灰色の空に中指をおっ立てて生きる   作:四葉マーク

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あけましておめでとうございます。
本年も変わらずまったり更新でいく予定です。
のんびりお付き合いいただけましたら幸いです。

ところでヘイル・メアリー・プロジェクトはいいぞ。
映画が公開される前にみんなも読もう。


007 追い詰められたら不敵に笑え

霧と塵がただようガレキのなかを、

背中に背負った重みとともに歩いて行く。

時に急ぎ、時にゆっくりと息切れをしてしまわないよう、

足を止めないで奏はただただ歩き続ける。

 

悲鳴をあげる関節や痛む身体を無視するように、

奥歯を噛み締めながら一歩、また一歩と進んでいく。

方角は先ほど上がったのが見えた信号弾、

緊急時の離脱先として決めていた場所だ。

 

機生体の上半身だけとはいえ、

その身はほぼ金属で構成されており人間と比べれば、

重量は1.5倍から2倍ほどにもなる。

 

「ふっ……ふっ……!」

 

小さく、一定の調子でマスク越しに呼吸を繰り返しつつ足を動かす。

ゲイターという危険がいつどこから出てくるかわからない。

グレネードランチャーは破壊され、アサルトライフルも銃身が曲がっている。

仮に撃てたとしても弾も心許ないなかでは、鈍器にしかならない。

 

焦りと不安、死への恐怖が我知らずと胸の奥で広がろうとする。

リソースはまだある、ハンドガンがある。

気休めにしかならない思考を浮かべながらゴーグル越しに前を見る。

 

さきほどから耳に届いていた銃撃音はすでに止んでいる。

ゲイターの足止めをしていた二体の機生体がその場を離れたということだ。

飛行している彼らはゲイターに追い付かれないだろう。

 

問題は以前、こちらの状況というわけだ。

 

父親によく言われていたことを思い出す。

最悪の状況に備えろと、自分を切り捨てる判断を躊躇うなと。

それが軍人として全体を活かすための考え方だと。

 

理性的で合理的だ。

だがと奏は奥歯を噛み締めながら考える。

嫌だねと。

 

「全員で、生きて、帰ると、決めてるんだ……!」

 

幼稚な理想論であり、感情的な思考でしかない。

しかし、だからこそ一番、活力を湧かす意志でもあった。

生き延びるには冷静さも必要だが、なにより諦めないことも必要だ。

 

そんなセリフをどこかの映画で聞いた気がするなと、

担いでいる機生体が呻いてるのを無視しながら思う。

 

痛みと疲労で足が止まりそうになるのを、

無理やりに思考しながら動かしていく。

 

セツカのことを諦めていないことを、

何度としてドクに諭されたかわからない。

 

「歌声、が……まだ、聞こえる……」

 

自分にしか、自分の耳にしか聞こえてこない歌声。

それはここ219番地区へと近づいていくたび響いてくる。

そして先ほど、巨大ワームの間近へと至ったとき、

一番はっきりと歌声は聞こえていたのだ。

 

記憶にあるなかで飾 夕華(カザリ セツカ)は歌うことが好きだった。

自室や風呂場などでよく歌うし、

好きな映画があれば主題歌を歌うこともある。

 

(有名配信者なんかの歌も、歌ってたっけ……)

 

学園祭では某ボーカロイドのコスプレもしてたなと。

自分の視線はずっと胸にしかいってなかったが。

 

それだけ歌うのが好きな少女が、

いまもなお歌っているのだとわかっていれば、

奏はこの土地から離れることを選ばなかった。

 

あのワームのなかでセツカは歌っている。

ああ、なんてイカれた思考だろうと自分でも思う。

漫画と映画の見過ぎだろうか、

そんな奇跡的なことが起きるはずがない。

 

きっと自分は狂ってしまったのだと自覚がある。

歌声という幻聴でこの土地に居続ける理由を欲しているだけ、

最後に見た彼女の姿が残るこの219番地区に固執しているのだと。

ここで彼女の幻影を追いかけ続けていないと正気が保てないと。

 

