血湧き肉躍ってこその戦い......だったのだがな   作:シズネ

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NARUTOと呪術廻戦が好きな人は、それぞれの世界のキャラが、別の世界に行った場合、どうなるかを考えたことがあるかもしれません。個人的には、NARUTOの方が圧倒的に強いと思っています。




2話:一族最強の男、最弱になる

数日後——廃ビル。

 

昼。太陽が照りつける夏の日。

七海とマダラは、呪霊祓いの任務中だった。

 

「あれが呪霊です」

 

七海は廃ビルの奥を指差した。

そこにいるのは、二級呪霊。人型に近いが、腕が異常に長く、顔には目がない。

 

「人間の負の感情が具現化したものです」

 

「…なるほど」

 

マダラは呪霊を観察した。あの夜、七海を襲っていた化け物ほどではないが、それでも一般人には脅威だろう。

呪霊がマダラたちに気づき、咆哮を上げた。異常に長い腕を振り回し、襲いかかってくる。

マダラは一歩踏み込み、呪霊の攻撃を避けながら体術で圧倒する——が、そこで手を止めた。

 

「…面倒だな」

 

体術だけでは呪霊は祓えない。呪力を持たないマダラであったが、この世界ではチャクラが呪力にかなり近い性質を持っていることが、数日の任務で分かっていた。

マダラはチャクラを拳に集中させ、呪霊に叩き込んだ。回し蹴りで壁に叩きつけ、そのままチャクラを込めた拳を叩き込む。一瞬で、呪霊は消滅した。

 

「…相変わらず速いですね」

 

七海は感心したように言った。

 

「この程度なら、大した術も要らん」

 

「マダラさんは『火遁』以外にも術を?」

 

「…まあな」

 

マダラは素っ気なく答えた。

七海は黙った。まだ実力を隠している…この人は一体どれほどなのか。

 

「…それにしても」

 

七海が口を開いた。

 

「?」

 

「こんな強いマダラさんが、人相手だと最弱とは。不思議なものですね」

 

「…フッ」

 

マダラは口元を緩ませた。あの時のことか——

 

 

 


 

 

 

——数日前、五条との邂逅直後。

 

「じゃ、移動しよっか」

 

「補助監督のところに戻って車を…」

 

「いやいや、僕の術で飛んだ方が早いよ」

 

五条はマダラに近づいた。

 

「マダラさん、ちょっと僕に触れてもらっていい?」

 

「…?」

 

マダラは警戒したが、五条の肩に手を置いた。五条は七海の肩にも手を置く。

 

「じゃ、行くよー」

 

空間が歪んだ直後、一瞬で景色が変わった。

 

「!?」

 

マダラは驚愕した。

 

——一瞬で景色が…扉間の飛雷神の術か? いや、時空間忍術の類ではないな。瞬身の術に近いか。

 

月明かりに照らされた広大な敷地。伝統的な日本建築の校舎。

 

「着いたよ。東京都立呪術高等専門学校」

 

五条は軽く言った。

マダラは周囲を見渡した。広大な敷地。古い建物。静かな夜。

 

「言い忘れてたけど、僕はこの学校の教師ね。じゃ、中入ろっか」

 

——銀髪で顔を隠す教師は、どこの世界も共通なのか? いや、そもそもあの男は教師だったか…

 

マダラはふと前の世界にいた()()()を思い浮かべながら、五条の後をついて行った。

 

 

 


 

 

 

五条は校舎の中を案内した。廊下を歩き、応接室に入る。

 

「ちょっと待っててね。学長呼んでくるから」

 

五条は部屋を出た。

マダラと七海、二人きり。マダラは窓の外を見た。月が見える。

 

「…怪我は大丈夫ですか」

 

七海が尋ねた。

 

「問題ない」

 

「あの…さきほどは本当にありがとうございました」

 

七海は深く頭を下げた。

 

「…礼を言われるほどのことはしていない」

 

