PSYCHO-Archive 透き通る世界に落ちた猟犬   作:elimin

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ども( ᐡ. ̫ .ᐡ )

ドミネーターほしい…変形するタイプのは高すぎるから音声いっぱいあるのでいいから…

実際のところキヴォトスでドミネーターってどれくらい通用するんだろうね


あと縢くんとブルアカキャラの並んでるイラストとか見てみたい…Pixiv探しても見つからなかった(´•̥ω•̥`)


Case.01 潜在犯の先生

よくわからない夢の中でふわりと浮かんでいた。

 

白い闇のなかを彷徨っていた。

 

自分が消える感覚、そしてそこから蘇った感覚。

 

光に包まれながら目をゆっくり開ける。

 

「……ぁ…れ……知らねぇ天井だ…」

 

どうやら自分はしっかりと生きていたらしい。デコンポーザーで殺された記憶から続けて今の光景が脳内に飛び込んでくる。100年以上前に放送された社会現象アニメの有名なセリフと共に縢は目覚めた。

 

「……もうちょっと寝ててもいいかなぁ…」

 

死を経験してからすぐにこの光景。流石に疲れるのも納得である。

 

「──…!」

 

「──い…!」

 

「──せい…!」

 

遠いところから声が響いている。

 

「先生!」

 

はっきり聞こえたときには既に意識が睡魔に包まれていた。

 

「起きてください、先生!」

 

鋭い女性の声が耳に届くと、そっと再び目を開ける。縢はふかふかのソファの上でだらーんと眠っていた。

 

「…んだよったく、うるっせぇなぁ…いいだろあと5分くらい……」

 

「よくありません、時間が限られているので早くご準備を」

 

ぽろっと吐いた悪態に律儀に答えながら、起き上がる縢の目の前にどこかで見たような白い服を着た女性が立っている。

 

「…ん…あぁ…?えと…アンタ誰」

 

「どうやらちゃんとお目覚めになられたようですね…私は連邦生徒会の幹部、七神リンです。どうやらあなたが、私達の呼び出した先生のようですね」

 

眼鏡をかけた凛々しい見た目の黒髪の女の子がいた。眼鏡の奥に蒼い瞳が見える。見た目の印象で言えば非常に真面目。眼鏡というわかりやすい特徴もあって、かつての自分の上司を縢は連想する。几帳面が服を着て歩いているような人物。

 

「…なんか女体化したギノさんみてぇ」

 

「何寝ぼけたこと言ってるんですか」

 

冷静に返された。

 

「推測系なのは、ここに来られたの経緯をこちらが把握できていないから…という理由になります。混乱されるのもわかります…こんな事態になってしまったことを遺憾に思います」

 

「まったくだ…目覚めたら何も知らねえ場所に飛ばされて、混乱しねぇ奴がいるかよ。んで…リンちゃん、連邦生徒会ってあれですか、ジ〇ン公国と戦争でもおっぱじめる感じっスか?まずそもそもここはどこなんスか」

 

あくびをしながら上体を起こして質問する。何もかもが見たことも聞いたこともない情報のため、とにかく質問するしかなかった。一部おふざけが入るのはご愛嬌。

 

「それは連邦生徒会じゃなくて連邦軍でしょう。今はとりあえず私に着いてきてください、どうしても先生にやっていただかないといけないことがあります」

 

「ちぇ、質問タイムねぇのかよ…へいへい」

 

ご丁寧にボケに返答しながらもどうやら相当切羽詰まっているらしい。言われるがままに立ち上がって彼女の後を着いていく。

 

「…そいえばまだ名乗ってねぇな、俺は縢秀星だ」

 

「では…よろしくお願いいたします、縢先生」

 

互いに名乗ってからでないと仕事は進まない。呼び方も割とすんなり定着した。

 

「……あれ…ドミネーター……俺いつの間に」

 

腰のホルスターにはドミネーターがあった。殺されたときの記憶だと身体が消滅したため手放したものだと思っていたが、どうやら持ってきていたらしい。

 

「なあリンちゃん、ちょいまち」

 

「どうされました?」

 

「ちょっとな、すぐ終わる」

 

ホルスターからドミネーターを抜き、手に持つ。リンはそれを見て警戒心を強めるが、縢がトリガーから指を離しているため攻撃の意思はないと判断した。

 

『携帯型心理診断鎮圧執行システム・ドミネーター、起動しました。』

 

網膜にドミネーターの起動画面が直接投影される。いつも仕事のときに見る光景だ。正常に動いていることを確認できている。ドミネーターのグリップを監視官及び執行官が握ると、蒼い光を放ちながら自動的に起動されるようになっている。

 

『通信エラー。システムとのリンクを構築できません。』

 

しかし、シビュラシステムとの接続ができないと、ドミネーターは使い物にならない。つまり今いるこの世界ではシビュラシステムが存在しないということになる。まあ、正体を知ってしまった縢にとって、あんなものはない方が有難いと感じているのだが。

 

「わりぃ、行くか」

 

