遊戯王 ARC-Ⅴ 揺れる運命 重なる手札   作:月光舞詐称者姫

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お待たせしました。今回勝鬨の過去の一部改変と、梁山泊塾スタイルの下げがございます。梁山泊塾好きという方は申し訳ありません。


第二話 それぞれの選択

 遊矢と買い物をした後、勝観はお使いをして家へと帰っていった。

 

「おかえり.ずいぶん遅かったじゃないのさ」

「うん……ちょっと塾の方寄ってて……」

「お父さんの塾かい!?」

 

 ずっとデュエルモンスターズの世界から離れていた彼女が、遊勝塾に足を向けた。そのことに驚いた母洋子は、思わず取り掛かっていた料理から目を離し、勝観の方を向いた。

 

「違うよ。トラブルが起きてたから、心配して行っただけ……」

「あっ……そうなのかい?遊矢は?」

「大丈夫だよ。少し……思い詰めてたけど。」

「そう……」

 

 その会話で、むしろ遊矢を心配して洋子は気を落とす。その様子を見てか……勝観はふぅっと息を吐き

 

「あのさ……お母さん……その……お兄ちゃんと、チャンピオンとの試合、録画とか……ある?」

「見るのかい!?」

 

 その言葉に今度こそ洋子は驚いた。兄の頼みでも無理だと言った彼女がデュエルを見たいと提案してきた。

 

「いや……その……デュエリストに戻りたいとかいうわけじゃ……ないんだけどさ。

 というか……それは、多分無理.でも、お兄ちゃんに、背負わせ過ぎたんじゃないかな……って」

 

 遊勝塾で気を落とす遊矢、父のこと、塾のこと、そして、引きこもりである自分(いもうと)のこと。引きこもって世界に守られてきた自分と違い、悪意に晒され、その中で戦ってきた遊矢の

 

「重荷になりたくないんだ……支えたい。だから……デュエルの勉強とかも……してみようかなって……

 講師……足りてないんでしょ?塾の経営とか……付き合ってみようかなって……」

 

 その言葉に、洋子は嬉しそうにほほ笑んだ。

 

「じゃ、録画してあるからリビングで見ようか」

「うん。準備しておくね。ありがとう」

 

 そう言って彼女は部屋に戻る。

 

「(私は……悪意から逃げた。怖くて、辛くて、デュエルの話なんて関係ないゲームの世界に逃げた)」

 

 だが、一番得意とした(やりこんだ)ゲームは、デュエルモンスターズを題材とした“FtVW”。Dパッドも、愛用したカードも、処分することは無かった。

 デュエルから離れた自分には、必要のないもののはずなのに。

 

「捨てようって……思えなかったんだよなぁ」

 

 そう言いながら、部屋でDパッドを手に取る。装着しようともするが……腕が震える

 

「流石に……これは無理か。」

 

 デュエリストに戻る気は無い。まだ……戻れない。私はデュエルを今、楽しめないから。

 

 

 梁山泊塾 この街最大の名門校であり、融合、シンクロ、エクシーズといった新たな召喚法のパイオニア、LDSに次ぐプロ輩出率を誇るデュエル塾である。

 

「トォリャアアアアァァァァ!」

「フンッ!セリャアアアアァァァァ!」

 

 その実態はとても厳しいスパルタ教育。アクションカードの取り合いにおいて鍛えた肉体による格闘技を利用し相手を妨害すると言う手段を取る。

 師であるプロデュエリスト、郷田川梁山ことマスター梁山の『デュエルを楽しいと思うな』の教えの下、武術とデュエルを極めるべく、日々激しい修行に明け暮れる。

 その間、彼らはこの塾に住み込み、プロになるまで親と会うことすら許されない修羅の塾。

 

「なぁ知ってるか?最近の"道場破り"の話」

「道場破りだと?」

 

 半分の生徒が猿叫を上げながらの打ち込みに明け暮れる中、休憩と水分補給を取っていたこの塾で最も強い塾生、勝鬨勇雄に、もう一人の塾生が声をかける。

 

「あぁ、なんでもいろんなデュエル塾に来ては、勝負を挑んでいくらしい。それで『この男に心当たりはあるか』って写真を見せてくるらしいぜ」

「くだらん、単なる人探しだろう?」

 

 珍しくはあるが、噂になるほどではない。

 

「あぁ、だが、そいつが悪魔みたいに強いとしたら……?」

「悪魔みたいに?」

「LDSのユースコース生がワンキルされたらしいぜ」

「なんだと?」

 

 勝鬨は去年出たジュニアユース選手権で、現在ユースコースに上がったLDS生に敗れている。熾烈なバトルだったのだが、そんな相手をワンターンキル?

 

「なんでも融合を使うとか」

「LDSでもないのに融合だと?」

 

 儀式召喚以外の特殊召喚法は、LDSの親会社、レオ・コーポレーションが開拓した物ばかり。

 この梁山泊塾でも融合を使うが、それもマスター梁山がLDSの戦いを見て,戦術を盗み考案した物だ.当然、シンクロ・エクシーズも然りだ。

 

「あぁ、しかも複数のデッキで。ある奴は馬鹿でかい機械族の融合モンスターにやられたが、別の奴はバーンでフルボッコ、また別のやつは悪魔みたいな奴に、攻撃を強制的に吸い寄せられてやられたってよ」

「なんだそれは。全て別々の戦術では無いか。」

「あぁ。だからその"道場破り"はヤバいんだと……」

 

 そんな会話をしていた時だった。

 

「「ぐわあああぁぁぁぁぁ!?」」

 

LP0ピーッ!

LP0ピーッ!

 

 道場の扉を破壊しながら、二人の青年が吹っ飛ばされてきた.

