PSYCHO-Archive 透き通る世界に落ちた猟犬 作:elimin
ただ読んでくれるだけで嬉しいよぉ(´•̥ω•̥`)
タイトル考えるの割とむずい…
章タイトルも洒落た感じのにしたいけど割とほんとむずーい…
PSYCHO-PASSのタイトルってすごくおしゃれだよね
書いてる途中にPCがなんか自動修復ループ入っちゃった…うにゃ( ᐡ. ̫ .ᐡ )
ではどうぞ〜
Case.02 乾いた嘆き
縢がシャーレの先生になってから既に1週間ほどが経過していた。
あれから奪還作戦の活躍がSNSで拡散されたことで、多くの生徒達がシャーレに様々な依頼を持ち込んできた。最初の3日のうちはなんとか仕事に慣れようと必死に動いていた。
しかし4日目から既に縢の仕事のペースは明らかに落ちていた。それどころか、その日を境に毎日のようにちょっと仕事をしては逃げるようにゼリービーンズのたんまり詰まったガラス製の大瓶を抱えてソファに寝転がっていた。
「仕事おわんねぇ…俺もうずっと寝ててぇ…」
蓋を開けてゼリービーンズをもちゃもちゃ食べながらぐったりしている縢。まるで宿題から逃避する休日の学生のような光景だった。
『先生、休憩ばかりされてますけど大丈夫ですか〜?まだこの書類を作るのが残ってますけど…』
「アロナちゃぁん…こういう大変な作業ばっかじゃ肩やっちゃうよぉ…」
ゼリービーンズの瓶と机の上に置いてある怪獣のフィギュアを抱きしめながら駄々っ子のような声を上げる。かなり堪える仕事ばかりらしい。公安局の方では報告書の作成は大抵凶悪犯の逮捕及び排除の内容がほとんどだった。しかしここでの仕事は本当に多種多様で、猟犬としての仕事しか知らない彼にとっては苦労が絶えない。専門外の知識が必要な仕事とかは書類を作るだけでもかなりの体力と精神力を使っていた。
「一生ゼリービーンズだけ食っていたい…」モチャモチャ
『もう、子供じゃないんですから…あ、そういえばお手紙が届いてるみたいですよ?』
「…そーいえば……コイツの名前どーしよね」
縢は専用カスタムを施す予定の拳銃を眺めながらアロナの声を聞き流していた。
『もう、先生聞いてるんですか!』
「え、聞いてるけど…手紙あるんなら読んでくんね?」
『えっと…はい、読み上げますね!』
その文面はこうなっていた。
【連邦捜査部の先生へ
こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。
今回、どうしても先生にお願いしたいことがあり、このような形でお手紙を差し上げました。単刀直入に申し上げますと、私たちの学校は現在、地域の暴力組織に追い詰められています。私たちの校舎が狙われているのです。
今は何とか持ちこたえていますが、弾薬や補給物資が尽きかけています。このままでは学校を占拠されてしまうかもしれません。先生、どうか私たちの力になっていただけませんか?】
『だ、そうですけど…アビドス自治区は昔は非常に大きな規模を誇っていた場所です。ですけど異常気象で砂漠化が進んでしまい、現在は過疎化が問題となってるそうです』
「へぇ…で、具体的に俺にやってほしいのはどーゆー…暴力組織ブッ潰せばいいの?」
『ブッ潰せばいいのでしょうか…?でも、かなり広い範囲なので遭難してしまう噂を聞きますね…先生、この依頼どうしますか?』
遭難すると聞くと死の危険を感じた。縢は現実逃避するようにもちゃもちゃとゼリービーンズを食べながら銃の名前を考えていた。
「うーん…もちゃもちゃ……いい名前なぁ…」
『もう!銃の名前はあとで考えてください!なんですか!仕事から逃げるようにカスタムパーツいっぱい購入しちゃって!』
「俺手先結構器用なのよ?いいじゃんこれくらい〜」
『よくないです!お仕事どうするつもりなんですか!』
アロナがタブレットの中でぷんすか怒ってる。かわいい。