「…どうされました?」

 

「この銃が使えるかを確かめただけ、使えねぇし文鎮かラーメンの蓋の重しくらいにしかならねぇけど」

 

ホルスターにしまうとそのまま再び歩き出す。

 

「で、そのやってもらわねぇといけないことって何よ」

 

「まあ…学園都市の命運をかけた大事なこと、と言っておきましょう」

 

「へぇ、ここ学園都市なんだ…アニメの中の話みてぇ」

 

窓の外には透明な青い空に照らされたビル群の景色が広がっていた。それら全てが学園という、生徒達が集う場所として扱われていることが縢には信じられなかった。まるでアニメでよく見た設定のそれと似ているからである。

 

(…てか俺いつの間に教員免許取ってたんだ?いや一応公務員だったけど)

 

エレベーターに案内され、全面ガラス張りの空間から外の景色を一望できるようになる。青が印象的な世界。

 

「改めて…ようこそ、キヴォトスへ。先生」

 

キヴォトス。それがこの世界の名前だった。

 

「キヴォトスは数千の学園が集まってできている巨大な学園都市です。これから先生が働くところでもあります。前に居た場所とは色々違って最初は苦労されるとは思いますが、きっと心配しなくても大丈夫でしょう」

 

「…でもこんな巨大な都市を学生が運営するって割ととんでもねーな、お宅のとこ」

 

2112年の東京に近い大都市の風景が、まだ子供の年齢に相当する人の手で営まれていることを想像すると、シビュラシステムの統治機構が如何にずば抜けていたのかを改めて実感する。自分を追い込んだシステムの存在の大きさをこのような形で再度思い知ることになるとは思わなかった。

 

しばらくするとエレベーターのベルが鳴り、指定の階に着いたことを知らせる。扉が開くと、その先には複数人の生徒達が忙しなく動いていた。全員美少女という天国みたいな環境だが、それ以上に多忙を極めているところに意識が向いていた。太ももが凄い生徒だったり、黒い翼の生えた巨乳の生徒の下着がちょっと見えていたりは後回しだ。

 

「お宅のとこ、ブラック企業なんすか?」

 

「連邦生徒会長が失踪してからこうなっていて…」

 

「…えーと、契約とかまだ結んでないよな…クーリングオフって」

 

「ありません」

 

「ですよねー」

 

漫才みたいなテンポで会話しながらエレベーターを降りる。

 

「あ、いたいた代行!はやく連邦生徒会長を…って、その隣の方は?」

 

「首席行政官、お待ちしておりました…えと、そちらの男性は一体…」

 

真っ先に目に飛び込んできた太ももの凄い生徒と巨乳な下着チラ見えの生徒が近づいてきた。

 

「面倒な人達に捕まってしまいましたね…」

 

「おいおい…しょっぱなからとんでもねぇことに巻き込まれてねーか?」

 

どうやら連邦生徒会長が不在となったことで各地で暴動が発生し、武器の流出や矯正局からの脱走者、更にはサンクトゥムタワーと呼ばれる重要な施設の管理者がいないことで行政制御権を失っていることが、縢の目の前で語られた。

 

「戦車やヘリとか物騒だろこれ、ほんとに戦争おっぱじめてんじゃねーの?」

 

よく見ると目の前にいる生徒達も何かしら銃器で武装している。もう縢はそれに対してツッコむのも追及するのも諦めていた。最後に担当したサイコハザード事件に似たようなものである。

 

「残念ながら…連邦生徒会長は恐らく失踪したものと見ていいでしょう…行方不明です」

 

「そんな…」

 

「噂は本当だったようですね…」

 

リンの言葉に衝撃を受け、落胆する生徒達。

 

「ですが安心してください、この先生がフィクサーになってくれるはずです」

 

一斉に視線が縢に集中する。

 

「…は?俺?」

 

「え?」

 

一同、困惑を隠せない。

 

「ちょっとまって、その前にこの先生はどなた?どうしてここにいるの?」

 

「キヴォトスの外から来たっぽいですけど…」

 

各々が縢のことをじっくり見つめながら感想を口に出す。

 

「はい、こちらの縢秀星先生は、連邦生徒会長が特別に指名された、キヴォトスの先生として働く方です」

 

「おいおいおい、俺の知らねぇとこで何勝手に話が進んでるんだよ…やってらんn…」

 

思わず縢がツッコむ。まだこの世界の把握も完全に済んでいないのに、いきなり役目を与えられ…否、強制的に押し付けられた形になればそれは声も上げたくなる。しかし投げ出したくなるような声を上げようとした途端、謎の光景が脳裏にフラッシュバックする。

 

(だから先生……どうか……)

 

「…ったく、俺はガキのわがまま聞いてやれるような器じゃねぇっての……取り返しつかなそうだから急がねーと」

 

悪態を吐きながらも引き受ける姿勢を見せた。こういうところは監視官に飼われていた執行官としての一面が出ている。

 

