量産型闇深系クローン美少女にTS転生した男は、百合に挟まりたい   作:霧夢龍人

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戦闘?そんなことよりも百合だ!

その声は、粉塵を押しのけるようにまっすぐ届いてきた。

 

低くもなく、高くもない。

ただ──冷たい。

冬の刃物みたいな温度をしている。

 

霞む視界の中、影がひとつ。

ふらふらと歩いてくる。

 

「ッ……だ、れ……だ……?」

 

喉が砂利みたいな音を立てる。

息をするたび痛みは増すし、頭もガンガンする。

だけど、声だけは聞こえる。

 

「外から来た“異物”。まさかこんな丁度いい存在が、今この学園に入ってくるとは……私も運がいい」

 

(くそが、べらべらと呑気に話してんじゃねェよ!おい、AI!何もんなんだコイツ!)

 

粉塵が少し晴れ、そいつの輪郭が露わになる。

 

白の修道服。

聖堂の学生と同じ衣装ではあるが、その顔は黒く塗り潰されていた。

 

光がない。

まるで絵の具を垂らしたみたいに真っ黒な瞳孔が、じっと俺を見下ろしていた。

 

《認証コード不一致。推定驚異度(レベル)夢幻(2)──貴方では絶対に勝てません!逃げてください!》

 

(んなこたァ分かってんだよ!つかなんだよ、夢幻って!)

 

訳がわからん。話についていけねェ。

腕を動かすだけで激痛が走る度に、呻き声を漏らす事しか出来ねェ。

 

なのに、そいつはゆっくりと歩いてくる。

 

コツ……コツ……コツ……。

 

その足音が、やけに静かな廊下に響く。まるで死刑宣告だ。

 

「……ハルヒ」

 

背後から、震える声。

 

イルゼだ。

 

粉塵で汚れ、肩を押さえて必死に起き上がりながら、こちらへ手を伸ばしている。

 

「逃げ……――」

 

言い終わる前に、風が裂ける。

 

「イルゼ!!」

 

叫ぶ間もなかった。

黒瞳の修道服の腕がぶれ、イルゼに向けて何かが飛ぶ。

 

一瞬の飛来音の後に、鈍い音と血飛沫が弾け飛んだ。

 

「っ……あ……」

 

俺の腕に、細い刃が刺さっていた。

 

「っぶない!無事ですか、イルゼ!」

 

震える足を無理矢理動かし、イルゼに放たれた得物を身体で受け止めた。信じられんくらい痛ェが、これで黙って見てられるほど俺も子供じゃねェ。

 

それに、この傷も俺のキャラ付けのいい素材になるって考えりゃ、痛みよりも嬉しさが勝るってもんだ。

 

動かない体に、無理やり力を入れる。

肋骨がミシミシ軋むが、そんなの知ったこっちゃねェ。

 

修道服の影が、わずかに首を傾けた。

 

「……身を挺して庇うとは。やはり“外の人間”は理解不能だ。“鍵”の価値を分かっていない。イルゼ様がこの程度で怪我をするはずがないだろう?」

 

その声は淡々としているのに、背筋を氷で撫でられたみてェに寒気しかしない。

 

俺の腕に刺さった刃が、ずるりと抜かれる。

遅れて、焼けるような激痛が走った。

 

「ぐ、っ……ああぁッ……!」

 

血が床に落ちる音さえやけに大きく聞こえた。

 

《ハルヒ!その個体の攻撃パターンを解析中です!はやく、距離を取り──》

 

(取れるわけねぇだろ……バカがッ……!)

 

逃げる? 無理だ。

足は震えて立つのもやっとだし、視界はぶれにぶれて二重にしか見えねェ。

 

それに──イルゼが、必死に俺の服の裾を掴んでいた。

 

「……はる、ひ……にげ、て……わたし……は……っ」

 

「安心しろ、イルゼ。私は貴女を助けるために来たんだ。そこの女から、な」

 

修道服が淡々と告げるその言葉に嘘は無さそうだ。

どうやら本当に俺という部外者から、イルゼを守るために来たらしい。

 

当の本人は黒いヴェールが捲られて、色素の薄い“青色の瞳”で俺を見つめる。懇願したような物言いに、思わず言い返してやりたくなった。

 

んだが、そんな事する暇はない。

 

何せ絶体絶命だ。

 

(くそっ、どうする?この状況でなにか出来ることは……)

 

背後には傷だらけのイルゼ。ミレイナの姿が見えないのも少し心配だ。

こっから抜け出そうにも、この二人を守りながら逃げ出すのは不可能。

戦って勝てるとも思わねェ。

 

──やるしかねェか。

 

(やっぱ、俺が囮になるしかねぇか。もし俺が死んでも、少しでも逃げる時間が稼げれば上々だ)

 

俺が時間を稼いで二人を逃がす。

それしか選択肢がないんだ。だから、やるしかないだろ。

 

《……貴方、死ぬのが怖くないのですか?》

 

(あァ?俺はどうせ一回死んだんだ。百合を守るために犠牲になるのも悪かねェよ)

 

《やはり貴方は──狂っていますね》

 

(ハハッ、今更だろ)

 

震える足を殴り付けて無理やり止める。どうやって囮になろうか……そう考えていた時だった。

 

 

「だい、じょうぶ……だよ」

 

 

俺の背後にいるイルゼの瞳が、金色に輝き出す。かすかに布が擦れる音。

 

イルゼが苦しげに息を吸い――その“弱々しいはずの気配”が、唐突に変わった。

 

空気が震えた。

 

ゾワッ、と背骨が勝手に跳ねる。

 

