遊戯王 ARC-Ⅴ 揺れる運命 重なる手札   作:月光舞詐称者姫

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今回導入のみなので、デュエルなしで短めで行かせてもらいます。

入れ忘れていたオリキャラ一口解説を追記させていただきました。これからも毎話の常設コーナーにしていきたいです。


スタンダード次元編 ~集う旅人 始まりの狼煙~
第一話 卑怯者の子供"達"


魅せるもの 榊遊矢

 

 かつて、榊遊勝というデュエリストが居た。特殊な魔法カードが散らばるアクションフィールドと質量のあるモンスター達のビジョン、リアルソリッドビジョンを用いたショープロ達のデュエル

 『エンタメデュエル』のパイオニアであり、チャンピオン。だがこれらの評価は全て過去形だ。現チャンピオンストロング石島、高火力のエースモンスター、バーバリアンキングによる連続攻撃を得意とした、バーバリアンデッキの使い手である男とのタイトル防衛を賭けたデュエル。

 あろうことか、榊遊勝はそのデュエルの日に姿を消した。今もなお行方が分かっていない男は、敗北を恐れてどこかへ逃げたのだと、囁かれるようになった。

 その結果、『卑怯者』と詰られ、その名を毛嫌いする人間も多い。そしてその被害は、彼の家族へとも、及ぶようになっていった。これは、卑怯者の息子と娘と、父親の罪で言われなき悲しみを背負って来た、少年少女の物語である。

 

 

『さぁ画面端に追い詰めて……剛龍脚の一閃!ガードブレイクゥ!そのまま浮かせて……これはどうだ?入るか……?入ったァ!カラミティ・カイザーまで繋がった!これでフィニーッシュ!』

 

 ハイテンションな声が響き渡る。格闘ゲーム 『FIGHT! to Vanquish Word』シリーズ、通称"FtVW"。デュエルモンスターズのカードがベースの格闘ゲーム。外伝含め数多くの作品が出ている超人気タイトルだ.

 

No-MEN Cat(ノゥ-メン・キャット)選手!優勝はNo-MEN Cat(ノゥ-メン・キャット)選手です!数々の大会で優勝を重ね、賞金を総なめにして来た正体不明の大会荒らし!

 今大会のダークホースが、なんと初出場にして、世界大会初優勝を飾りました!キャット選手、今のお気持ちは。』

『あ……エットソノ……コウエイデス……』

 

 マイクを持った実況にインタビューされているのは、黒ずくめの衣服で体を隠し、黒い猫耳パーカーに能面という異質なファッションの人物。

 体格からまだ小さな子供、そでもたどたどしく答える声から女性と判断できる彼女こそ、格ゲーの天才と名高い人物、プレイヤー名No-MEN Cat(ノゥ-メン・キャット)No-MENは顔を隠す能面と、『中の人(素顔)など居ない』のダブルミーニングらしいと、それを配信サイトで見る少年、榊 遊矢は聞いている。

 当の画面内の彼女は、たどたどしい物言いで下を向いてしまい、新たにコメントを得たい実況を困らせていたが、その強いコミュ障キャラが受けたのか、小規模だが非公式グッズなどもある新進気鋭のゲーマー。

 

「ファンなのか?」

「うわぁ!?」

 

 Dパッドで見ていたその動画を後ろから覗き込んだ男から等々に掛けられた声に、思わずパッドを取り落としそうになる遊矢。

 

「へぇ、デュエル以外に興味がないと思ってたお前が、こんなゲームをねぇ……それともこういう子が好みか?」

「いや、そうい訳じゃ……」

 

 声をかけてきた、同級生にして遊矢のライバル、学校の制服なのに妙なオシャレさを感じる男、沢渡シンゴの質問攻めに苦笑いで返答する。

 それもそうだ。彼女のファンなのは事実だが、恋愛的なタイプではない。なにせ()()()()なのだ。それで返答に困っていると。

 

「止めんか沢渡、遊矢が困っているだろう。」

「げっ!権現坂!?」

「人の顔を見てげっ!?とはなんだ!?」

「なんなんだよも〜、ちょっと絡んだだけじゃねぇか……」

 

