽生えていることに、彼自身は気づいているのだろうか。

 

 

※※※※

 

 

何処かの星にて。

 

「銀狼、刃ちゃん、ホタル。今回の脚本では、私たち全員がご指名よ。」

 

「ええ〜!?私も?っていうか、全員が同じ任務で揃うなんて珍しくない?そんなに重要なの?今回の脚本。」

 

「そうね、だからいつも以上に頑張って頂戴。」

 

「皆で一緒に任務って、とっても久しぶりだよね。あたし、ちょっと楽しみかも。」

 

「楽しむのは良いけど、前みたいに脚本を無視しようとするのはダメよ。」

 

「また……奴らと会うのか。」

 

「ええ。今回の脚本でも、彼女らにはやってもらわなくちゃいけないことがたくさんあるの。嫌?」

 

「そうではない……」

 

「それじゃあ話はおしまい。さあ、行くわよ。」

 

カフカがそう告げると、彼らの姿は闇に消えた。




クリムト自体はゲーム本編にも存在する国ですが……プレイアブル化されることはないと思うので好き勝手書こうと思います。
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