「客商売で客を殴りたいと思わなかった人間なんている筈ない」
朝の品出しが終わって、とりあえずセルフレジの小銭を補充していると、何時にも増して目が逝っている店長が急に変な事を口にした。
「なんすか?またとんでもクレーム来たんすか?」
「それが聞いてくれよ越中君!朝のオープン8時にしろとか言う変なクソババアからの電話がさっきあってさ?人もいないし店の決まりで1時間も前にその人の為だけに開けるなんて無理じゃん?普通の脳味噌してたらさ!」
おうおう、凄い勢いで喋りだすなこの人。溜めて溜めて吐き出すタイプの人だから相当溜まってんだろうなぁ…
「まぁ普通の脳味噌してる人は基本的に変なクレーム出さないっすからね」
「そう、そうなんだよ!そしたらその脳味噌ブリンバンバン婆は事もあろうことか『私がお願いしてるのに、そんな事も対応できないお店なんてあり得ない……そもそもそちらの商品が壊れてるから開けろって言ってるのよ!』なんて言うんだよ!この時点でプッツンきそうなのを抑えて、話を聞いていたらだよ?そのブリンしてバンする婆はなんて言ったと思う?」
なんでさっきから美味しそうな名前のアーティストが歌いそうなフレーズを挟むんだろうか?そっちのほうがよっぽど気になるけどなぁ…
「うーん、そっすねぇ……実は使い方間違えてただけで壊れてなかった的な?」
そう、最近のクレームの流行りは使い方間違えてるだけで実は壊れてないパターンがトレンドなのである。いやこれトレンドとか言ってるけど割と時期に応じて多いクレームとかあるのが残念なポイントなのだ。
「いや、それが『5年前にそちらで買ったホースリールが壊れたのよ!?どうしてくれるのよ!?』だって!!!はん!?百歩譲って壊れたのがウチの商品だとしよう。けどさ、5年も使えたら万々歳だよ!保証期間もあって半年だよ?そもそも商品寿命もそんなものだろう…だけど、だけど一番の問題はそこじゃないんだよ!!」
どんどん白熱していく店長の滑舌、よく噛まないな、こりゃあのラップ練習してんな?今度のカラオケで一発披露するつもりですかね?
うわぁ被ってたわぁ、もうちょっと前の歌だから大丈夫だと思ってたのに…
仕方ない、被ったなら被ったでその時にデュエットしましょうぜ店長。
「分かるかい!越中君!!」
聞かれたから答えますけど、それにしてもやっぱり電話対応にしてもサービスカウンター対応にしても理不尽クレーム多いよなぁ。
呪われてるじゃね?と偶に思ってしまう。
「いやウチオープンしたの2年前っすよね?」
「そうだよ!!何でオープンしたのが2年前なのにウチの商品が5年前に買えるのさ!!おっっっかしいだろっ!!」
朝から老婆を顔面凹むまで殴りたくなる衝動をとりあえず言葉にして吐き出した店長は、多少スッキリした顔でインカムを付けた。
「さぁ皆さん、今日もオープン5分前です。皆さん無理のない程度で頑張ってお客様をお迎えしましょう」
今日も今日とてまたクレームが来る、割としょうもない事から割とこっちが本気でごめんなさいしないとイケナイ物までいっぱいのクレームが。
はぁ……
この世から理不尽なクレームって何で無くならいんだろ?って思うのは多分、世界で戦争は無くならないのは何でだろうと思うのと同義なんだろうなぁ。
店のオープンの曲がそろそろ掛かる時間だ。
もう蛍の光をかけてくれと思いながら今日も「いらっしゃいませー」と叫ぶ自分に乾杯。
昔書いてたホームセンターお仕事シリーズの浄化の為の作品です。働いてるだけで偉いよって言ってくれよ!
って自分の自己満だけに投下しました。
おかしい、本来はWorking的なノリの話になるはずだったのに…何故こんなことに?