「俺は縢秀星、どうやらアンタらの先生とやらをやらされる羽目になったらしい…まあいいさ、泥船だろうが乗っちまったもんは仕方ねぇ。呼び方は適当に先生でいいよ」

 

「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの……って、挨拶はどうでもよくて…!」

 

「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと…」

 

「誰がうるさいって!?わ、私は早瀬ユウカ。覚えておいてください、先生!」

 

「へいへい、ユウカちゃんね」

 

簡単に自己紹介を済ませたところでリンの説明が入る。

 

「…先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました」

 

「S.C.H.A.L.E.…これなんてよめば…シャーレ、でいい?」

 

映し出された文字を見ながら縢が答える。

 

「はい、連邦捜査部「シャーレ」。単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることも可能で、各学園の自治区で、制約なしに戦闘活動を行うことも可能です」

 

「FBI(連邦捜査局)みてーなもんか…それの学園都市バージョンってことね」

 

「ご理解が早くて何よりです。なぜこれだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかは分かりませんが……シャーレの部室はここから約30㎞離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に「とある物」を持ち込んでいます」

 

「ちょ、遠すぎね…?寝てる間にそこに連れてってくれれば助かったんだけどなぁ」

 

距離で言えば普通に東京都の23区の半径よりも大きいくらいになる。

 

「心配ございません、こちらでヘリを手配できます……モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど…」

 

リンがタブレットで通信を始めると、少女の映ったホログラムが浮かぶ。

 

『シャーレの部室って…ああ、外郭地区の?そこ今大騒ぎだけど平気?』

 

「大騒ぎって…まさか一悶着起こってたり」

 

縢はいやな汗を額にかいていた。

 

『矯正局を脱出した生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ』

 

「早速トラブル発生かよチクショウ!」

 

『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?』

 

「しかも戦車持ち出してんのかよ!どんだけワイルドなんだよもぉ!」

 

声を荒らげたくなる気持ちはよくわかる。

 

『それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事なものがあるみたいな動きだけど?』

 

「………」

 

声を荒げる縢とは対照的に、リンは黙りながらじっと怒りを抑えていた。だがその場にいたみんなは怒っていることに気づいていた。

 

『まぁ、でも、もうとっくに滅茶苦茶な場所なんだから、別に大したことな……あっ! 先輩、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するね!』

 

モモカはあっさりと通信を切り、その場に静寂が少しの間流れていた。リンの剣幕から縢も流石に真面目にならざるを得なかった。

 

「…わりぃ、俺ちゃんと仕事するわ」

 

「……だ、大丈夫です。……少々問題が発生しましたが、大したことではありません」

 

「いや大したことになっちゃってるって」

 

リンは眼鏡の位置を指で修正してかけ直すと、目の前の生徒達に視線を向けた。

 

「……?」

 

「な、何?どうして私たちを見つめてるの?」

 

困惑するユウカ達。

 

「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」

 

「……えっ?」

 

「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう」

 

「ちょ、ちょっと待って!? どこに行くのよ!?」

 

歩き出すリンをユウカ達は声を上げて追いかける。次から次へと唐突なことが立て続けに起こっていることに縢は頭を掻きむしり、その様子を見ながらぼやいた。

 

「コウちゃん…俺帰りてぇかも…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

都市部

 

 

 

初っ端から大爆発が起き、銃撃戦が始まっていた。様相はもはや世紀末の世界と大差ない。さっきまでの景色はただの綺麗な部分を切り取って見せられた感じ。氷山の一角というやつと同じである。黒い煙と炎が広がり、アスファルトに銃弾の薬莢が多数転がっている。その場にいたのはガラの悪そうな見た目とはいえ、全員が少女だった。

 

「物騒にもほどがあるんじゃないですかねぇ!?むしろシビュラ必要じゃねこれ!?」

 

縢はツッコまずにはいられなかった。早くもシビュラの有用性を痛感させられることになってしまった。

 

「どうして私たちが不良たちと戦わなきゃいけないの!」

 

ユウカも愚痴を隣で零していた。これの対処に当たるのは誰だって嫌だろう。自分だって願い下げだ、と縢は思ったが口には出さなかった。

 

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから……」

 

眼鏡をかけた生徒は冷静にこの作戦の必要性を語りだす。

 

「それは聞いたけど、私これでも生徒会の役員なのよ!?それなりの扱いなのに、なんで私が…!!」

 

ユウカは自分の今の仕事に不満を隠せていないらしい。そんな矢先、ユウカは急に仰け反る。

 

「!?おい、大丈夫か!?」

 

「いったぁ……! あいつ等、違法JHP弾使ってるじゃない!!」

 

縢が声をかけるが、ユウカには傷がついたくらいで絶命や重傷はおろか、流血さえ見せていなかった。

 

(え、今頭モロに撃たれてなかった?え、生きてんの?え?)