 

「梅杉、武田、なにがあった!?」

「情け無ぇ。二人がかりでデュエル中に肉体言語まで使ってこの程度かよ」

 

 この塾で勝鬨の次に実力をもつ者達が吹っ飛ばされ、その奥から一人の男、伸ばした後ろ髪を一本にまとめた鋭い瞳の男、ゼンが現れる。

 

「お前……その髪型に服、まさか、噂の……」

「梁山を出せと言ったら、まず相手になると言うんでな。軽く揉んでやった」

 

 武術においてもデュエルにおいてもそれなりに腕の立つはずの二人。そこにタッグの連携も加われば、一人の目の前の男の不利は必至

 彼が無傷なところを見れば、試合がどれだけ一方的だったかがよく分かる。勝鬨はそう考え

 

「ならば次は自分が相手だ!」

 

 男の前に立った。

 

「お前は?」

「勝鬨 勇雄。この梁山泊塾の門下生だ。貴様は噂の道場破りか?」

「あぁ、どうもそう呼ばれてるらしいな。」

「マスター梁山に何のようだ?」

「デュエルしに来た。弟子じゃ相手にならないからな」

 

 そう言って倒れ伏す二人に目を向ける。

 

「この塾内でそれなりに腕が立つ奴がこれじゃあな。期待外れだぜ」

「自分も一緒のように見られては困る。」

「へぇ。言うじゃねぇか。なら前の二人よりマシか試して……」

「待て、勝鬨」

 

 二人がデュエルディスクを構えようとした時、そう声が響く。

 

「この者の相手は、儂がしよう」

「マスター梁山!?」

「あまり事を荒立てる気は無い.質問があるなら答えよう」

「意外だな、デュエルを止めるとは思わなかった」

「勝鬨は、ジュニアユースクラスの試合に出場が決まっている。逸った二人はともかく、全員を傷つけられては困る」

「なるほどな。じゃあ手っ取り早い」

 

 そう言って、彼は一枚の写真を見せる。黒と紫の髪を持つ少年。その容姿は、ペンデュラム召喚のパイオニアとして現在シティで有名な榊遊矢によく似ているが……

 

「榊遊矢……ではないな?」

 

 目つきなど、異なる点がいくつも見受けられた。

 

「あぁ、名前はユート。その遊矢って奴とは似てるが別人だ」

「すまんが、心当たりはない」

「わかった。……となるとLDSか、いっそこいつを訪ねてみるか」

 

 懐にしまいながら、梁山に聞こえない小声でそうぼやく。

 

「話は済んだか?なら」

「待てよ」

 

 去れ、そう言おうとする男に、デュエルディスクを構えて返答する。

 

「何のつもりだ?」

「生憎俺は話を聞きたいだけでな、話を聞きたきゃデュエルで勝ってからにしろとかいう奴がいたから相手してただけなんだがよ……

 そうしたらいつのまにか道場破りなんてあだ名がついて、俺がデュエル塾に向かえばどいつもこいつもデュエルを挑むようになっちまった」

「そうか、だが儂は忙しい。貴様にデュエルする気がないなら」

「だが、この塾は別だ。気が変わった」

「……ほう?」

 

 鋭い目で睨みつける男に、梁山も目を細めて返す。

 

「勝つため、力を得るために、デュエルを楽しまず闇の道を突き進む……だったか?」

「然り。武術で相手の妨害など卑劣だとでも言うつもりか?」

「卑劣……ね……いや、そうじゃねぇな。」

 

 その言葉に、彼は首を横に振る。

 

「下らねぇ、だ。」

「……ほう、だが、その下らない思考も、結果をここに残している。」

 

 梁山泊塾のプロ輩出率はLDSに次ぐ第二位。戦法こそ万人に好まれるものではないが。

 中には相手を徹底的に痛めつけるために武術を使う奴らもいる。だが、ルールで禁止されている訳ではない。

 

「結果ね、プロ輩出率はLDSに次ぐ第二位、アンタもいくつものタイトルを取ってる。そのことか?」

「そうだ。この結果こそ、梁山泊塾の手法が間違っていないという」

「榊遊勝には勝てたのかよ」

「何?」

「ストロング石島には勝てたのかよ?テメェは。プロデュエリストの世界でチャンピオンになれたのかと聞いてるんだ」

「それは……」

 

 そこで言葉に詰まった。筋骨隆々の大男で、パワータイプのデッキを同様に使う、榊遊矢に敗れた元チャンピオン、ストロング石島。彼のエースモンスター、バーバリアン・キングによる連続攻撃に耐えきれず、敗れるという戦いを何度かした。

 遊勝が逃げ転がり込んできたともいえるチャンピオンの座。遊矢に負けたことで評価が割れているこの男だが、それでも遊勝が消えてからチャンピオンであり続けた男である。それはつまり、彼が梁山に勝ち続けたことを意味している。

 むろん、榊遊勝にも、彼は敗れたことが何度もあった。

 

「テメェの方法が優れているのなら、なぜ普通に教えてるLDSにプロ排出率で負けている?プロ排出率第二位は栄光の実績じゃねぇ、その手法やってるだけじゃLDSに勝てませんっていう敗北の証明だ」

「貴様……」

 

 梁山の顔が怒りに染まっていく。

 

「もう一度言ってやるぜ?親から引きはがして、デュエルを楽しむ心を奪って、ただひたすらに勝利を求めて得られた結果は二等賞がせいぜいたぁな。

 そいつは優れた手法じゃねぇ、ただ浅さの知れた器の底を、殴りつけて無理やり深く見せてるだけさ!全くもってくだらねぇな!」

「吠えたな、小僧!」

 