 リーゼントが特徴的な大柄な少年、彼の家に代々受け継がれて来たフルモンスターデッキ『超重武者』による不動のデュエルを得意とした、道場の跡取り、権現坂 昇が、遊矢に助け舟を出したことで、沢渡は退散する。

 

「ごめん、権現坂……」

「気にするな。お前にも色々あったからな……ところで例のデュエル、お前の妹は……」

「いや……見てくれなかったみたいだ……」

「そうか…………すまん。」

「いや、いいんだ.心配してくれてありがとう。」

 

 この間のデュエル、というのはその父親が防衛戦前に姿を消したことで新たにチャンピオンとなった男ストロング石島、それと目の前の少年である榊 遊矢がデュエルする。というものであった。

 舞網スタジアムで行われたそのデュエルで勝ったのは、儀式、融合、シンクロ、エクシーズに続く新たな召喚法、ペンデュラム召喚を生み出した少年、榊 遊矢。しかし、勝者である遊矢も、未だ誰も持っていないカードであるペンデュラム召喚という方法で勝ったことから、卑怯者の息子はやはり卑怯者、という評価から抜け出せないでいた。

 だが、デュエルの内容自体はいいもので、見れば、妹も昔のようにデュエルを楽しんでくれるんじゃないか?そんな気持ちがあったのだが……

 

『ごめん……やっぱり無理。』

 

 部屋の扉越しに帰ってきた言葉は、冷たいものだった。卑怯者の子供、その評価によるバッシングを受けたのは、なにも遊矢だけではない。その妹、榊 勝観(さかき かつみ)もその一人……いや、彼女のデュエルスタイルのせいで、そのバッシングはより激しかった。

 以来、彼女はあぁやって仮面を付けなければ人前に出ることはなくなってしまった。家でも、部屋で大半の時間を過ごし、よく自分を含め家族や友人たちとやっていたデュエルも、やらなくなってしまっていた。

 もともとは不良デュエリストチームのリーダーという肩書を持つ母親も、経緯が経緯であるために……また、こうして大会に挑んだりと、外に出ること自体は試みているため、デュエルから離れ、もう一つの趣味であるビデオゲームにのめり込む姿に、何も言えずにいた。

 

「何か、俺にも手伝えることは……」

「いや、こればっかりはな……権現坂、見た目があれだから勝観を怖がらせちゃうかもだし……」

「むぅ……」

 

 権現坂自身はこの服装に誇りを持っているのだが、こういうことは荒療治をすれば余計に悪化するし、自身の見た目が13歳の少女にはきついのも事実だ。ここはそう短く唸るだけにとどめておく。

 

「(けど……俺に勝観を喜ばせる方法もわからないし、エンタメデュエルをしたくても……そもそもデュエルが嫌いじゃな……)」

 

 父親の信条、デュエルで笑顔をとよく口にしていた榊 遊勝のデュエルを受け継いだ自慢のエンタメデュエル。だが、ショーとは観客が来てくれて初めて成立する物。観客がそもそも見たがらないもので、どう人を笑顔にすればいいのか、14歳の少年には、難しすぎる問題だった。

 

 

籠るもの 榊 勝観

 

『Ladies and Gentlemen!只今より見せますは、魔術師とその弟子との美しき共演!』

 

 マジシャン風の衣装の男が、自分の相棒たるモンスターEMスカイ・マジシャンと、スカイ・マジシャンが引き連れるモンスターと共に宙を駆け、アクロバット技で敵のモンスターを破壊してフィニッシュする。

 

「綺麗……」

 

 興奮する観客たちの中で、自分もひたすら、その光景に見惚れていた。

 

「うちも、いつかあんな風に……」

 

 大観衆の中で、観客が盛り上がるようなデュエルがしたい!今まで将来の夢なんてわからなかった自分が、初めて心の底から目指したいモノを見つけた瞬間だった。その頃は知らなかった。その夢が、ずたずたに崩れ去っていくなんて。

 