いや違う。認めたくないからだ。

何もかも失って、もう生きる理由も失っていることを。

ただただ必死に、絶望という深い深い闇のなかで、

泣き叫ぶ子供のようにもがいてるだけに過ぎないことを。

 

「はっ……ふっ……はっ……は、ははは」

 

笑ってしまう。いいや嗤ってしまう。

 

家も学校も友人も大事な相手もなにもかも失って、

それでもなお縋り付くようにありもしない希望を追いかけてる。

馬鹿だ、大馬鹿だ、馬鹿野郎すぎて嗤えてくる。

 

『何が、おか、しい』

 

背中に背負った馬鹿が言う。

 

「……全部だよ、全部。

 住んでた場所をぶっ壊されて、

 友達もみんな死んだし、黄金も失った。

 なんで俺、生きてんだろうなって」

 

独白するように答える。

理解も共感も何も期待などしていない、

いいやそんなもの得られるとは思ってなかった。

 

だが。

 

『そんなこと、知るか。

 生きてるから、生きてる以上の、理由があるか。

 オレなど、星そのものを、失った。

 

 ……船に乗れなかった氏族もいる。

 いや、違う。星とともに、果てるのを選んだ。

 オレは……そんな生き方は、選べなかった』

 

言葉には悔恨とも懺悔とも言える感情が混じっていた。

奏は何も言い返すことなく、

ただただこぼれ落ちるような呟きを聞く。

 

『妹がいたから、いや妹を理由にした。

 あいつの面倒を、世話をしなければ、

 船の席を譲ってくれた、親父殿に、合わせる顔がないと。

 オレは、誰かを理由にして、生きているだけだ』

 

生かされたとも、生き残らされたとも取れる言い方。

 

「じゃあ……妹がいなくなったら、どうするわけ。

 自殺でもするの?」

 

一度、ガレキの影へと座り込んで、

周囲にゲイターの姿がないかを確認してから、

ゴーグルとマスクを外して汗を拭う。

 

それから先ほどの戦闘で負った擦過傷や打撲など、

そういった部分を息を整えながら確認していく。

 

『………………自殺は、禁じられている。

 だから、オレは、この任務を強行した』

 

それは遠回しな自殺と何も変わらなかった。

 

「そのことを、あの二体は知ってるわけ?」

『知ってるさ、知ってて着いてきた。

 今更ながらほんと馬鹿だよ、ああ、馬鹿だ』

 

馬鹿がどういう意味なのかは、問わずともわかる。

わかってしまうのが、少しばかり奏は嫌だった。

あんなにも嫌悪していた機生体に、共感できてしまうことが。

 

「馬鹿は死んでも治らないってのが、

 地球での言い回しだ、覚えておくといいよ」

『最悪な慰め方に感謝を示したいな。

 体が動くのならば、ボディが折れるほどの抱擁で』

「男からの抱擁なんてノーサンキューだね。

 機生体からのなんてもっと嫌だ」

 

互いに沈黙。

しかし、嫌な空気ではなかった。

かつて友人たちとしていた他愛ない会話、

そんな記憶を呼び起こすような懐かしささえあった。

 

気づけば、巨大ワームに全てを壊されてから、

こんな会話すらしていなかった気がする。

それぐらい自分は日常から遠ざかっていたのだと。

 

「……身体、どうすんのさ。

 替えとか予備とか、そういうのある?」

『船に戻れば、ある。ある、が……この状況で、

 戻りたくは、ない。戻れば、もう、ここへ来れない』

「何の成果も持ち帰らず、無理やり出てきたって言うなら、

 そうもなるだろうね。けどさ」

 

身体を休めながらハンドガンの点検を行う。

アサルトライフルは背負っているが撃てない以上、

頼りになるのはこれだけとなる。

 

「見たでしょ、巨大ワーム。

 あれにさ、飲み込まれたんだよ」

 

自分に言い聞かすように、言い切る。

認めたくない、認めたくないが言わねばならない。

でないと、歩けないからだ。

 

「飲み込まれて、もう半年以上も経ってる。

 生きてる、わけが、ないんだ」

 