何かが目覚めた音がした。

 

「……っ、は……?」

 

振り返るより早く、

俺の首筋を、熱とも冷たさともつかねェ“圧”が撫でていく。

 

イルゼの青い瞳が───ゴォッ!!!と燃え上がるみてェに金色へと変貌した。

 

光じゃねェ。

炎でもねェ。

まるで何かのエネルギーそのものが、溢れ出して形になったような色だ。

 

粉塵の中でたったひとつ輝くその金色が、廊下の闇を押し返すように広がっていく。

 

「……イルゼ……?」

 

「ハルヒはきっと、怖がりだから……大丈夫、だよ。私が守る、から」

 

呆けた声が漏れた。

 

弱った身体から出るはずのない、獣にも似た圧力。

 

さっきまで床を這うように倒れていたはずの少女が、今は逆に“この場の重心”を握っている。

 

修道服の黒瞳が、初めてわずかに揺れた。呼びかけた俺の声すら、空気に吸い込まれて消えかける。

 

そのときだった。

 

カチリ。

 

小さな、何かのロックが外れる音。

 

耳で聞いた覚えはねェのに、脳が勝手に“免れようのない何かが始まった”と理解した。

 

イルゼが、金色の瞳のままゆっくりと右手を上げる。

細い指が空中を──鍵穴でも確かめるように、そっとなぞった。

 

そして。

 

世界の方が、イルゼの指に合わせて形を変えた。

 

粉塵が途中で止まる。

黒瞳の修道服が踏み出した足が、空中で凍りつく。

床を流れた血が、滴のまま静止する。

 

「っ……な……に、これ……?」

 

俺の声だけが、空間に取り残された。

 

イルゼが囁く。

 

「……アクセス」

 

「なっ、イルゼ!?何故、鍵を行使したんだ!」

 

混乱している様に見える黒瞳の修道服を差し置いて、廊下の壁に、金色の文字列が浮かび上がった。

境界線のように、一直線に広がる。

 

「私は、鍵の管理者──イルゼ=ヴァンデルトール。

 対象を治安自治組織の監獄へ“強制転移”──学園都市じゃ、爆発や実力行使はありふれた事だけど……貴方はちょっと、やりすぎ」

 

言葉の意味がわからん。

でも、わかる。

 

やってることは……規模が違いすぎる。

 

廊下の壁がざわりと揺れる。

コンクリートが振動しているんじゃない。

 

存在のレイヤーが、ひっくり返った。

 

空中に、細かい金色の文字列が浮かぶ。

見覚えはねぇが、直感で理解できた。

 

イルゼが──この学園の“ルール”なんだと。

 

防犯規範。

学生識別プロトコル。

構造物保持式。

選択権限階級。

攻撃性判定基準。

 

全部、金色の光となって漂い、イルゼの周りに吸い寄せられていく。

 

「何故だイルゼ!?私は君のために──」

 

「うる、さい」

 

真っ黒な女が慌てたように話し掛けるが、イルゼは一瞥もせずにその小さな指先を天に掲げた。

 

唸るようならエネルギーが指先に集い、黒瞳の修道服に向けられる。

 

「さよなら」

 

 

 

 

その瞬間。

 

「駄目だ!!!」

 

瓦礫の向こうから声がした。ミレイナの声だ。

服が破け、擦り傷や打撲痕を隙間から覗かせながらゆっくりと歩いてくる。

 

「その力は、使ってはいけない」

 

「あぅ……でも、そうしないとハルヒが」

 

「なら大丈夫。ハルヒなら私が守る……でも、君も守らないと私は納得できません」

 

額から流れる血で点々と跡を作りながら、ミレイナはハルヒを見据える。

 

そして、抱き締めた。

 

「っ……」

 

「こんなに震えて。どうやら、かなりの心配を掛けましたね」

 

「し、心配なんか!……して、ない」

 

なんて言いつつも、イルゼはミレイナを抱き締めて離さない。ミレイナも目の前の震えている白髪の少女を決して離そうとしなかった。

 

黒瞳の修道服は既に逃げ出していたのか、その姿はない。

 

つまり、ただ目の前で百合百合してる女の子たちがいるだけである。

 

「感謝します、神よ」

 

控えめに言って最高だった。

傷がヒリヒリと傷んではいるが、今は間に挟まることよりも空気になって眺めることに徹したい。

 

状況がなかなかにカオスだし分からないことばかりではあるが、そんなことよりも百合を優先させてしまう俺は、やはり百合豚であると確信した。

 

以下、俺の反応。

 

(あっ、凄い!あんなに密着して……!)

 

(え、えぇ!?いいんですか?いいんですかそんな事して!?)

 

(あーいけません!いけませんお客さん様!こんなんえっちすぎます!)

 

(もうお腹いっぱいです、ありがとうございます。ありがとうございます。今はただ、百合に感謝を)

 

結局、二人のイチャイチャは十分ほど続いた。

 

 

 

 

《……私がおかしいのでしょうか。こんな怪我をおってなお、百合に感謝している事も、こんな状況で抱き合っている二人も──全く、人間は面白いです(イカれてます)ね》




はい、完全に第一章のチートキャラですわね〜!
でもこんなに強い能力、ほんとに何の代償もなしに使えるのかしらん?

そんな訳ないですわ〜〜〜!!!

それと百合ハーレムものって、ただえっちで百合百合してるだけじゃ駄目だと思いますの。ちょろいなんて以ての外!
ですから最初の攻略対象の時点で、攻略難易度マックスで行きますわ〜〜〜!!
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