量産型闇深系クローン美少女にTS転生した男は、百合に挟まりたい   作:霧夢龍人

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始まりはいつも突然

ゴゥンゴゥンと鳴り響く巨大な時計塔。

空飛ぶ車に聳え立つビル群とは正反対の場所にて、俺は百合咲き誇る聖堂内に案内された。

 

「さて、早速ですがハルヒさんには、聖堂内で簡単な検査を受けてもらいます」

 

「検査ですか?」

 

「えぇ。管理プログラムとの照合と、身体に異常がないかの確認です。怪我も……本来ならすぐに治したいのですが」

 

ちら、と俺の片目を見る二人の視線。特にミレイナからの視線が痛い。

いや、そんな痛々しいモノを見るような顔をされても、これは俺の趣味なんだよなァ。

 

「大丈夫です、これくらいなら」

 

「……“これくらい”で済む傷ではないと思いますが……そう言うと思っていました。ただ、最低限の衛生処置だけはさせてください。感染症対策もありますし」

 

「衛生処置……?」

 

嫌な予感がした。

 

「お風呂、入ろ?」

 

コテンと首を傾げたイルゼが、俺を見つめてそう言った。

 

───

──

 

案内された建物の中は、外観の荘厳さそのままに、白と金で統一されていた。

聖堂の奥、通路を曲がった先で、ミレイナが足を止める。イルゼはぽへーっとした顔で俺のローブを握っていた。

 

君、さっきからずっとローブ握ってるよな?過保護すぎねェか?

 

「ここが、外から来た人を受け入れるための“浄化室”です。まずは赤錆を落としてから検査に移りましょう」

 

「浄化室……」

 

扉に彫られた天使の像みたいなのと目が合った。

 

あ、ちっす。

 

ぺこっと軽く会釈をすると、天使も会釈を返してくれた……え?見間違いか?軽く目を擦ると、像はピクリとも動いていない。見間違いかァ?

 

「では、服を着替えてください」

 

「わ、わかりました。では少し席を外してもらえると──」

 

「もちろん、私たちも付き添いますよ?」

 

「……はい?」

 

「一緒に入ります」

 

「え?」

 

反射的に二度見した。

 

イルゼが、コクンと頷く。

 

「私も、一緒に入る。……その方が、安心でしょ?」

 

……ちょっと落ち着こうか。

 

俺は百合をこよなく愛するおっさんだ。

百合は“見るもの”であって、“混ざるものではない”……と、頭では理解している。だが、混ざりたいとも思っている異端児だ。

 

しかし。

 

しかし、だ。

 

「怖い?」

 

イルゼが、ふっと首を傾げる。

 

「知らない場所で、一人でお風呂入るの……怖い、でしょ?」

 

「……えぇと」

 

百合の間に挟まりたい。

その思いには、イチャイチャしてる女の子達の間に混ざりたいだけであって、あくまで女の子たちが主だ。

 

断じて俺が攻められたい訳ではない。

 

それなのに。

 

「安心してください。彼女の言う通り、浄化室の使用は一人では不安でしょう。私たち女性職員が常に同伴します。……不安がる必要は何もありませんから」

 

「私たちが着いてますから」と遠慮がちに俺の頭を撫でるミレイナに、顔が赤面するのを感じる。

 

元おっさんの赤面とか誰得だよ!てか、この子達めっちゃ攻め攻めなんだが!?

 

(確かに言ってることは百パーセント正しい。

んだが、それとこれとは別というか……どうしようか、我がAIさんよォ)

 

《消去法ではありますが、ここで「実は心はおっさんでして」と白状するのは最悪手だと思われます》

 

(分かっとるわ!!)

