クソの役にも立たない転生特典なんかより筋肉だろ   作:糖分至上主義

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誕生日 迎えました

軟禁生活が始まってかれこれひと月。

短いようで子供の俺にとってはつらい、時の止まった世界に終わりが見えてきた。

モグラの襲撃から始まったこの生活だったけど、案外退屈ではなかった。

というか常識的にかんがえてみたら、5歳の子供を一人でどこかに行かせるなんてしないんじゃないのか....?

そのことに思い至ってからは大人しく家で過ごした。

それに、ちびっこモンスターの襲撃や母さんとの買い物、こっそり抜け出した時に出会ったカメレオンとの戦闘(そこそこ強かった)、それから来年から始まる小学生生活に必要な道具選びなどイベントも結構あった。なんならまた今度買い物に行くし。

 

それと驚いことに、なんと小学校は保育園として通っているあの教会でそのまま行われるらしい。たしかに入園時期とか遅かったし、自分より大きな子供もそこそこ居たから納得といえば納得だ。

本来なら小学校と分けられているらしい。(実際母さんは別々のところに通ったらしいし)

なんでも大事なのは中学校にあたる教育機関に通うようになってからなのだとか。

気になったものの「その時になればわかるさ」と誤魔化されてしまった。

 

「あっくん。あーそーぼー」

 

ああ、コイツもいたわ。

ちびっこモンスターから普通のモンスターに進化した薫。

なんか最近デカくねコイツ。とちょくちょく思ってたけど、この前ついに確信を得た。

俺が小さい訳じゃないけど、元々胸よりしたくらいだった頭が肩に並ぶくらいの大きさまで成長している。

このことにより、突進の威力が以前にも増していて困りものだ。下手に受け止めると薫の首が逝くので上手いこと力を逃がしながら尻もちをつかないといけない。

俺はあくまで模範的5歳児なのだから。

 

「いい加減全力で突っ込んでくるのやめろ!」

「いへへぇ。だってあっくん受け止めてくれるでしょ?」

 

アホかこいつ。1回避けたら追尾式魚雷になったくせに何言ってんだ。そうなると大変なんだよ。だんだん怖くなるし。

 

(でもこうして見るとこいつ、見た目だけはほんとに可愛いんだよな...」

「え?私、可愛い?」

「ぅえ!?う、うん。か、、かわ、、い、い、、、ですよ」

 

やっべぇ。またやっちまった。締め付ける威力が上がってきた気がする。そのうちコイツ誰か殺るだろ。

最近こうやってポツリと言葉を零すことが増えだした。きっと軟禁生活の弊害に違いない。そうに決まってる。

 

 

 

 

「あずさ、準備は出来たか?」

「うん。バッチリだよ母さん」

 

今日は俺の誕生日。

おそらくそのサプライズか何かで以前から行きたかった動物園に連れていってくれる。ここは子供らしく、何にも気づいていないふりをしておこう。

 

「あずさはどの動物が好きなんだ?」

「馬!目がくりくりしてて可愛い!」

「そうかそうか!馬かあ〜。あいつら人懐っこくて可愛いもんなあ」

 

何より美味いしな!

 

「あとは、、、アヒル。それからクラゲとかも好き。」

「そうかそうか。梓はクラゲが怖くないのか。強い子だなお前は。・・・いつか動物を買ってみるのもいいかもな」

(クラゲ?刺されたトラウマとかあるのかな)

 

 

アンドロイドの運転する車内は快適で、母さんと動物も話をしながら時間を潰す。

こうして時間があると俺に構いたがる母さんだけど、普段は家にいないからこういう時にしかじっくり話すことは無い。

なんだか今日は体調も良さそうで安心だ。

 

(お、漂白されたような町とビル群が自然に侵食されだした。・・・俺ってもしかして詩人適正とかあるのか?)

 

もしかしたら気がついていないだけで結構そういうことあるのかもしれない。気がつくと恥ずかしいな...