「あー…はいはい……でも…とりあえずこれ、引き受けないとちょっとヤバそうな予感がするってゆーか…」モチャモチャ
縢はよっこらせ、とソファから起き上がってゼリービーンズを食べながら銃のカスタムパーツを机に並べる。
『じゃあ、この依頼正式に受ける感じでいいですかね?』
「そーゆーことで頼むよ、明日から出発ってことでぇ……あ、カスタムパーツ届いてる…これで全部揃ったな」モチャモチャ
銃の分解をしながら塗装用のエアブラシと金属塗料を色々机に並べる縢。眼鏡をかけながら縢は銃のカスタムを始めた。
ちなみに縢が仕入れた銃はベレッタM93RとキャリコM950A。
前者は三点バーストが可能な対テロリスト用の特殊部隊の要望で作られたマシンピストルで、縢がこれを選んだのは某有名なサイボーグ警察映画の銃のモデルだからというところがあった。
後者は最大100発もの弾丸を発射することができるという圧倒的な装弾数とそれに見合わない携行性の高さから選んだ一丁であるが、残り弾数によって重心が変化する点や複雑な機構からかなり人を選ぶピーキーな性能である。こちらは分かる人には分かるが脚本家繋がりの某伝奇作品に登場した銃だったりする。ちなみにマガジンは今回は装弾数50発のものを選んでいる。
これを生徒達が自分好みのアクセサリーを着けたり、イメージカラーに塗装しているように、縢も自分のイメージカラーに塗装しながら自分好みの一丁を生み出そうとしていた。その姿はまるで子供のようだった。ただ、あくまでもドミネーターが再度使用可能になるまでの繋ぎ、及びドミネーターが使用不可能になった際の緊急用フェイルセーフとしての武装に過ぎない。
『まあ…明日から実際に現地に赴くための念入りな準備と思えば…いいんですかね?』
熱中する様子を見ながらアロナがため息混じりに呟いた。気付けば既に夕暮れの空がシャーレのオフィスの窓に映っていた。
『おはようございます、先生!朝ですよ!』
「むにゃむにゃ…ふぁ……アロナちゃぁん…早起きだねぇ」
眠そうな声で目覚ましに応じる。アビドスまでの道はシャーレからかなり遠い位置にあるため、朝日が地平線にあるくらいの時間に起こすように昨日あらかじめアロナに頼んでいた。
「よっし…んじゃ行くとするかぁ…」
カスタムを終えてそのままソファでぐったりしてた縢は朝日を浴びながら起き上がり、経口栄養食を口に加えつつ荷物をまとめてシャーレを出る。荷物にはカスタム済みの銃2丁とホルスターにドミネーター、財布、数日の食料(主にゼリービーンズ)、水、ゲーミングノートPCとシッテムの箱が入っている。
シャーレのビルのガレージには、自身の髪色と同じカラーのバイクが置かれていた。これは連邦生徒会に頼んで仕入れてもらったバイクで、車種は征陸のとっつぁんのセーフハウスに保管されていたKTM・1190RC8と全く同じである。カラーリングまで同じなのは偶然と考えていいかもしれない。
バイクを走らせながらアロナのナビの指示に従い、アビドスへと縢は順調に向かっていった。
はずだった。
「どこだよここぉぉぉ!!」
周囲のほとんどが砂漠と化している大地の中心で嘆きを叫んでいる縢だった。アロナのナビはあくまでも砂漠化以前のアビドスのデータだったため、今のアビドスの地理では役立たずも同然だった。
「まじで砂に車輪は取られるわ、バッテリーは暑さでオーバーヒート寸前だわ、道に迷うわでもう散々……帰りてぇよ俺…」
ぐったりと砂の上に倒れそうになる。持ってきた水分を全て消費してしまったのも相まって脱水症状寸前にまで追い込まれている。
『先生、バイタリティがまずいです!砂漠と化しているこの地域のど真ん中に先生の墓が立っちゃいます!』
リュックの中からアロナの声が聞こえる。危険が迫ると勝手に起動してくれるらしい。
「あ…俺もう……干からび…」
『先生ーーー!!』