 梁山は、そんなゼンの言葉にデュエルディスクを構える。梁山泊塾の塾生たちは道場を開ける。これから始まるデュエルに備えて。

 

「そこまで言うなら、儂の戦い方が真に虚仮脅しか、見せてくれるわ!」

「あぁ、お前を叩き潰すことで見せてやるよ、そんなことで得た力がどの程度のものかって話をな!」

 

 お互いにデュエルディスクを構える。

 

『アクションフィールド オン クロスオーバー』

 

 展開されるのは、リアルソリッドビジョンによる飾りつけ。ここにスポーンするアクションカードを利用して、デュエルを更に面白く進める、このスタンダード次元特有のデュエルだ。現在展開されたフィールド、クロスオーバーは一番オーソドックスな、この道場の周囲にリアルソリッドビジョンで展開された四角の足場が展開されたフィールドだ。

 

「「決闘」」

 

梁山 LP4000 ▯×5

ゼン LP4000 ▯×5

 

「先行はくれてやる」

「いいぜ。俺のターン、マジックカード、手札断殺を発動させてもらう。ハッ!」

「早速か!」

 

 そう言って近場の足場に飛び移り、さらに複数の足場を移動する。梁山も、その年齢に見合わない素早さでゼンに追いすがる。

 

「チェリャアアァァァァ!」

「おっと」

「なにっ!?」

 

 アクションカードを取ろうと向かうゼン。そこに放たれる梁山の飛び蹴りだったが、それを彼はタイミングを見切ってかがむことで回避してしまう。

 

「俺とは別のアクションカードを取りに行けばいいものを……馬鹿正直に俺を狙ってきたな?

 アクションカードは頂きだぜ。俺はアクションカードと、手札のヴォルカニック・リムファイアを墓地に送って、二枚ドロー」

「くっ……!儂は手札のガンバランサーと天融星カイキを墓地へ送り、二枚のカードをドロー!」

 

ゼン ▯5→6→5

 

「墓地に送られたヴォルカニック・リムファイアの効果発動。こいつを除外し、デッキからヴォルカニック・カウンターを墓地に送る。

 さらに、ヴォルカニック・トルーパーを召喚。効果で、ヴォルカニック・ブレイズ・キャノンを手札に加える」

 

 地面に着地した梁山に対し、ゼンは足場の上に立って、傍に燃え盛る1体の燃え盛るモンスターを召喚する。

 

「炎族デッキか」

「ただの炎族デッキと思ってもらっちゃ困るな。俺はデッキから「ブレイズ・キャノン」1枚を墓地に送り、永続魔法ヴォルカニック・ブレイズ・キャノン発動!」

 

ゼン ▯5→4

 

 ゼンの足元から、燃える炎の中心のような煌々とした黄色の銃座(ターレット)が出現する。

 

「そして、ヴォルカニック・トルーパーの効果を発動。手札のヴォルカニック・バレット一枚を墓地へ送り,お前のフィールドに、ボム・トークンを1体特殊召喚する」

 

 梁山の場に爆弾を抱えた火の精霊のようなトークンが現れる。

 

「そして俺は,墓地に送られたヴォルカニック・バレットの効果で,ライフポイントを500払い,ヴォルカニック・バレット1枚をデッキから手札に加える。

 ボム・トークンが破壊された時,そのコントローラーに500ポイントのダメージを与える。わかってきたんじゃ無いのか?俺のデッキが」

「バーンデッキか!」

 

ゼンLP4000→3500

 

 カッ!と目を見開く梁山。バーンデッキ、相手のライフをモンスターで削るパワーデッキとは異なり、効果ダメージで攻めるデッキ。中には先行1ターン目から相手のライフを4000削り切る人間すら存在する決まれば恐ろしいデッキ。

 だが、アクションデュエルでの使い手は少ない。その理由は

 

「その通り。そして、ヴォルカニック・ブレイズ・キャノンの効果!手札を1枚墓地へ送りお前の場のモンスターを破壊する。FIRE!」

「アクションマジック『ミラーバリア』!1度だけ効果破壊からボム・トークンを守る!」

 

 アクションカード。手札に加え、任意のタイミングで発動できる魔法カード。中には破壊や効果ダメージを躱すカードも多い。

 相手のデッキを見抜くや否や、梁山は機敏な動きで次のカードを取りに向かったのだ。

 

「なら墓地のヴォルカニック・バレットの効果で、ライフ500を払い、ヴォルカニック・バレット1体を手札に加える」

 

ゼンLP3500→3000

 

「ヴォルカニック・ブレイズ・キャノンの効果で、俺は1ターンに1度ヴォルカニックモンスターを召喚できる。

 来い、ヴォルカニック・エッジ!こいつには1ターンに1度、攻撃を行わない代わりに500ポイントのダメージを与える。第ニ射、FIRE!」

「ぬぅっ!」

 

 しかし、連続バーンダメージが来ると見越して既に動いていた梁山は、更なるアクションカードを手にする

 

「アクションマジック『加速』!効果ダメージを無効にする!」

「なかなかやるじゃねぇか。カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

「フ……フフフフ……」

 

ゼン▯4→3→2

 

 ターンエンドの宣言に、梁山が笑う。それに、ゼンは眉をピクリと動かした。

 

「どうした?勝ちを確信するには,ちと早いんじゃ無いか?」

「言いよるわ……小僧。だが、貴様はこの儂に説教を垂れる程度にデュエルの腕に覚えがあるようだが、

 アクションデュエルに関してはてんで理解しておらぬようだ」

「確かに,このルールで実際にデュエルするのは今日が初めてだな」

 

