クソの役にも立たない転生特典なんかより筋肉だろ   作:糖分至上主義

1 / 7
初等教育 終えました

10歳になった。

ついでに初等教育も終わった。

ついでについで、何も無かった。

5歳の頃に経験したあの化け物との戦い(?)を経て、いつ襲撃が来てもいいようにとフルダイブ型の仮想空間で訓練なんかもしたのだがこれが全く意味がなかった。

いつになれば俺も物語の主人公になれるのやら......

 

動物園での1件。

あれは本当に国家存亡とかそういうレベルでマズかったようで、チエリさんが連れて来た防衛官の人達の手によりE地区は封鎖されていった。隣接するD地区とF地区はE地区が終わるよりも早く封鎖され、1ヶ月の間は他地区の避難所生活を余儀なくされた。

母さんも防衛官として一度派遣されてたようだが、カメレオンは結局あの場で全て倒していたらしい。

俺自身、E地区で暮らしていたからてっきりが避難所生活になるものだと思っていたら、なぜだか母さんの職場で過ごすことになった。

 

 

 

『楽園機構第八支部』

 

初めて訪れた時はなんて物々しい名前なんだと目を打ったが、この国という人類の楽園を守る、あながち間違った名前でもないらしい。

そこでは毎日職員さんから多くの話を聞かせてもらった。

度々出ていた防衛官とは、この国を外界門から侵入してくる特異種を相手取る危険な仕事らしい。

 

『カメレオン型の特異種、アゲモと呼ばれる彼らはこの国近辺では確認されていません。なぜならこの国の近辺では常に天候が変わりやすく、餌となる生物がほとんど居ないからです。まあそれはおいおい習うので今は置いておきます。

そぉれよぉり!!

モグラ型ですよもぐらがぁた!

なんなんですかねアイツらは。たしかに地下で繁栄した特異種が少ないのには違和感がありました。特異種は往々にして身体が大きくなります。でないと彼らの特殊な細胞に、肉体が耐えられないからです。そうすると体を動かすのに多くのエネルギーを必要とするのは必定。

そのことから地中には特異種は生存しずらいと考えられてきたのです。

しかぁあああし!それが!!とうとつに!!!変えられたのです。ああ、興奮がなり止みませんねぇえ』

『はーい、発作は抑えてね』

『支部長にバレたら殺されますよアンタ』

 

職員さんは変態だった。普段はいい人だけど特異種というワード(なんなら得意)とか言うとスイッチが入る。

そして絞め落とされていくまでが1セット。

 

そして母さん。

唐木 真澄は楽園機構第八支部で一番偉い人だった。

『広域』っていう通り名が付くくらい有名だったらしくて、腕っ節の強さだけで成り上がったらしい。みんなそれを尊敬してるようだったけど、母さんを見るとちょっと嫌そうな顔をしていた。

 

あの超能力というか魔法というか、そういう類のものについても教えてもらった。本当ならもう少し後で教わるらしいけど、もう既に目撃してしまったので特例の措置らしい。ラッキー!

 

あれは【祝福】というらしい。

呼び方は異能だの魔法だの色々あるらしいけど、「祝福」がこの国では一般化しているようだ。

 

「祝福」とはその人物に最も適した才能が進化したもの、というにが通説なんだとか。走ることが得意な人は足の早くなる「祝福」が。誰かを助けたい人には人を治す「祝福」が。

それぞれの心の奥底に最初に抱いた願望みたいなのが強く反映されるらしい。

ついでに極たまに【祝福】ってやつは進化もするらしい。

曰く母さんの空に浮かんでた鏡は『俯瞰する』ことの到達点らしい。

チエリさんは演劇の「祝福」が進化したものだとも教えられた。

 

正直うらやましすぎる。

「祝福」が発現するのが大体大二次成長期前後らしいからこの話を聞いたときはものすごく待ち遠しく感じたんだっけか。

俺の「超人のための特注品」は実際ものすごく使いやすいと思う。ただし、俺が見た「祝福」にはすべて()みたいなものがあったんだ。

俺だってああいう必殺技ほしい。おとこのこだもん......

 

『「祝福」なんていうが俺にとっちゃ呪いと同義だねこりゃ。自分の願望が可視化されてるみたいで気味が悪いぜ』

『俺も本来は農家したかったんだよなあー。いつか牛とか買ってさ。のんびりとしたいもんだ』

 

一部の祝福次第では仕事先も決められてしまうらしく、特に動植物に関する飼育なんかは種の保存や直接的な国家運営に影響するらしく、就くのが難しいらしい。

こんな閉鎖的な国でも食事が満足にできるのはそういった緻密に計算された賜物だったとは。

 

 

ああ、国といえばだけど。

小学校(とはいっても通ってたのは保育所と同じなんだけど)で軽く国の制度とかを習った。初等教育はいくつかあるどこかの教育施設に通えばいいらしいが、中等教育、すなわち「祝福」についての教育が始まるのは国の中心にある特区でしか行われないらしい。それも一年で終了し、以降の教育は「祝福」にあった()()が3年間(個人差あり)行われるらしい。

