クソの役にも立たない転生特典なんかより筋肉だろ   作:糖分至上主義

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クソの役にも立たない魔法 貰いました

 気がついたら転生していた。

 それ以外の記憶が無いからもしかしたらそう思い込んでいる異常者なだけかもしれないが。

 ここで言いたいのは唯一赤ん坊の頃から記憶にあった【代償魔法】とかいう恐ろしいほど不穏な能力についてだ。

 初めは考え無しに、それはもうワクワクしながら使ってみた。

 

 結果はさんざん。

 何を代償にしたのか、何を得たのか、一切分からない上に三日間気絶した。

 

「うだ、だぁう。だぁ!(こんなもんポンポン使えるかー!)」

 

 こんな産廃スキルいらない。いっそ【代償魔法】を代償にしてやろうか。

 最悪転生特典が消えるだけなのでやめておくか。もしかしたらまだ未来に何かあるかもしれない。

 

 

 

 あの魔の事件から3年がたった。

 幼少期のことが聞きたい?赤ちゃんプレイを読み聞かせるなんて誰得だよ。

 あれからいくつかわかったことがあるから報告をしようと思う。こうして脳内でイマジナリーフレンドと話していると、親に病院に連れていかれたのは懐かしい記憶だ。

 

 気絶という副作用に負けず、色々と()()魔法が使えないかと試してみた。

 結果は何も無かった。本当にそれらしいものすらなく、【代償魔法】とかいうクソ魔法も一切使えない。

 ...俺だってここ数年で読んだ物語の、寡黙な魔法使いのように魔法を自在に使いたい!

 偉大な王様みたいにトロルを一撃で吹っ飛ばしたい!

 猿を連れた親分と一緒に難解な事件をスパッと解決したい!

 こんなよく分からんモノよこすならせめて取扱説明書を添付しといて欲しい。

 

 ああ、あと記憶は無いと言ったが、こっちには新たな発見があった。

 一般的な名称(例えばコップとか電気とか)は1度見聞きすれば、「あー!そんな名前だった!」とか、使い方も歯車がかみ合ったかのように思い出したて、記憶に刻まれた。

 逆に全く聞き覚えのない単語は聞いてみても分からなかったし、何度も辞書を引くことでやっと覚えられた。子供の脳は記憶を刻みやすいとか言ったやつはどこのどいつだ。そもそも集中力が続かん。

 ああ、ダメだ。眠気が一気に来た。今日はトレイン・シェッドという単語を覚えたから寝ることとする。

 

 

 

 無事5歳になり、立派な保育園児として園内に教会があるタイプのところに入園しました。一度見ても記憶に刻まれず、知らない世界みたいで結構ワクワクしている。

 実は少し親が過保護であったため、あまり外に出して貰えなかったのだ。おそらく赤子が急に気絶して寝たきりになったり、不定期に気絶(【代償魔法】の仕業)を繰り返したため定期的に病院に通っているのだ。

 気まずいったらありゃしないし、一時期もっと大きい病院を紹介されかけて本当に焦った。

 しかし今日からはそれも終わり、母の手から羽ばたくことになる。目標は友達100人!

 

 

 ■■■■■

 

 

「今日からあなたたちの新しいお友達になる、唐木梓《からき あずさ》くんです!みんななかよくしてあげてね」

「からきあずさです。おねがいします」

 

 ピンクのエプロンを着た若い女性の先生に紹介されて、室内をキョロキョロ見回していた子供が、距離感を測りかねている別の園児達に挨拶をする。

 

 ここはエール聖使保育園。

 この国に複数ある保育園の中で最も歴史があるものの、市街地から離れた場所にあるため生徒数が少ないことで有名な施設である。

 

 今日入園を果たした、この国では珍しい夜を吸い込んだような髪の毛の少年に、付近の子供たちからは好奇の視線が集中し、誰が先陣をきるのかと独特の空気が漂っていた。

 

「私かおる!あずさくん、おままごとしよ!」

「え・・・う、うん!」

 

 そんな中、1人で絵本を読んでいた桃色の髪色をした少女が輪を抜け出して少年の手を掴む。そしてそのまま流れるように腕を掴むと園内の砂場へと連れ去ってしまった。

 パチクリ、と周りが見回しているのも気にせずに二人の園児は砂場で泥団子を作り出す。

 

「あなた、ご飯ができましたよ。いっぱい食べてくださいな」

「えっと・・・泥団子は食べられない、ですよ?」

 

 薫が手馴れた手つきで泥団子をつくり、何個も磨き上げていく。

 その道十年のようなスゴ技に梓が見とれていると、積み上げられた泥団子が置かれる。

 

 

 いつの間にか泥団子作りからままごとに変わっていたらしく、ご飯(泥団子にしか見えない)とステーキ(これまた泥)、アイス(泥ry)地べたに並べられた。

 

