カラス銀行中央支店。許可証を持つ者だけが立ち入ることのできる特別フロアへと、手続きを済ませて、僕と真経津さんは入場した。
再び真経津さんの担当行員として指名された僕は(厳密には担当権は宇佐美主任が持っているのだが)、叶黎明戦ぶりに、真経津さんの隣に並びゲーム会場へ入っていく。
相当優秀な防音扉なのだろう。不自然なほどに無音だった廊下から一転。扉を開けた瞬間、VIPの賑やかな談笑の様子が耳に入った。
そして僕らが入った入り口の反対側には、どこか西洋のスーツと中国の衣装を混ぜたような格好の白髪、短髪の男。……つまり今回の対戦相手が立っている。
一見して明らかに胡散臭く見える格好であるのに、その一つ一つの衣装は、一目見るだけで良い生地を使っていることがわかり、決してコスプレを感じさせない。その佇まいも、ただそこに立っているだけで、吸い込まれるようで不気味だ。
「何をオレのことを見透かそうとしている?お前はその格にはるかに達していないだろう?」
突然、目の前の対戦相手が、僕に向かって視線と言葉を投げた。思わず固まる。何も声が出ない。
「まさかお前がオレと闘うつもりなのか?お前が何か担当ギャンブラーの役に立てるとでも思っているのか?ああ、何やら"視える"ぞ。そうか、地下に落ちていたがようやく大好きな飼い主の隣に戻れたのか。なるほど。それはオレに噛みつきたくもなるだろうな。なんせ、オレはお前の飼い主を殺す相手なのだから。」
体だけでなく、頭も固まった。なぜ、目の前の男は僕の境遇もすべて知っている?
「はいストップ。御手洗くんも落ち着きなよ。そんな正確に御手洗くんの詳細を喋れるってことは、"知っている"ってことだ。その程度のことならボクだって知ってるよ。御手洗くんが調べてたから。君は
その僕の膠着を解いたのは真経津さんだった。言われてみれば確かにそうだ。なぜ僕はそんなことも気づかなかったのだろう……。
真経津さんは一歩、並んでいた僕より前に進むと、目の前の男に向かっていたずらっ子のような、しかし相手を値踏みするような笑みを浮かべる。
「ところで聞きたいんだけど、占い師って調べたことや当てずっぽうを、それっぽく喋るのが仕事なの?超能力とか言ってる割に、全然カッコよくないね。」
真経津さんの言葉を聞いて、対戦相手……、
「本当にお前の目にオレがそう見えるなら、お前の強さも高が知れるな。まあ言いたいだけ言えばいい。どうせお前も、オレに醜さを全て暴かれるのだから。」
それを聞いていた、今回の進行役、渋谷さんがマイクに声を通す。
「それではアイスブレイクも済んだところで、ゲームを始めてしまいましょうか。本日のゲーム『シヴァ・イズ・アブセンス』のルール説明をさせていただきますよ!」