炎天下のなか気を失いかけていた。身を焦がし尽くすような陽光に全てが蒸発していく。
しかし、そんな熱が引いていく。甲高いブレーキの音とともに消えかかっていた意識が再び覚醒する。目を開けると自分が人の影に覆われて熱が引いていることに気づいた。
「…ん、こんなところに人」
「…あれ……俺…まだいきてる…?」
どこか落ち着いた少女の声が聞こえたことで自分がまだ死んでいないことを察した縢は、顔を上げて下から人影の正体を見つめる。青い学生服を着て灰色の髪をした、蒼い瞳の無表情な少女。さっきのブレーキ音は彼女の乗っているロードバイクのものだった。そして肩からはバッグと白いアサルトライフルを下げていた。この光景が、縢にとってのアビドスでの生徒とのファーストコンタクトだった。
「…あのぅ……俺今水飲み尽くしちゃってて…その…みずほしぃ…」
「ん、私のでよければ…」
「みずぅぅぅ!!!」
掠れた声で水を求めると、目の前の少女は水筒を取り出した。それをひったくるかのような物凄い勢いで分捕り、縢は有無を言わさず水を一気に飲んでいく。生にしがみつくように。藁にも縋るように。その様子を目の前の少女は啞然としながら見つめていた。
「ぷはぁっ…あ゛〜〜生き返った…まさか二度目の臨死体験するたぁ思わなかったぜ…ってかこれエナドリかぁ!たすかる〜!!」
「…ん、えと…それ、私の飲みかけ…//」
ちょっと顔を赤らめながら視線を逸らす少女。絶好調に戻りテンションが上がっている縢とはかなり対照的に見えていた。
「いやはや、マジで助かった!命の恩人!女神様だよ!」
調子のいいことを言いまくる縢。少女は満更でもなさそうに、青いマフラーで口元を覆い隠す。
「…ん、それならよかった…ところで、あなたは何をしにここへ来たの…?」
「あぁ…そういえばそうだったな、お嬢ちゃんがわかるかは知らねぇけど…アビドス高等学校に用があってよ、でもナビのデータが古いせいか全然目的地に着かなくて参ってるとこ、この単車のバッテリーも暑さでバテる寸前だ」
砂の上に横倒しになっているバイクを起こしながら事情を説明した。すると少女は頭に生えている獣耳をぴくんっとさせながら応じた
「ん、アビドスなら私の通っている学校だけど」
「…え、まじ!?」
「ん、着いてきて」
そのままロードバイクに跨る少女。バイクを手押ししながら彼女を後ろを縢が着いていく形となった。
アビドス高等学校・廃校対策委員会室
砂の色が少し移っている寂れた雰囲気の校舎へと辿り着き、一室の扉を開けた。中には3人の少女が既にいた。
「ん、ここだよ」
「やーっと目的地に着いた…」
唐突に大人の男性が少女達のいる空間に入ってきたわけだから驚かないはずがない。全員目をかっぴらいて声を上げていた。
「し、シロコちゃんが男性を連れてきてる!?」
「誘拐!?人質!?シロコ先輩がこんな犯罪するなんて!?」
「証拠隠滅しないと!早くバラバラに…」
「うるっせーよ!アンタらも例外なく物騒だなおい!」
流石に声を上げざるを得ない。
「違う。この人はお客さん。うちの学校に用があるって言ってた」
「え…そ、そうだったんですか」
「お客さんだなんて…すごく久しぶりですね」
「そ、それならそうと早く言いなさいよ…!」
三者三様の反応はあれど、シロコと呼ばれた少女の弁護によって縢は身の危険から脱出できた。
「えー、はい…こほん。連邦捜査部シャーレから来ました、縢秀星でーっす。お宅のとこが暴力組織かなんかに手を焼いてるって聞いたんでその組織ブッ潰しに遥々やってきましたー」
簡単に気の抜けたゆるゆるな声で自己紹介を済ませる。すると、少し疑いの含まれた視線を向けていた少女達の目が変わった。
「シャーレって…もしかして、先生!?」
「やった!これで補給が受けられる!私達助かるのよ!」
「支援要請をずっと送り続けたかいがありました!」
3人が身を寄せ合って喜んでいる。