 

驚きを隠せない縢。自分達の世界の常識がここでは通用しないことを今の光景で思い知らされた。ヘッドショットなんて喰らったら人の頭部は弾け飛ぶか、弾丸が脳髄を貫通して絶命に至らしめるかが普通だった。しかしこの世界では普通に喧嘩の道具で銃を持ち出し、弾が飛び交うようである。それも、この世界の住人達の身体が銃撃に耐えられるほどに頑丈だから、という理由だろう。

 

「伏せてください、ユウカ。それに、ホローポイント弾は違法指定されていません」

 

「うちの学校ではこれから違法になるの、傷跡が残るでしょ!!」

 

黒い翼の生えた巨乳の生徒と口論するユウカ。物騒な戦場との温度差がすごい。

 

「えーと…俺はこれどうすればいいんだ?」

 

「私達が守ります、あの建物の奪還は二の次です…先生は私達と違って、銃弾一発でも致命傷になってしまうので…」

 

眼鏡をかけた生徒が頼もしいことを言ってくれた。でも縢は何か心に引っ掛かる部分があった。

 

「そういうことです、先生は戦場に出ないでくださいね!」

 

「おそらく…先生には指揮を任せるのが適任かと…」

 

しかし、縢は手にドミネーターを握っていた。シビュラシステムが存在しない世界のため、無用の長物となってしまっている状態のはずだった。

 

「…そりゃ黙ってここに引っ込んでろって言うことだろ?」

 

「…へ?」

 

「もとより俺の役目は執行官だ、指示を出す監視官の役目にはまるっきり向いてねぇ…ましてや、思い出したくもねぇけど施設にぶち込まれてたせいで俺のオツムは残念なんだよ……こーゆー戦い以外ではなぁ!!」

 

すると縢は突然身をバリゲードから乗り出して銃弾の雨の中を疾走する。生徒達にはもはやただの自殺行為にしか見えなかった。

 

「ちょ、先生!?」

 

「戻ってください!死んじゃいますよ!!」

 

生徒達の声を無視し、縢は銃撃の中を軽やかな動きで回避しながら突き進んでいく。その様子にぎょっとした不良の生徒達は一瞬銃撃が鈍るが、それが勝敗を分かつ刹那の要因だった。

 

「もってけ!!」

 

「なん…あがっ!?」

 

縢は文鎮と化したドミネーターを全力で投擲し、見事一人の生徒の頭部に直撃させた。金属の塊でもあるドミネーターは、頑丈な人間だろうと喰らえば普通に気絶させられる程度には重かった。こんな鉄塊を握りながら銃撃戦の中を突っ込んでいくことは公安局刑事課の仕事ではよくあることだった。その感覚に慣れてたため、この世界での戦いにも順応できていた。

 

「ちょっと借りるぜ!」

 

目の前に転がったアサルトライフルを奪い取ると周囲にいる不良の頭部を一斉に撃って無力化する。続いて自分に対して銃撃が来るが、なんとか回避しつつ転がっているドミネーターを蹴っ飛ばして更に頭部に命中させる。

 

「ぐぇっ…!」

 

「ユウカちゃんチナツちゃん、そろそろ出番だぜ!」

 

「っ…はい!」

 

「いきます!!」

 

ここで号令をかけ、縢の後ろから二人の生徒達が銃撃戦に割り込んでいく。一人は太ももの主張が激しい早瀬ユウカ。もう一人は丸めの眼鏡をかけた火宮チナツ。二つの方向からの銃撃によって、敵側の崩された前線が一気に崩壊を始めた。

 

「なんだコイツ!?生身のくせにめちゃくちゃ強いぞ!?」

 

「狼狽えるな!はやく前線を…ぐはぁっ!?」

 

瞬く間に戦場が縢達によって支配されていく。最初のアクションがやはり前線崩壊の大きなトリガーだったのだろう。視線を先へと向けると、前線の奥にいた不良の軍団と戦車が見えた。

 

「クルセイダー1型…私の学園の制式戦車と同型です…!」

 

「不法に流通されたものね!PMCに流れたのが不良に渡ったのかも!」

 

流石に戦車のお出ましの対処は現状の縢にはできない。ドミネーターならデコンポーザーモードで戦車さえも一撃で完全に破壊できるが、ないものねだりしても仕方がない。しかし、ポケットを探るとニヤリと悪い笑顔を見せた。

 

「っと、あっちに戦車…ならハスミちゃん、あの戦車ぶっ放す前に砲身やってくれね?それとスズミちゃん、俺にそのスタングレネード寄越しな」

 

「あ…はい、わかりました。照準を定めます」

 

「はい…先生、外さないでくださいね」

 

黒い翼の生徒、羽川ハスミは持っている得物を構えて戦車の砲身に狙いを定める。そして銀髪の生徒、守月スズミからスタングレネードを貰った縢は、自分のポケットに手を忍ばせる。

 

「砲撃、来ます!」

 

「やれ!」

 

縢の指示でハスミが砲撃寸前の戦車を狙い撃つ。これによって砲撃が暴発し、戦車の動きが鈍った。その瞬間を縢は見逃さない。

 

「最後にこいつでも喰らっときな!」

 

