イナズマイレブン 闘将と呼ばれた男のヴィクトリーロード 作:ネオニューンゴ
雲明side
遂にやってきたフットボールフロンティア1回戦西ノ宮中戦、何と相手は雷門から2人の助っ人を呼んでおり更にその内の一人があの円堂ハルだった。正直に言うと勝率6割〜7割程度ある戦いだったけどこれで大きく計算が狂ってしまう。急なゲームプランの変更を強いられ必死に頭を回すが出てきた結論はある程度の失点覚悟で前半守りに徹し、後半雷門の2人が下がる事に賭けて一気に逆転を狙うしかない。それでも前半に逆転不可能なくらい点差をつけられればおしまいだ。3点、3点以上取られると逆転の芽は完全に無くなる、だが今のチームで3点以内に抑えるのは⋯⋯かなり厳しいだろう。そんな中風凪君が前半どう動くべきか僕に意見を求めてきたため僕は正直に彼に伝える。すると彼はニッと笑い何とかすると言ってピッチに戻っていった。空元気なのは誰が見ても明白だ。
そして始まった試合、それはまさしく蹂躙と言っても差し支えない内容だった。開始早々に円堂ハルにゴールを決められ失点、風凪君が何とか粘ってくれたが月影蓮の必殺シュート『バハムートクラッシュ』が決まり2点の失点。この時点でまだ前半は半分も時間が過ぎていない。いっそこの時点で2人を下げてくれないかと願ってみるが残念ながらそうはならない、恐らく前半はあの2人は出続けるだろう。 足りない、どうしても、力の差がありすぎる、こんな時僕はなんて無力なんだろうと己の非力さを呪うしかなかった。ジャージのズボンの膝の部分を強く握りしめるが⋯⋯それでも何も変わらない。
だけど僕は分かっていなかった、本当の地獄はここから始まる。すぐに忍原先輩がボールを奪われ再度ボールは円堂ハルへ、この時点で僕は失点を覚悟したが何と風凪君が一直線に円堂ハルへと突っ込んで行き必殺技である『ストームカット』を放つ、が円堂ハルはそれをものともせずボールを失わなかった。
そこから円堂ハルはゴールを狙わず何故か風凪君と一対一を繰り返し始める。しかし彼はボールを奪う事が出来ず、時には膝を着いたり転んだりと段々と傷ついていく。他のプレイヤーが助けに行かなくていいのかと僕に視線で訴えてくるが僕は首を振った。それを見て顧問の香澄埼先生が声を上げる。
「何で!笹波君!?」
「この状況、あの円堂ハルを風凪君が一人で釘付にしてるとも捉えられます、勝つためには⋯⋯ここは風凪君に頼るしかありません」
非常な決断だと僕はなじられるだろう、それでも後半ある程度の点差を逆転するならば、他の選手の体力を温存する、そうでもしなければ西ノ宮とあまり差のない南雲原が得点を重ねるのは難しい。それからも風凪君と円堂ハルによる戦いは続いた、何度も立ち向かう風凪君の姿を試合を見ている観客達は笑い始める。観客達の誰もが西ノ宮中の、円堂ハルの勝利を疑わない。それでも必死で抗う風凪君の事を滑稽なピエロ、ゲームに出てくる雑魚敵とでも言いたいのだろうか。
「ひ、ひどい⋯⋯」
「こんなのってあんまりよ⋯⋯!笹波君!」
「⋯⋯」
遂には風凪君に向かって野次を飛ばす人まで現れ始める。前半終了まで残り5分をきっていた、頼む⋯⋯どうかこのまま持ちこたえてくれ⋯⋯!僕は自分が今ピッチに立てない事を悔しく思う、僕もあそこに立って彼を助けたい⋯⋯なんで自分はベンチにいるのかと。
しかしここで柳生先輩が我慢の限界が来たようで円堂ハルに向かっていく、急に来た柳生先輩をものともせず彼は軽々と躱すがここで風凪君が再度必殺技を放つ。先程より威力が増したそれは円堂ハルを捉える⋯⋯が、結果は非情だった。