「う……」

 

 ぱちり、と目が覚める。カーテンで窓からの日光が遮断された、暗い部屋。室内に古い型のテレビとゲーム機、攻略本やコンボルートなんかが書かれた本なんかが置かれている、うちの部屋。

 

「なんで……今更あんな夢……」

 

 見た夢のことが頭をよぎる。大好きだったデュエル……でも今は、カードに触れることすら怖い。

 部屋の隅に置いてあるDパッドとヘッドフォンを見る。デッキもついて、インターネットやらなにやらも使える画期的なマシーン。

 身分証明も簡単にできるから、持ち歩いてない人なんていない。デュエル嫌いのうち以外は。

 これまた古いタイプの、ホログラフで画面を映し出すデバイスを起動する。今日は何の日だったっけ……そうだ。気になってたゲームの発売日。

 この間の大会でまた賞金が入ったから、半分をお兄ちゃんに渡して残った半分を崩して買いに行こうとしてたんだ。

 

 着ていたパジャマから着替える。Tシャツとズボン。その上からパーカーを着て、壁にかかってるもう一つのパーカーに目をやる。

 フードにネコミミがついたお気に入りのパーカー。このフードが、私を外の世界から守ってくれる。これを被ってれば、特徴的な赤と緑の髪も隠れて、誰も私がパパの娘だなんて気づかない.

 流石にNo-MEN Cat(普段)のパーカーで出ていくわけにはいかないから、あのパーカーは着ていけない。今着てるパーカーは予備の色違いだ.

 

「それじゃあお母さん、ちょっと出掛けて来ます。」

「あ、勝観。それならちょいと悪いんだけどさ、帰りに少し野菜買って来てくれないかい?明日の分がなさそうなんだよ。」

 

 部屋を出て、キッチンで料理やってるお母さんに挨拶すれば、そう言って袋と財布を渡される。

 

「勝観の用事の後でいいからさ?」

「うん……わかった……」

 

 その頼みに、うちはこくりと頷いた.わたしはいわゆる不登校と言うやつだ。学校にも行ってない。学校に行くのが怖くなってしまったうちは、お母さんに頼み込んで通信教育の道に進ませてもらった。

 フードを目深に被って、周りの人に顔を見せないようにして、外に出てるのに、フードの内側に引きこもってるみたいだと歩きながら思った。気楽でいい。卑怯者の娘が歩いてるなんて言われないで済む。

 

『あのプロゲーマー⚪︎×も絶賛!』

 

 目当てのゲームショップに向かう中、そんな文言が記されたゲームの広告ポスターが目に入った.

 

「プロ……か……」

 

 何度かオファーはあった.そして悩んだ。ずっとソロプレイで稼ぐのには限界がある.スポンサーをつけて、もっと大きな大会にとも考えた.でも……

 

『何だよお前のデッキ……こっちに何もさせないで!』

『ふざけるな!こんなのデュエルじゃねぇ!卑怯者のやることだ!』

 

 まただ。友達や仲間をつくろうなんて考えると、いつもこの記憶がフラッシュバックする。

 自慢じゃないけど私は強い。ゲームでも、デュエルでも。だから、仲間に入れてもらえない。ぐっと奥歯を噛み締めて、当初の目的であるゲームショップを目指す。

 そうだ、うちを仲間に入れることでチームが破れるなら、仲間になんてならないほうがいい。だから、今まで来たオファーも、年齢を理由に断って来た。

 そんなことを考えながら、ゲームショップに入って、目当てのゲームを手に取ってレジに向かう。

 

「7600円です。」

「支払いこれで……」

「かしこまりました.測ったらタッチをお願いします。」

 

 会話は最低限。もらった一品をパーカーのポケットに入れて、店を後にする。そうだ、買い物行かなきゃ。そう思いだして、通り抜けると近道になる路地へと向かう。

 ここを抜けて道を歩いていく。確かこの道を通れば……あれ?