ポケットから球状の物体を放り投げ、そのままドミネーターを回収しつつ前線から離れる縢。まだ不良の生徒が密集している場所に向かって投げられたそれは、公安局の電磁パルスグレネード。最後の任務だった大規模サイコハザードの鎮圧の際に公安局から支給された武装だった。これとスタングレネードの合わせ技により、閃光で行動を封じられたところに広範囲に高電圧を起爆させて残りの不良を全員気絶に追い込んだ上に、戦車を完全に停止させることに成功し、サンクトゥムタワーまでの道は切り拓けた。

 

「す…すごい、先生…でもなんであんな無茶なんかしたんですか!!」

 

ユウカが声を荒げる。自分達が守るはずの対象が勝手に動くのでは流石に納得ができなかった。

 

「執行官を舐められちゃ困るよ、俺にとってこういうの結構慣れっこなのよ?それに偉い人がよく言うでしょ、当たらなければどうということはないって」

 

軽い感じで返す縢。執行官になってからはこのような凶悪犯罪に対処する任務なんてザラにあった。過激派集団の対処なら、執行官時代に既に経験済みだった。

 

「そ、それなら大丈夫…ですけど…」

 

「ま、心配してくれてさんきゅ…」

 

軽く自己紹介を済ませると縢は立ち上がり、リンのホログラムが同時に起動する。

 

「どうやら制圧できたようで何よりです。ご苦労様でした」

 

「あいよ、でリンちゃんどうしたの」

 

『この騒ぎを巻き起こした生徒の正体が判明しました……ワカモ。百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱走した生徒です。似たような前科がいくつもある生徒なので、気を付けてください』

 

「相当やばそうっスねそれ…」

 

『それと、シャーレの部室の奪還完了。地下で合流しましょう』

 

「オーライ」

 

犯人の情報確保とシャーレの奪還が同時にできたことで、戦況はこちらに傾いた。リン曰く、タワーの地下に連邦生徒会の重要機密が存在するのだとか。それに縢は遠からず因果を感じていた。最後の自分の任務がまさにその状況と丸被りだったのだから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャーレ地下

 

 

 

暗闇の中で狐のお面を付けた生徒が何やら動いていた。

 

「あら…あらら?連邦生徒会の大事なものが隠されてると聞いたから壊そうと思ったのに……」

 

何やらじっくりと見つめているが中々よくわかっていないようだ。

 

「これでは壊そうにも…一体何なのかよくわかりませんね…?」

 

そんなとき、背後から急に声が響いた。

 

「よう、お嬢ちゃん」

 

「!?」

 

ネットリした声で背後から話しかける縢だった。びっくりして急に振り向いた彼女は一瞬警戒心を強めるも、すぐさま声が和らいでいく。というか間の抜けた声だった。

 

「…あら…あらら…」

 

「…?」

 

「……あららら…///」

 

どうやら縢の顔を見た瞬間、乙女のような反応を見せていた。それもそのはず、縢はかなりの美形。端整な顔立ちに若者らしいやんちゃさの残る髪型。それなりに鍛えられた若々しい肉体。そして耳が溶けるような声。第一印象で言えば全てが揃っていた。

 

「し…失礼いたしましたーー!!///」

 

「なっ…お、おい!」

 

恥ずかしくなったのか、その生徒は急に逃げ出してしまった。怪しさ満点だったが、縢はとりあえず本命のシャーレ奪還を達成したためそれ以上は追わないことにした。

 

「はぁ…なんなんだアレ」

 

「お待たせしました」

 

入れ替わるようにリンが地下室へと入ってくる。

 

「何かありましたか?」

 

「何でも。それで、リンちゃんもここに来たってことは…」

 

「はい、ここには連邦生徒会長が残したものが保管されています…」

 

先程の生徒が持っていた物体を確認し、リンが手に持つ。それは一見なんの変哲もないタブレットだった。

 

「…幸い、傷一つなく無事ですね。受け取ってください、どうぞ」

 

「お、おう…」

 

言われるがままに縢はそれを受け取った。

 

「これは連邦生徒会長が残したもの…『シッテムの箱』です。普通のタブレットに見えますが、正体不明のものになります。製造会社、OS、システム構造、動作の詳細など……」

 

「…なるほど、そんなもんをわざわざ俺に開けさせるわけ?」

 

縢は訝しげに問う。正体の分からないシステムによって自分が殺されたばかりだから疑心暗鬼にもなる。

 

「ですが、連邦生徒会長が言うには先生がこのシッテムの箱でタワーの制御権の回復ができると仰っていました。私達では起動できませんでしたが、おそらく先生なら…きっと」

 

「……失敗したら責任取れんの?」

 

「…ここまでの道のりを拓けたのは、先生の導きのおかげです。ですのできっと…先生なら」

 

「…そこまで信頼されちゃ…男が廃るな」

 

縢はタブレットの起動ボタンを押す。すると、自分の脳裏に再びある言葉が浮かびだす。

 

『……我々は望む、七つの嘆きを。』

 

