遊戯王 ARC-Ⅴ 揺れる運命 重なる手札 作:月光舞詐称者姫
そして何よりも……投稿が大変遅くなって申し訳ありませんでしたッ!(土下座)
本当だったらこの話もシンジ対ユーゴをしっかり書いてから投稿する予定だったのですが回したことのないデッキ二つは流石に難しく、
あぁでもないこうでもないとやってる間にやれテストやれ部活で忙しくて後回しになっていってしまい……
結局軽い回想しか今回も書いてないです。
次回はしっかりデュエルをする予定なのでご容赦ください
「まったく、あんな危ない橋を渡って……負けたらどうするつもりだったのよ!?」
「ごめんって……でもよかっただろ?これでペンデュラム召喚が広がるんだ。」
沢渡との夜中のデュエル、その帰り道。デュエルに勝ち、観戦していた柚子に笑顔で近づいた遊矢は、速攻でハリセンでブッ叩かれた.
「市販化されたペンデュラムカードでデッキが組めるようになれば、遊勝塾でもペンデュラム召喚を教えられる。」
「確かにうちの塾に新しい看板が出来るのは良いことだけど……」
一歩間違えれば自分は沢渡に敗れた、ペンデュラムカードを独占しようとした卑怯者になっていた。柚子が心配しているのはそのことだ。
「沢渡も言ってただろ?リスクを取らないと、チャンスは掴めないって。」
「でも沢渡には何のリスクもなかったじゃない!」
「あ〜、まぁそうなんだけどさ……」
それでも挑む価値はあったと思うんだよな。そう言う遊矢に、柚子はもう1発ハリセンをお見舞いするのだった。
「さ〜てと、遊勝塾遊勝塾……遊勝塾はこの先〜っと。」
夜の河川敷を、鼻歌を歌いキャンディを舐めながら、1人の少年が歩く。彼の名は紫雲院素良。各次元の侵略を目論む、アカデミアの尖兵である。
彼に下された司令は3つ、スパイとしてこのスタンダード次元に潜り込み、この次元の内情を偵察すること。この次元にいるであろう、とある少女を探すこと。そして、最後に、アカデミアを抜け出した人間がもしこの次元にいるのなら、捕えて連れ帰ること。
最後の1つはもし居ればの任意だ。だが……
「よぅ、遊勝塾なら、今は閉まってるぞ。」
「ッ!?」
まさか、その局面に出くわすとは、思っても見なかった。
「お前は……ッ!」
彼の前にまるで遊勝塾への道を阻むかのように向かいからやってきた男が、そう声をかけてきた.
直接の面識はない、だが目の前の男は、誇りあるアカデミアの一期生にして、教官を返り討ちにして出奔し、アカデミアへの妨害行為を繰り返す、
脱走者の中でも特に危険な札付きの要注意人物として、リストの天辺に名前が記載されているからだ。
咄嗟にデュエルディスクを構え、声を上げる
「ゼン・スプリール!?お前はエクシーズ次元に居るはずじゃ……!」
「それがこの次元に探し人が居るって話でな。レジスタンスの連中について来た。」
一方ゼンは肩をすくめ、そう言ってそう言って一歩一歩歩いて素良の方へと近づいていく。
「探し人?」
「ま、お前には関係のない話だ……が、あいつはアカデミアに並々ならぬ憎悪を抱いてるからな。どこかで会うこともあるだろうさ。」
一歩、また一歩、警戒してジリジリと近づいてくるゼンを警戒して距離を離す素良。しかし、ゼンは一向にデュエルディスクを構える気がない。
「何をするつもりだ……。」
「何って?」
「どうしてデュエルディスクを構えない!?僕を馬鹿にしてるのか!?」
「いや、ここにこうして送られてる時点で、お前はアカデミアでも上澄みの実力者だ。
同い年どころか、この次元の並みのプロも、お前には敵わないだろうさ。」
「なら……!」
僕とデュエルしろ、そう要求しようとした素良を、だが、と素良を手で制してゼンは言う。
「お前の相手をするのは俺じゃねぇ。」
「じゃあ……誰なのさ?」
「行っただろ、ここにはエクシーズ次元の連中と人探しの為に来た。
「エクシーズだって?」
その言葉に、ハンッと素良は気に入らなさそうに鼻を鳴らす。
「そんな奴らが、僕に勝てるとでも?」
「さて、どうだろうな。デュエルは決着がつくまでわからねぇもんだ。」
「…………」
「ま、今日のところは出直しな。お前が遊勝塾に行くなら止めねぇよ。今日のことは、報告しねぇ。」
「…………どういうつもり?」
まるで利敵行為だ。スタンダードの内情を調べに来てる自分を捨て置くだなんて。
相手の狙いが分からず、素良は警戒したまま相手を見据え続けている
「俺もスタンダードのボスを信頼できてないんでね。」
そんな様子の素良に、ゼンは苦笑してそういう。
「それに、言っただろ?おまえを倒すのは俺じゃねぇ。ならデュエル前にあれこれ言っても白けるだけだ。」
「いいよ、そういうことなら、今日は見逃してあげる。」
少し考えこんだ後、素良はそう言ってデュエルディスクを収める。
「ただ、逃がしてあげるだけだから。」
「あぁ、機会があれば受けてやるよ、デュエルをな。」
そう笑みを浮かべた後、彼は素良を通り過ぎ、夜の道の中に消えていった。
「まぁ普通に考えたら罠なんだろうけど……」
あの男が何を考えているのか、正直理解に苦しむ。だが
「それでもいい。もしそうなら」
