クソの役にも立たない転生特典なんかより筋肉だろ 作:糖分至上主義
なんと今日は待ちに待った外周圏近くにある公園へと遠足に行く日だ。朝から母さんが張り切って弁当を作って、とてもおおきな物を持たせてくれた。
だけど…遠足は班で行うようなパターンじゃなく、団体行動だった。
当然のようにあふれた僕だけじゃ、この大きさの弁当箱は食べきれないよ母さん…
この国は高い白亜の巨壁で守られているから安全度が最高値なんだとか。代わりに鎖国気味で且つ田舎にあるため物流はないに等しいんだとか。
この国はあの壁ができて500年間、一度も攻め込まれたことがないらしい。
「すごいねー!ずっとあっくんといっしょにくらせるね!」
「いや、ぼくはじゆうをもとめてたびにでる。あとかおるちゃんはこわいからヤダ」
そんな説明を、当然のように(図々しくも)横に居座るモンスターと一緒に聞かされた。
今いる場所は外周圏に繋がる場所のひとつ、「外周門」。
入国を管理する場所、らしいけどこの国にやってくる人なんてほとんど居ないからこうして僕らみたいなのでも見学にやってこれる。
「すごい!みたことないきかいでいっぱいだね」
「たしかにきんみらいてきだ」
最近になって知ったが、「あずさがかり」なんてものが園内に存在するらしい。1人でどこかに消える俺を探し出す役割なんだとか。だからこうして一人でいると必ずと言っていいほどコイツがやってくる訳だ。
なんでも薫がそれを自ら進んでやっているらしい。
もういろいろと絶望した。
このちびっこモンスター。本当にどこに行こうが俺を見つけ出しやがる。
ある時なんて教会の尖塔、そこの屋根上で寝転がっていたらなんとどこからか登ってきやがったのだ。
その後先生に見つかって一緒に怒られたのは苦い思い出だ。
ところで、実は俺の「
今のところ、間違えて熱々のフライパンを触って火傷したくらいだが、痛みがする前に回復した。色々と実験したかったが体が頑丈すぎてそもそも刃物なんかは刺さらないかったのだ。
何が言いたいかって言うと、俺は屋根から落ちた程度じゃ怪我しないし、万一怪我しても治るから怒られる筋合いは無かった。
「ねえ、あっくん。あれ、なあに?」
施設も無事に見終わり、今は自由時間で壁の付近にある自然公園にいる。
近未来的な機械が一生働き続けているのを見ていたい気もしたけど、公園から出ないのであれば自由にしていいと言われ「それなら」と意気揚々と子供たちの輪を抜け出してきた、はずだった。
「ねえ、あっくん!」
というか本当にどうやっていつも俺を見つけているのだろうか。そういう特殊能力でも持っているのかってくらい見つかる。世界が俺をメタってきてる。
「あっくん、あっくんってば!」
「なあに、かおるちゃん」
「だからあれなんだろうね?って」
別に彼女を無視していたわけじゃない。
この強化された体じゃ、子供の力で揺さぶったってなにも感じないのだ。
強化された聴力だと?めちゃくちゃうるさいよ。何言ってんだ当たり前だろ。
いい加減無視し続けるのも鼓膜に負担がかかるからやめてやるか。
面倒だけど相手してやる。どうせ普段見かけない虫とかだろう。
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あっくん。
ふしぎなせかいに生きている、なんだかおとなな子。いっつもひとりで、でもとってもたのしそう。
そのようすをみてるとむねのおくがソワソワするから、今日もあしたもあそんであげる。
・・・なんのはなしだっけ。
ああ、はじめてみた時からとってもきれーで、欲しくなったはなしだ。
だからみんなとあそんじゃダメっていっておいた。みんなにも言っておいた。
それから、それから。
なんだかカンムリみたいだなっておもったから首わをつけといた。
カンムリ。
わたしのだいじな家族。
わたしのだいじだった家族。
ある朝起きたらいなくなっちゃったから、こんどはどこにもいっちゃだめだよ。
えーっと、えーっと。
なんでこんなことかんがえてるんだっけ。
そうだ!めのまえにへんなのがちかづいてきて...
■■■■■
バチュン!