「先生が来たこと、ホシノ先輩にも伝えてくる!」
猫耳ツインテールの少女が教室から出ていき、もう一人の生徒を呼びに行く。
「ん、先生…みんなのこと紹介するね。今出ていったのが黒見セリカ」
割と溌剌とした印象のセリカの声がもう一人の生徒を呼ぶ声が空っぽの校舎に響いていた。
「私はアビドス高等学校1年、奥空アヤネです!セリカちゃんと同級生です!」
タブレットを胸元で抱えながら、アヤネが縢と握手を交わす。
「2年生の十六夜ノノミです☆これからよろしくお願いしますね、先生♪」
ノノミはふわっとした感じの笑顔で縢の手を握った。
「ん、そして私は2年生の砂狼シロコ。一番最初に先生と会っているね…別に、マウントとってるわけじゃない…」
マフラーで口元を隠しながらどう考えても意識してるような素振りを見せるシロコだった。
「そしてもう一人が、3年生の…」
その言葉と共にドアが開く音がした。今までの生徒よりはるかに小さい外見だが、どうやら一番年上らしい。眠そうな声で少女は応じた。
「うへ〜、おじさん眠いよ〜…あ…小鳥遊ホシノだよ、よろしくねぇ…」
「おうよ、縢秀星だ。こちらこそよろしく頼むよ」
しゃがみ込んで縢はホシノに目線を合わせる。小さな手のひらを握って握手をした。
「さてと、まず俺が把握しないといけないのはそっちの状態っつーか…何に困ってるのかっつー取り調べみたいな感じッスね〜…確か暴力組織に困ってるからブッ潰してほしい、みたいな?」
「そ、そんな乱暴なこと書いてませんって…!ですが、はい…困ってるのは事実です…物資の少ないアビドスでは籠城戦になると…それに、今アビドスは膨大な借金を抱えてて…」
アヤネが詳しいアビドスの現状を説明する。
「借金?それっていくらあんの?」
「ん、ざっと9億」
「9億!?んな大金の返済って君達でできるの…?」
素っ頓狂な声を上げて5人を見つめる縢。億単位の金額を高校生に背負わせているこの現実にドン引きしていた。
「正確には、962,350,000です…」
「なぁ…それ裏でなんか動いてね…?大丈夫なの?そんな背負って」
「ん、私が入学したときから…ずっとこうだった」
「……一つ聞かせてくれ、んな借金背負ってまで…なんでこの学校を守りたいって思ってるんだ?」
縢は率直かつ本質的な疑問を対策委員会にぶつける。その目は普段のおちゃらけてる目とは違い、鋭さを見せていた。
「な…なんでって…」
「だって人もいない、周りは砂漠で立地も悪い…おまけに9億の借金…学校ならいくらでも他にあるだろうに、借金踏み倒してここからトンズラしないのが不思議でよ」
思ったことをズバッと言い放つ縢。確かに現状を端的に纏めるとこの学校を見捨てる方がいいのかもしれない。生徒達にぶつけられた疑問は非情だったが、縢がどうしても知っておきたいことだった。
しかし部屋の雰囲気が変わった瞬間、急に銃声と衝撃が重い空気を裂くように響く。校庭の方から声が聞こえた。
「アビドス高校の諸君!今日こそこの学校を占拠させてもらうぜ!」
「銃声…!?」
縢は壁の柱に身を隠し、銃撃戦の際の体勢を取る。
「弾薬がもう尽きかけているのに…!」
「うへぇ…昼寝もさせてもらえないじゃないかぁ」
「先生はここに隠れててください…!」
「カタカタヘルメット団…しつっこいわねもう!」
「ん、みんな…いくよ」
アヤネがサポートのためにタブレットと通信機器を取り出すと、ホシノはショットガンと防盾を、ノノミはミニガンを、セリカとシロコはアサルトライフルを構えてそのまま窓から飛び降りて校庭に立つ。
「なんじゃありゃ…この世界のチンピラ共ってほんと物騒じゃねぇの」
全員がヘルメットを被った謎のチンピラ相手に戦闘に突入したのを確認すると、縢は窓の外を柱の影に隠れながら持ってきた武器を手にしていた。