すなわちあと一年であのモンスター「薫」から解放されるということだ。この事実に気が付いた日、俺は泣いた。

母さんに伝えると、そこで初めて一年逢えないことに気が付いたのかえんえんと泣いた。挙句特区の特別教師として参加するとすごい形相をしていたので、ダイハチ(楽園機構第八支部)のみんなにそれとなく伝えておいた。

みんなすっごい笑顔だったからひとまず安心か。

 

また面白い制度に「予言」とか「近未来視」みたいな「祝福」持ちのひとたちが明日の天気とかを議論している組織があるらしい。最初聴いたときはすごい便利そうだなとか思ったりしたけど、結構この手の「祝福」は存在するみたいで、それよりも「鑑定」などの「祝福」を見極めれる人達が重宝されているのが現状だとか。

ただしこういったことを幼い子供に教えると「祝福」の偏りとかが出るらしく、基本は「祝福」が発現する以前の子供には気づかれないようにするのが法律で定められていた。

まあ国内で急に火を出したりすると危険だし、犯罪防止的な観点でもあまり「祝福」を市街地で使うのは歓迎されないらしい。

 

『だからあ、悪いことしたらオシオキしちゃうゾ!なんだったらいまからでぇもぉお。えひ、へひひひ』

『はーい犯罪者はオジサンたちとあっちに行こうねー。・・・なんでこんなやつが教師やれてたんだろうな』

『こういうやつだからこそ教師になったんだろ』

 

俺の先生は美人な女性の職員さんだったけど、犯罪者予備軍だった。ダイハチには変わり者や変態が多く生息していた。

あの先生は虫眼鏡を向けて観察しただけで、踊る海藻みたいになっていた。正直怖い。

 

でも皆優しく、俺に分け隔てなく接してくれたいいやつでもあった。

 

そんな慌ただしい生活を五年続けた今日、俺は自室で着替えやら何やらを圧縮ケースに詰め込んでいた。

明日からはこのダイハチを出て寮ぐらしになるからだ。1年間、親元を離れるのは少し不安だけど、それ以上のワクワクが胸を突き破りそうだ。

英雄のような男を目指す、そのための第1歩が始まる予感がしていた。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

『楽園機構第八支部』 正面ゲートにて

真澄と愉快な仲間たち(変態・農家志望・ショタコン)3人は晴れやかな顔で梓を送り出していた。

 

「あんなに小さな子供だったのが、もう独り立ちですか」

「ああ、そうだな。1年後、元気な姿で帰ってきてくれるといいのだがな」

「良かったんですか所長、梓くんと一緒にいかないで?最後の会話とかしなくってこの先生きていけますか?あと首に回している手を離してください」

「何言ってるんだ。今の私を梓と二人で車になんて乗せてみろ。操作用の人工知能を破壊してそのまま逃避行に繰り出すぞ」

「所長。目がまじすぎて怖いっす」

 

真剣な表情で宣う真澄に瀬畑(農家志望)は心底引いた。

「この人ならほんとにやりかねない」、そう思わせるには十分すぎるほどの前科があったからだ。

 

「それじゃあ私は日課の壁外観察をしなければならないので失礼するよ」

「まあ待て帯解。お前聞くところによると梓のことを勝手に門外に連れ出したらしいな」

 

スタイリッシュに白衣を翻しダイハチに帰ろうとした帯解(変態)の肩を真澄が開いている方の手で掴む。

 

「なに、将来的にここで働く可能性が高いんだ。早いか遅いかの違いでしかないさ」

「そうかそうか。それで?」

「ふむ。。。瀬畑、私を助けろォ!」

 

先程までのスタイリッシュな態度をいっぺん、白衣を脱ぎ捨て逃げ出そうとする帯解。

しかしその腰元に絡みつくように2本の足が伸びてくる。

 

「先ッ輩ィ、だいじょうぶですよぉ。ひとりはさびしいですもんね、わたしがついてますよおおおおおお」

 

どんどんと締まるヘッドロックにさすがにやばいと思った御幸(ショタコン)が醜い自己犠牲の精神を持ってして、首を捨て他者の不幸を掴み取る。

 

「殊勝な心がけだな御幸」

「はいぃ!あの逆賊めを捉えたのは御幸ことり防衛官であります。どうぞ、恩赦の方を、なにとぞお」

「それとこれとは別に決まっているだろうが、なあ?あのカバンから溢れ出た盗撮写真。どうやって撮った?」

「本官一切記憶にございません!」

「そうか。いっぺん死んどけ」

 

みなこうしてバカ騒ぎをしているのも、ひとえに梓がこの第八支部を出ていってしまったからである。

若干1名本当に欲望のままに動いていた犯罪者予備軍を覗いて。

 

 

 

 

「そういえば所長。あの予言の御子様ってそろそろでしたよね」

「ああ...【祝福】を生まれつき持っている子、なあ...。一体その子供は何を見て、何を願ったのだろうな」

「私が思うに、御子とやらは生まれるべくして生まれたに違いありませんね。そういう運命の星の元。祝福なんてものは炎羅曰く()()()()()()()らしいのでね」

 

 

第一章 始まりの時代 fin

 

 




これにて一旦の区切りとさせていただきます。
次章もある程度構想が決まれば随時投稿していきたいと思います
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。