イナズマイレブン 闘将と呼ばれた男のヴィクトリーロード 作:ネオニューンゴ
放課後、俺はまだ何か言いたそうな古道飼から逃げるように教室から飛び出し自宅への帰路へと着いていた。自分の家へ着くとふと立てかけられた写真に目が行く。そこには小学生の頃のチームメイトと撮った写真、県大会を優勝した時の写真が飾られていた。そこに写るチームメイトは笑っていたが果たして彼奴等は本当に心の底から笑ってたのか?そんな考えが頭を過ぎり俺はベットに飛び込み頭から布団を被る。
「くそっ⋯⋯なんで、なんで急にサッカー部なんて出来んだよ⋯⋯!俺だって⋯⋯俺だって⋯⋯」
もう一度あのピッチに立ちたい、もう一度プレーをしたい、心の中でもう一人の自分が叫ぶ、しかしそれとは別の自分が語りかける、また独りよがりのサッカーをする気か?マジになって一人相撲して、気付けばお前は一人だった、またそんな思いしたいのか?と。
「俺はどうするべきなんだ⋯⋯教えてくれよ」
そんな俺の呟きは虚しく部屋に響くがその問いに答える者は居なかった。
雲明side
サッカー部部室で僕達は古道飼君から風凪雨竜と接触した顛末の報告を受けていた。
「成る程⋯⋯それで勧誘に失敗したと」
「ご、ゴメン」
「いえ、古道飼君が謝る事じゃありません、しかし気になるな、俺とサッカーをしても楽しくない⋯⋯か」
その言葉から読み取れるのは彼自身、心の中からサッカーを嫌っている訳じゃないんじゃないか?という疑念、そしてそんな彼がサッカーをやらない理由、それは外的要因にあるのではないかと考えられる。
「しかし雲明よ、どうするよ?このままその風凪って奴を勧誘しても古道飼の二の舞だぜ」
「闘将って言われてた人なのになーんかそんな感じしないわね、昔何かあったとか?」
「つってもなぁ〜まさか本人に直接聞くわけにもいかない⋯⋯いや雲明なら聞きそうだな」
木曽路の言葉に僕は思わずムッとして言い返す。
「いくら僕でもそれくらいのデリカシーは⋯⋯」
「いやお前俺にしたこともう忘れたのかよ」
桜咲先輩にツッコミを入れられて思わず押し黙る、確かにそう言われると僕は何も言い返せない。微妙な空気になった所でマネージャーの百地さんがわざとらしく咳払いをして追加で調べた情報を僕達へ伝える。
「風凪君は小学6年生の夏、大会が始まる目前でサッカークラブを辞めたみたいです、つまり6年生になってから大会までの期間で何かあったと考えるのが自然かと」
「そういえば私この子見たことある、最近練習をベンチに座って見てるもん」
「て事は俺や桜崎みたいにサッカーへの未練はありそうだな⋯⋯入部する可能性は0じゃなさそうだぜ」
柳生先輩の言葉に僕は頷く、彼がサッカーを辞めた理由、それさえ分かれば糸口は見えそうだ。
「百地さん、悪いけど入部面談の準備と並行して彼のチームメイトを探してくれないか?そうすれば何か分かりそうだ」
「そう言われると思ってこの学校に在籍するチームメイトはリストアップしてあります」
流石百地さん、仕事が早くて助かる。僕は彼女がリストアップした紙を受け取ると今日の練習メニューを皆に言い残して彼のチームメイトに会うべく校内を奔走するのだった。
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あれから僕は風凪君の元チームメイトを探し周り話を聞こうとした。しかし誰一人として当時の事を話したがらず唯一掴めた情報と言えば口を揃えて「アイツは俺等のせいでサッカーを辞めた」と言って逃げるようにしてその場を去ってしまった。
「フム、まいったな⋯⋯これじゃあ話が進まない」
情報収集に行き詰まった僕は仕方なく学校通りにある公園へとやって来た。ベンチに腰を下ろしながら遊具で遊んでいる子供達を尻目に今後どう動くべきかの方針を考える⋯⋯が妙案は浮かんで来ない。
「風凪君⋯⋯君に一体何があったっていうんだ⋯⋯」