「メールに書かれてた暴力組織ってあのチンピラか…はぁーあ、めっちゃ癪だけどドミネーターさえ使えればいいんだけどなぁ…」
正直手にしている銃器にカスタムを施したとはいえ、ドミネーターが使える状態じゃないと心許ない装備にはなる。しかし、一呼吸置くと目付きが非常に鋭い「猟犬」のものに変わった。
「アヤネちゃん、通信機器ってまだある?」
「あ、はい…一応、予備の分が」
「さんきゅ…んじゃ、俺いくわ」
縢は耳に通信機器を取りつけるとそのまま立ち上がり、外へと向かう。
「え、行くってどこに…せ、先生!?」
戦闘では人数の不利と弾薬の制限が足枷となり、また連携が取れていないことも相まって、対策委員会はヘルメット団相手に苦戦していた。
「オラオラどうした!?いつもみたいに突っ込んでこいよ!あ、弾薬がねぇんだっけ?アッハハハハハ!!」
ヘルメット団の攻撃は潤沢な人数と弾薬によって非常に苛烈なものになっていた。
「くっ…こんな奴らなんかに…!」
セリカはバリゲードから身を出そうとするも、銃撃がそれを阻む。なかなか攻勢に出られない対策委員会の面々。しかし急に彼女達の後ろから3発の乾いた銃声が響き、その弾丸は彼女達を素通りし、そのままヘルメット団の一人の頭部に3発直撃する。
「ぎゃっ!?」
「あ、結構いい感じに当たってるじゃねーの」
「入口のほうに人影が…!?誰だテメェ!!」
言わずもがな拳銃を構えた縢の姿だった。その姿に驚いた対策委員会とヘルメット団は一度銃撃を止める。その静寂のなか、縢は対策委員会に疑問を投げかける。
「なぁみんな、この学校ってもう立て直すの難しいかもしれねぇってハッキリ分かってんだろ?さっきも言ったけどトンズラしたほうが楽だとは思ってんだ」
「っ…アンタねぇ!」
「それでも」
「っ…!」
「それでもここを何故守ろうとしてるんだ?俺はただ、それが知りたいだけなんだ」
先生として、はっきりとさせておきたい本質的な問いを投げかけた。その答えをシロコが静かな声で、しかし力強く綴っていく。
「ん、簡単な話……ここが、私達の居場所だから」
その言葉が縢の脳内にある光景を想起させた。居場所のなかった潜在犯の自分を受け入れてくれた一係の日常。3年間という短い時間ではあったが、それでも5歳から施設で隔離され続けていた縢にとってかけがえの無い彩りのある居場所だった。彼女達もそんな自分に近いものを抱えていると知った縢は不敵に微笑むと、通信越しに自分の声を対策委員会全員に届けた。
「オーライ、その依頼…承ったぜ」
目を一旦閉じてそのままゆっくりと開くと、先程までの優しさの残った目付きとは打って変わって明確に殺意の宿った目付きへと変わっていた。不敵に微笑を浮かべた顔に影がかかる。その視線はヘルメット団の構成員達の背筋を一瞬凍てつかせるような、人間を何人も殺してきた「猟犬」の目だった。
幾度となく人間を殺し、社会から存在ごと排除していく役目を背負っていた「猟犬」の瞳。キヴォトス人は銃撃で死ぬことはないが、裏を返せばこの世界の少女達は人を殺したことがない、ということ。銃弾で容易に死ぬ世界で生きてきたとはいえ、縢は明確に人を殺してきた。その意識の有無は、銃弾くらいで死ぬことのない身体に生まれたことにより殺意の鈍い少女達の背筋を凍らせるのに十分だった。
「さぁて……狩りの時間だ───ッ!!」
「っ!?こいつはやばい…!撃て!!」
容赦なく銃弾が放たれるものの、開けた視界の中を駆け抜けていくことは猟犬の十八番だった。銃撃を避けながら拳銃を構え、三点バーストの射撃を的確に当てていく身のこなし。戦闘慣れしている姿に対策委員会の少女達は目を奪われていた。
「す、すごいね先生…」
「ヘルメット団が次々に倒れていく…!」
「なんなんだこいつは!?」
次々に団員が倒れていくが、未だに止まない銃撃が縢に集中している。縢の狙いはそこにあった。
「出番だぜ、委員会の嬢ちゃん達!」