 

「つまんねー」

「俺ん家でゲームやろうぜ?」

「それいいな!あんなズルいやつのことなんて忘れてさ!」

 

 そんな話が聞こえてくる。子供達が出ていく先のビルには見覚えがある。

 

「遊勝塾……」

 

 パパの塾。パパがいなくなった今、お兄ちゃんと、パパの弟子の修造さんと、その娘で、うちらの幼馴染の柚子お姉ちゃんでやってるデュエル塾。

 パパが卑怯者になって以降、客足が遠のいていたはずなのに……それにズルいやつってワード……慌てて出てくる子供達の間を通って中に入っていく。きっとお兄ちゃんに何かがあったんだ。

 

「お兄ちゃん!」

 

 入り込んだデュエル場では、柚子姉さんと修造おじさん、そしてお兄ちゃんと、小さい子が一人、沈んだ顔で中にいた。

 

「お兄ちゃん、何があったの?」

「勝観ちゃん!?」

「勝観!?どうしてここに!?」

「お使いの途中で通りかかったらなんか子供達が出ていくのが見えたから……

 何かあったの?ズルとか言ってたけど……」

「遊矢お兄ちゃんはズルなんかじゃないよ!」

 

 うちの言葉に反論するように、近くにいた子供が声をあげる。

 

「君は?」

「この子は山城タツヤ君。今日他の子達と遊勝塾の見学に来てたんだけど、ペンデュラム召喚の話になったら、ちょっと色々問題が起きちゃって……」

「ペンデュラム?」

 

 さらに出て来たワードに首を傾げる。ペンデュラム召喚?聞いたこともない召喚法だけど……

 

「ニュース見てないの?今町中この話題で持ちきりなのに……」

「私は……ほら……」

「……そっか……今でもなんだ」

 

 下を向くうちの顔に、柚子姉さんは気を落としたように言ってから、経緯を説明してくれる。

 ここにいる人たちは今の子供を除いてうちの事情をわかってくれてる。引きこもってたこともあって、直接会うのは久しぶりだったけど……何だか懐かしい。昔はこうやってデュエルの話をしたりしたっけ。

 そう考えると、こうして気を落とす柚子姉さんを見ると申し訳なくなってくる.

 どうもうちが知ってるころから、デュエルモンスターズというのはだいぶ進化していたらしい。シンクロにエクシーズ、そしてこの間お兄ちゃんが生み出したという新たな召喚法、ペンデュラム。

 魔法、罠ゾーンの隣にあるペンデュラムスケールに、専用の魔法とモンスター効果が一体化したようなモンスター、ペンデュラムモンスターをセットして……なんだかややこしい。

 ともかく、出来たばかりのその召喚方は、今のところお兄ちゃんにしか使えないらしい。なるほど、何が起きたかわかった。

 

 

「それで遊矢にしか使えない召喚法なら、それはズルだって……」

「なるほど……ちょっと子供達の言いたいことがわかったかも……」

「そんな……」

 

 私の失言に、お兄ちゃんが顔色を悪くする。

 

「ち、違うの!うちも別にお兄ちゃんが卑怯者とかそういうことを言いたい訳じゃないの!

 例えばさ……世界に一枚しかない究極のレアカードがあってだよ?そのモンスターを使って勝利を重ねる人を見て、どう思う?」

「世界に一枚しかない究極のレアカード?」

「それは……」

「カッコイイデュエリスト……かな?究極のレアカードの使い手って響きもそうだし……」

 

 そのカードの使い手こそこの人、みたいな感じのイメージがあるとカッコよく映る。FtVW(私のいる)界隈にも、そんなイメージのある選手は何人かいる。

 

「じゃあ、その究極のレアカードを使ってる人はデュエルモンスターズのカードを開発してる人で、自分の為に、そのカードを作って使ってるとしたら?」

「なっ!?そんなのズルじゃ……ない、か……」

「あっ、もしかして……」

「遊矢お兄ちゃんもそう思われてる……ってこと!?」

「多分……そんな感じ。」

 

 特に、カード1枚ならまだしも、お兄ちゃんのデッキ、EM(エンタメイト)は、話を聞く限り、そのペンデュラムモンスターのペンデュラム効果やペンデュラム召喚を軸にコンボを決めるデッキになっているように見える。