 入手したアクションカードを使わずに即座に手札コストとして切り捨てたこともそう言うことかと梁山は笑みを浮かべた。

 バーンデッキは、アクションデュエルと相性が悪い。パワーデッキは、攻撃を防御する回避や奇跡だけでなく、相手の攻撃を下げたり自分の攻撃を上げたりと逆転、防御の択が演出面でも豊富で対抗策が多い、後述の攻撃力に関係するカードは相手により多くのダメージを与えるなど、様々な形で生かすことができる。

 一方でバーンデッキの効果ダメージを生かせるようなカードは少なく、『破壊輪』などのカードで一撃で大きなダメージを与えてしまうとダメージ・ドローといったカードで相手に逆転されかねない可能性が出てくる。

 また、彼のバーンは破壊をトリガーにする様子。であれば、先ほど使ったミラー・バリアなどのカードも活きてくる。

 

「貴様の意見は、なるほど筋が通っていると言えなくもない。だが、勝てないことを理由に挙げた貴様の戦術はどうだ?

 2度のバーンはいずれも失敗に終わっている。言葉を並べ立てるだけで実力の伴わぬその姿をなんというか知っているか?」

 

 コストの自傷ダメージで、彼はすでにライフを四分の一も失っている。対して、梁山は無傷。彼が梁山が勝ててない事実を論証に挙げたように、その事実こそ、彼の未熟さの証明だと、笑みを浮かべて宣言する。

 

「生兵法だ。そのような姿で儂の教えにとやかく言おうと、まったくもって響かぬわ!」

「そうかい、ならとっととターンを進めやがれ。俺はすでにターンエンドしてるぜ」

「口だけは減らぬようだな……儂のターン、ドロー!」

 

梁山▯5→6

 

 そうして引いたカードに、彼は笑みを浮かべる。

 

「小僧、どうやらこの勝負、儂の勝ちの様だ。」

「へぇ」

「儂はボム・トークンをリリースし、ガンバランサーを召喚!破壊ではなくリリース故、ボム・トークンのダメージは発動せぬ!」

 

梁山▯6→5

 

ガンバランサー「ランサー!」

 

 現れた槍兵は、槍を高らかに掲げる。

 

「ガンバランサーは、召喚された時に手札、または墓地からガンバランサー1体を守備表示で特殊召喚できる。

 そして、儂はガンバランサー1体をリリースし、地葬星カイザを特殊召喚じゃ!」

 

 召喚されたランサーは瞬時にリリースされ、一体の武者が現れる。

 

地葬星カイザ 「イザ!」

 

梁山▯5→4

 

「地葬星カイザの攻撃力はリリースしたモンスターの攻撃力上昇し,場に攻撃力が上昇したレベル5以上の戦士族モンスターがいる時、墓地の天融星カイキを特殊召喚できる」

 

カイザATK1000→2000

 

天融星カイキ 「ハァッ!」

 

 カイザの攻撃力が上昇したことでさらに墓地からレベル5のモンスターが現れる。

 

「カイキの効果発動!このモンスターが特殊召喚に成功した時、LP500を支払うことで手札、フィールドから融合素材モンスターを墓地へ送り、融合召喚を行う!儂はフィールドのカイザとカイキを素材に、融合召喚!」

 

梁山LP4000→3500

 

 カイキが、自身が生み出した光にカイザと共に包まれていく。

 

「天に融ける者よ、地に葬る者よ!今ひとつとなって、悠久の覇者たる星と輝け!融合召喚!」

 

 パンッと両手を合わせて梁山が高らかに宣言する。

 

「出でよ、覇勝星イダテン!」

 

覇勝星イダテン 「ゼヤァッ!フンッ!」

 

 三俣槍を手にした鎧武者が現れる。その攻撃力は3000

 

「さらに、手札の魔聖騎士ランスロットを墓地へ送り、地雷星トドロキを特殊召喚!」

「……なるほどな。さすがプロってだけあるぜ。これでバトルフェイズにトドロキの効果を発動すればさらにもう一体融合モンスターが出てくる」

「如何にも。もっとも、イダテンはバトル中相手のレベル10以下のモンスターの攻撃力を0にする効果を持つ。

 これより出す覇雷星ライジンを出す間もなく、貴様のライフは尽きる」

「皮算用だな、アクションカードのことは考えなかったか?」

「取らせんよ。先ほどは後れを取ったが、2度も同じ過ちを犯す儂ではない」

「堂々と肉体言語を使った妨害の宣言ね……ま、それでいいぜ。アクションカードを取りに走るのはテメェだ」

「何?」

 

 ゼンの言葉に梁山が眉を顰める。その瞬間

 

「バトルフェイズに入る前に、トラップ発動!ブレイズ・キャノン・マガジン」

 

 フィールドのヴォルカニック・ブレイズ・キャノンに、ガシャコンと音を立ててマガジンのようなものが装填される。

 

「こいつは、1ターンに1度、手札からヴォルカニックカード1枚を墓地へ送りドローする効果を持つ。

 俺が送るのは、ヴォルカニック・バックショット!」

「なにっ!?」

 

 今更ドローカード?一瞬疑問符を浮かべる梁山だが、彼の笑みから何かがあると確信する。

 

「俺は1枚ドロー。そして、墓地に送られたヴォルカニック・バックショットの効果発動。お前に500ポイントのダメージを与える」

「フン、たかが500」

 

 勝ちが確定した今わざわざ防いでやる必要はない。とでもいうように鼻で笑うが、

 

「さらに、『ブレイズ・キャノン』と名の付くカードの効果で墓地に送られた時、同名カードを2枚デッキから墓地へ送り、相手のモンスターをすべて破壊する」

「何ッ!?」

 

 慌ててアクションカードを取ろうと周囲を見るが、油断していたため間に合わない。

 

「遅ぇよ、まずは食らいな、第一射、FIRE!」

 

