「あーあ、サッカーってマジ面倒くさい。そんなにこだわりがあるなら自分でやれよってエチっちも思わない?」
「だからエチュっちにして下さいって何回か言ってますよね?それ以外は同意しますけど」
資材館のブルーシートで商品を保護するのも終わり、お昼過ぎの第3ピークが終わってレジも5つ程空いていたのが、もうセルフレジすら空いてる位の暇な時間となった。
店長からインカムで『とりあえず、セルフレジに越中君と1番レジに中嶋さん入ってくれる?多分夕方のピークまでお客さんそんなに来ないと思うし』との事で、お客さんが来ないので中嶋さんが自分に絡みに来たのだ。
そんな中嶋さんはとにかくサッカーという行為があまり好きではない。ていうか好きな人は今まで数人しか見たことがない。
あ、誤解されても困るから一応釈明というか説明というかをさせてもらうとこのホームセンター"コーインズホーム"でいうサッカーとは漢字でいう蹴球というスポーツの話ではない。
商品を袋詰めする行為の事をサッカーと呼ぶのだ。
因みにイントネーション的にも微妙に違うらしいが一緒のように言っても問題ないらしい。(AI調べ)
だから別にエゴイスティックな青い監獄漫画や天使の声が聞こえる個人的に凄く推しの漫画や日々を振り向かない様にする漫画やらは普通に好きである。
ん?お前の羽ないじゃんの漫画がないって?
右にしか翼ないのか光る翼なのか忘れたがアレは何かモブっぽい奴が他校の偵察毎日行ってめっちゃくちゃ体力のお化けになったっていうのが個人的にあまり好かないので今回のノミネートには入らない。
というか跳ねる系週刊少年誌はサッカーで大当たりは主将のウイング的な物しかないし、野球漫画も新人達位しか有名どころないからなぁ…
個人的に名前忘れたけど憑依合体系の一富士二鷹三茄子の奴好きだったんだが打ち切られたしスポーツ漫画で当てるのは相当難しいのだろう。
……あれ?何の話してたっけ?
「あーあ、サッカーがいらないってお客さんに言われるのが一番助かるよねぇ、袋買ったお客さんにはサッカーするかどうか聞く制度って本当に面倒くさいよね」
その中嶋さんの声で話の内容を思い出した。
「面倒くさいというより煩わしいというか、こう拘り持ちだして来られるのが一番鬱陶しいっすよね。食品とか洗剤とか生理用品を分けるならまだ分かりますけど、個人的には別に漏れる心配ないなら全部一緒に纏めてくれた方が良いって思う性質なんで」
アレも分けろ、コレも分けろ。
普通コレとコレは別だろう。
そんなの普通は言わなくても分かるだろう。
という言葉は本当に顔面をジョルトで殴りたくなるので辞めてほしい。
普通にカスハラだかんな?
この前なんてあの田部君が「じゃあ必要な物をお渡しするんでご自分でして貰って良いっすか?コッチとしては貴方の言う普通が分からないので無理です」
って横のレジで言ってて内心拍手してたからなぁ。
でも田部君、はっきり言う性格だからお客さんからの理不尽クレームトップ1を独走だからなぁ…
普通に良い人だし、面白いし、盛り上げ上手なのに……可哀想に。
「そうだよねぇ、ていうかサッカーのせいでレジ激混みする場合もあるから本当に勘弁して欲しいよねぇ。意見箱にも大量の意見があるのに何で本社の人は変えようとしないのか分からないわぁ…」
「アレじゃないっすか?上の老害役職の肩書だけの糞ジジィ達が変えたがらないじゃないんですか?形だけ意見箱なんて必要ないってこの前投書しましたし、意見を求めてるのにそれに対する回答もないなら機能してないから辞めた方が良いって事も書いたし、なんなら本社のホームページの意見箱にもSNSの本社のアカウントにも書いたので今後どうなるか見物っすわ」
「越中君!?それ初耳学だよ!!?」
サービスカウンターで暇してた店長がこっちに来た。
そりゃ初めて言ったし?
別にバイトで自由意見だから特別問題ないからなぁ……
それにそこまで理不尽な内容って理由でもないのでとやかく言われる必要もないし。
「いや別に個人を名指しで批判してる訳でも、会社を誹謗中傷してる訳でもなく何故そうなってるのか理由を教えてくれって建設的な意見を投書しただけなんで心配する事ないですよ?」
「だから一昨日の社内メールでサッカー台を増設する旨のメールが来てたのか?いやあの腰の重い上層部がそんな簡単に動くだろうか?」
「店長、エチっちも言ってましたけどSNSで書き込んだその回答がプチ炎上してるみたいですよ?『1人1人のお客様に丁寧な対応を心掛けています』って回答したみたいなんですけど、『忙しい時は凄く雑になるのに?』やら『丁寧な対応という心構え的な問題ではなく、この人は何故そうなってるのか理由を聞いているのに回答になってない』やら、『とにかく早くレジ回して欲しい、少ない数の商品しか買ってないのに袋詰めで待つのは凄くイライラする』等大量のお客さんの意見が」
そうなのである。
別にバイトでサッカーが面倒くさいから嫌なのはそうでもあるが、本当に嫌な理由はお客さんがレジに並んでイライラしてしまう事にあるのだ。
ホームセンターなんて家族連れも多いし、子供が待てなくてグズったりして親がイライラするなんて日常茶飯事だし、建設業者の人も短気な人多いから「このネジ一個買うだけで何分待たせねん!?アホか!!」ってお言葉も何十回浴びてきたか分からないし、その通りだとは思う。
それを1人1人に丁寧対応とかもうアホとして言い様がないしコッチとしてもユニビかディヅニィのアトラクションかと思う程の行列を見るのは精神的苦痛が半端ないのだ。
「なるほど、流石にあの上層部もお客様の意見を無視したら売上げに係わってきそうだからそういう対処をしたのか…」
「っていうか店長、サッカーしなくてよくなるんですか!?やったあ!!」
「いやまぁ来月の頭にでもお客様用のサッカー台を増設してちょっと試作的にやってみようって事になってるみたいだよ?」
ようやくこのサッカーという悪循環の監獄が抜け出せる光明が見いだせそうだ。
そんな時にインカムが入った。
『あー店長、今、資材館のレジで合鍵作成の依頼来てるんですけどね、ディンプルキーなんすよ。あ、そうっす。その中でもウチで取り扱いしてないやつです。それを5分で作れっていうクソみたいなジジィ?がね『誰がクソだとこのクソガキがぁ!!』、あ、聞こえてます?最短5分でお作り出来ますが鍵の種類にもよるって言っても聞いちゃいねーんすよ。ワシを騙したんだから無料で5分で作れですって笑っちゃいますよね?なんでクレーム本社に行くかもですけど、こっちで対応しとくんでよろしくでーす』
「「「田部君(さん)!?」」」
田部君、普通に何でもこなすのにスイッチ入るとトコトン行っちゃうからなぁ…
あーあ、資材館でこっちにも聞こえる位の怒鳴り声が……
「とりあえず、クレーム対応行ってくるからサービスカウンターのスポット流しといてくれる?」
「「はい、頑張ってください」」
『係員は2番レジまでお願いします。係員は2番レジまでお願いします』
さて今日のバイト上がりは面白い話が聞けそうだ。
田部君のクレーム話にはハズレがないから早く蛍の光が流れてくれないかなぁ…