『……我々は覚えている、ジェリコの古則を。』

 

画面には「システム接続パスワードをご入力ください。」との文言が書かれていた。そのまま縢は脳裏の言葉を入力した。

 

『システム起動しました。ユーザー認証…縢秀星先生。使用許諾確認、適正ユーザーです。』

 

パスワードは合っていたらしい。縢はそっと胸を撫でおろす。

 

『「シッテムの箱」へようこそ。生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します。』

 

シッテムの箱は続けて文章を羅列する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、彼の意識は飛ばされた。

 

地下室の暗い闇の空間から打って変わって、水色の空が広がる鮮やかな世界が広がっていた。しかしそれは半壊した校舎の建物から見えた景色だった。足元は水で満たされ、動くたびに波が発生する。木製の机と椅子が僅かに並べられ、残りは教室の外に山積みになり、壊れた壁から直接日光が差すという、幻想的であり退廃的でもあるよくわからない風景だった。

 

「…あれ、俺またどっかに飛ばされた…?また死んだの?」

 

「うーん…むにゃむにゃ……」

 

よく見ると、水色の髪の少女が机の上に突っ伏して寝ていた。見た感じかなり幼い。

 

「むにゃ……カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクのほうが……」

 

「…俺的にはカステラにはミルクティーのほうが合うと思うけどぉ?」

 

「…ふへへ…まだたくさん……あれ…ぇ…?」

 

縢の声でどうやら目が覚めたらしい。

 

「……ありゃりゃ……あれれ?ここって……?先生……?」

 

「…あ、どうやらまだ生きてるっぽいな俺」

 

先生という呼称で自分が死んだわけじゃないことを把握できた。それはそうと、目の前の少女はかなり慌てふためいている。

 

「え?まさか、この空間に来たってことは……か、縢先生……!?あ、あわわわ……!もうこんな時間!?」

 

「うん、もうお昼回ってるよ」

 

にこやかに返す縢。しかしその笑顔は彼女には含みのある恐ろし気な笑顔にしか見えなかった。多分声のせい。

 

「うわあああ…!一旦おちついてまず自己紹介から…!……私はアロナ!このシッテムの箱に常駐しているシステム管理者であり、OSであり、先生のことをアシストする秘書になります!」

 

深呼吸してからにこやかに自己紹介するアロナだった。

 

「やっと会うことができましたー!先生のことをずーっと待ってたんですよ!」

 

「へぇ、待っててくれてさんきゅ…居眠りしてたのはさておき」

 

「あ…あはは、確かにたまに居眠りすることもありますけど…」

 

苦笑しながらアロナはほっぺたを指先でぽりぽりする。自分の失態をいじられると来るものがあるらしい。

 

「まあ気にしてねーよ、俺もよくギノさんにガミガミ言われてたし…よろしくなアロナちゃん」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

元気な笑顔で握手する二人だった。

 

「まだ身体のバージョンが低い状態でして、特に声帯周りの調整が必要なのですが……これから先、頑張って色々な面で縢先生のことをサポートしていきますね!」

 

「いやいや、俺の聞き慣れた機械っぽい音声と比べりゃよっぽど人間っぽい声よ?だぁいじょうぶ」

 

普段からドミネーターの無機質な音声を聞いていた縢にとって、アロナの声はよっぽど温度を感じられるものだった。

 

「そうですか?えへへ、ありがとうございます……あ、そうだ!ではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います!」

 

「えーと…目を見せればいいヤツ?」

 

「網膜認証ではありませんが、えーと…少し恥ずかしいですけど、手続きなので仕方ないです……」

 

アロナは自分の指を縢に向けた。

 

「さあ、私のこの指に、先生の指を触れてください」

 

言われたとおりに縢は指を触れる。某超有名な宇宙人映画のそれとしか思えない手続きで、生体認証が始まった。

 

「ふふ、指切りで約束してるみたいでしょう?」

 

「いや、某超有名な宇宙人映画のそれじゃね?」

 

「むー!これで指紋情報を確認するんですよ!」

 

気にしてたことを言い当てられたのか、ほっぺを膨らませながらアロナが応える。かわいい。

 

しばらくして、微妙な表情を浮かべながらアロナが離れた。

 

「はい、確認終わりました!」

 

「…ちゃんとできてんのぉ?なんか表情微妙だったよ?」

 

「うっ…ま、まあ大丈夫です!」

 

このOSほんと大丈夫か、と縢は不安になった。

 

「俺の知ってる生体認証なんてデバイスを手に取った瞬間すぐ認識してくれるんだけどなぁ」

 

言わずもがなドミネーターのことである。

 

「そ、そんな未来の技術なんですか!?」

 

「実際ああいうタブレットとか古代の遺物みたいに見えたけどな、俺の知ってるデバイスとかスクリーンが空間に立体投影される腕時計型のやつだしさぁ」

 

ちょっとマウントを取りながら縢がドヤ顔を披露する。実際2100年代の技術と比べると悪い意味でかなり隔絶している。アロナにとってはかなり屈辱感を感じるものだった。

 