言いながら、奥歯を強く、強く噛み締める。

痛むからだ、胸が、心が、今ここにいるという意志が。

ぐらぐらと揺らぐほどの痛みに耐えながら言うことで、

奏は改めて自覚する、失ったものの大きさに。

 

だがそれでも、それでもなお手を動かしていく。

ハンドガンに歪みはなく、問題なく撃てる。

いくつか手榴弾も失ってしまったが、数個はあった。

 

まだ、やれると言い聞かせる。

 

「それでも、まだ生きるか?」

 

その問いかけは、相手にだけでなく、自分にもしていた。

これだけの事実と改めて向き合いながら、

まだ自分は生きるのかと。

 

冷たく問いかけてくる自分に対して、

奏は内心で強く肯定の意志を示す。

こんなところで死にたくないのだと。

 

いまだ脳裏に焼きついている黄金のなかでしか、

俺は死ねないのだと狂気にも似た炎が意識に宿る。

 

『……オレは、こんな生き方しか知らん。

 やりたいことに真っ直ぐ向かうことしか、できない。

 妹が、妹がどうなっているかを確認できない限り』

 

破損している腕を動かして、地面を叩くヴィニシス。

 

『オレは、オレは絶対に戻らない!』

 

そう叫んでからハッとしたような動きで、

近くの廃墟を見上げるヴィニシス。

今の声を聞きつけたのか、何かが動いた。

 

「……そこから、動くな。見てくる」

『すまん……』

 

聞いたのはこっちなんだけどなと、

内心でとぼけながら摺り足でハンドガン片手に、

物陰へと静かに駆けていく。

 

一度休んだせいか、身体の痛みがより増している。

無視できなくはないが、動きに影響がないとは言えない。

それでも、生きねばならない。

 

ゴーグルとマスクの下で、表情を険しくしながらも、

奏は諦めることなく足を動かす。

目の前にある廃墟は三階立てのテナントビル。

 

動きが見えたのは三階、砕けた窓ガラスの並ぶ付近。

まず無事なままである一階へと開きっぱなしの出入り口から入り、

すかさず左右へと銃口を向けて危険がないことを確認。

 

次に二階へと上がる階段を目視してから、

摺り足で近づいていく。

その間も周囲への警戒は怠らない。

左右だけではない、上下にもだ。

 

ゲイターはとかく破壊をしたがる、

ゆえに建物へと逃げ込んでも建物ごと破壊しながら、

こちらへと襲いかかってくるからだ。

 

いきなり真上から天井を破壊して降りてきたり、

真下から床を突き破って出てこないとも限らない。

明かりのない室内を用心深く、進んでいく。

 

階段を、それこそ一段ずつ確認するかのごとく歩む。

たった一瞬の油断が命取りになると、何度も何度も味わったがゆえにだ。

上がりきったところにある、物陰。

 

銃口をそちらへと向けながら、

耳と全身の感覚を総動員させながら、

ひとつとして異変や物音などを逃さないよう、視る。

 

動きは、揺らぎは、なにも感じられない。

その事実を信じて、階段を跳び上がって物陰に銃口を突き出す。

 

「……クリアー」

 

小声で事実を口で述べて、次なる課題へと意識を切り替える。

閉じられたままの三階室内へと続く扉だ。

中にいる相手からは、こちらの存在が気づかれてる可能性は高い。

 

となれば扉の向こうで待ち構えている懸念はある。

相手は扉の正面か、左右か、それとも上にいるかもしれない。

ゲイターが相手となると、そのどれもが選択肢にあるから厄介だ。

 

しかし、しかしだ。

ゲイターは総じて能動的に動く。

じっと待ち続けていたなんてことは見たことがない。

 

いや、と奏は頭を小さく振る。

見たことないからあり得ないと考えるのは早計だ。

どっかの機生体が罠にかかっていたのを思い出せ。

 

神経が張り詰めていくのを感じる、緊張しているのだ。

いまでこそ狩る側として立っているが、

やつらと相対したときの悍ましさは記憶に刻まれている。

 

逃げることはできない、いいや、逃げない。

握り込んでいるハンドガンの重さだけが、今は頼りだと。

 

呼吸をひとつ、ふたつ、そしてみっつ。

おもむろに視線を扉に向けて、右足を大きく振って蹴る!