 

「もちろんうちらはお兄ちゃんがそんな奴じゃないのは分かってるんだけどそらはお兄ちゃんを知ってるからだし……」

「知らない人からは見えてしまうわけか……こいつは盲点だったな……」

「俺のエンタメが……そんなふうに……」

 

 でもそれがかえってお兄ちゃんを落ち込ませてしまう。

 

「エンタメをやるってなると仕方ないことだよ……パパとかも……」

 

 パパの使うデッキはマジックをモデルにした制圧型(パーミッション)。相手の動きを妨害して、魔法の発動でパワーアップするエースのスカイ・マジシャンで反撃するスタイル。

 毎回違うデッキの相手に合わせて、コンボの調節やどういう風に相手を自分のペースにさせるかといった考えは常日頃からしていた。でもその一方で、またお決まりのスカイ・マジシャンか……と言った反応や、対戦相手をダシにしてると言った批判は避けられなかった.

 というかぶっちゃけ昔はパパのキラキラしたスタイルに憧れたけど、格ゲーの世界に入って改めて見返すと、パパの決め台詞の『Ladies and Gentlemen』も割と勝ちが決まった時に言い出すせいで今は煽りみたいに見えるし。

 

「お兄ちゃんのエンタメがお客さんにどう伝わるかはその人次第だもん。

 うちがデュエルが嫌いなように、お兄ちゃんだけが使うペンデュラムが嫌いな人がいる。」

 

 お兄ちゃんにとっては、少しキツイ話題だろう。パパのエンタメデュエルを受け継いで、みんなを笑顔にするのが夢のお兄ちゃんには、そのエンタメはまだ未熟と突きつけるようなものだ.

 それをデュエリストじゃないからと言えてしまう私も大概なんだけど。

 

「俺だけが使うカード……」

 

 そのことについて、お兄ちゃんも思うところはあるみたいだ、でもまぁ、デュエリストじゃない私が口を出すのはここまでだろう。

 

「おつかい行かなきゃ。またね、お兄ちゃん。」

「あっ、勝観……。」

 

 帰ろうとしたら、引き留めるようにお兄ちゃんから声をかけられた。

 

「その、よかったら……俺と……デュエルをしてくれないか?」

 

 デュエル、か……それは

 

「ごめん、それには……好感度が足りないや。」

 

 話す気になれば頭は回る。デュエルのことも考えられる。でも私は、やっぱりお兄ちゃんをこんな風に貶すデュエルもデュエリストも……嫌いだ。

 

 

踊るもの 氷日エミィ

 

『これで貴方は何もできない。わざわざ自分からライフを削るんだもんねぇ、馬鹿なことするよねぇ?』

 

 切り札のシンクロモンスターも次に繋げる手札も、墓地からの逆転の一手も、全てを凍り付かせて除外する三つ首の龍。それにボクのフィールドはなすすべなく破壊される。そして、彼女は落ちた

 

『トリシューラでぇ、ダイレクトアタック!』

「うわああぁぁぁぁ!?」

「ぐふぉ!?」

 

 がばり、と飛び起きる彼女、暴れるように起きた為、振り回した腕がクリーンヒットしたことで、うなされる彼女を心配して近づいていたユーゴは吹っ飛ばされた。

 

「痛っててて……なんだよせっかく人が心配してやったってのに……」

「今のは……あっ、ご、ゴメン!そんなつもりじゃ……」

 

 嘆くユーゴに、慌てて謝る少女。水色の髪の毛先を黄、紫、赤といった色にカラフルに染め上げており、ユーゴが掬い上げた時に着ていた着物風の衣服からも、活発な印象を受けたが、

 病院着で髪を下ろし、顔に巻かれた包帯で片目が隠れてるその瞳は暗く、どこか内気な印象を受ける。

 

「ッ!!そうだ、デュエル!ねぇ、ボクのパパとママは!?」

「お前の父ちゃんと母ちゃん?……すまねぇ、俺はビルから落ちてくるお前を助けようとしただけでり」

「そっ……か……じゃあやっぱり……ボクは負けたんだ……」

 

 ユーゴの返答に、俯いてそう言う。負け。それはシティの住人にとって奪われることを意味する。たった一度の負けで、トップスとしての地位を失った。そんな人物もユーゴは知っている。

 登るのは大変だが、転げ落ちるのは簡単な搾取社会。おまけに彼女は、財産どころか命まで奪われるところだったのだ.