「も、もう!アロナだって頑張ればきっとそういう技術に追いつけますから!十分役に立ちますから!くすん…」

 

自らのアイデンティティが揺らいだことで泣き出してしまった。罪悪感があるので縢はとりあえず撫でてあげた。

 

 

 

 

 

 

 

一通り泣き止むまでに事情説明を受けたアロナは、泣き止むと事情を整理し始めた。

 

「連邦生徒会長が行方不明になって、そのせいでサンクトゥムタワーを制御する手段がなくなった……と」

 

「なんか知ってることとかない?」

 

「うーん…私はキヴォトスの情報の多くを知ってはいますが……連邦生徒会長についてはほとんど知りません。彼女がどうしていなくなったのかも……お役に立てず、すみません」

 

「はぁ…そう簡単には解決しないかぁ」

 

「ですが、サンクトゥムタワーの件については解決できそうです!」

 

笑顔で答えるアロナが頼もしそうに見えたのはこれが初めてだった。

 

「まじ?じゃあ頼まァ」

 

「はい!それではサンクトゥムタワーへのアクセス権の修復を行います!」

 

制御権がなくなり、電気が止まっていたサンクトゥムタワーに光が戻り始めた。自分達の立っている空間が明るくなった。

 

「サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了…サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました!今、サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります。今のキヴォトスは先生の支配下にあるも同然です!」

 

「え、めっちゃ早くね?さっきの指紋認証なんだったの!?すげぇじゃんアロナちゃん!」

 

褒めてるのか貶してるのかよくわかんない応答をする縢。一応目は輝いているため褒めてるらしい。

 

「じゃあ俺が神になったみてぇな感じか…潜在犯にそんな権限持たせちゃマズいっしょ~」

 

「それは普通にマズいですね」

 

冷静にツッコミを入れるアロナ。ふざけてた縢は一旦真剣な目になる。

 

「でもこんな権力握らされたとこで俺がやることなんてちっぽけなことになるしなぁ…リンちゃんにもガミガミ言われるだろうしよ」

 

「でしたら先生が承認さえしてくだされば、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管できます。でも……大丈夫ですか?」

 

「生憎、支配することに俺は向いてないしな、頼んだよアロナちゃん」

 

あっさり支配する権限を手放した縢は、アロナに残りの手続きを任せることにした。

 

「では、これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!」

 

その言葉を最後に、目の前の光景が変わっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

気付けば、明かりのついたタワーの地下の光景が目に映っていた。リンが目の前に立っている。

 

「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように、行政管理を進められます」

 

「あ、色々終わった感じ?お疲れリンちゃん」

 

「はい……本当にお疲れ様でした、先生。キヴォトスの混乱を防いでくださったこと、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします」

 

「いいっていいって…振り回されてたとはいえ、俺も色々悪かったしよ」

 

縢は堅苦しいのはあまり好きじゃない。そのため、リンの肩の力を抜こうと自分から謝る姿勢を見せた。リンはそれを見て少しほっこりした表情を見せた。

 

「それでは『シッテムの箱』は渡しましたし、私の役目は終わったようで……あ、もう一つありました。ついてきてください。連邦捜査部「シャーレ」をご紹介いたします」

 

「そいえば…元々の目的はそれだったもんな、あざーっす」

 

軽く返事をして、二人は地下室を出てエレベーターに乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

目的の階に到着すると、扉が待ち構えていた。「空室 近々始業予定」と書かれた紙がガラス張りに貼られ、その隣には紋章の書かれた金属の板が飾られていた。そこには

 

Independent Federal Investigation Club

S.C.H.A.L.E

 

と書かれていた。

 

「ここが、シャーレのメインロビーです。長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎えることになりましたね」

 

扉を開けると、青空が広がるガラス張りの対にあたる場所にPCの置かれたデスクが鎮座していた。モニターが複数用意されており、壁の方には資料やら箱やら、あとは銃火器が充実している。環境で言えば公安局刑事課にいた頃の少し閉鎖的な間取りよりも良物件に見えた。

 

「随分ご立派なこった…」

 

感嘆のセリフを零すほどに爽やかな空間らしい。

 

「ここで、先生のお仕事を始めると良いでしょう」

 

「仕事って?」

 

「…シャーレは、権限だけはありますが目標のない組織なので、特に何かをやらなきゃいけない……という強制力は存在しません。キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入りでき、所属に関係なく、先生が希望する生徒たちを部員として加入させることも可能です」

 

話を聞く限り、かなり柔軟に動ける組織らしい。公安局のように情報統制や捜査権限の一時的な譲渡・剥奪の行われていたような環境とはかなり違う。

 

「そいつぁ結構面白そうじゃねぇの」

 

「……面白いですよね。捜査部とは呼んでいますが、その部分に関しては、連邦生徒会長も特には触れていませんでした」

 

「…警察ドラマとかに憧れてたとか?」

 