 

瞬間、足裏へと感じる衝撃とともに勢いをもって開かれた扉が、

大きな音を立ててる間に奏は体を室内へと滑り込ませる。

 

果たして室内の住人はどこに、

と思考しながら視線を上下左右へと向ければ、

やがて視線は床の一点へと落ち着いた。

 

そこにいたのは黒猫の親子。

いきなり開いた扉と音に驚いたのか、

どちらも目を丸く見開いて奏を見ている。

 

「なんだ……猫か……」

 

思いっきり安堵のため息を吐きながら、

今更になって奏の存在に気づいた黒猫は威嚇の声を出す。

 

「あーうん、ごめんごめん悪かったって……

 すぐ出てくから……って、へえ」

 

銃口を下げて、室内をついでに見まわしたところで、

奏はちょっとしたものを見つけるのであった。

 

  ●  ●  ●

 

数十分後、合流地点となる建物にて。

一階の室内ではドクが落ち着かない様子で、

なにかをしようとしては止めるを繰り返している。

 

『ドクトル』

 

そわそわしている。

 

『ドーク』

 

天井と地面を何度も見ている。

 

『聞こえているかしら』

 

顔を手で覆って呻いているので、

エレクトラはサブアームで引っ張り上げた。

 

『いい加減にしてもらえるかしら。

 ソーならきっと帰ってくる、そう信じなさい』

「はい……」

『大体ソーは戦士よ、戦士ならば帰ってくるものよ』

「エレクトラが認めてるのはわかったけど、

 それはそれとして心配なんだよ〜」

『はあ、大人であるドクトルがそんな様子では、

 私まで不安になってくるというもの。

 少しは背筋をまっすぐにしなさい』

「はい……」

 

サブアームに引っ張り上げられたまま、

ドクは項垂れて説教をされていた。

そこへ響く、建物の裏口からの足音。

 

咄嗟にドクとエレクトラ、

二つの視線がそちらへと向けられるが、

エレクトラが何も言わない時点でドクは察する。

 

そして。

 

「戻ったよ、ドク、エレクトラさん。地獄から」

「そこは”地獄から戻ったぜベイビー”って言ってほしかったな、矢車くん」

『そんなユーモアはソーには不要よ。

 ともかく、無事とは言い難いけど合流できて安心ね』

 

エレクトラの視線は、

奏に担ぎ上げられている上半身だけのヴィニシスへと向いている。

ついでに奏の背中へと視線が動いた。

 

『ソー?何を背負ってるのかしら』

「これ、立ち寄ったビルで見つけた小麦粉を入れたリュック。

 拠点にもどったらパン作ろうかなと思って」

「君、怪我してるのに随分と余裕があるね……

 僕はすっごい心配してたんだけど」

「そこはごめんなさい」

『エレクトラ様、申し訳ありません』

 

奏と一緒に、ヴィニシスも謝る声が響くと、

裏口から足音が再び二つ聞こえてきた。

外で監視をしていた二体のだ。

 

『おいバカ!バカ野郎!この大バカ!!!!』

『アホ!ドアホ!クソアホ!!!』

『オレが悪かったことは認めるが、

 そこまで言わなくてもいいだろうが!?』

「止める気はないけど、名誉の負傷だからこれ」

『名誉なものか!戦士として恥でしかない!ちくしょう!』

 

二体の罵倒にヴィニシスがわめくのを、

奏は冷静に言うのだった。

 

「というわけで、コイツはこんなことになったけど、

 コイツのおかげで俺は軽傷だよドク、お願いだから怖い顔しないで」

「……拠点戻ったら検査するからね、絶対だよ」

「うっす」

『応急手当はもう済んだかしら。

 まだならばこちらへ来なさい、彼はそちらのソファに置いて』

 

