ジャンケットバンク-もう1戦のハーフライフ-   作:鴉未

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ゲーム内容です。
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『シヴァ・イズ・アブセンス』

〈勝利条件〉
・相手より先に2ポイントを先取する。

〈禁止事項〉
・暴力行為
・選択に3分以上の時間をかける遅延行為
・ガラス筒、タブレット、足場など、ゲーム設備を故意に破壊する行為

〈敗北ペナルティ〉
・足場が崩壊し、自らの筒に溜まった毒液に落下する。
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〈概要〉
目的は、両者で毒を分け合いながら、相手より多くの霊薬を得ることである。

セットは以下の挿絵のとおり。

【挿絵表示】


ラウンドは以下のように行われる。
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①攻撃側が、タブレットから相手に【毒】【霊薬】を送るかを選ぶ。

②防御側が、タブレットから【受容】【拒絶】を選ぶ。

③以下の結果に応じて、プレイヤーのガラス筒に鍋から液体が注がれる。
〈パターン1〉攻:【毒】 守:【受容】
防御側のガラス筒に、鍋から【毒】が1L注がれる。
〈パターン2〉攻:【毒】 守:【拒絶】
攻撃側のガラス筒に、鍋から【毒】が1L注がれる。
〈パターン3〉攻:【霊薬】 守:【受容】
防御側のガラス筒に、鍋から【霊薬】が5L注がれる。
〈パターン4〉攻:【霊薬】 守:【拒絶】
攻撃側のガラス筒に、鍋から【霊薬】が5L注がれる。

④攻守を入れ替える。
(このラウンド間で、両プレイヤーが獲得した【毒】の量が5Lに達するまで①~④を繰り返す。)

【毒】の量が5Lに達したら、ラウンド終了。このラウンド中、より多くの【霊薬】が注がれているプレイヤーが、1ポイントを獲得する。しかし、そのラウンド中、片方のプレイヤーしか【霊薬】を得ておらず、もう一方の【霊薬】獲得数がゼロだった場合、そのラウンドではポイントは与えられず、そのまま"流れ"となり次のラウンドに移る。
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これを、いずれのプレイヤーが3ポイントを獲得するまで繰り返す。



4・ゲーム開始

「さて、まずはタブレットをお渡ししますので、両プレイヤーとも、ガラス筒への入場をよろしくお願いします。」

 

渋谷さんが促すと、スタッフらが真経津さんと天城(アマギ)にタブレットを渡し、入り口に案内した。二人が現段階で、何をどこまで考えているのか僕にはわからないが、二人は指示に従い、プレイヤーの定位置である、ガラス筒の足場の上に立った。

 

「さっきの実演を見た時も思ったけど、破裂させて落とすためか足場が不安定だよね。これまでのゲームは椅子があったのに。居心地わるーい。」

 

真経津さんがぐずる子どものように不満を述べる。一方の天城は、自らを囲むガラスをコンコンと手でたたくと、「故意の破壊は禁止とされていたが、この厚みなら多少叩いたくらいでは割れそうにないな。」と口にした。その様子をひとしきり眺めた後、渋谷さんは二人に声をかけた。

 

「それではゲームを開始するにあたって、最初のラウンドの攻守を決めていただけますか?それ以降のラウンドでは、その前のラウンドの最後の攻守を入れ替えるといった形になりますので、最初のラウンドだけ選択をお願いしますよ。」

 

「ふむ……。さて、どう決めるとしようか。オレは先に攻撃をしたいところだがな。ジャンケンかコイントスででも決めるか?」

 

天城の提案を、真経津さんは笑って制止する。

「えー。それじゃ面白くないよ。ボクも先に攻撃したいしね。そうだ、君占い師さんみたいだし、占いで決めようよ。ボクの誕生日を一発で当てられたら君が選んで、外したらボクが選ぶ!」

 

「やれやれ。占いを魔法か何かだと思っているのか?364/365の確率で、自分に選ばせてくれと言っているようなものではないか。」

 

「えー。わからないの?占い師さんも大したことないんだね。じゃあいいよ。別の選び方でも。」

 

「3月3日。」

 

「え?」

 

「誰がやらないと言った。3月3日だ。答え合わせの必要もない。俺が先に攻撃だ。」

 

たしかに真経津さんの誕生日は3月3日だ。有利な確率という数字を押し付けたはずが、逆に相手に選択させてしまった……。

 

「あれ。ボクのことも随分ちゃんと調べてたんだね。誕生日なんかギャンブルに役に立つの?」

 

「誰が調べたと言ったんだ。自分が納得できないことを適当に理由づけるのは愚かだぞ。」

 

不穏な空気が流れる。

「いやいや。なかなか仲睦まじいご様子で。ただ本番はここからですからね。それでは攻守も決まったことですし、さっそく最初のラウンドを開始しましょう。まずは攻撃の天城様。相手に【毒】【霊薬】のどちらを送るかを選択してください。」