マダラは素っ気なく答えた。月を見上げたまま、静かに佇んでいた。

 

——この人、敵意は感じない。むしろ、どこか…遠くを見ているような。

 

七海はそう感じたが、何も言わなかった。

 

数分後、ドアが開いた。

五条が、サングラスをかけた男を連れてくる。恰幅の良い体格、厳格な雰囲気。

 

「七海、無事でなによりだ」

 

「はい」

 

男はマダラを見た。

 

「初めまして。夜蛾正道だ。この学校の学長を務めている」

 

「…マダラだ」

 

マダラは短く答えた。夜蛾は七海からも改めて説明を聞いた。

異世界から来た。人間を助けた。敵意はない。

 

「事情は把握した(理解の範疇は超えているが…)」

 

夜蛾は学長として毅然とした態度を取りながらも、その表情には隠しきれない困惑の色が浮かんでいた。

 

五条が口を開いた。

 

「とりあえず今夜は泊めてあげたら? 詳しいことは明日考えようよ」

 

「…そうだな」

 

夜蛾はマダラを見た。

 

「マダラ殿、当面この高専に滞在してもらえるか? あなたもその方が都合が良いだろう」

 

「…世話になる」

 

「明日改めて話を聞かせてもらう」

 

マダラは小さく頷いた。

 

「では、部屋は——」

 

五条が言葉を遮った。

 

「あ、その前にさ」

 

「五条…」

 

夜蛾は少し呆れた表情を見せた。

 

「だって気になるじゃん。特級瞬殺したんでしょ?」

 

五条はマダラを見た。

 

「マダラさんの強さ、ちょっと確かめてもいい?」

 

「…構わん」

 

夜蛾は溜息をついた。

 

「…分かった。訓練場に行こう」

 

 

 


 

 

 

月明かりの下、広大な訓練場。

 

「じゃ、マダラさん」

 

五条は軽い調子で言った。

 

「ちょっと僕に攻撃してみて」

 

「…いいのか?」

 

「うん。本気でどうぞ」

 

マダラは五条を見た。

——この男…自信があるな。

 

マダラは五条に向かって拳を振った。

 

その瞬間——マダラの体が止まった。

チャクラが霧散する。

 

「…!?」

 

マダラは驚愕した。

 

「あれ? どうしたの?」

 

五条は首を傾げた。

マダラは再度攻撃しようとする。だが、同じ現象が起きる。体が動かない。チャクラが消える。

 

「何だ…これは」

 

マダラは自分の手を見た。

 

「ねえ、マダラさん。もしかして体が動かない?」

 

「…そのようだな」

 

「ふーん…どれどれ」

 

五条は一時的に六眼の解析を再開した。術式の解析はオフのまま、呪力の流れだけを見る。

マダラを観察する。

 

「…なるほどね」

 

五条は少し驚いた表情を見せた。

 

「これ、天与呪縛だわ」

 

「「…!」」

 

「天与、呪縛…?」

 

夜蛾と七海が驚愕の表情を浮かべる中、一人理解が追いついていないマダラは尋ねた。

 

「うん。生まれつき何かを失う代わりに、何かを得る呪い。マダラさんの場合…対人への力が完全に封じられてる」

 

「では、マダラさんは人間と戦えない…?」

 

「そ。完全に不可能」

 

五条は続けた。

 

「人間に対して害意を持った攻撃や動きが縛られてる。でも、七海の時のように呪霊相手なら問題なく力を発揮できる」

 

マダラはしばらく沈黙し、自らの拳を見つめた。

 

——人間に攻撃できない…これが、この世界がオレに課した制約か。

 

「マダラさん?」

 

五条が尋ねた。

 

「…そうか」

 

マダラは小さく笑った。

 

「ちょ、なんでマダラさん嬉しそうなの?」

 

五条は少し困惑した表情を見せた。

 

「…別に嬉しい訳ではない」

 