 

俺が頭を抱えている間に、ミレイナはさっさと受付らしき人と話を付け、扉を開けた。

 

もわっと、湯気が溢れ出す。

 

(……終わった)

 

《人間の心は複雑なのですね。こういう時は、一発ギャグが──》

 

(黙っててくれ)

 

───

──

 

結論から言えば、なんとかギリギリで理性は保たれた。

 

浄化室の中は、日本で言うところの“大浴場”だった。

ただし、洗い場の代わりに半透明の膜がいくつか区切りのように張られていて、その中に入ると自動的に赤錆や汚れが洗い流される仕組みになっているらしい。

 

科学か魔術か知らんが、すげェ。

 

「ハルヒ、こっち」

 

イルゼに手を引かれて、俺は半透明の膜の前に立つ。

ちなみに服は着ていない。イルゼはまだ服を着ていたが、ミレイナに関しては既に脱いでしまっていた。

 

目線を上げると“肌色”が見えてしまいそうで、視線をそっと下に向ける。

 

おっさんとしての気まずさと、TSしたんだから気にするなって言う男としての葛藤で頭が沸騰しそうだ。

 

「そんなに怖がらないでください。この膜に入れば、全身の汚れと赤錆が落ちます。傷口も最低限は綺麗にしますが……痛みは?」

 

「だ、大丈夫です。それに痛みには……慣れてますから」

 

《否定致します。自分で隻眼にした癖にあれだけ痛がっていたのに、慣れているという発言は不適切です》

 

(あれは忘れてくれ。俺の大事な属性を決めるのに必要だった)

 

「痛みに慣れているとは……どれほどの環境で生きてきたんですか、あなたは」

 

「……普通の環境でしたよ?」

 

「そんな怪我をするような環境は普通じゃ──っ、いえ、すみません」

 

どうしよう。

ノリと勢いで付けた傷のせいで誤解が広まっている気がする。

 

ま、まぁ?闇深設定を演じる俺にとっては都合はいいが……ちょっと心が痛い。身体は別物かもしれんが、おっさんのメンタルは豆腐なのだ。

 

だから間違ってもハゲとかデブとか、臭いとか言ってはいけないよ。全国のおっさんにはクリティカルヒットだからなァ。

 

《少なくとも貴方は、おっさんと呼ばれる種族には定義されないかと》

 

ぽんこつAIが何か言ってんな。

まぁいい、ともかく今は早く浄化とやらを済ませねェとな。

 

「ん、じゃあ私から入るね」

 

半透明の膜に触れて足早に入ろうとすると、イルゼが俺を追い越すように中に入って行った。ミレイナは浄化の教え方を任せましたよ、と言って別の膜へと入っていく。

 

置いてけぼりにされた俺は慌てて追いかけて中に入る。

 

だがそこには、既に服を脱ぎ始めているイルゼがいた。

 

細い肩。

白い首筋。

さらっと流れる銀髪が、うなじのあたりでゆらゆら揺れる。

くすみひとつない純白の肌色が覆う形のいい胸と尻は、未完成の大人という色気を感じさせていた。

 

「どうしたの?そんなに見つめて」

 

「っ、すみません。なんでもないです」

 

っぶねェ!

 

何とか目線を逸らして誤魔化したが、脳内では先程の景色が焼き付いて離れない。そんな俺にイルゼは気にした様子もなく、浄化するボタンらしき物を押した。

 

膜の中がぼうっと光る。

 

イルゼの体に赤い粒子のようなものが浮かび上がり、ふわっと宙に散って消えていく。

赤錆の浄化だろう。

 

んでもよォ、なんだからこの粒子……。

 

《まるでモザイクが掛かってるみたいですね》

 

AIの言葉に内心頷いた。

直接“見えすぎない”絶妙な透け具合で、ギリギリのところを攻めてくる感じ。男なら分かると思うが、ANIMALなVIDEOのモザイクみたいなのが大事な部分を隠しているのだ。

 

(誰だよこんなありがたい……じゃなくて、どエロいなシステム作った奴)

 

《設計者は機密です》

 

(絶対変態だろ)

 

「ハルヒも、いいよ」

 

やがて浄化が終わったのか、イルゼが振り返る。

学生とは思えない立派な胸が───。

 

(相手は子供。相手は子供。美しい百合が好きで挟まるのが願望なだけで、ここで男の醜さを出す訳にはいかない。二対一が好きなだけで、一対一のガチ恋愛は流石にだめだ。それに相手は子供……)

 

「ハルヒ」

 

「はひっ!?」

 

情けない声が出た。やめてくれ、アラサーのおっさんが出していい声じゃない。そんな俺にゆっくりとイルゼは近づいてきた。

 