 

渋谷さんの仕切りで、ゲームが始まった。果たして、このゲームの定石はどのようなものなのだろうか。

「まあ最初のターンだ。特に悩む必要もないな。」

 

制限時間開始から30秒もたたずに、天城は選択を完了した。

 

「はい。ありがとうございます。では続いて防御側に移ります。真経津様、相手からの液体を【受容】するか【拒絶】するかを選んでください。」

 

「まあ最初だしね。君がどう選んだかは知らないけれど。ねえ天城さん。どっちを選んだかを教えてよ。【毒】を選んだの?」

 

「教えろだと……?悪いがお断りだ。占い師の内面を占われる側が勝手に探るな。」

 

「ふーん……。まあ別に構わないけど、結局【毒】だろうと【霊薬】だろうと、どっちかが取らなきゃゲームが進まないんだし。」

 

そういうと、真経津さんはタブレットを操作した。

 

「それでは両プレイヤー選択が完了しましたので、結果を公開します。プレイヤーのお二人はタブレットを、皆様はモニターをご覧ください!」

 

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≪第1ラウンド 1ターン目 結果≫

『攻撃』天城→【毒】

『防御』真経津→【受容】

≪マフツ シン≫

本ラウンド獲得【毒】0→1L【霊薬】0L

≪アマギ クオン≫

本ラウンド獲得【毒】0L【霊薬】0L

≪第1ラウンドの【毒】残量≫

残り4L

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「それでは、結果を反映いたします。ぽちっと。」

 

渋谷さんが端末を操作すると、中央にある鍋から、真経津さんのガラス筒に、1Lの毒が注がれた。この程度では、ただ床に少し液体が流れた程度だ。もしこのタイミングで落下したならば、酸のダメージよりも、高所からの落下のダメージの方が大きいだろう。

 

この程度なら、まあ大丈夫だろうし、さっき真経津さんは「このターンはどちらでもいい」と言っていた。とはいえ、【毒】を注がれるのは、絶対に相手の方がいいはずだ。できれば次ラウンドは、相手に【毒】を【受容】させておきたい。

 

「では、攻守を入れ替えます。攻撃側の真経津様は【毒】か【霊薬】かをお選びください。」

「はい。選んだよ。」

 

恐ろしいほどにあっという間に、飄々とした笑顔で、真経津さんは選択を終えた。

 

「ほう。随分と一瞬だな。ははあ、なるほど。そういうことか。」

 

「急にわかった顔をしだすんだね。占い師さんは訳知り顔が得意みたいだ。」

 

「失礼だな。だが構わん。占い師のトリックを暴いてやろうと、反抗的な目や値踏みをする目を向けてくる客も多い。……選択は【毒】だな?」

 

確かに天城は、強い確信を持っている。そういった口ぶりだった。相変わらずのことだが、カラス銀行にいるギャンブラー。──とりわけ1/2ライフ(ハーフライフ)に所属するギャンブラーは底が読めない。僕は心配そうに真経津さんを見るが、真経津さんは不思議そうな顔をして天城に言葉を返している。

 

「そう本当に思っているなら、早く【拒絶】を選べばいいのに。結局占いなんかじゃ何も視えてないから、さっきのターンでボクがやったみたいに鎌をかけてるんじゃないの?」

 

「安い挑発だな。まあ待っていろ。制限時間はまだあるのだから。」

 

結局、天城は3分たっぷりと時間を使い、選択を行った。

 

「それでは2ターン目の結果はこちらです。」

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≪第1ラウンド 2ターン目 結果≫

『攻撃』真経津→【毒】

『防御』天城→【拒絶】

≪マフツ シン≫

本ラウンド獲得【毒】1→2L【霊薬】0L

≪アマギ クオン≫

本ラウンド獲得【毒】0L【霊薬】0L

≪第1ラウンドの【毒】残量≫

残り3L

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渋谷さんが操作をし、鍋から、真経津さんの筒にまたしても【毒】の液体が注がれた。

 

「これで少しは信頼する気になったか?お前の考えることは"視えている"と。」

「いやあ、さすがに1回あてずっぽうが当たっただけじゃ信じられないよ。まぐれ当たりでどや顔してると、外したときに恥ずかしいからやめたほうがいいよ。」

 

煽り返しているが結果としては最悪だ。最初の2ターンで、既にこのラウンドの2/5の【毒】が真経津さんに注がれてしまった。そして次は天城の攻撃ターン……。

 

 

このラウンドは、天城は【毒】と【霊薬】のどちらを送ってくるだろうか。【毒】なのではないか。僕は直感的にそう思った。

 

僕は、最初は、このゲームは【霊薬】をいかに相手よりたくさん集めるかのゲームだと思っていた。しかし、よくよく考えてみれば、相手より少しでも【霊薬】の量で勝っていれば、ラウンドを勝ち、ポイントは得られるのだ。【毒】を注ぐ量は2人合わせて5回分で良い以上、思ったより少量での争い、……例えば、【霊薬】5L 対10Lといったような形での勝利もあり得るだろう。