 ターレットから発射される炎が、梁山の場のモンスターを焼き尽くして破壊。さらに梁山を焼き尽くさんと迫る。

 

「ぐおおぉぉぉぉ!?」

 

梁山LP3500→3000

 

「そして、墓地に送られたヴォルカニック・バックショット2体もまた、墓地に送られた時、1体につき500ポイントのダメージを与えるぜ」

「なっ!?それでは」

「あと1000ポイントのダメージ、きっちり受けてもらおうか。2体目のヴォルカニック・バックショットの効果、第二射 FIRE!」

 

 リアルソリッドビジョンに焼かれ、地面を転がる梁山。さらに第二射と称して放たれた炎が再び梁山を焼く。

 

「ぬううぅぅぅ!?」

 

梁山LP3000→2500

 

 しかし、転がった梁山の傍に落ちるアクションカードに目を向けた。

 

「あれじゃっ!」

「させるかよ。3枚目のヴォルカニック・バックショットの効果だ、テメェにダメージを与える!第三射、FIRE!」

 

 さらに追撃で放たれる火炎弾。しかし、それは梁山が拾ったアクションカードにより阻止された。

 

「アクションマジック『加速』!これにより、効果ダメージを無効にする!」

「3発目は回避したか。」

「残念じゃったの、小僧。連続ダメージを与える分、アクションカードを拾いに行くチャンスも多い」

「その分ダメージを与えるチャンス多いがな。一長一短って言葉をしらねぇのか、テメェは」

「減らず口を……」

「減らず口も叩きたくなるってもんだぜ。さ、もう終わりか?」

「フンッ、まだまだよ。カードを3枚伏せ、ターンエンドじゃ。」

 

梁山▯4→1

 

「じゃあ行くぜ、俺のターン、ドロー」

 

ゼン▯2→3

 

「この瞬間、罠発動!」

 

 こちらのドローに対抗するように、梁山もカードをオープンする。

 

死魂融合(ネクロ・フュージョン)!墓地から素材を裏側で除外することで、エクストラデッキから融合モンスターを融合召喚する!ガンバランサーと地雷星トドロキを墓地より除外し、再び現れよ!2体目の覇勝星イダテン!」

 

 再び現れる勝鬨も扱う梁山泊塾の最強のエースモンスター。

 

「このモンスターは死魂融合(ネクロ・フュージョン)の効果で召喚されたターン、攻撃できぬ!」

「だが、俺のターンなら問題はねぇ」

「そうだ、そして言ったであろう?儂の勝ちであると!さらに、リバースカードオープンじゃ!」

 

 そう言いながらオープンされたカードは……

 

「永続罠“安全地帯”!イダテンを対象に発動し、この罠がある限りイダテンは対象に取られず戦闘・効果では破壊されぬ!

 さらに永続罠『宮廷のしきたり』を発動!これにより儂のフィールドの表側表示の永続罠カードは戦闘・効果では破壊されぬ!」

「なるほどな、それでイダテンをヴォルカニックの破壊効果から守る……さらに安全地帯を宮廷のしきたりで守る……と」

「貴様のデッキはバーンと破壊の両立!だが、こうしてしまえば容易いことよ。」

「確かにな……だが、忘れちゃいねぇか?ヴォルカニック・エッジの効果。お前にダメージを与える。この効果を発動したターン、こいつは攻撃出来ねぇ」

 

 再びヴォルカニック・エッジが攻撃態勢に入る。だが、梁山は素早く動き傍のアクションカードを手に取る。

 

「させん!アクションマジック“効果暴走”!貴様の発動した効果を無効にし、モンスターを破壊!貴様に500のダメージを与える!」

「チッ……」

 

ゼンLP3000→2500

 

 しかし、ため込んだ炎は直後暴発し、その火の粉が彼を焼き焦がす。

 

「見誤ったな小僧。なにも加速やミラー・バリアだけが貴様が恐れるべきカードではないぞ。」

「確かにな……なら俺は、ヴォルカニック・ブレイズ・キャノンの効果を発動するぜ。手札から1度、ヴォルカニックモンスターの召喚を行える。俺が召喚するのは、ヴォルカニック・トルーパー」

 

ゼン▯5→3

 

 呼び出されたのは、ボム・トークンを生み出すヴォルカニック・トルーパー

 

「そして、ブレイズ・キャノン・マガジンの効果で、手札のヴォルカニックモンスターを墓地に送り1枚ドローする。

 俺が捨てるのはヴォルカニック・バレット。そして、ドローだ」

 

 そうして引いたカードを見て、彼は笑みを浮かべる。

 

「なぁ、アンタは、闇の道を歩めと教えてるらしいな」

「そうだ。デュエルとは勝つためにやるもの。勝つために全力をもって勝負を挑むのに、楽しいなどという感情は不要」

「だからこうして、親にも合わせずひたすらデュエルを磨かせる。そして、敗者は厳しく扱われる」

「無論、武闘派デュエルを地に落とした者など、この梁山泊塾には不要」

 

 むしろ、放り出さないだけありがたいと思えと、梁山は言う。

 

「貴様もデュエルは楽しむものだというクチか?だが、楽しむなどという感情に心を乱されているから勝てる戦いも勝てぬのだ」

「もう、勝ったつもりか?」

「無論。貴様の破壊効果は封じられ、儂のライフはまだ潤沢。貴様の手札のカードがさらなるバーンカードであったとして、とても3000のライフを削りきれるとは思えんな。

 例え手段があったとて、アクションカードで防いで見せようぞ」

「言うじゃねぇか。なら見せてやるよ。俺は2体のヴォルカニック・トルーパーをリリースし、ヘルフレイムエンペラーをアドバンス召喚」

 

