ところで、異界の能力ってのは何なんだ。
そんな特殊な能力をもらった覚えはないぞ。
他にもっと情報がないかと隅々まで確認してみると、ウィンドウの右上にスキルの欄があるのを見つけた。
タッチ切り替えでもするのだろうか。
スキルのタブ欄へそっと指を触れてみる。
果たして想像通り、ウィンドウは切り替わり。
色々なスキル?がずらりと並んでいた。
農業林業、漁業に鉱業……
そこには、ファンタジーしからぬあまりに現実的な職業が並んでいた。
戦士とか魔術師とか、そういうゲーム風な感じじゃないのか。
上から下に。ずらりと並ぶ産業を確認していく。
その中に1つ。気になるものを発見した。
【宿泊業・飲食サービス業】だ。
モンスターに襲われてもおかしくないような場所で一日過ごすなんて冗談じゃない。
とりあえず夜だけでも凌げる場所が欲しい。
タブ欄同様、タッチ操作で【宿泊業・飲食サービス業】の欄を触ってみる。
操作方法が合っていたのか。ポップアップウィンドウが現れた。
農業・林業
漁業
鉱業・採石業・砂利採取業
建設業
製造業
電気・ガス・熱供給・水道業
情報通信業
運輸業・郵便業
卸売業・小売業
金融業・保険業
不動産業・物品賃貸業
学術研究・専門・技術サービス業
宿泊業・飲食サービス業
生活関連サービス業・娯楽業
教育・学習支援業
医療・福祉
複合サービス事業
サービス業
公務
分類不能の産業
スキルポイントを 1 使用して
宿泊業,飲食サービス業 の
スキルを 有効化 しますか?
現在のポイント 100Pt
はい
いいえ
スキルポイントという新しいシステム。
よくわからないが、俺は現在100ポイント所有しているらしい。
これがどんなポイントかもわからないが、背に腹は変えられない。
俺は思い切って「はい」のボタンを押してみる。
すると、【宿泊・飲食サービス業】の欄が黒く染まり、さらに別のウィンドウが現れた。
黒く表示された、【接客スキル】【清掃スキル】【料理スキル】の3つのスキル。
そしてその先には枝が伸びていくかのように、線で繋がれた無数の薄い文字のスキルの数々。
ゲームでいう、スキルツリーのようなものが描かれていた。
おそらく薄い文字は取得前。濃い文字は取得後なのだろう。
【宿泊業・飲食サービス業】を有効化したことにより3つのスキルを取得したようだ。
【接客スキル】の先を辿っていくと。【看板娘】や【コンパニオン】などに繋がっていた。
男の俺が【看板娘】を取得したらどうなってしまうのだろうか。
興味本位で触ってみると、先のスキルを取得するには5ポイント必要らしい。
更にそのスキルの先には【座敷童】や【招き猫】なんてものもある。これは接客の範囲じゃないだろ。
こちらを取得するには、5ポイントのスキルを取ってから更に10ポイントが必要のようだ。
「って、ちょっと待て。このスキルって全部……」
そう。これは明らかに、泊まる側ではなく、泊める側のスキルだった。
同じく、【料理スキル】も様々なレシピが思い浮かぶだけで、食材がないと発動できないようだ。
色々スキルを見てみたが、全て提供する側のスキルであって提供される側のスキルは1つもない。
つまり俺が宿泊できたり、無から料理が出てくるようなチートスキルではなかった。
遭難中の今は絶妙に使いにくいスキルばかりだ。
「このルートはハズレだったか。他に役に立ちそうなものは……」
他の産業のスキルも確認しようとしてみたが、スキルツリーを確認するには1ポイントを使用して有効化するしかないようだ。
ポイントは99ポイントしかない。無駄遣いはできない。
どの産業が役に立ちそうか、上から1つずつ吟味してみる。
【建設業】は……最後の手段だな。
とりあえず今回は見送ろう。
【情報通信業】か。多分、ラジオとかテレビ関係の事だ。
これは提供する側が情報を発信するから、救助要請を出したりできるかもな。
よし、思い切って有効化だ。
1ポイントを消費して有効化すると、新しくタブが開きスキルツリーが開放された。
【情報通信業】から良いスキルがないか辿っていくと、気になるスキルを発見した。
【配信】
これはもしかしたらもしかするのか?
このスキルを使って救助要請が出来たりしないだろうか。
しかし、出来たとて今いる場所が分からない以上どうやって助けを呼べばいいのだろうか。
根本的な解決にはならない気がする。解放したがこのルートはとりあえず保留だな。
次に【運送業・郵便業】を有効化してみる。
車を召喚できたり……はさすがにないだろうが、移動するようなスキルがあるかもしれない。
そんな期待をしながらスキルツリーを表示させる。
農業・林業
漁業
鉱業・採石業・砂利採取業
建設業
製造業
電気・ガス・熱供給・水道業
情報通信業
運輸業・郵便業
卸売業・小売業
金融業・保険業
不動産業・物品賃貸業
学術研究・専門・技術サービス業
宿泊業・飲食サービス業
生活関連サービス業・娯楽業
教育・学習支援業
医療・福祉
複合サービス事業
サービス業
公務
分類不能の産業
お。【アイテムボックス】だ。
異世界モノだと必須のスキルだよな。
他には……【次元干渉】ってどんな効果だよ。
2次元の世界に入れたり?な訳ないか。
タブをスクロールして見ていると、その中にとあるスキルを発見した。
「空間転移キター!」
思わぬ成果に思わず大声を上げた。
この森にもしモンスターがいたとしても、出会した瞬間に転移で逃げることが出来る。
あるいは、近くの町へ転移、みたいな使い方が出来るかもしれない。
それになんと言っても地球へ転移できる可能性が出てきた。
こういうのは元の世界には戻れないのがお約束だが。
俺は早速【陸送スキル】に5ポイント、【空間転移】に10ポイントを消費してスキルを有効化してみる。
何も変わらないが、これで転移が使えるようになったのだろうか。
俺はとりあえず目の前……数メートルほど先の地面を見ながら、そこへ転移したいと思い浮かべる。
瞬間、視界が少し切り替わり。確かに数メートルの距離を1瞬にして移動することに成功した。
「ははは……すげぇ!テレポートした!」
適当にスキルを選ぶだけで超能力者になれてしまった。
まるで夢でも見ているかのようだ。
もし夢ならそろそろ覚める時間だ。
今度は、因縁の伊勢県の海崖を意識してみる。
強い海風。荒れ狂う海面。古くなった手摺。
「……っぷはー!ダメか〜」
数秒。数十秒。数分。
目を瞑り、いつの間にか止めていた呼吸を再開する。
目を開けると未だよく分からない森の中。
地球への転移は失敗したようだ。
しかし、まだ諦めたわけではない。
もしかしたら熟練度的なものやmpが足りなかっただけかもしれない。
この世界に熟練度やmpの概念があるかは知らんけど。
これまでは進む方向さえ分からなかった。
だが、今はもしかしたら地球に帰れるかもしれないという希望が見えた。
楽観主義の俺は、一筋の光を掴んだことでいつの間にか気力が回復していた。