ヒタヒタと鳴る足音とともに、耳元でふわりと囁かれる。

 

「……大丈夫。怖くない。……ほら」

 

少し濡れたイルゼの指先が、俺の頬に優しく触れる。

 

いや、指先だけじゃない。

俺を落ち着かせるように優しく抱擁されている。

 

腰にと首に手を回され、上目遣いでこてんと首を掲げるイルゼに。

 

「一緒に、入ろ?」

 

「はい」

 

俺に選択の意思はなかった。

 

───

──

 

「すっごく可愛かった」

 

「っ、や、やめてください」

 

頭を撫でようとしてくるイルゼの手をやんわりと掴み、放させる。

洗浄室の中で散々からかわれたせいで、もはやおっさんメンタルはブレイク気味だ。

 

何はともあれ、浄化処理が終わったおかげか、俺の体はすっきりと軽くなっていた。片目の辺りもじくじくしてはいるが、さっきより幾分マシ。

 

入って損はなかった。

 

「はい、これが暫定の衣服です。聖堂内ではしばらくこの制服を着てください」

 

ミレイナから差し出されたのは、簡易版シスタールックみたいな白い服だった。膝丈くらいのワンピースに、薄いコート。裸エプロンならぬ裸ローブよりだいぶマシだ。

 

別室の鏡の前で着替えさせてもらったが、黒と白が混じった俺の髪と同じ色合いのシスタールックの服装は、かなり相性がいい。

 

(……我ながら似合ってしまうのがまた腹立つなァ)

 

《残念ながら、とても似合っています》

 

(お前もそう思うか)

 

しかしこうして見ると、我ながらかなりの美少女だ。

ハイライトがないせいで目が死んでるのも、隻眼なのもかなりのグッドポイント。

 

これで片腕か片足がなければ完璧なんだが……まぁ、まだ早いか(・・・・・)

 

鏡の前でちょっとした憂いのある美少女ポーズを満足するまで堪能したあと、部屋の外にいる二人に声を掛けようとドアを開ける。

 

「すみません、お待たせ致しま───」

 

 

 

 

瞬間、耳元を襲う轟音。

 

 

 

爆発したような衝撃が体を殴りつけ、後ろの壁に思い切り叩き付けられる。

 

「がはっ!?」

 

《緊急事態です! 急いでその場から離れてください!》

 

頭に響くAIの声が、ひどく遠く聞こえた。

 

……くそっ、体が物凄く痛ェ。なんだ!何があったんだ!?

今の一瞬で、一体何が起きたっていうんだよ!

 

節々から痛みが押し寄せてくるせいで、考えがうまく纏まらない。

 

《……ジジッ……肉体損傷、三十八パーセント……きけん……域です!!! このままでは、生命か……困難…ジジッ》

 

ダメだ。

声が途切れ途切れにしか聞こえない。落ち着け、落ち着くんだ、俺。

 

とりあえず呼吸を───。

 

「ッッっぐ……ッ!」

 

息を吸うたび、胸のどこかがジャリジャリと擦れる。

あー、これアレだろ。肋骨がどうにかなってるやつだろ。

 

何となく分かる。前世で読んだマンガ知識がうるせェ。

 

視界がぐらぐら揺れる中、無理やり首だけを動かして外を確認した。

 

部屋の壁が、半分ほど吹き飛んでいた。

 

廊下側の壁も天井も抉れて、石と金属の破片がそこらじゅうに転がっている。

さっきまで真っ白だった聖堂の内装が、粉塵まみれで灰色だ。

 

そうだ……あの二人は?

生きてる、よな? 生きているよな?

 

体を動かそうとするが、もはや立ち上がる力が残っていない。

 

「ぐゥ……ッ、くそ……!」

 

少し離れたところで、誰かが近付いてくる気配がした。

粉塵の向こう、ぼやけた影がゆらりと揺れ──そして。

 

 

 

 

 

 

 

「見つけた」




本当はここで腕が足をなくそうと思ってましたわ〜〜〜!
でも目はともかく、他の部位に関してはもっと曇らせがいがある場面でもぎ取りたいので、我慢しましたの!

我ながら業が深いですわ〜〜〜!
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