マダラは答えた。

 

「悪くない、と思っただけだ」

 

——どうせもう、人と戦う必要もない。

 

「呪霊を祓えるのなら、問題ないだろう」

 

七海はマダラの表情を見た。何か、吹っ切れたような——

 

「では、マダラ殿。一つ聞いてもいいか」

 

夜蛾は少し考えてから言った。

 

「…何だ」

 

「…この世界では、日本国内での怪死者・行方不明者が年平均1万人を超えている」

 

夜蛾は真剣な表情で言った。

 

「その殆どが、人間から流れ出た負の感情——"呪い"による被害だ」

 

マダラは少し目を見開いた。

 

「…1万人」

 

「で、僕ら呪術師がそれを祓ってる。でも、全然足りてない」

 

五条が補足する。

 

「呪術師の数は限られている。一級呪術師に至っては、全国でも数えるほどだ」

 

夜蛾が続けた。

 

マダラは月を見上げた。

——1万人…オレの世界の戦争と変わらんな。いや、もっとひどいかもしれん。そして、オレは人を殺すことしかできなかった。だが、この世界では——

 

「…これも、運命なのだろうな」

 

マダラは小さく呟いた。

 

「?」

 

その場にいた3人が首を傾げる。

 

「俺も、その呪霊狩りとやらに手を貸してやろう」

 

——それ以外にやることもないしな。

 

「…その代わり、この世界のことを教えてもらいたい」

 

「…感謝する」

 

夜蛾は頭を下げた。

マダラは月を見上げたまま、静かに佇んでいた。

 

——今度は間違えずに生きられるだろうか。柱間…お前のように。

 

 

 


 

 

 

「マダラさん」

 

七海の声で、マダラは現実に戻った。

 

「…いや、何でもない」

 

マダラは歩き出した。

 

「用も済んだし帰るか」

 

「…はい」

 

二人は高専への道を歩き始めた。

その時、マダラの懐で何かが震えた。

 

「?」

 

マダラは携帯を取り出した。数日前、五条から渡されたものだ。

 

「スマートフォン、というやつか…まだ慣れんな」

 

マダラは操作に少し手間取りながら、通話ボタンを押した。

 

「出たぞ」

 

『おっ、マダラさん。ちゃんと出られたね』

 

五条の声だった。

 

「何の用だ」

 

『仙台で面白い事件があってさ』

 

五条は軽い調子で言った。

 

『宿儺の指が封印解けちゃったんだよね』

 

「宿儺…?」

 

『特級呪物。超ヤバいやつ』

 

「…」

 

『で、それを飲み込んじゃった高校生がいてさ』

 

「…飲み込んだ?」

 

『うん。で、宿儺の器になっちゃった』

 

——宿儺の器…九尾の人柱力のようなものだろうか。

 

『明日東京に連れてくるんだけど』

 

「…」

 

マダラは黙った。別に興味があるわけではないが——

 

『マダラさん、会ってみたいでしょ?』

 

「…別に」

 

『えー、絶対気になってるじゃん。特級呪物とか、器とか』

 

「…」

 

『まあ、マダラさん高専に住んでるし、どうせ会うことになるんだけどね』

 

「なら聞くな」

 

『あはは。じゃ、明日ね』

 

電話が切れた。

 

「…宿儺の器」

 

七海が呟いた。表情が硬い。

 

「まずいことなのか?」

 

「…はい。最悪です」

 

七海は答えた。

 

「宿儺は、千年前の呪いの王。それが復活したというのは…」

 

「…そうか」

 

マダラは七海の横顔を見た。五条の軽い口調とは裏腹に、この世界の呪術師たちにとって、重大な事態が起きていることを悟った。

この世界に来て、数日が経った。呪霊を祓い、この世界のことを少しずつ学び、ようやく慣れ始めてきたところで——

 

宿儺の器。

新たに、何かが動き始めようとしていた。

 

 

 

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