ゼン3→2

 

ヘルフレイムエンペラー「フハハハハハ!」

 

 降臨するのは、レベル9の最上級モンスター、ヘルフレイム・エンペラー。

 

「こいつは特殊召喚出来ない制約を持っているが、その代わり強力な効果を持ってる。

 墓地から5枚まで炎属性モンスターを除外し、除外した数だけお前の場のフィールドの魔法・罠カードを破壊する。2枚のヴォルカニック・バレットを除外し、お前の場の安全地帯と宮廷のしきたりを破壊するぜ。」

「残念じゃったな!宮廷のしきたりは破壊されるが、しきたりの効果で守られる安全地帯が破壊されることは無い!」

 

 ヴォルカニック・バレット達が集まり、大きな火球となったそれは梁山のフィールドを焼き払うが、宮廷のしきたりが安全地帯を守り切って見せる。

相手フィールドのモンスターを対象に取らなければならないヴォルカニック・ブレイズ・キャノンの効果は、安全地帯がある限り発動できない。

 

「そうだな。だが忘れちゃいねぇか?テメェのフィールドに居るのはイダテンだけじゃねぇぜ!」

「なに?ハッ!」

 

 その言葉で、慌てて自分のフィールドに目を向ける。そこには、一体のボム・トークン

 

「貴様、トルーパーの効果を……!」

「すでに発動させてもらっていたぜ、手札のヴォルカニック・リボルバーを墓地に送ることでな!ヴォルカニック・ブレイズ・キャノンの効果発動!安全地帯で守れるのはイダテンだけだ!ヴォルカニック・エンペラーを墓地へ送り、ボム・トークンを破壊だ!デカいのをお見舞いしてやれ!FIRE!」

「ぬおおぉぉぉ!」

 

 大型モンスターが弾丸とされ、極大の火炎がブレイズ・キャノンから放たれ、迫りくるそれに梁山が声を上げ走る。

 

「アクションマジック『ミラー・バリア』モンスターの破壊を無効にする!」

 

 そして、その弾丸は、間一髪で凌がれた。

 

「……大したもんだぜ。そこまで勝利にしがみつくタマは大したモンだ」

「……何が言いたい?」

「勝たなきゃゴミ、そいつは、お前の負けに対してバッシングがあるからだ。違うか?」

「…………」

「相手を痛めつけるデュエル。勝利に固執するせいでリスペクトの欠片もねぇ。悪いとは言わねぇさ。勝ちたいって感情はすべてのデュエリストが抱くものだ」

 

 ゼンは目をつぶり、思い出すようにそういう。勝ちたい。その渇望の元デュエルに明け暮れた日々も、あったものだ。その感情は間違っていない。

 

「………………」

「だがテメェは一線を越えた。リアルソリッドビジョンの衝撃やらじゃねぇ、直接己の手で相手を殴りつけて勝利を手にする。お前の言う通り戦法なんだろうさ。ルール上はな。だが、快く思わねぇ観客も多い」

 

 その言葉に、梁山はたじろく。そうだ。彼が負けた時には彼のファンでない者たちからのバッシングもあったものだ。

 しょせん暴力でしか勝てないと、嘲笑われた時もある。

 

「負けはお前に厳しい。そいつは、お前が勝利だけを求めて大切なものを切り捨ててるからだ。」

「黙れ!貴様の言う大切なものは甘さだ!儂が歩むはそれを捨て、勝利を求める闇の道!その歩みを侮辱することが」

「テメェが闇を語るんじゃねぇ!」

「ッ!?」

 

 彼の反論を遮るように、ゼンが一括する。切れ長の瞳が鋭く見開かれる。

 

「“負けは取り返せる”」

「何?」

「俺のダチの信念だ。負けようと、壁に阻まれようと、転げ落ちて泥にまみれようと、諦めず挑戦し続ければ、高い壁とて最後には超えられる。そうして最後に笑ってればそれでいい。

 絶対に負けられない戦いは、命が、二度と取り戻せない物がかかった時だけだ」

「何が言いたい……儂の言う闇は生ぬるいとでも」

「違うな。テメェは勝手に敵を作ってるんだよ。それで失うことに怯えて、それがもう二度と取り戻せねぇんじゃねぇかって錯覚して、勝手に負けられない戦いだと思いこんでるだけだ」

 

マスター梁山を指さしてゼンは言う。かつて切磋琢磨したライバルを思い出しながら、そう言う。負けて、取り巻きが離れて、多くを失いながらも、その状況に立ち向かった男を。

 バッシングを恐れず、それに真っ向から挑んだその男に比べれば、目の前の男が、ゼンにはそうして挑めぬ覚悟もない臆病者にしか見えない。

 

「例え大会で一回戦負けしたって、次の大会で優勝をもぎ取ってやりゃ誰も文句を言いやしねぇ。たとえそいつが1度の負けで威信を地に落としたからなんだ。

 お前がやることは、破門同然の扱いでそいつを潰すんじゃなくて、より研磨して、次は負けねぇ最強の武闘派デュエルを見せてやれる、立派な弟子に育てることじゃねぇのかよ?」

「綺麗ごとを…………」

「綺麗ごと?ちげぇな。こいつは覚悟の差だ。」

「覚悟だと?」

「目の前で、知らない場所で、奪われて、失って、離れられて、独りぼっちになって、それでも戦う。今まで失ってきた物を取り返すために!」

「なんだ?何の話をしている!?小僧!?」

 

 困惑する梁山。同様に、デュエルを間近で見ていた勝鬨も、戦慄した。デュエルを楽しむと思うな。そういわれて修行に明け暮れた日々。

 奇妙な感覚。自分がいままでいると思っていた闇よりも、さらに深い哀しみと怒りからくる暗い闇。目の前の男が、それを抱え、その中でもまだ立ち上がることを辞めないと宣言するように、戦い続けると吠える男の覚悟。

