洋南大学にて。   作:御沢

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洋南大学 ガイダンス

静岡県上富士市―――洋南大学。

 

 

私―――相良香咲と荒北靖友が箱学を卒業してこの大学に入って、金城真護と待宮栄吉と再会して、2度目の春がやってきた。

いつの間にか二回生になっててびっくり。高校時代も思ったけど、年をとれば取るほど月日が流れるのは早いよね。

月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり、とは芭蕉さんも上手く言ったものだよね。

 

“文学部の相良”といえば、学部内でもちょっとした有名人…らしい。まったくもって不本意な理由だけど。

理由は工学部の荒北と待宮、理学部の金城と大体一緒にいるから。女子の友達も多い方ではないけどいるけど、気心知れた仲間と一緒にいるほうが気が楽というか何というかね。

なんだかんだで3人はルックスもいいほうだし、有名人になるのはしょうがないのかもしれないけどさ。全くもって不本意だよね。

 

 

我が文学部には何故か有名人が多い。芸能人って意味じゃなくて、それなりに顔が知られてる人って意味だけどさ。

 

「香咲ちゃん、これからどうするの?」

同じ講義を受けていた友達がやってくる。めちゃくちゃいい子なんだよね、この子たち。

右側の子はめちゃくちゃ美人で。ポニーテールにされた黒髪が揺れるのとか、うなじとか、口元のホクロとかがエロいし、優しいし優しいし!

左側の子もめちゃくちゃ美人で。かなり長いわずかに茶色のかかった髪はCM出れるんじゃないかなってくらい綺麗だし、ものすごく面倒見いいしいいし!

「んー…靖友たちと待ち合わせしてるんだけど、工学部と理学部はまだ授業あるっぽいんだよね」

「なら、私たちと一緒に行く?授業が終わるまででいいから」

…こういうところですよ。なんていい子なんだろうね、この清水潔子ちゃんと藤原貴子ちゃんって子はさ!

「なら、お言葉に甘えようかな…?」

なんて笑いかけるのとほぼ同時に、私の頭に手が置かれるのに気づく。

 

「ダーメ。相良は俺と純待つから。どうせ純も荒北も待宮も学部一緒だしね。ってことで、マネージャー…じゃなくて、藤原と清水には悪いけど、借りてくよ」

 

 

―――文学部有名人その1。

身長は潔子ちゃん(約166センチ)より低くて、貴子ちゃん(約163センチ)よりは若干低い、私(約161センチ)より若干高いくらいで、かわいらしい見た目をしている。例えばピンク色の髪の毛とかね。

でも、性格は男前…とはちょっと違うけど、まあ可愛らしいものじゃない。ドSっていうのかな。

貴子ちゃんと同じ高校で、同じ部活だったらしい彼は、小湊亮介くん。実家は神奈川ってのも偶然。陽光中学校って、隣町の中学校だし、もしかしたらどこかですれ違ってたりするのかもしれないけど。

 

「小湊くーん、勝手に決めないでもらえますー?」

「じゃあ嫌なの?このままじゃボッチだよ?」

「ボッチにした原因は君でしょ、小湊くんや…」

結局小湊くんのうまい口車に乗せられて、潔子ちゃんと貴子ちゃんはヒラヒラ手を振りながら講義室から出て行ってしまって…私はこのピンク頭と一緒に待たなきゃいけないのか!

去年の今頃、たまたま隣に座ったのが縁で話すようになったけど、まさかこんなにSだなんて!私はMじゃないもんね!

 

 

相変わらずからかうことにしか能のない小湊くんと一緒に講義室を出ようとしたとき、後ろから声がした。

「香咲ちゃーんっ、亮ちゃーんっ!」

大きく手を振りながらやってくる長身のイケメンに、小湊くんがあからさまに顔をしかめる。

「うるさいのが来た…」

「疫病神度でいえば小湊くんの方が上だけどね」

「ん?何か言った?」

どす黒い笑みを向ける小湊くんに、なんでもないですと冷や汗をかきながら言葉を返す。私だって、命は惜しいもんね!引きつった笑みを浮かべて、後ろからやってくる彼に手を振る。

 

 

―――文学部有名人その2。

184.3センチの高身長に小湊くんの目元がわずかにきびしくなる―――もっとも、私には違いがわからないんだけどね。靖友たちと同じ工学部で小湊くんの高校時代からの友達でチームメイト、今の彼の待ち人の伊佐敷純くんならわかるみたい。貴子ちゃんも微妙に分かるって言ってたかも―――そんな彼は、及川徹くん。甘いマスクが女子にも教授にもモテモテ。

 

実は、かつて練習試合をしてから仲良くなり、高校時代からつながりがあったりするんだよね。

大学が一緒になったのはびっくりだったっけ。ちなみに彼の幼馴染の岩ちゃんこと岩泉一くんは明早大学の教育学部だとか。体育の教師目指してるんだって。

そうそう、2人と一緒にいたマネージャーの溝口六花も名門・明早大学なんだって。明早大―――そう、福富と新開の行った大学。そこの法学部だってさ。

私だって、親の敷いたレールの上を行くんだったら、そこの法学部に行く予定だったんだよね、実は。姉さんも兄さんもそこだったし。姉さんなんてミス明早だったしね。

 

 

「香咲ちゃん、俺も一緒でもいいー?岩ちゃんに電話しようにも、まだ向こうの教育学部は授業中なんだよねー」

…何度も思うけど、私たちの前に立って欲しくないよね、この人。160センチちょっとの私と小湊くんには結構なダメージだよ、本当にね。

あとさ、なんで明早の教育学部のスケジュール、頭に入ってるんだろ?怖いから聞かないけどさ、うん。

…どこかの旅館の嫡男の東堂さんを思い出すよね、自分イケメンと思ってるところとか、自分の大好きな人のスケジュールが頭に入ってるところとかさ!