円堂ハルはそれでもボールを離すことなくピッチの上に立っていたのだ。その後風凪君は倒れこみ、再び立ち上がろうとする姿は見られなかった。その姿を見た円堂ハルは首にかけたバンダナで口元を隠してこちらへ攻め込んでくる⋯⋯と同時に前半の終わりを告げる笛がなり、まるでそれが合図かのように大会運営委員の大人達が担架を持って風凪君の所へ向かう。僕達もそれを追うように風凪君の元へと走る。
「風凪!オイしっかりしろ!」
「嘘でしょ⋯⋯雨竜!雨竜!」
「風凪君⋯⋯ゴメン、僕が役に立たないから⋯⋯」
南雲原の皆は心配そうに声を掛け風凪君が担架で運ばれて行くのを見守る。僕は心の中でゴメンと謝りつつ彼に報いるには後半でなんとしても逆転するしかない、と自分に言い聞かせるように言葉を放ちメンバーを鼓舞する。相手ベンチをチラリと見ると何かを監督と話し込む雷門の2人とアップを始めている前半には出ていなかった西ノ宮の選手、これで賭けに勝ったことは証明された。なら死ぬ気で勝ちに行く、後半1人欠けて不利だろうと、やるしかないのだ。僕は後半の動きを皆に伝えつつ瞳に確かな闘志を灯していた。
円堂ハルside
「すみません監督さん、ちょっと軽く足捻っちゃったみたいで後半は休ませて貰ってもいいですか?」
「なんだって!?大丈夫なのかい?」
「えぇ、ただ一応念のためって事で⋯⋯すみません」
「まぁ元々前半で差をつけて後半君達には休んでて貰うつもりだったから、本音を言えばあと1点欲しかったけど⋯⋯よし分かった、後半はベンチから西ノ宮の戦う姿を見ていてくれ」
「ありがとうございます」
監督と話し終えると俺はベンチに座りボトルを手に水分補給をする。すると蓮さんが隣に腰を掛けて話し掛けてきた。
「どうしたんだハル?お前らしくもない、あの風凪って奴に固執し過ぎなんじゃないか?」
「⋯⋯あそこまで俺に食らいつこうとしてくる人は久しぶりだったのでつい熱が入っちゃいました⋯⋯だってホラ、皆俺の事なるべく避けようとしてくるじゃないですか」
そう本当にあんな選手は久しぶりだった中学に入って初めの方は先輩とか俺に向かってくる人はいたがそれもすぐにいなくなった。勿論形だけ俺に向かってくる人はいるけど、その目に闘志は宿っておらず本気で俺からボールを奪おうとする気がないのは見て分かる。だから⋯⋯助っ人に来ておいてこんな事言うのも失礼かもしれないけど叶うなら南雲原に勝ち上がって来て欲しい。もし全国の舞台で南雲原と戦えたらその時俺は⋯⋯。
俺は試合の行く末を祈るように見守る、後半開始の笛が鳴り今度は南雲原からだ。そこからの南雲原の攻撃は凄まじかった。まずFWの2人、タイプの違う2人だけどどちらも必殺シュートを習得しておりこの時点で必殺技を持たない西ノ宮のキーパーとの差は歴然だ。中盤MFの3人も目を見張る物がある、ポストプレー、ドリブル、ゴールを狙える、攻撃面で見ると粗い部分はあるが光る物がある。そして何と言っても守備陣、成る程彼が鍛えたんだろう、必殺技を持つ体格の良い選手を筆頭に良い守り方をしている。若干ぎこちなさはあるもののシステム化された守備はそれだけである程度の強度を誇る。そしてそのどれよりも目を見張るのが恐らく相手ベンチから出ているであろう的確な戦術の数々、これは同じ地区にいる帝国学園に勝るとも劣らない、そう思わせる程鮮やかで的確な戦術の数に俺は思わず息を呑んだ。結局後半西ノ宮は一本もシュートまで持ち込めず逆に南雲原は怒涛のカウンター戦術で西ノ宮から得点を量産し逆転に成功、それどころかダメ押しの追加点も決めて見事西ノ宮を打ち破ってみせた。となりで蓮さんは申し訳なさそうに肩を落としているけど俺は笑っていた。勿論失礼な事は分かっているのでバンダナで口元を隠すのは忘れない。