 

「あ〜、一応自己紹介しとくか。俺はユーゴ。お前は?」

「ボクは……氷日エミィ。氷山の氷にお日様の日でこおりびって読む。それに、カタカナでエミィ。そっちは?」

「カタカナでユーゴ、苗字はねぇ。俺は孤児院育ちだからな。」

「孤児院……そっか。じゃあ、ここはスラム?」

 

 孤児院と聞いて、目の前の少年がコモンズなことをエミィは理解する。これは見下しているわけではない。親という後ろ盾のない孤児は、コモンズからスタートするしか道がないのだ。

 まぁ失ってからのスタートという意味ではボクも似た様なものかと苦笑する体が、直後のユーゴの言葉に目を見開く。

 

「いや、どうもここはシティじゃねぇみたいだ。」

「シティじゃない?どういうこと?」

「いや、俺もわかんねぇんだけど……ここは舞網って街らしい。そこの病院だってよ。」

 

 そこからユーゴは説明を開始した。

 

「まず、俺はリンを探しててだな。」

「待って、リンって誰?」

 

 そして、早速躓いた。

 

「あ〜、俺の幼馴染で、誰かに攫われたんだ。そんで、そいつを見失って探して走り回ってたら、辺りが急に寒くなって」

「あの……デュエルのせい?」

「あの中でデュエルしてたのか?そんで怪しく思ってDホイールを止めたら、上のビルが爆発してよ。」

「ボクがデュエルに負けて、吹き飛ばされたんだ。」

「デュエルで?いや、いくらなんでもあの威力は……まさか、お前そのナリで……」

 

 コモンズの住人たちが暮らすスラムの更に下、そんな場所があるかもわからない地下闘技場では、リアルダメージが発生する危険なデュエルが、賭け事の娯楽として成立しているという噂がある。

 目を細めるユーゴだが、違うよ、と彼女は当然首と手を横に振って否定する。

 

「そうじゃない!アイツは……セキュリティの使いだって、ボクらの家に乗り込んできたんだ。」

「セキュリティだって!?」

 

 その言葉に驚く。町の治安維持組織が絡んでくるとは思わなかったのだ。

 

「ボクも、詳しい話は離れてるように言われてたから知らない。でもパパの怒号とかが次第に聞こえてくるようになって……それが、使用人達の悲鳴に変わったんだ……。」

 

 慌てて駆けつければ、そこは恐怖に怯えながらも凍らされ逃げられないもの達と、氷漬けにされもはや生きることすら叶わないもの達に分たれた中で、その画面の女が笑う地獄絵図だったという。

 

「そうか……そんなことが……」

「助けようとしたんだ。戦おうとしたんだ。でも……負けた。」

 

 そう言って包帯に触れる。ユーゴの話によると、目元に大けがを負っていたらしい。視力が回復するかどうかは五分だそうだ。

 

「実力が違いすぎたんだ……しかも、あれはただのデュエルじゃなかった。」

「確かに、あの攻撃の破壊力はリアルソリッドビジョンってだけじゃ説明がつかないよな……」

 

 なにせスラムからでもわかるビルの大爆発だったのだ。いくら相手の召喚したモンスターが強力とはいえ、さすがに説明がつかない。そもそも彼女の話ではデュエルディスクでのスタンディングのはず。

 それだけであれほど強力なリアルソリッドビジョンは展開できないだろう。ライディングデュエルで使われるような大がかかりなリアルソリッドビジョンシステムか、あるいは違法改造されてリアルダメージが発生するようになったモノなのか詳細は分からないがとにかくただ事ではないのは、頭が弱いが機械の知識はある程度あるユーゴにも理解できた。