「ん、ヘルメット団を殲滅する」
縢の合図でまずはシロコが縢に集中しているヘルメット団をアサルトライフルで的確に攻撃して前線を崩しに行く。後方の団員が入れ替わるように出てくるが、その試みも次の一手で砕かれた。
「もう許しません!」
「痛い目に遭いますよ〜☆」
アヤネの指示でドローンがロケット砲を地上に向けて発射し、煙幕が形成されて視界と行動が封じられる。その隙にノノミがミニガンを構えると面制圧が始まり、後方の部隊も一掃されていく。止むなく物陰に身を隠し、反撃の機会を伺っていたが、次の瞬間隠れても無駄だということを思い知らされる。
「たっぷりお返しするわよ!」
高所に移動したセリカがアサルトライフルのセミオートで狙撃し、物陰に隠れる手段も封じる。視界を封じられ、防御手段も容赦なく砕かれる中、煙幕の中を猟犬が駆けていく。容赦なく差し迫る殺意の塊を前に成すすべもなく倒れていく。しかし、いくら命のやり取りを繰り返したといえど、銃撃は苛烈なものだった。一発の銃声が縢を捉えていた。
「詰めが甘いよ〜」
しかしホシノの声と共に銃声は鈍い金属音によってかき消される。銃撃を防盾で受け止め、攻撃の隙ができた瞬間を逃さずにショットガンで反撃する。
「そぉらもってけ!」
一気に劣勢と化したヘルメット団をサブマシンガンで追撃し、それまでアビドス高校を追い込んでいた彼女達は追い込まれる立場へと落ちた。
「な…なんなんだよ…!お前、キヴォトスの人間じゃないのに、なんでこんな強いんだよ…!」
受け入れがたい光景から恐怖の声を漏らす団員の目の前に、拳銃を構えて影の含まれた瞳で見下ろす縢が立つ。
「俺はただのシャーレの先生…んま、過去には『猟犬』をやってただけだ」
「りょ…猟犬!?」
「必要とあらばこの場で始末してあげてもいいんだけど、どうする?」
そのままドミネーターを握り、蒼く光る銃口を向ける。使用不可能な以上ハッタリにしかならないが、現にこの銃は幾度となく人を葬ってきた事実に変わりはない。底知れなさと、実際に人を殺してきた事実から、美しい蒼い光は血塗られているように、団員の目に映っていた。
「ひっ…退け!退け〜!い、今にみてろ!覚えてろよ〜!!」
捨て台詞を叫びながら砂煙の中を駆けて敷地の外へと逃げていった。
「はぁ…やれやれ、弱い犬ほどよく吼えるってこういうことだな」
殺気を抑えるとドミネーターをしまい、髪の毛を手のひらでさらっと触り砂粒を払いながら建物の中に戻っていく縢。
「やった!私達、勝ったんですよ!」
「先生強いね〜…おじさんびっくりだよ」
「はは、みんなのお陰で俺も死なずに済んだし、ありがと」
「ん、先生がきっかけを作ってくれたから、MVPは先生」
「すごい動きでしたね〜…先生の過去が気になります♪」
「っ…ふん…なかなかやるじゃない…」
戦いの後の余韻を少し狭い教室の中で感じながら、談笑に花を咲かせる6人。勝利の美酒として、全員で缶ジュースを乾杯して一息ついていた。一本飲み終えると、シロコが縢の方を向いて質問する。
「先生は…どうしてあんなに戦い慣れているの?」
「え、まあ…先生の仕事を始める前にちょっとした仕事に関わってて…つまんねー話だからまた今度話すさ、はは」
「……」ムスー
ぼかすような答え方をした縢のことを、セリカが何やら不満そうな目で見つめていた。しかし縢はそれに気付かず、ただ談笑を楽しんでいた。
「とりあえずシャーレに諸々の備品は申請出しとくから安心しとけよ、弾薬なんていくらでも出せっから!」
「あ、ありがとうございます!すごく助かります!」
「ふふ、これでいくらでも撃てますね☆」
縢は調子良く、気前良く生徒達と談笑していた。まるで先程の自分の過去のことを忘れさせるかのように。
しかし、そんなときホシノが縢の背後に立ち、背中を指でつつく。
「先生〜、この銃はなに?」
「ん?あぁ、やべ…ドミネーター外れそうになってた」