「かもしれませんね、ですが…本人に聞いてみたくとも、連邦生徒会長は行方不明。私たちは彼女を探すのに全力を尽くしているため、キヴォトスのあちこちで起きる問題に対応できるほどの余力がありません……今も連邦生徒会に寄せられる様々な苦情…支援物資の要請、環境改善、落第生への特別授業、部の支援要請などなど……」

 

割と重い問題ばかり起こっているらしい。縢はリンの胃に穴が空いてないかの心配をし始めた。

 

「ですが…もしかしたら、時間が有り余っている『シャーレ』なら、この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね」

 

直後に、縢は自分の胃の心配をし始めるようになった。それどころか過度なストレスによって自分のサイコパスを心配するようにもなった。ドミネーターで犯罪係数を測ったら、脅威判定が更新されていても可笑しくない。

 

「おいおい、つまりそっちで対応してる厄介ごとをこっちに回すってこと?マジかよリンちゃん…やってらんn」

 

「その辺りに関する書類は、先生の机の上にたくさん置いておきました。気が向いたらお読みください。すべては、先生の自由ですので」

 

やってらんねぇよキャンセルが入り、縢はどっさりと置かれた書類を見て目を大きく開いた。

 

「嘘だろ…これまじかよ…」

 

「それではごゆっくり…必要な時はこちらからまたご連絡します」

 

「ゆっくりできるかー!」

 

縢の叫びが広い執務室に木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ。サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻したことを確認したわ」

 

「ワカモは自治区に逃げてしまったのですけど……すぐ捕まるでしょう。私たちはここまで。あとは担当者に任せます」

 

目の前の書類から逃げるように気分転換にタワーから出ると、ユウカとハスミが入口付近で話していた。

 

「お疲れさまでした、先生。先生の活躍はキヴォトス全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?」

 

ユウカがこちらに駆けよってくる。縢はもはや注目の的のようだ。

 

「おいおい、配属初日から有名人扱い?マジで言ってる?」

 

満更でもなさそうな感じだが、同時に仕事が津波のように押し寄せてくることを危惧していた。

 

「これでお別れですが、近いうちにぜひ、トリニティ総合学園に立ち寄ってください、先生」

 

「私も、風紀委員長に今日のことを報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃった時は、ぜひ訪ねてください」

 

「ミレニアムサイエンススクールに来てくだされば、またお会いできるかも?」

 

戦闘に参加した各々の生徒達がアピールを忘れない。割とちゃっかりしているのか。

 

「あいよ、覚えてたら行くから、覚えてたら」

 

縢ははぐらかすようにしながら解散するように告げる。しかしそんなとき、ハスミが足を止めた。

 

「そういえば…先生、先程自分は執行官だ、と仰っていましたが…先生がキヴォトスに来る前は何をされていたんですか?」

 

続けてスズミとユウカが振り返る。

 

「あ!それ私も気になってました!」

 

「施設に入れられて…とも言ってましたね?先生、キヴォトスの外ではどんな感じの生活をしてたんですか?」

 

質問攻めに遭ってしまう縢。あまり思い出したくないことや、説明すると複雑すぎることも結構含まれている。

 

「先生のこと、もっと知りたいです…!」

 

チナツにまでせがまれてしまった。

 

「あーもう……お前らさっさとお家にお帰りなさーい!」

 

頭をわしゃわしゃと搔きむしりながら、質問の波から逃げ出した縢だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、シャーレの自室にソファを置いた縢は夜空に浮かぶ星々を寝転がって見上げながら一人思案する。

 

なぜ自分がこの世界に来たのか。

 

なぜ連邦生徒会長は消えたのか。

 

自分の存在でこの世界はちゃんと動くのか。

 

不安要素は数多くあった。それでも、自分が選ばれたのにはきっと意味があるはず。

 

「…アンタが着いてきてくれるってんなら……俺もアンタのことを背負ってやるよ、アロナちゃん」

 

タブレットに軽く言葉をかけた。自分に着いてきてくれるパートナー。ある意味孤独でもあるこの世界で、掛け値なしに着いてきてくれる存在。それなら、自分も着いていくことを決意した。

 

こうして、透き通る世界に落ちた猟犬の物語が動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

──Prologue. All Alone With You. 完




15000字超えてた…プロローグながい( ᐡ. ̫ .ᐡ )

というわけでこれにて次回から対策委員会編です。
なんとか頑張ってちまちま書いていけたらな…と

そしてドミネーターが鈍器扱いという。しょうがないじゃんシビュラシステムが存在しないとまともに使えないんだもん(´•̥ω•̥`)

ちゃんと仕事するときは割と頼もしいんだけど免罪体質者相手だったり接続できてないと使えないポンコツなドミネーターちゃんほんとに……あと執行官ならあの銃撃戦もなんとなく制圧できると思ってるけど多分平気よね?

あとシャーレって先生にベレッタ92持たせてるし、銃関連のエピソードも盛り込んでいこうとは思ってます。

ではまた次回( ᐡ. ̫ .ᐡ )
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