量産型闇深系クローン美少女にTS転生した男は、百合に挟まりたい 作:霧夢龍人
長いこと二人からハグをされ、漸く開放された俺はイルゼに連れられて部屋へと向かった。
百合の間に挟るのは凄くいいんだが、これはどちらかと言うと挟まれてるがただしいよな……?何故か凄く嬉しそうな顔で抱き着かれたせいで、離れようにも離れられなかった。
兎角、俺は聖堂の中を進み、寮らしき部屋たちの中を更に突き進むと、一際目立つ大きな扉が見えた。
ミレイナは予定があると言って、後ほど合流することになった。
果たして素性を知らない俺をイルゼと一緒にさせていいんだろうか?
いいんだろうな……何故かかなり信頼されてるようだし。そもそも、俺に何か悪い思想があったとして、イルゼに勝てると思えない。
色とりどりのステンドグラスが、扉の周りを覆う。
イルゼがドアノブを触ると、アルファベットの文字列が浮かび上がった。
【Accept──承認。瞳孔スキャンを開始──個体名: イルゼ=ヴァンデルトール様、お帰りなさいませ】
扉のドア部分から細い枝のようなものが伸び、イルゼに向かって光を浴びせたかと思うと、カチャリとドアが開く。
(やばい、かっこいい!今ギュイーンって畳まれていったぞ!?)
「さぁ……入って、いいよ」
軽く呼吸を整えてから、そっと足を踏み入れた。ちょっと興奮が冷めやらない。
こういうハイテクなの、男の子は好きだからな。おっさんになっても。映画やらアニメやらで見てかっけーと思ってしまう。
『既に私という超超超ハイテクがいると思いますが』
(視覚的な凄さが分からないとちょっとなァ……それにクローンは標準装備なら、特別感ねェし)
『はぁ、これだから人間は……ちっ』
(え、今舌打ちした?)
AIにあるまじき人間らしさに戦々恐々としつつ、ぐるりとイルゼの部屋を見渡す。中は広かった。というか、広すぎた。
ドアが幾つかあって、そこからベッドが見えるのだが、一つにしては明らかに空間が余りすぎている。
中央に大きな円形ベッド、その周囲には書架、壁には光る魔法陣のような紋様。十字架らしきものも飾られている。
そして部屋の奥には──聖堂のステンドグラスを再現したような光のパネルが、静かに脈動していた。描かれている絵は、淡金髪のとんでもない美人の横顔。
(あの絵ってなんだろうな、神様か何か?)
『いいえ、あの絵は恐らく“八王”の一柱──序列三位、“聖なる輝きの星”の姿を模したものでしょう』
(八王って……なんか、名前からしてめっちゃ強そうだなァおい。しかも、聖堂でかなりの立場にいるだろうイルゼの部屋にあるってことは、かなり有名なのか?)
『その通りです、八王の名を知らぬ者はいません。まぁ、普通に生きていれば知らなくても大丈夫だとは思いますが。ちなみに八王最弱でも、イルゼが何人居ようと勝てないと思われます。あくまでも推測にはなりますが』
それを聞いて、思わず冷や汗が伝う。
いや、どんだけ強いんだよ。
まぁでも、そんな強くて有名な奴と出会うことなんてそうそうないだろう。記憶の隅に留めておくぐらいがちょうど良さそうだ。
それに百合の間に挟まりたいだけで、別に厄介事に首を突っ込むつもりはないからな。
『なるほど、これがフラグという奴ですか』
───
──
─
暫くイルゼの部屋でミサのやり方や、賛美歌を教えて貰いながら時間を潰していると、ミレイナがやって来た。
何故教えて貰っていたかって?
答えは単純。そっちの方が闇深系美少女感が増すからだ。あと属性も増える、これ重要な?
《別に聞いていませんが》
考えても見ろ。
隻眼の闇深系美少女が教会や聖堂で賛美歌を歌っていたら雰囲気が出るだろ?
そういうことだよ。
《……どういうことですか?》
そういうことだ。
《……》
(さ、さて!ミレイナとイルゼのイチャイチャでも眺めるとしますか)
気まずくなった俺は無理やり会話を逸らした。
社会人お得意の技である。
ちなみにイチャイチャしてるのは嘘では無い。
「ミレイナ、おかえ……り、なさい」
「えぇ、ただいま帰りました」
そう言ってまた抱きしめあってる二人がいる。
神聖な聖堂の近くでイチャイチャする美少女……乙である。壁になって眺めたい。
否、挟まりたい。
だが今のままでは無理だろう。仲良くはなれたが、俺の好感度が足りない気がする。
もし神様がいるなら、助言でも何でもしてくれたらいいんだが……そう上手くは───【ま……る子羊……よ】
(……え?)