ゴーグルとマスクを外して、

奏は大人しくエレクトラの方へと近づく。

ソファに上半身のヴィニシスを放り投げて。

 

『もっと丁寧に扱え!?』

「人間になってから言え」

『来世では覚えていろ!』

「まだ死ぬ気ないでしょうが」

 

あー重かったと肩を回しながら、

ゴーグルとマスクを外して空いてる椅子に座る。

座った体をエレクトラから伸びたサブアームのセンサーが、

全身をくまなくスキャンしてく。

 

『打ち身や打撲、擦過傷があるわね。

 骨にはヒビもないし折れてもいないわ。

 けれど、強い衝撃を受けたから、

 内臓類にダメージがあるかもしれない。

 今夜は安静にしていること、いいわね』

「エレクトラ、僕の仕事を奪わないでくれるかい……」

『ドクトルがそんな怖い顔しているからよ。

 言ったでしょ、ソーは無事に戻ってくると』

「まあ、うん、死ぬ気はないから、ドク」

 

はあ、と大きく息を吐きだすドクを見て、

奏は今更ながらに申し訳ない気持ちになってくる。

結局は二人の静止を聞かずに飛び出してしまった。

後悔はないが、反省はしようと思ったのだ。

 

「次は怪我しないようにするよ」

「僕は無茶をしないでほしいだけなんだけどぉ!?」

『ドクトル、血圧上がってるわ』

「原因がいま目の前にいる!!!!!」

 

大変だなと他人事みたいにドクを見る奏。

ちらりとソファに投げたヴィニシスを見れば、

キートゥリノとカラプラーシノスに前後から罵倒されている。

身体を動かせないので本人はぐぎぎとか言っているのが見えた。

 

少し笑ってしまった。

 

そのことにドクがひどく驚く。

 

「矢車くん……?なにかあったのかい?」

「いや、なんにもないよ。うん」

 

けど、と続ける。

 

「もう一回、あいつと巨大ワームに挑む。

 今度はちゃんと準備してから。

 そうしないと、俺は……」

 

奥歯を噛み締める。

 

「一歩も前に進めない」

 

拳を強く強く握りしめて言う。

何かも失ったのに、いまだにこの場所へと心が縛り付けられている。

どこにも行けないのには、何かもに納得できていないからだ。

 

理不尽すぎる出来事に日常を壊され、

最低最悪な現実を受け止めることを余儀なくされた。

少年は、あの日から、ずっとどこにも行けないでいる。

 

今にもバラバラになって壊れそうになっている自分を、

必死で繋ぎ合わせて立っているに過ぎないのだ。

 

だからこそ、巨大ワームという一番の原因と向き合わなければいけない。

そこにどれだけ残酷な現実が待っていようとも。

 

少年の悲壮とも言える決意を込めた言葉に、

ドクとエレクトラは思わず顔を見合わせてしまう。

 

「……わかった、ならまずは拠点に戻ろうか。

 それからしっかり作戦を練ろう。小麦粉も持ち帰りたいしね」

『彼の、ヴィニシスのボディについても何とかする必要があるわね。

 そちらに関しては私に任せて』

「うん、ありがとう二人とも。

 それからそっちも聞こえてたよね、一旦俺たちの拠点へ向かうから」

 

いまだに罵倒されまくっているヴィニシスとほか二体にも声を掛ければ、

頷きや了解の言葉が返ってくる。

そして、疲れた調子のヴィニシスが言う。

 

『聞こえている……次は、次こそは、結果を出す』

「癪だけど、俺だってそのつもりだよ。

 だから……手を貸せ、いいな」

『ふん、人類に貸す手などない。

 ……だが、一個人に対しては別だ』

「ほんと口の減らないやつだな」

『貴様に言われたくはないわ!』

 

笑った、本当に思わず笑ってしまった。

どうしてかはわからない。

ただ、笑えると思ってしまったのだ。

 

その様子をドクが目を丸くして見つめていることに気づきつつも、

奏は笑い終えてから言う。

 

「戻ろう。戻って、巨大ワームへのプレゼント(逆襲)を考えよう」

 

悪そうな笑みとともにだ。

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