血湧き肉躍ってこその戦い......だったのだがな   作:シズネ

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ふと思い立って、作ってみました。


1話:うちはマダラ、呪いの世界に迷い込む

 

 

廃工場跡地に、金属が軋む音が響いた。

 

夜の闇の中、一級術師・七海建人は息を荒げていた。

 

スーツは血と埃にまみれ、左腕には深い裂傷が走っている。鉈を握る右手は震え、呪力はすでに底をついていた。

目の前にいるのは、触手と無数の目を持つ異形——特級呪霊。

 

「…等級詐欺、か」

 

七海は心の中で毒づいた。

報告では準一級のはずだった。だが、この再生力、この圧倒的な呪力。これは間違いなく特級だ。

 

十劃呪法で弱点を狙う。だが、攻撃が間に合わない。呪霊は再生し、触手を伸ばしてくる。七海は辛うじて回避するが、もう限界だった。

呪霊の触手が、七海の首に迫る。

 

——灰原。 

 

2007年、高専二年時。共に向かった呪霊討伐任務で殉職した同期の顔が、脳裏をよぎった。

当初「二級」として扱われていた呪霊は、実際には土地神信仰に基づく一級案件だった。上層部の見誤りが、灰原の命を奪った。

 

——やはり、呪術師はクソだな。

 

七海建人は、死を覚悟した。 

 

 

その時——

 

遠くから、巨大な火球が飛来した。

炎は呪霊を直撃し、吹き飛ばす。

 

「!?」

 

七海は驚愕して空を見上げた。

屋根の上に、人影がある。月光を背に立つ、黒髪の男。

 

 

 

 


 

 

 

——終末の谷。

 

うずまきナルト・うちはサスケによって大筒木カグヤ・黒ゼツは地爆天星の中に封印された。

それにより解放されたうちはマダラだったが、一度人柱力となった後、外道魔像ごと尾獣の抜けた状態では死を待つ他なかった。

 

「もう互いに死ぬ。今なら…ただ戦友として酒を酌み交わせる」

「……戦友…か…」

「まあ…それ…なら…」

「オレ…たち…も…」

 

親友(柱間)に寄り添われながら、うちは一族最強の男は穏やかに死を迎えた。

 

…届いただろうか。

 

お前のように、俺も「誰か」に託すことができていたら——

 

 

 


 

 

 

マダラは廃ビルの屋上で目を覚ました。月が見える。満月だった。

 

「…生きている?」

 

身体を確認する。異常は感じられない。十尾はすでに抜けているが、写輪眼も、輪廻眼も健在だ。

チャクラを練る——問題なく流れる。

 

「…これは」

 

周囲を見渡す。高層ビル。ネオン。見たことのない街並み。

だが、人気はない。廃墟のようなエリアだった。

 

「何だ…ここは?幻術なのか…?」

 

マダラは警戒した。

無限月読が成功したのか? いや、カグヤは倒されたはずだ。ならば、誰の幻術だ?

 

空を見上げる。星の配置が違う。看板の文字は読めるが、見覚えのないデザインだ。

 

「…」

 

もう一度、チャクラの流れを確認する。体の感覚も確かだ。幻術にしては、妙に現実味がある。

 

「これは…現実なのか?」

 

その時、遠くで爆発音が響いた。

マダラは音の方角へ視線を向けた。巨大な廃墟——用途不明の建造物群だ。瓦礫が崩れる音、何かが戦っている気配。

 

情報が欲しい——マダラの体は既に動いていた。

月明かりの下、屋根から屋根へ。音もなく、影のように。

 

 

 


 

 

 

——巨大な廃墟。

 

マダラは崩れかけた屋根の上から、戦闘を観察した。

 

金髪の男が、異形の化け物と戦っている。

男は包帯を巻いた鉈を振るい、化け物の体に浮かぶ不思議な「線」を狙っているようだ。

 

「あれは…忍術ではない」

 

マダラは目を細めた。

だが、チャクラに似た何かを使っている。男の動きには無駄がなく、戦い慣れている。

 