「風凪⋯⋯あの!すみません!」
急に声を掛けられびっくりしながら後ろを向くとそこにはサッカーボールを持った小学生が緊張した面持ちでこちらを見ている。一体どうしたのか、彼の次の言葉を待つとためらいがちに口を開く。
「いきなり話かけてすみません!その、風凪君って風凪雨竜先輩の事ですか!?」
「え⋯⋯そうだけど、君は?」
「僕、小学6年生の森永瑛士っていいます!風凪先輩とは一緒のチームでプレイしてました!風凪先輩には同じDFとして良くしてもらってて⋯⋯それで風凪先輩は中学でサッカーをしてらっしゃいますか!?」
そう目を輝かせながら聞いてくる森永君に僕は数瞬迷った後本当の事を伝える事にする。
「その、南雲原は最近までサッカー部が無くって、今は出来たんだけど、それで風凪君を誘おうと思ってるんだけど断られて困ってるんだ、自分とサッカーしても楽しくないって、けど彼がそう言う理由が分からなくて」
「そうですか⋯⋯先輩、まだあの時の事を引きずってるんですね⋯⋯もしかしたら中学に上がって吹っ切れてサッカーやってるかなって⋯⋯」
「もし良ければ教えて欲しい、彼に何があったかを、彼が何でサッカーを辞めてしまったのかを」
僕が真剣な表情で頼み込むと森永君は最初はそれは出来ないと言っていたが数分すると「風凪先輩がまたサッカーをする助けになるなら」とポツリポツリと話始めた。
風凪君率いるチームは5年生の冬の県大会で優勝、全国でもベスト8の好成績を残した。当時風凪君の所属していたチームの売りは堅守速攻、固い守りを活かしたカウンター戦術を得意としていた、そしてそのDFラインの中心であり指揮をしていたのが風凪君だった。端的に言えばチームは思わぬ好成績に舞い上がっていた、少年サッカー雑誌の取材があった事、学校で一躍ヒーロー扱いを受けた事が拍車を掛けた。天狗になった風凪君のチームメイトは練習で手を抜き始めそれを風凪君が咎めた。自分達は全国で優勝した訳じゃない、もっと練習に力を入れなければ日本一に辿り着く事など不可能だと。しかし当時のチームメイト、取り分け風凪君と同じ学年のチームメイトはそんな彼を煙たがった。
それでも彼はチームメイトに訴え続けた、練習をしよう、頑張ろうと⋯⋯しかし彼の言葉はチームメイトに届かず迎えたある練習試合、そこで彼の言葉が届かないまま勝負し結果は惨敗。その結果は風凪君の言葉が真実であった事の証明と同時に自分達のプライドを大きく傷つけられた物となった。そんな彼等にも風凪君は寄り添い励ました、こんな時もある、次は頑張ろうと。しかしプライドをズタズタに引き裂かれたチームメイトから出た言葉は風凪君を責め立てる物だった。誰が言い始めたかは分からないがそれらは段々とエスカレートしていき遂に飛び出したのが風凪君とするサッカーはつまらないという言葉だった。その言葉に風凪君は大層心を痛め自分を責めた、頑張ることを強要していた自分はチームにとって邪魔者だったのかと。そうして彼はチームを去りサッカーとの関係を絶った。一度森永君がチームに戻って来てくれないか頼んでみたが返ってきた言葉は自分とサッカーをしても楽しくないという言葉だったという。
「⋯⋯成る程そんな事が、教えてくれてありがとう」
「いいえ僕に出来る事なんてこれしかなく⋯⋯でも風凪先輩はサッカーにひたむきな人でした、だからきっと心の中ではまたサッカーをしたい筈なんです!お願いします先輩をサッカーに連れ戻してあげてください!」
「分かった、約束するよ、必ず風凪君をサッカーに連れ戻す」
「はい!お願いします!」
森永君はペコリと頭を下げると嬉しそうにお礼を言ってその場を去っていった。思わぬ形ではあったが風凪君がサッカーを辞めてしまった理由、そして彼の言葉の意味を知る事が出来た、そしてそれを知った上でどうやって彼をチームに引き込むか、朧気ではあるが道筋が見えてきた。
「僕は必ず君を手に入れてみせるよ風凪君⋯⋯!」