 

 

 

■■■■■

 

 

 

太陽が高く登り、この国を覆う薄い膜の外から大地を照らす午前。

真澄と梓は動物園を訪れていた。

梓としては前世の記憶と今生の人生で見た図鑑である程度の知識を得ていても、実際に見聞きしていないのでとても興味があった。

一方で真澄も、久々の休暇を愛息とともに穏やかに過ごせることを心の底から喜んでいた。

 

 

「ほーら、ライオンだぞ梓」

「やっぱりライオンの近くには人がいっぱいいるね」

 

 

「あっちにフクロウなんかもいるみたいだよ!」

「そんなに慌てなくても動物は逃げないさ」

 

 

「思っていたより獣の匂いも強くない。あっちにはふれあいスペースなんかもあるみたいだな」

「おー!カモノハシが居る!!初めて見た!」

「お前にとっては全て初めてだろ?ふふ、おかしな子だな」

 

終始穏やかな空気の中、動物を長め続けるふたり。

餌やりのコーナを見つける度に梓が止まってやりたがるので、都度お金を渡し、一連の様子を写真に収める真澄。

 

「そろそろお腹がすいたんじゃないのか?梓。あちらで1度休憩しよう」

「うん!」

 

真澄は、普通動けば疲れてるはずなのに、梓を眺めているだけで活力が湧き目の下のクマが薄くなりだす自分の体に苦笑いしていた。

 

(なんとまあ私の単純なことか。いや、これはあの子のおかげだな)

 

それに対して予想以上に空腹になっていたことに気がついた梓は食事を食べながら胸中で感情を吐露していた。

 

(っべー!なんか、知ってるのと違ーう!!!

動物園ってあんな透明のガラス張りな部屋に入れられるだけなんだっけぇ?すっごい実験室のマウスみたいなんだけどお!?ところどころに見え隠れする部屋の天井のパイプとかしか気にならん。テクノロジーの浪漫とかバカにして舐めてたわ。実物見ると結構ワクワクするじゃねーか)

 

梓の感想は実の所大きくは外れていない。

ここは「動物園」と銘打った既存種保存施設だからだ。今回訪れたのはその中でも一般生物の保存施設であったため、梓は大抵の動物を知っていた、あるいは思い出せた。

 

ではなぜこんな施設ができたのか。

答えは人類が特定の国に根ざして過ごさざるを得なくなった原因、特異種から保護するためのものである。。

特異種は人間含む既存の生物を食い荒らす生命体のため、こうして各国ごとに様々な種を保存・管理・繁殖させているのだ。

最も最初に絶滅したとされるのはレッドリストの動物でも、特定の環境に適応した固有種でもなくクジラだとされている。

最初に現れた特異種の王個体、それがクラゲであったからだ。

縄張り意識が強く、それゆえ海に生きる生物たちはクラゲたちによってほとんどが死滅したか、浅瀬に追いやられたと文献にのこされている。

 

 

そんなことは露知らず、あらかた動物を見て回った梓は「次は海遊館に行きたいな」と呑気に真澄と会話していた。

 

 

「なあ、梓。母さんな...少し、忙しくなりそうなんだ。

だから...。だから、来週からまた保育園に行きなさい。本当は家でずっとすごしていて欲しいけれど。でもお前もそろそろ保育園に行きたいんだろう?」

「母さん...(俺、なんか保育園に行きたいやつだと思われてる??俺外に出たいだけだから別に保育園はどっちでもいいんだけど....)」

「ふふふ。そんな顔をするな。別に怒ったりしないさ」

 

 

「それに、最近は可愛い子が遊びに来てるみたいだしな」

 

 

そう告げられた梓は(真澄から見て)眉を寄せた困り顔を、目を見開いき驚いた表情に変える。

 

「え。・・・知ってたの?」

「ああ、お前のことはなんでも知ってるさ。ああいう優しい子とは仲良くしておけよ?」

 

「さって、お昼からはお楽しみのお馬さんのとこに行こうか!」

 

晴れやかになった顔の真澄を眺めて、梓は慌てて席を立ちかけ、勢いよくジュースを飲む。

 

「ああ、すまないな。ほらあわてず、ゆうっくりと飲むんだぞ」

 

今度は真澄が慌ててティッシュを口元に持っていく。

しばらくしてどちらともなく笑顔になり、二人で顔を合わせて笑い合う。

 

 

Laaaaaaan Laaaaaaan Laaaaaaan

 

しかしその笑顔も急に鳴りだしたアラームによってなりを潜める。

 

 

『ナニカ』が施設に紛れ込んだ。

 

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