ホルスターから落ちそうになっていたドミネーターを握ると、分割されていた部品の隙間から蒼い光が漏れ出す。
「光る銃?すごくかっこいいね〜」
「ん、ドミネーターっていってた…先生、なんでそれを使わなかったの?」
「まあ、諸事情で使い物にならねぇ状態なんだよなこれ……癪に障るが、修理できたらこっちも楽に片付けられて助かるんだが…」
軽くため息をつきながらホルスターに戻す。するとそんなときにホシノが挙手する。
「はーい、そんな楽に片付ける方法を、今おじさんが考えてみました〜」
「え、あのホシノ先輩が…!?」
「うそ…!?」
意外な反応を見せた対策委員会の面々に、流石にため息をつくホシノ。
「いやぁ〜…流石にその反応はおじさんも傷ついちゃうなぁ…やる時はやるのさ」
一息あくびを挟んでから、作戦を伝えるホシノ。
「ヘルメット団の連中は、数日もすればまた襲撃してくるはず。だから、アイツらが疲弊してるこのタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃してやろうかなって」
「たしかに…物資はシャーレから今送られてますし、これならきっと…!」
「つまり補給させる間も与えずブッ潰しにいくと…ホシノちゃん割とワイルドなこと考えるねぇ」
「先生も賛同してるみたいですし…このまま物資が届いたら、アジトを強襲しにいきましょう☆」
その後、シャーレから届いた必要な物資を手に、縢率いる対策委員会の強襲作戦が発動した。
「やばい!敵襲だぁぁ!!今すぐ応援をよb
「悪い子はみーんなお片付けしますよ〜☆」
「ん、ヘルメット団を始末する」
「観念しなさい!」
「うへ〜、じゃあね」
「おやおや…悪い子だぁ」
「これで全員始末しました!」
容赦なくアジトを次々と潰され、ヘルメット団の保有していた物資は縢のアイデアで身ぐるみ剥がされて全て奪われた。最後には全て爆発オチで沈められた。
「うわあああああ!!やめろぉぉぉぉ!!!」
ヘルメット団の断末魔が砂漠の乾いた風に乗って響いたのは言うまでもない。
「ん、それじゃ…また明日、だね」
「先生、お疲れ様です♪」
翌日に向けて生徒達は下校し、縢も備品を整理した後に学校を後にした。
その帰路にて──
「先生、すごく頼りになると思いませんか?」
「ん、わかる。先生がいると頼もしい…」
「うへ〜、おじさんの仕事がいくらか減って楽になるよ〜」
「支援も約束してくれましたし…ふふ」
生徒達は縢の話題に花を咲かせていた。そんな中、セリカだけずっと押し黙っていた。
(なによ、みんな先生先生って…出会ったばかりの大人に絆されちゃって…)
そして縢は夜空を見上げて一人呟く。
「…俺元々潜在犯だけど、これじゃもうガチの犯罪者になっちゃってね…?」
ちょっと震えながら不安になっていた。まあ確かに妥当ではある。
「リンちゃん…頼むから解雇だけはやめてくれよ…」
縢は星に祈った。
連邦生徒会にて
「クシュン…!……誰がリンちゃんですか」
切実にWindows11の自動修復ループつらい…修理だした…(´•̥ω•̥`)
どれくらいまで描くかで毎度かなり悩むなぁ…( ᐡ. ̫ .ᐡ )
縢の携行する武器としては元々ベレッタM93Rは持たせようと思ってました。AIに聞いたらその答えが帰ってきたのと、元々似合うだろうなぁってなんとなく思ってたからです。ふふ。
あと脚本家繋がりということでキャリコも…なるべく生徒達の持ってる武器とは被らせたくなかったし。魔術師殺しみたいに投げ捨てたりしません。たぶん( ᐡ. ̫ .ᐡ )
バイクの車種は狡噛のバイクって検索したらすぐ出てきたのでそっくりそのまま採用しました( ᐡ. ̫ .ᐡ )
さて次回は戦闘から始まります、と書こうとしたけど待たせすぎたので戦闘まで全部いれました…ごめん……ごめんこんなに待たせちゃって