何にせよ少しだけ、ほんの少しだけだけどこのフットボールフロンティアで楽しみが増えた。そうだ、相手の監督をしている生徒にも少し話を聞いていこう。俺は自分でも不思議な程この南雲原中サッカー部というチームに期待を抱くのだった。
雨竜side
パチリと目を開けると目に飛びこんで来るのは見慣れない白い天井、そして薬品の混じった独特の匂い、自分が今いる場所が病院だと認識するのにそう時間は掛からなかった。仕切られたカーテンが遮るオレンジ色の光から今が夕方である事を知らせる。
「よう、起きたか」
「⋯⋯そこは忍原先輩とか百地先輩とかじゃないんですね」
隣から聞こえる明らかに女性のものでない声にがっかりしつつ状態を起こすと柳生先輩が座っていた。いや、こういう時って女子じゃねぇの?それでこう心配したんだから〜って抱きついてくるとかそういうシチュエーションじゃないんかい。そう俺が柳生先輩に話すと意地悪な笑みを浮かべながら「やってやろうか?」と言ってきたので丁重に断らせて頂く。別の意味で病院のお世話になりそうだ。
「一応聞くっすけど流石に勝ちましたよね?」
「当たり前だ、4対2、前半の円堂ハルなんて目じゃないくらいの得点劇だったぜ」
それを聞いて俺は一気に肩の力を抜く。良かった、これで負けたなんて聞かされたら俺はここが病院のいう事を忘れ大声を上げながら暴れ回っていたかもしれない。
「お前は念のため今日1日だけ入院だとよ、まぁ今日の勝利の立役者なんだ、ゆっくり休め」
そう言い残し柳生先輩は病室を去っていく。俺はベッドに体を預け天井を見つめる。思い返すのは今日の試合、俺は雷門の2人に全く歯がたたなかった。
「アレが全国1位の壁だってか?高過ぎだろ⋯⋯」
まさか前半死に物狂いで、ぶっ倒れる程ガムシャラに当たって結局ボールを1回も奪えないとは⋯⋯。
「つーかあの野郎!何がどうしてそんな頑張るの?だ?ヘッザマァ見やがれ結果は南雲原の逆転勝ちじゃい!」
思い出しただけで腹が立つ、あんな冷めた態度でサッカーをする円堂ハルに、そしてそんな奴に手も足も出ず無様に敗北した自分に⋯⋯フットボールフロンティアを勝ち抜けばいずれ雷門と戦う事が出来るだろうか、そうすれば今日のリベンジをアイツに果たせるだろうか?
「決めた!ぜってぇ全国行って円堂ハルにリベンジしてやる!そんでアイツにぎゃふんと言わしてやる!」
俺は密かに打倒雷門、円堂ハルへのリベンジをする事を決める。その為にはこれからも勝ち進み、尚且つもっともっと自分自身レベルアップを果たさなければいけない。何より今日のプレーの結果に自分自身が納得いっていない。やはり最後までピッチに立っていられなかったのは悔しい。そうと決まれば明日からまた忙しくなる。俺は新たな目標を胸にとりあえず今日はしっかり休むと決め再び眠り始めるのだった。
ちなみに翌日携帯端末を見ると心配のメッセージが大量に、さらに柳生先輩が俺が目を覚ました事を伝え大量のメッセージが届いていたがそれらをフル無視して寝ていた俺を咎めるメッセージが合わせて大量に来ており、ちょっと部活に行くのが怖くなったのは別の話だ。
はい、以上でVS西ノ宮決着になります。今回書きたかったのは現状のオリ主は南雲原の中だと強い方ですが全国クラスのチームのトップレベル選手と比べると数段落ちてしまうという部分でした。
それはそれとして、ご愛読?でいいのかは分からないのですが読んで頂いてありがとうございます。これからオリ主を含め南雲原イレブンが成長していく姿を書けたらいいなと思っていますのでこの作品を今後もよろしくお願いします。