 

『楽しかったね!またデュエルしよ!』

『…………でも、僕は梁山泊塾にいっちゃうから……大会に出る時かプロになるまで、塾から出られないんだ』

『ならいつか!大会でも、プロになってでもいい!いつかまた、今日みたいなデュエルをしよ!約束だよ!』

 

「ぐっ……!?」

「勝鬨!?どうした!?」

「……何でもない。(なぜ……今になって思い出す……!?)」

 

 封じてたはずの明るい記憶が、喉奥に釣り針のようにつっかえてくる。

 

「そのために俺は託された!仲間の力を!見せてやる、墓地からヴォルカニック・バレット、ヴォルカニック・トルーパー、ヴォルカニック・リボルバーの3体を除外することで、特殊召喚できるモンスターが居る!」

「何!?」

「撃鉄を起こし、照準を向け、炎よりも熱く闘志よ燃えろ!全てを焼き尽くす炎山(ヴォルカニック)の帝王!」

 

 ゼンの言葉と感情に呼応するように、フィールドの地面が砕け炎が噴き出す

 

「3体のモンスターを除外し現れろ、ヴォルカニック・エンペラー!」

 

ヴォルカニック・エンペラー「グオオォォォォォォン!」

 

 その中から飛び出した、悪魔のような翼をもつ、燃え上がる炎の怪物。

 

「ヴォルカニック・エンペラーの効果!除外状態の炎族モンスターの数×500のダメージを与える!

 俺の墓地にある炎族モンスターの数は合計6体、よって与えるダメージは……」

「3000だと!?」

 

 慌ててアクションカードを探す梁山。

 

「アレじゃっ!!」

 

 そして、見つけたアクションカードに向けて跳躍するが、それが手に届くという直後、それが何かに引っ掛かり、彼の手からすり抜けるように飛び上がっていく。

 

「なっ!?」

「なかなか便利だろ?」

 

 そう言って彼の手元に吸い込まれていくアクションカード。それには、ワイヤー付きのフックが引っ掛かっていた。

 

「貴様……まさか最初から……!」

「張り巡らせてトラップにするも、壁にかけて移動手段にするもよし。もともとの使い手はロープだったが……ものにするのは苦労したぜ。さぁ、堕ちる時だ、マスター梁山!ヴォルカニック・エンペラーの効果で、貴様にダメージを与える!ヴォルカニック・チェーン・カノン!」

「ぐわあぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 繰り出される炎が梁山に直撃し、彼は道場の壁に叩きつけられる。

 

マスター梁山 LP2500→0ピーッ!

 

「失ってからが、本当の闇だぜ。そこから這い上がる姿こそ、最も輝くのさ。闇を歩いてるっつうのは、それからだ」

 

 そう言って、デュエルディスクの展開を解除するゼン。そのままパーカーのフードをかぶり、去って行こうとするのを

 

「ま、待ってくれ!」

「あん?」

 

 勝鬨が呼び止めた。

 

「自分は……自分のデュエルは……間違っていたのか?」

 

 勝鬨は、ゼンに答えを求めた。今まで自分が歩いてきた道を、師匠が叩きのめされ完全否定された。そのことと、過去の記憶がせめぎ合い、ぐちゃぐちゃになっている心に整理をつける言葉が欲しかったのだ。

 

「……テメェは、人を殴るデュエルをやりてぇのか?」

「なに?」

 

 それに対して、ゼンは問い返した。

 

「テメェがやりてぇデュエルは、相手の動きを自分の拳で叩き潰すデュエルか?」

「それは…………」

「そもそも、俺に答えを求めんな。俺はマスター梁山のやり方は気に食わねぇ。言うならソイツのアンチだ。そんなやつの言うことを門下生まで鵜吞みにして、師匠のデュエル信じてやらねぇでどうするよ」

「ぐっ…………」

 

 頭をかいてそういうゼンに、勝鬨は押し黙る。

 

「ま、テメェはせいぜい悩みな、悩めるときに、悩めるだけな。俺にそんな余裕はなかった」

 

 そう言いながら、歩いていく。

 

「俺も融合使いだ。気が向いたら、融合召喚の扱い方くらいは教えてやるよ」

「なっ!?融合だと!?貴様はバーンデッキの使い手ではないのか!?」

 

 そして、次の言葉に面食らった。すると彼は、デュエルディスクからデッキを取り出し、パーカーのファスナーを開ける。

 

「それは……」

 

 そこには、ベルトで複数のデッキケースが停められており,防弾ジャケットのような様相と化している。

 

「言ったろ?ダチから託された。こいつは元々ダチのデッキだ.本命は別にある」

 

 本命のデッキでも無いのに、マスターに勝って見せたのか……そう戦慄してると、空のデッキケースにデッキを仕舞い込んだゼンは、そのまま歩き出す。

 

「じゃあな。しばらくカプセルホテル240ってとこに泊まってる。用があるんだったら来な。師匠の仇討ちにデュエルがしてぇのなら、いつでも受けてやるぜ」

 

 そう言って去っていく。その後ろ姿を、勝鬨は迷いながら見送った。

 

「俺の……デュエル……」

 

 

「テメェのデュエル……か。」

 

 何を偉そうに言っているのか。色々と口では言ったが要は気に食わなかっただけなのだ。

 マスター梁山という男の教えが。負けに意味などないと子供を追い詰め、殴る蹴るの妨害を戦争としてデュエルを軽視。子供を勝つためのマシーンに育て上げる。

 

「チッ……」

 