そうなると、この攻撃側は、いかに相手に【霊薬】を渡さず【毒】を送るのかが大切な気がした。だから、天城は【毒】を送ってくると予想した。

 

考えているうちに、天城は、また時間いっぱいを使って、選択を終えた。

一方で、真経津さんは、今回も即答に近い形で、選択をした。

モニターに結果が表示される。

 

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≪第1ラウンド 3ターン目 結果≫

『攻撃』天城→【霊薬】

『防御』真経津→【拒絶】

≪マフツ シン≫

本ラウンド獲得【毒】2L【霊薬】0L

≪アマギ クオン≫

本ラウンド獲得【毒】0L【霊薬】0→5L

≪第1ラウンドの【毒】残量≫

残り3L

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「えっ?」

僕の予想が外れるのはいつものことだが、一瞬目を疑った。天城が送ったのは……【霊薬】?

 

「相手から与えられた言葉のとおり物事を考えるから、凡人は固定概念(凡人)から抜け出せないのだ。占い師は、客の言ったことの真意を常に見透かしている。」

天城が馬鹿にしたように語る。

 

「このゲームでは、【攻撃】側と【防御】側は大して違いが無い。何せ、自分が攻撃側で相手に液体を送るとしても、相手が【拒絶】したならば、送った液体は自分側に注がれるからだ。だから、攻撃側では相手に【毒】を送るべきだという先入観が働く。」

「しかし、その視点は誤りだ。先に述べた通り、相手の選択次第で、自分にも相手にも液体は注がれる。だから、オレは()()()()()()()()()()()()()【霊薬】を送った。」

 

「へえ。ボクに【霊薬】が注がれてもよかったの?」

 

「無論だ。なぜならこのゲームには、"流れ"が存在するからだ。両プレイヤーともに、1回分でもそのラウンドに【霊薬】が注がれていなければ、ポイントは獲得できずそのラウンドは終わってしまう。ここまでで察していると思うが、"3ポイント先取"と言っている割に、5回分の【毒】を消費し、お互いが【霊薬】を1回以上取る、というのは、かなりの長丁場だ。更に、どんなに優位にラウンドを進めていたとしても、流されてしまえば勝利点は稼げない。」

「だから、【霊薬】を送った。どうせ1回はお前に【霊薬】を送らなければならないので、どちらがとっても、構わないと思った。」

 

「なるほどね。ボクというより御手洗くんたちへの説明ありがとね。さっきも言ったけど、あまりどや顔で語っていると後で恥ずかしいことになるかもよ?」

「それに、本当に全て余裕で"視えて"いて、このゲームが長丁場だと思っているんだったら、3分間ゆっくり使わないで早く選べばいいのに。」

 

「それは別の観察があるからな。それこそオレの勝手だと言わせてもらう。」

 

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 その後も、天城は時間を3分フルに使って選択し、真経津さんはそんなに時間を使わずに選択をし続けた。真経津さんは、心配になるほど読み負け続け、気付けば1ラウンド第7ターンが終わり、

真経津さんのガラス筒には【毒】4L(4回分)と【霊薬】5L(1回分)が、天城のガラス筒には【霊薬】10L(2回分)のみが注がれていた。

 

 

 第8ターンが始まった。このターンは、真経津さんの攻撃ターンだ。もしこのターンでどちらかに【毒】が注がれれば、このラウンドの【毒】が合計5L注がれ、1ラウンド目が終了する。しかも、このラウンドで【霊薬】をより多く注がれている天城の勝利で。

しかも、【毒】はどちらに注がれたとしても合計5Lでラウンドが終了するのだから、第9ターンになれば、天城は【毒】を送るだけでラウンドを勝利してしまう。なんとしても、このターンは真経津さんが【霊薬】を送って、天城に【拒絶】させて霊薬を取らないと……

 

……あれ?じゃあ負けじゃん。勝つためには、真経津さんは【霊薬】しか送れない。それがわかっている天城は、【霊薬】を【受容】して、次のターンで【毒】を送ればそれだけでラウンド終了だ。もう既に、真経津さんはこのラウンドに負けていた……?一体いつから……?

 

ガラスの向こうの彼は、いつからこの現実を理解していたのだろう。無能な人間は、有能な人間に比べて、世界の認識が一歩遅れる。僕が1人その現実に直面しているとき、自分の目に、もう一つの絶望的な現実が映った。

 

「ゴホ…ゴホッ…。が……。」

「ほう、オレの予測より早く症状が出たな?毒液の酸が混じった空気を吸ったな。」

 

僕が魅入られている美しきギャンブラー。真経津晨。彼はガラスの向こうで、苦しそうに咽て、喘いで、血を吐いていた。

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