しかし、化け物の再生力は異常だった。男が一撃を加えても、触手はすぐに再生する。徐々に追い詰められていく。男の左腕に深い傷。呼吸が乱れ、力が抜けていくのが分かる。

 

「…男の方が不利だな」

 

マダラは腕を組んだ。このままでは死ぬだろう。

見過ごすか?いや…この世界の情報が欲しい。おそらく近くにいる人間はこの男のみ。

化け物の触手が、男の首筋に迫った。

 

「仕方ない…死なれても困る」

 

マダラは印を結んだ。

 

「火遁・豪火球の術」

 

巨大な火球が夜空を裂き、化け物を直撃した。火球は化け物を吹き飛ばし、地面に叩きつけた。

 

「!?」

 

七海は驚愕して振り返った。

屋根から飛び降りて着地する、黒髪の男。三十代前半に見える。黒い装束…見たことのない様式だ。

 

「邪魔をした」

 

男の声は低く、落ち着いていた。

 

「あなたは…!」

 

七海は言葉を失った。

帳を下ろしていたはず。なぜ一般人が中に? いや、今のは——

 

化け物が体勢を立て直し、咆哮を上げた。

触手が複数、同時にマダラへ襲いかかる。

 

マダラの目が、赤く光った。

 

「!」

 

七海は息を呑んだ。

 

男の瞳が三つの巴紋を描いて回転している。

写輪眼。

マダラは化け物の動きを完全に見切った。

触手が迫る。だが、その軌道は全て見えている。一歩踏み込み、触手を掴む。引き裂く。回し蹴りで化け物を吹き飛ばす。

 

「遅い」

 

マダラは冷たく言い放った。

 

「尾獣の尾にすら及ばん」

 

化け物は再生しようとする。

だが——

 

「火遁・豪火滅却」

 

マダラの口から、巨大な火炎が放たれた。炎は化け物を包み込む。再生する間もなく、完全に消滅させた。

 

七海は呆然と立ち尽くした。

——一瞬で、特級を…

 

 

 


 

 

 

「…怪我をしているな」

 

「…助かりました」

 

七海は辛うじて言葉を絞り出した。

 

マダラは小さく頷き、周囲を見渡した。奇妙な建造物。見たことのない街並み。

そして、目の前の男。

短い沈黙が流れた。

 

「失礼ですが、お名前を」

 

「…マダラだ」

 

「マダラさん…」

 

七海は男を観察した。三十代前半。黒髪、長髪。戦闘服のような黒い装束。傷一つない。

そして、あの目…

 

「(見たことも、聞いたこともない…)フリーランスの術師の方ですか?」

 

「…?」

 

マダラは首を傾げた。何を言っているのか分からない、という表情だ。

七海は内心で困惑した。反応が…おかしい。

 

「あの、補助監督が追加で術師を要請したのかと」

 

「…何の話だ」

 

「…!」

 

話が通じない。

 

「では…あなたは術師ではない、と?」

 

「術師? 知らん」

 

「……」

 

七海は眉をひそめた。

術師を知らない? では、先ほどのは——

 

「ですが、先ほどの火炎、あれはあなたの術式ですよね」

 

「術式…?」

 

マダラは少し考えてから答えた。

 

「火遁のことか」

 

「火遁…?」

 

「貴様、火遁を知らんのか」

 

「…いえ、存じ上げません」

 

マダラは七海を観察した。忍ではない。それは明らかだ。

互いに困惑した表情で見つめ合う。会話が噛み合わない。

 

「…失礼ですが、ここはどこかご存じですか」

 

「いや。気づいたら、ここにいた」

 

「では、東京は?」

 

「東京…?」

 

 マダラは少し考え込んだ。

 

「それは、地名か?」

 

「…!?」

 

——東京を知らない!?