 ニコニコと薫が梓に泥団子を近づけて。

 

「え、待って、本気で言ってる?コレ。ちょ、ま」

 

 おぇぇえええ

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 子供、コワイ。

 アイツ、ままごとと称して泥団子を口に突っ込んできやがった。本当に許せない。

 初日にして既に浮いていたが、アレが決定打になり完全に浮いてしまった、なんて事にならないよう切に願う。そう考えると先生に泣きついてかおるに仕返ししたのが、今更ながらに恥ずかしくなってきた。

 

 

 ――あれから1週間――

 

 あれ?なんでだろう。周りの子たちが全然近寄

 ってきてくれないや!

 

 

 オレは 孤高の 戦士 だ!

 

 

 …見方をかえよう。一人の時間が増えたことにより更なる研究ができるのだ!勇敢な戦士を称える歌とともに、不快な記憶を押し流して実験結果をおさらいする。。

 あれから何度も自己研鑽()に励んだ結果、新たに判明した能力はものすごい身体能力だと判明した。実際頭の中で想像したことは何でもできた。

 

超人の為の特注品(パーフェクトオーダー)

 

 僕はこの能力をそう名付けた。

 もううれしいったらありゃしない。

 もう一周歌うか。

 

 

「ねえ、あずさくん。うるさいからそれやーめーてー」

 

 ちびっこモンスターがやってきた。こいつを追い返すために歌っていたのに。芸術の力を理解するにはまだ幼すぎたか。

 氷見薫《ひみ かおる》。あの日以降一生まとわりついてくるちびっこモンスター。こいつは人ではないので俺のソロ活にはカウントしない。

 

「じゃあかおるちゃん、あっちいってよ」

「だめ!だっていっつもあずさくんひとりぼっちじゃん」

 

 コイツコイツコイツコイツゥ!!!!

 あぶない、子供相手に泣かされそうになった。

 こいつはこういってことある事に俺に絡んでくる。魔々御途《ママゴト》という悪魔がやるような儀式に巻き込むために。

 忘れないてないぞ。いきなり首に毛糸を巻き付けてきて「散歩行こ!」と犬のように引き摺られたあの過去を。

 

「じゃあぼくがあっちいくから!」

 

 いつか復讐してやる。が、それはこの超人パワーを使ってやることでは無い。己には大いなる使命があるに違いないのだから。

 決して邂逅時のアレがトラウマになっている訳ではない。

 ないったらない。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 園内でいつもひとりでいるんです。という相談を受けた唐木梓の母、唐木真澄《からき ますみ》は少しの安堵とそれを覆い隠してしまうほどの不安に包まれていた。

 赤子のころから、どこか聡明な顔つきで世界の真理を見つめているような子だったからだ。

 それは子供の成長を見届ける度に彼女にそう思わせた。

 夜を吸い込んだような髪色に、三日月のように美しい目、桜のような笑顔に此方の心くすぐる優しい声色。

 これは天からの授けものだ、と真澄は考えそれはもう溺愛した。

 もっと成長するまで家から出ては行けないよ、と誕生日の度に息子に伝える。そんな若干歪んだ方向に。

 しかし梓自身が外に出たがったため、心を鬼にして保育園に通わせることを決めた。

 余談だが通園を決めてから、「そんなに辛いなら、僕もう少し家にいようかな…」と梓が苦笑いで伝えるくらいには泣いたとか。

 

 そして現在。真澄は頭を抱え、物理的に沈み込むほどソファに腰をかけ項垂れていた。

 

「やはりあの子の魅力に外の世界の人間は耐えられなかったか...いっそ此処につれも」

「お、お母さん。僕、保育園楽...しい...よ!かおりちゃんっていう友達もできたんだ」

 

(どうやら気をつかわせてしまったらしい。私はまだまだ親として、この子の母として未熟だな)

(まずい。またあんな軟禁生活に出戻りなんて真っ平御免だ!頼む母さん。あんなとこでも、僕にとっては憧れた外の世界なんだ。そのためだったら俺はあのモンスターとも仲良くできる)

 

 

「いや、お前を連れ戻したりはしないさ。

 それよりも。ほら膝の上においで。明日からいっぱい友達を作るための作戦会議だ」

 

 真澄は正真正銘の親バカだった。

 いや、この場合はその表現は半分正解で半分不正解である。

 梓自身も猫をかぶるのが上手く、そもそも5歳児が猫をかぶるなんてありえないことなのだから。

 梓自身の精神年齢が()()()ある程度成長した段階になっているというチグハグな状態がこの事態を引き起こしていた。

 

「来週末、確か外周圏の方に遠足に行くんだろ。その時にみんなといっぱい話して仲良くなるといい」

 

 

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