 

まあ、そんなこと言えないし聞けないから、オッケー出すんだけどさ!

「いいよー!…いいよね、小湊くん?」

「…まあいいんじゃない?いぢめる人数は多いほうがいいしね」

「はい出た!亮ちゃんのいぢめ!」

無意識にからかう…っていうか、わざと天然を時々出してくる策士な及川くんと、オールウェイズわざとの無自覚を装ったドSの小湊くんって合わないのかな、って密かに思ったり。なんちゃって。

 

 

私、小湊くん、及川くんという有名人3人は、校内で一緒にいると結構目立つ。

なんの偶然か今日のファッションは全員ベストという嬉しくない偶然について話をしていれば、見覚えのある影発見。

 

カフェスペースで何かを飲んでいる2人組は、方や銀髪、方やメガネという2人組。そして2人ともイケメンと噂されている、そんな後輩。

「黒田と御幸じゃん、あれ。法学部コンビンの」

―――遠巻きに女子がうっとり見つめてる2人は、黒田雪成と御幸一也。

御幸は去年、スポーツニュースでたくさん見たから知ってたんだよね。都大会の時から取り上げられてたし。実際はちょっとだけ生意気な後輩なんだけどさ。こいつもある意味策士のエリートだしね。

まあ、黒田もそんなもんか。策士とは言えないけどさ、こいつは。いっつも真っ向勝負のエリートくん。

まあ、2人ともいい子だし、後輩としては好きなんだけどね。…なんて、秘密だけどさ!

 

なんの偶然か、私は黒田、小湊くんは御幸の先輩なんだよね、高校時代の。

相変わらずのハイテンションの及川くんが大声で法学部コンビの名前を叫んじゃうから、私たちまで注目されちゃう始末。あー、恥ずかしい!

こっちに気づいた後輩くんたちは頭を下げる。まあ、運動部だった2人だから、そういうルールはちゃんと守るいい子なんだよね。

 

 

―――文学部の有名人3人でカウンターでドリンクを注文して、法学部コンビの隣の3人掛けのテーブルを陣取る。もう5月だし、それなりに暖かくなってきたなぁ…。

「文学部も講義ないんスか?」

生意気にブラックコーヒーを飲む御幸に聞かれ、紅茶―――私は種類なんてもちろんわからない―――をチビチビ啜る黒田が頷く。

「そーだよ。俺は岩ちゃん待ち」

「及川は電話でしょ。ちなみに俺は純待ち」

「私は靖友たち待ち」

「相変わらずっすね、先輩達」

紅茶のカップから唇を離した黒田が苦笑してる。

「そんなこといってー。黒田だって、経済学部の純太待ちでしょ?」

軽くからかえば、黒田は俯いて口ごもる。

…いやぁ、私だってびっくりだよ。いとこの手嶋純太がこの学校に入ってきただけでも驚きなのに、黒田と一緒にいるからねー。

エリートの黒田と努力家の純太。絶対に交わらないと思ってたのに、気づけばだいたい一緒にいるんだもん。かつての靖友と金城を思い出すなぁ。

 

「そんで、御幸は親友の倉持待ち、と」

「ちょ、亮さん、俺と倉持がいつ親友になったんですか」

となりでは小湊くんと御幸が同じような会話を繰り広げてる。―――倉持っていうのは、理学部の倉持洋一。御幸が親友と言われたら、どこが?って不思議そうな顔をするのに対して、倉持はどこが?って心底嫌そうな顔をする。そんなやつ。

元ヤンってこともあって、私とは話が合うんだよね。ちなみに御幸とは高校時代は、一緒にいるだけで友達じゃないなんて言ってたらしいけど、今は友達ってのは認めてるんだってさ。小湊くんは成長成長って喜んでる。…もちろん本心じゃないんでしょうけどさ!

 

そういえば、小湊くんと御幸と倉持は、高校時代からすごいプレーをしてて有名だったなぁ。今更だけど、ふと思い出す。

野球は靖友の中学の頃の影響で、靖友がやめてもよく見てたけど、ちょっとしか見てない人にもわかるくらいの有名度だったし。

御幸は正捕手、倉持と小湊くんは鉄壁の二遊間なんて言われてたし当然かも。御幸はプロ入りなんて噂も流れたけど、大学で技術を磨いてから挑戦するって言ってたっけな。いろいろ考えてて流石だと思う。

まあ、洋南は大学内じゃ野球も強いほうだし、不満はないって言ったっけ。

 

 

6人で少しずつドリンクを飲み進める。暖かな日差しの中、みんなを眠気が襲う。

そんな中―――賑やかな声が聞こえ、みんなの眠気は一気に覚める。

 

 

「ア!?寝てンのかヨ!?」

 

 

特徴的な喋り方にみんなが一斉に振り返る。

そこにいたのは、いつの間にやら集合していたいつものメンツ。

「暖かいからな、仕方ないだろう」

「そうじゃそうじゃ!ぶちあったかいけぇのぉ」

「あはは、ですね」

特徴的な喋り方の靖友とそれをたしなめる金城、待宮。そんな彼らに苦笑する純太。

 

そんな純太の横には、医学部の一回生の赤葦京治くん。高校の時も今もバレーやってるんだよね。今は医学部でスポーツ医学を専攻してるんだって。

赤葦くんの横には教育学部の一回生の真田俊平。そんな真田に絡む、小湊くんの待ち人の伊佐敷くん。

 

 

―――こんなこんなが私のいつめん。

なんでこんなに増えたのかはさておき、高校時代とはまた違った楽しい学生生活を、この13人で送ってますよ!

 

 

 

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