「俺の後ろに乗るのは絶対にお前だけだ」
あの日の言葉は今でも鮮明に覚えている。あの日アイツが私に言ったあの言葉。
今どこにいるのか何をしているのかすらわからないアイツが言った言葉だ
私は今一番、アイツに会いたい、私の人生を全て捨てても、世界中の人を敵に回しても会いたい・・・。
そんなアイツとの初めての出会いはまだランドセルを背負って学校に通っていた頃まで遡る。
「碧!早くしなさい遅刻するわよ!
「はーい」
ランドセルを背負っていた頃の私は、母とのこの何気ない会話から毎日が始まった。
二階から駆け足で階段を降りると、キッチンで朝食を作る母の香、新聞片手に朝食を食べる父の修、すでに玄関で私を待つ一つ上の姉真緒、いつも私とどちらが早く準備をするか競う一つ下の弟学、そしていつも元気よく尻尾を振る愛犬マックス。
だいたい私と弟のせいで学校に遅刻しそうになる、姉には申し訳なかったと今更思う。
五年の教室に入ると絶対にゴム製のサッカーボールが顔面に直撃する。
「だれよー」
「ハハハハーまた当たってやんの」
そう言って私をバカにするアイツ・・・名前は翼。
近所の自転車屋の息子でサッカーが大好きなクラスの人気者、でも私はアイツが苦手だ、
いつもちょっかいをかけてきて口喧嘩になる。クラスの皆には痴話喧嘩が始まったといつも笑われた。
しかも、なぜかいつも私の席の隣はアイツだ。
どんなに席替えしても場所は変わっても隣は変わらない。
今は私は運動場側の窓から二列目の一番後ろでアイツは左隣だ。
苦手なアイツだけど私はときどき静かに窓側をボーっと眺める。なぜかしょっちゅうチラ見をしていた。
休み時間、私は外を眺めていると
「また翼くん見てる。」
と話かけてくる親友の千尋
「バッバカ!違うわよ私は空をただ見ているだけよ」
「またまた顔が赤いのはなんでかな」
「うるさい!」
千尋は私のことを支えてくれる良き理解者。だから私は千尋にならなんでも話せた。
千尋も私をかなり信頼してくれている。
「碧、今夜のお祭り行く?」
その日は地元のお祭りの日だった。
「もちろん!一緒に行こうよ」
「うん!碧に話しておきたいことあるし・・・」
「千尋何か言った?」
「べっ!別に・・・じゃあいつもの公園で」
「わかった」
その時の千尋はなんかそわそわしていた。
午後6時頃、私はいつもの公園に着いた。その5分後に千尋も来た二人の男の子と一緒だ
「あれ、大和君?」
「あっ、仲川さん」
大和君は学校一のイケメンでアイツの親友だ。・・・ってことは
(もう一人ってもしかして)
「なんでテメーがいるんだよ鈴木の親友が一緒だって聞いたぞ」
「あんたこそなんでいるのよ!」
「まあまあ二人とも・・・」
千尋が間に入って一言
「実はね碧、私大和君と付き合うことになったんだ!」
「!?」
私とアイツは目をキョトーンとさせてお互いの目を見た。私は小学生で付き合うってという驚きと千尋が知らない間に大和君と交友があったのに驚いた。
「オメー知ってたのか?」
「知ってる訳ないじゃない!」
「お前鈴木の親友だろ」
「あんたこそ大和君の親友でしょ!」
「そのセリフそっくりお返しするわ」
いつもの口喧嘩を笑いながらみる千尋と大和君
「それでね、最初は四人で回ってある程度時間が経ったら二組に分かれようと思うんだ!」
とびっきりの微笑みで私達に言った
「え~オレがこいつと!」
「コッチのセリフよ」
と言いつつ少し嬉しい私、そんなわけでしばらく4人で回って私とアイツ、千尋と大和君の二組に分かれてその後を楽しんだ。こうして二人で歩くのは初めてだった。変な沈黙が流れる・・・
「あっ、あのさ!」
二人のタイミングが被る
「なんだよ~お前から言えよ」
「そっちからいいなさいよ」
また沈黙・・・ちょっと経ち
「お前に見せたいものがあるからついてきてくれ」
アイツが少し照れながら言う。私は黙って頷きアイツについていった。
アイツは私を自分の自転車まで連れて来た。自転車の後ろに私は乗る。
「しっかり捕まってろ」
アイツは自転車を漕ぐ、私は言われたとうりアイツの身体にしっかり捕まった。温かいアイツの背中から温もりを感じた。
しばらく漕いで原っぱに着いた。
「見せたい物ってなによ!」私はアイツにキツめの口調で言うと
「もうすぐだ!」
すると・・・
ヒュードンバンバンバンバン
祭りの花火が空を舞った。
「祭りの花火じゃない」
私は飽きれて小さな溜息をついた。するとアイツは
「ここは唯一全ての花火が見える場所なんだよ!」
「えっそうなの」
この祭りの花火は建物と被ったりして祭りの会場から見えない花火もあった。
「オレとおまえしか知らない秘密の場所だ」
「そっそうなの」
アイツが普段より何百倍もカッコよく見える
「俺、父さんから言われたんだ」
花火を見ながらアイツが呟く。
「何を?」
「『自転車の後ろに乗せるのは最初は絶対好きな女の子を乗せろよ。そうすればその恋は実るんだ。自転車屋限定の都市伝説だけどな』って」
「へっへえ~そうなんだ」
私は急に胸が苦しくなりアイツの顔が見れないそしてアイツは
「俺の自転車に初めて乗ったのは、お前だ。」
声を張り上げた。特大の花火と同時にそして二発目の特大花火。アイツは私の唇を奪った。
初めてのキス・・・それは生涯忘れることのない大切な瞬間だっだ。