今、どっかから声がしたような気がするんだが。少なくともイルゼでもミレイナでも、AIが喋った感じでもない。
当たりを見渡せば、声のする方向はステンドグラスから響いたような気がする。
「今、聞こえましたか?」
確認のために問い掛ければ、未だにイチャイチャしてる二人はハテナマークを浮かべていた。どうやら俺にしか聞こえないらしい。
【迷え…子羊…よ】
……やっぱり聞こえる。
迷える子羊よ、って言ってんのか?途切れ途切れで聞こえにくいが、どうやら間違いなくステンドグラスの方から声がする。
「ハルヒ?一体どうしたんですか?」
「……ん、もしかして…天啓、かな。悩んでる事、とかがあったら……たまに応えて、くれるの」
「ええと、天啓ですか?」
聖堂だからだろうか?
確かに声は美しいが、少し不気味だ。
それに悩み事という悩み事はあるが、煩悩の塊みたいな俺の話を聞いてくれるのだろうか?
好奇心は猫を殺す。
俺は興味に駆られ、ステンドグラスの方へと近づいた。
【迷える子羊よ。貴女の悩みは、百合の間に挟まりたいことですね?】
……聞き間違いか?
麗しい綺麗な声で、百合の間に挟まりたいって言った気がするんだが。
《聞き間違いではないです。私にも聞こえていますから。声の主は恐らく……先程説明した八王かと。しかし、あくまでも能力の一端であると仮定します。実際に話しているわけではない、自動音声のような物でしょう》
(なるほどな。聖堂に属する人間の悩みを聞いて応える、なんて流石描かれているだけはある)
まぁ、それなら話は早いがな。
ここは素直に、悩みを聞いてもらうことにしよう。
神様や天使なんて信じちゃいないが、前世で合格祈願の時に何度もお参りに行ったものだ。
【もう一度問います。貴女の悩みとは、百合の間に挟まりたいという事で間違いないですか?】
二度目の天啓?が来た。
「えぇ、間違いありません」
【ならば
「
聞いたことがない単語だ。遺産というんだから、古代の建設物の一つだろうか?
そんな疑問を浮かべる俺を置いて、典型の声は話を続けた。
【えぇ、
そう言うと、俺が何度話し掛けてもうんともすんとも言わなくなった。どうやら、天啓を授け終わったらしい。
全くわからん。
確かに強くなるのは重要だが、そんな場所へ行って強くなれるのだろうか?
暫く瞠目して考え込んでいると、そんな俺が気になったのかイルゼが話しかけてくる。
「……話し、おわった?」
「恐らく、ですが」
「何をしろと仰っていたんですか?」
「天啓の声が言うには──
ミレイナが鋭く声を上げた。
普段のふわっとした雰囲気が一瞬で吹き飛び、まるで別人のような緊張を帯びる。
イルゼもミレイナの反応に気付いて、慎重に口を開いた。
「……本当に、
「お、おう……そんなにヤバい場所なのか?」
俺の問いかけに、二人はすぐには答えなかった。
代わりに視線を交わし合い、どちらともなく小さく息を呑む。
ミレイナが先に、ぴたりと俺を見つめて言う。
「
「つまり?」
「死にに行け、と言われているようなものです」
……俺、いつの間に八王に嫌われたんだ?
かと言って、強くならなければ今日みたいに襲撃された時、太刀打ち出来ない。
どう思う?
《私は、行った方が宜しいかと》
なぜだ?
《要は挑戦して死ぬか、後々襲撃されて後悔して死ぬかのどちらかです。それならば、命を掛けてでも行くべきでしょう》
なるほどなァ。よし、なら──。
「ならば、尚更挑む理由が出来ました」
俺は自分の属性のために隻眼になるような男だぞ?
百合の間に挟まるために命を賭ければいいなら、喜んで
てやる。
どうせ死んだ命だ。
今更死ぬことなんて惜しくない。
「教えてください……イルゼ、ミレイナ。
百合の間に挟まるためなら命を掛けて貰いますわ〜〜〜!
あと、皆様のお陰で曇らせへの理解が尚更深まりましたの。だからこの小説も曇らせ展開への構築を頑張りますわ〜〜!!!