・・・あっぶねー!
なんかでっけぇ歯だらけのモグラがいやがった。
「おーい、かおるちゃん。ねえってば!」
薫に噛み付こうと、大口開けて突進してきたそいつは多分めちゃくちゃ早かったんだとおもう。
ぶっちゃけ俺からはちょっと本気出したら追いつける程度に感じたけど、割と今の俺強いはずだから普通の大人じゃ怪我してたんじゃないかと思う。
まあ殴ったらチリチリに弾けとんだから、耐久力はないのかも。
ちなみに呆然としていて薫の返事がない。ここに置いてったろかこいつ。
ん?地面が揺れてる?
ま、まさか!これは来たんじゃないか!?俺の、孤高の戦士としての活躍の時がッッッッッ!!
ヴォォウォー!
戦士の歌を歌え!
あ、モグラ発見。
■■■■■
突如として地震が自然公園を襲う。
最初は珍しいなー、などと真剣に、だけれどどこか対岸の火事のように感じながら話していた施設員たちだったが、次第に異常事態に気がつく。
「なあ、さっきからこの地震おかしくね?」
「ああ、こういうのをなんて言うのか知らねえけど、なんとなく言いてえことは分かる」
「今から言うのはさ、俺も変だと思うんだけどさ。
今確認とったんだけどよ。すぐそこの外界門にさ。するとあっちじゃ揺れてねえんだって。
もしかしてだけど...ここしか揺れてなくね?」
それは自然公園を訪れていたエール聖使保育園の職員も感じていた。
「ねえ、なんだかさっきから地面が動いているような気がするんですけが...」
「・・・皆さん。《反応》がありました。一度児童を集めましょう」
「「はい」」
「私は正門の方を」「私は裏の林の方を確認してきます」「私は周辺にいる子から声をかけてきます」「施設員さんへの連絡は任せてください」
そして子供たちはもっとも身近に感じていた。
「うわ!なんか変なヤツいる!」
「ケンちゃんやめなって。ちっちゃくても、ドーブツはこえーってばあちゃんが言ってたんだよ」
「かかってこい化け物め!正義の味方、ジャスティスマンがあいてになってやる!」
「うわ、歯がいっぱい生えてる。きもちわる」
「ゆ"う"ぐ"ん"、ごわ"い"よ"ー"!」
そんな悲鳴をあげる、あるいは勇敢か蛮勇かもぐらに殴りかかろうとしていた子供たちを、施設員と保育園児職員たちは次々と見つけて保護していった。
アレがなにか分からない子供たちも真剣な表情の大人たちを見て、どこか不安を感じ、次第に「なにか良くないことが起こっている」と理解しだした。
「園長先生!梓くんと薫ちゃんがいません」
「全くこんな時もあの二人は!私が探してきます。みなさんは管理室の中で待機をしておいて下さい!!」
「すっげー!!どこ見てもモグラいるじゃん。さてはこいつら...チュートリアルだ!」
一人の子供を除いて。
■■■■■
モグラたちは激怒していた。
己たちの同胞を殺したものがいる事実に。
己たちは地下を統べる偉大な種族のはずであった。
だからこそ何百年も引きこもりを決めているかの国の絶壁もものともしなかったし、誰にもバレずに侵入も果たした。
そう。侵入したまでは良かったのだ。
しかしいざ蓋を開け、地上に住まう肉クズどもを食い荒らそうとした我らが戦士長は、一瞬のうちに見るも無惨な塵芥へとかえられた。
あまりにも非道なおこないだ。我々は地底を統べるもの。地上に住まう肉クズを食い散らかす側だ。それがあんな死に方をしていいわけがない。
そのために各地に放たれていた一般兵どもをわざわざ集め、あの大地をカサカサと這う幼体にむけて突撃を開始した。
「ぐー、ングがうグ、グモモ」
「ぐがう。グモモ!グモモ!」
「あーはいはい。グモモ、グモモ。てかお前らさすがに弱くね?」
しかし予想に反してクズ肉の拳ひとつで一人、また一人と兵士が弾け飛ぶ。
我らが...我らが同胞が....あんな簡単に嬲られるなんて!
一斉攻撃だ!全方位から同時に襲いかかれば奴だろうとどうしようもできまい!