 

「話がずれちゃったね……結局、それでボクはどうなったの?」

「それが俺にもわかんねぇんだよな。」

「えぇ……どうなってるのさ……」

 

 ユーゴの言葉に彼女はさらに困惑した。

 

「いやぁ、俺もお前が落ちていくのを見て、無我夢中でクリアウィングを呼び出して飛び出したんだが……」

 

 そう言って彼は、クリアウィング・シンクロ・ドラゴンを見せる。見たことないカードだなと彼女は思いつつも、ユーゴの話に耳を傾ける。

 

「無我夢中で飛び出して間に合え!って強く念じたら、急に目の前が光に包まれたんだ。んで気が付いたら、この町の路地に投げ出されてた。」

「それ……ワープしたってこと?」

「それがよ……飛び出した勢いのままワープしたから最初俺警察に連れて行かれそうになったんだが……それを助けてくれた奴の話なんだが、ここはどうも、別の次元って話なんだ。」

「べ、別の次元!?」

 

 クリアウィング・シンクロ・ドラゴンがどれほどのパワーを持っているのかはわからないが、リアルソリッドビジョンでは説明のつかない大けがを受けたばかりの彼女は、ワープしたという話ならまだ信じられた。

 だが、さらに飛び出してきたのは余計に荒唐無稽でとんでもない話だった。

 

「それに関しては……私から説明しよう。」

 

 すると、病室の外からそんな言葉と共に一人の青年が入ってくる。眼鏡の奥に鋭い瞳を持ち、マフラーと足元が特徴的な青年だ。

 

「誰?」

「私の名前は赤馬零児。彼を助けた者だ。そして」

 

 眼鏡を抑えながら、彼の言葉は続く

 

「君たちと私たちが次元の異なる存在だと……異次元のことを知る、数少ない人間の一人だ。」




籠るもの 榊勝観
この物語の、榊遊矢と対を成すもう一人の主人公……という形で書きたいが多くのキャラを登場、活躍させる作品の都合上今後の見せ場はノリと勢い次第な遊矢の妹。
榊 遊勝に憧れ、榊 遊勝のエンタメ精神を受け継ごうと奮闘、ただしデュエルの戦績は並みな兄遊矢とは正反対に、父を憎み、デュエルから遠ざかる。
しかし、ある意味で『榊遊勝』のデュエルを最も受け継いでいるともいえる高いデュエルセンスを有している。
過去に自身のデュエルを叩かれたトラウマからデュエルから離れるため、テレビゲームの世界に逃げた過去を持つ。
しかし幸運にもデュエルでもゲームでも発揮される天才的な『先読み』のセンスにより、天才ゲーマーとして、顔を出さない正体不明のゲーマー、No-MEN Catとして、大会で賞金を稼ぎ、迷惑をかけてる母や心配をかけている兄に報いようとしている。

使用デッキは『〇〇 (現在不明)』まぁ多分勘の良い読者の皆様にはバレバレ。

またまたアンケートを募集させていただきます。今後出てくる零羅のCCCデッキ、そしてバレットの獣闘機デッキについてです。

2人のデッキはアニメ未実装のカードが使われているのですが……2人のデッキをどうするべきか、というアンケートです。
自分としては前回のアンケートで『オリカ使ってもいいよ』という声が一応一番多かったのでオリカを使わせて欲しいのですが、前回のアンケートがリンク召喚は圧倒的になしの声が多かったのに対し、あり、なし、消極的なありで結構割れてる状態です。

なのでまず零羅のデッキから質問させていただこうと思います。一応CCCの融合、シンクロ、エクシーズの効果を色々考えており、悪魔族関連のサポートカードやオリカのサポート-カード利用して原作の『CCC』とは大きくかけ離れた形になるものにするか、
アニオリのカードは出さず、OCG化されてる零羅っぽいデッキを使用するか、で募集させていただきます。

零羅のデッキ、どうする?

  • OCGから零羅っぽいカードを
  • 原作を元に構築したオリカを使う
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