七海は驚愕した。

短い沈黙。

 

「…私は七海建人と申します」

 

 マダラは小さく頷いた。

 

「呪術師です。呪霊…さきほどの化け物を祓う仕事をしています」

 

「…そうか」

 

——お互い理解が進んでいないようだが…敵意は感じない。それに…命を救われた

 

「…失礼」

 

七海はそう言って、携帯を取り出し電話をかけた。

 

「…もしもし。五条さん、至急来ていただけますか」

 

『おや? 珍しいね、七海から緊急連絡なんて』

 

「…説明しづらい状況です」

 

『ふーん? 面白そう。すぐ行くよ』

 

七海は電話を切った。

 

「…今のは?」

 

マダラが尋ねた。

 

「通信機器です。遠くの人と話ができます」

 

「…」

 

マダラは少し興味深そうに携帯を見た。

 

——電話も知らないのか…まあいい、いちいち驚いていたらキリがない。

 

「私の仲間を呼びました。あなたにとっても、手がかりが得られるかもしれません」

 

「…そう願いたいな」

 

マダラは月を見上げた。

 

無言で待つ二人。

気まずい静寂が、廃墟に満ちていた。

 

 

 


 

 

 

数分後——空間が歪んだ。直後、目の前に男が現れた。

 

「やっほー七海。で、どした?」

 

白髪、サングラスをかけた長身の男。軽い調子だが、その存在感は圧倒的だった。

 

「五条さん」

 

五条悟は周囲を見渡した。破壊された廃墟。戦闘の痕跡。そして…五条の視線が、マダラに向いた。

 

その瞬間、五条の動きが止まった。

 

——六眼が、処理しきれていない?情報が多すぎる。いや、違う。情報の『質』が違う。

 

視界が歪む。

 

「…っ」

 

五条は思わず目を逸らし、額を押さえた。

 

「五条さん?」

 

七海の声が遠く聞こえる。

五条悟が、動揺している? 七海は驚愕の表情を浮かべた。

 

五条は深呼吸をした。六眼の処理条件を変更する。この人物に限って、常時解析を停止。

——じゃないと、()()()()

 

数秒後、五条は顔を上げた。

 

「…ふう」

 

いつもの調子に戻る。

 

「やあ、初めまして」

 

五条は軽く手を上げた。

 

「五条悟。七海の先輩ね」

 

マダラは五条を見た。

 

——この男…さっき、オレを見た瞬間に何かが起きた。

あの目…ただの目ではないな。

 

「マダラだ」

 

「マダラさんね」

 

 五条は少し首を傾げた。

 

「で…君、何者?」

 

「…分からん。気づいたら、ここにいた」

 

「ふーん」

 

 五条は七海を見た。

 

「七海、詳しく教えて」

 

七海は簡潔に状況を説明した。

 

等級詐欺の特級呪霊。

マダラが突然現れて瞬殺。火炎を放つ術式。

術師を知らない。東京を知らない。電話も知らない。

 

「へえ…特級を瞬殺ねえ」

 

五条は興味深そうにマダラを観察した。

六眼はオフにしているが、それでも分かる。この人物は、ただ者ではない。

 

「マダラさん、どこから来たの?」

 

「…分からん」

 

「記憶は?」

 

「ある」

 

「じゃあ、なんで東京知らないの?」

 

「…オレの世界には、そんな地名はなかった」

 

「!」

 

五条の表情が少し変わった。

 

オレの世界——?

 

「ふーん…異世界系?」

 

「……」

 

五条は七海を見た。

 

「ねえ七海」

 

「何ですか」

 

「異世界から自分のことを助けに来てくれるって、なんかロマンチックじゃない?」

 

「…ふざけないでください」

 

「あはは、冗談冗談」

 

 五条は真面目な顔になった。

 

「で? マジな話、どうだった?」

 

「…敵意は感じませんでした。むしろ、助けていただきました」

 

「だよねー」

 

——嘘はついてなさそう。敵意も感じない。それに…七海を助けてる。なら、とりあえず大丈夫か。

 

「じゃ、マダラさん。詳しい話、場所変えてからでいい? 僕らの学校で」

 

マダラは五条を見た。

この男…軽薄に見えるが、あの目…ただの目ではないな。オレを見た瞬間、何かが起きた。

 

「…構わん」

 

マダラは内心で思った。この世界のことを知りたい。この男なら、何か知っている気がする。

 

「オッケー。じゃ、移動しよっか」

 

マダラは月を見上げた。

 

——柱間…俺は今、どこにいるんだ。

 

 

 






時間軸は、原作開始直前くらいです。
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