「ぐおぅる、おウる。グモモ!グモモ!」
「お、適当な攻撃は終わった感じか?おら」
んな!?一瞬で全ての兵が消え去っただと!?!?
何が起こった...全方位から噛みつきにかかったもの達が目や髭の一部だけ残して消えてしまった...
巫山戯るな!我々は誇り高き奈落龍の血族だぞ!
『ゴーぎ・ン。グモア、ギジュば、ゴキ』
(どうしたゴーギ・ンよ。地上はどうなっている)
『ゴン・ン・ヌン。ガガ、ギグるイ、ガジ』
(王よ。あ、相手に化け物がおります。勇敢な兵士長が立ち向かいましたが....)
『・・・ゴーぎ・ン。ヌン、ガジん、グヌ、グモモ』
(・・・ワシがゆく。貴様らはやつの足を噛み砕け。)
わ、わかりました。王がご出陣なさるというのであれば、我々はそれに付き従うのみにございます。
貴様ら!死ぬ気であの肉クズに食らいつけ!!
我らには常に王が着いておられる!我々が敗北することなどありえぬのだ!
「あ。今の最後の攻撃だった感じか?てかいい加減起きろよなこのちびっこモンスター。ずっと背負い続けるのって、意外と気を使うからめんどいなぁ」
馬鹿め肉クズが。我らの同胞を蹴散らした報いを今すぐにでもでも思い知らせてやる。
我らが王が必ずその喉笛に噛み付いて、その気味の悪い鳴き声を黙らせてやる。
『グーモーモー!』
『『グモモ!!!!!』』
貴様は生きたまま引き裂いて踊り食いしてやる!我々の同胞を殺したこと、それを一生悔やみながら、失意とふん尿にまみれて死ぬがいい!!!
「「グモモ!!!」」
「ん?うわさらにでけえモグラ来た。
よっしゃ、初戦おさめに一発カマすか!」
足を捉えました!王様。これでやつは身動きが取れまい!
クハハ、無様にキィキィ鳴いておるわ!
我らが王よ! 行ってk
おや、暖かい光が―――
「地面を踏みしめたら、思いっきしっ身体を捻る。そんでもってぇ!ひたすら拳を圧縮、圧縮、圧縮。ッッッッッらぁ!」
■■■■■
さよなら自由、ただいま軟禁生活。
あれからの事の顛末についてだが。
あまりにも力を込めすぎたからか、デカモグラを貫いた俺の拳は、勢い衰えず外壁をも貫通して辺り一帯を光で包んでしまった。
やべえと思った俺は薫を担いで事故現場とは反対の方、すなわち外界門の方に逃げ出した。
この国から出るために通らなければ行けない外界門には大人がいる。俺はそこに助けを求めた子供ということになった。
保育園の先生たちには泣きながら怒られて褒められるというよく分からない事になった。
ぶっちゃけ大人に褒められるのにハマりそう。ここでモグラぶっ飛ばしたのは実は俺でしたって超言いたかったし、他のガキ共に自慢したかった。
まあそれも一瞬で冷めたが。
薫がベッタリに進化したからだ。それでも今までは最低限の距離があったが、帰り道はそれはもうひっつき虫だった。
モグラについて覚えてないのか、それともなにかがあって黙ってるのか。
ニンマリとしながら頭を擦り付けてきて鬱陶しかった。
あの面をみてから、自慢したら絶対に良くないと俺のカンが言いだした。
俺のカンは「超人の為の特注品」で強化されてるからまず間違いない。
モグラ共は何故か太陽に灼かれて死んだことになってた。ウケんね。
まあ実際地上に出たやつからぶっ飛ばしたし、誤差だろ。
・・・俺は太陽の戦士かもしれない。
最後に。
死ぬほど母さんに泣きつかれた。これが一番今回ダメージを受けた。
「超人の為の特注品」は精神には作用してくれないみたいだ。
あらたな、出来れば知りたくない仕様だった。
「なあ、あずさ。母さんやっぱりお前は家にいた方がいいと思うんだ。あと10年くらい」
「はは...」
ははは....
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不定期更新ですが筆をおらないよう書いて行ければなと考えております。