 それがどうしようもなくデュエル・アカデミアに似ていた。だが、そのデュエルのあり方を言葉で否定しながらたたき伏せた自分も、大した変わりやしない。

 少なくとも自分のデッキでやるべきだった。友のデッキをあんな風に使うべきではなかった。それは一つ,致命的な過ちだ.カードにされた友人たち。せめてその魂は共にと託してくれたデッキを、汚してしまったような気がして自分に腹が立って仕方なかった中,ポケットに入っていた通信機に連絡が入る。

 

『梁山泊塾はどうだった?ゼン』

「ダメだな。梅田と竹田だったか?少なくともあの二人は落第だ.あのマスター梁山とかいう男も大したこと無かったぜ」

『プロとデュエルしたのか??』

「あぁ。だがダメだったな。ユースコースの連中ってのも口ほどにも無かったし、社長さんよ,ご自慢の戦力がダメダメじゃねぇか。このままアカデミアに攻められればヤバいぞ」

『そこまで言われるほどか……』

 

 電波の相手は赤馬零児。この次元に来たゼンに、最初にコンタクトを取ってきた人間だ.アカデミアの指導者、プロフェッサーの息子にして,プロフェッサーの野望を止めんとする者。

 しかし、その男が用意したというLDSの生徒たちは、彼一人に叩きのめされていた。

 

「あぁ。だが、デュエルはしなかったが一人、いい目をした奴がいた」

『なに?』

「あのアカデミアモドキから飛び立てば、化けるかも知れないな。切るぞ」

『そうか……あとで情報を共有してくれ』

「分かった。だが……そろそろいいな?俺と黒咲を……」

 

 ユートとスネイクに、合わせてもらうぜ。電話越しの相手にすら殺気を錯覚させられそうなほど鋭い瞳で、ゼンは虚空にその視線を向けながらそう続けた。

 

 

「やいテメェ……どういうつもりだ榊遊矢!」

 

 一方、沢渡シンゴはワナワナと震えていた。零児の頼み通り,遊矢を呼び出して彼のペンデュラムカードをアンティルールで奪うつもりだった。

 だが、あろうことか会った遊矢は、ペンデュラムカード2枚を手渡してきたのだ。

 

「違うんだ沢渡。俺は気づいたんだよ」

「何にだ!?もしかしてこのウルトラスーパーな沢渡シンゴ様には勝てないってか?だからカードを渡そうと」

「違う。ペンデュラムを俺だけのものにしちゃいけないってことだ」

 

 そう言ってディスクを構える。

 

「俺は確かに初めてペンデュラム召喚をやった。でも、それはペンデュラム召喚が俺だけのものなんじゃなくて、ペンデュラム召喚のパイオニアとして、ペンデュラムを広げていくことに繋げないといけないんだ。

 そして、融合やシンクロ、儀式、エクシーズみたいに、みんなが使える召喚方にする!

 その為には製作者のレオ・コーポレーションにこのカードを持って行ってもらうのが一番だ」

「なるほどね……」

 

 バカだが頭の回転は悪くなく、目立ちたがり屋の沢渡の脳内の算盤は確かにその方法でデビューすればブレイク間違い無しだと告げる。

 さらに言えばデュエルモンスターズも新たな召喚法を取り入れカードの選択などさまざまなところに大きな影響を及ぼすだろう。

 デュエリストとしてこれがワクワクしないわけがない。

 

「いいぜ、その話乗ってやる」

 

 沢渡はそれに笑みを浮かべて応えて見せた

 

「だが、それはそれとしてデュエルはしてもらうぜ!」

「なんで!?」

 

 デュエルディスクを構える沢渡に一瞬混乱する遊矢だが、

 

「分かった、せっかくだから乗ってやる!」

 

 笑顔でデュエルディスクを構えるのだった。




 オリキャラ一口解説 己が道を歩むもの ゼン・スプリール
 デュエル・アカデミアからやってきたという青年。
 昔,デュエル・アカデミアがまだ漁村をプロフェッサーが発展させた単なるデュエルスクールだった頃に通っていた。
 当時の成績はお世辞にも良くなく、授業をフケることも多々あり、ドロップアウトボーイと罵られる問題児だったとか。
 だが、赤馬零王の方針転換、次元侵略の宣言により、兵士となることを拒否、赤馬零王に仲間たちと共に対抗するが、オベリスクフォースや、それを指揮する赤馬零王選りすぐりのデュエリストたちに追い詰められていき,仲間は一人を残して失ったという。
 スネイクとはその後、ドクトルによる人体実験から助けたことがきっかけで出会い、"もう一人の仲間"はまた別に,融合次元で活躍しているという。

本命のデッキは▪️▪️▪️▪️▪️▪️
それ以外に『古代の機械』『ヴォルカニック』そのの他にも複数のデッキを扱う。

今回はゼン2回目のデュエル回でした。彼の本命のデッキが出てくるのはまだまだ先になりますが、多分予想はついていることでしょう。コメントを残していただけると大変励みになります。お待ちしています。

またデュエル描写におかしいところがあれば教えてください。ヴォルカニック・ブレイズ・キャノンとブレイズ・キャノン・マガジン同時に立てられない……なんてことはないよね?

今回も未OCGテーマの使い手であるバレットのデッキを募集させていただきます。
ビーストボーグの案も出来てはいるのですが、他にもいくつか使うデッキに候補があるので今回はその中からピックしていただく形になります。よろしくお願いします。

バレットのデッキ……どうする?

  • 獣闘機でインチキロックを再現するんだよ!
  • バーンとトラップならメタル化レッドアイズ
  • 機械族融合といえばユニオンがあるだろ!
  • セレナの付き人だからドラゴンメイド
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