ガリッと音を立てて、口の中のキャンディを噛み砕く。
「踏み潰すまでだよ。」
僕が負けるはずないのだからと、自信を武器に歩みを進めた。
「えぇっ!?お前あのフリージア・ムーブメントの!?」
「うん、パパが社長だった……でも、多分もう……」
暗く沈んだ声を出すエミィにユーゴはすまねぇ、と頭を下げる。
赤馬零児との顔見せ。そこから語られる次元侵略。ユーゴの幼馴染、リンをさらったのもおそらくアカデミアだろうという零児の言葉に、ユーゴは即決で協力を約束しようとしたのだが、それを一旦保留にしていた。
「いや、ユーゴの謝ることじゃないよ……本当に謝らなきゃいけないのは……ボクだ。ボクがデュエルで勝てなかったから……」
「…………」
エミィのこの調子である。彼女が吹っ飛ばされた時、救い出したユーゴが見た彼女の服は和服にも通ずるデザインのある、明るく快活なものだった。
だが、そんなイメージがわかないほど、病院衣装に、顔に包帯を巻いた彼女の態度は弱弱しかった。
それだけ負けというのはトップスにとって重いのだ。今までのすべてを失い、コモンズに落ちることを意味する。いや、元トップスとなれば、コモンズからの風当たりも強くなる。
負ければ、奪われるのは当然。その価値観が、シティの住民たちには根付いてしまっている。
「やっぱ……重いんだな……」
「え?」
「いや、こっちの話だ。」
それにユーゴは、ある孤児院での一幕を思い出していた。まぁ、ここでは関係のない話だと、エミィに聞かれたらぼかす。
これでも、今の彼女は心を開いてきた方だ。ひどいときは会話も続かなかった。あの日のデュエルを夢に見て飛び起きるのも日常茶飯事だ。ユーゴは孤児院育ち。孤児院に送られてきたばかりで、ビクビクと怯えていた子供をよく見てきた。多少は慰める方法も分かっている。
大事なのは待つことだ。無理やり話を進めようとすると、かえって地雷を踏んだり、悪い方向に傾きかねない。
懸命に隠す傷を、こちらに見せてくれるまで、ゆっくりと待つ。
「笑っちゃうよね。」
「……何が?」
「こんなんでも、ボクの将来の夢はプロデュエリストだったんだ。」
「プロ……」
意外だな、と出かけた言葉をユーゴは飲み込んだ。プロデュエリスト。学も地位もないコモンズが、金を得て上に上り詰める、数少ない手段。
ジャック・アトラスという、コモンズからシティ最強のデュエリストとして栄誉を恣にする頂点まで上り詰めた男を筆頭に、夢を追うコモンズが登ろうとする道。しかし、とてつもなく険しい道でもある。その道を歩かなくとも、彼女には成功が約束されている。だが
「憧れだったんだ。ジャック・アトラスが。彼のデュエルが。僕もいつか大舞台であんなデュエルがしてみたかった。」
「そうか、お前も、ジャックの……」
彼もまた、ジャックのファンである。追いつきたい、そしていつか追い越したいと思っている。ユーゴのDホイールは、その夢を追いかけてリンと共にジャンクパーツから組み上げたものだ。
だから、彼女の夢も、ユーゴにはよくわかる。だが……
「今は、怖いのか。」
「うん……情けないよね。」
ユーゴの言葉に、そう頷く。
「情けねぇとは……思えねぇよ。俺に比べれば、全然情けなくなんかねぇ。」
「え?」
その力なのない表情に、奥歯を噛み締めユーゴはそう呟いた。
「なぁエミィ、俺には3つの約束があるんだ。」
「約束?」
そして、自分の身の上を話す。
「一つ目は、自分から犯罪に手を染めたりしねぇって約束だ。でも、守れなかった。」
「守れなかったって……」
ユーゴは昔、ライディングデュエルのチームに所属していた。コモンズの実態は集まりでチームと呼べるほど高尚な設備なんかはなかったが、仲間と共にライディングを行うのは、とても楽しい思い出だった。だが、それは終わりを迎えてしまう。
「ロジェの奴が長官になって、コモンズへの締め付けが加速した後だ。俺の仲間に、革命をしようって言い出す奴が現れた。」
このままでもコモンズに未来はないと、声を上げたその男が取ろうとした手段は、過激だった。
コモンズに同志を増やし、最終的にトップス、そしてセキュリティを武力で倒す。デュエルで革命を起こすのだと。ユーゴは、仲間とそれに反対し、最終的には仲間同士でのライディングデュエルにまで発展した。
「どっちが……勝ったの?」
「あれは……」
あの日のことは今でも思い出す。
『無茶だユーゴ!そんな身体で……デュエルなら俺が』
『クロウの言う通りだ。俺も何も今日いきなりデュエルで決めろとは』
『駄目だ!シンジ、お前の考えは止めなくちゃならねぇ!』
『ユーゴ!』
リンも、他の仲間たちも、相手ですら今日じゃなくてもいいと言った。だがそれは意地だった。背中のまだ痛む中久方ぶりの相棒に乗り込む。
『手は……抜かねぇぞ。』
『あぁ、上等だ!』
相手、革命を提唱した青年シンジも、Dホイールに乗り込み、ハンドルを握りしめる。
【デュエルモード オン オートパイロット スタンバイ】
Dホイールのデュエルシステムが起動し、デュエルの開始前のカウントを開始する。
『『ライディングデュエル……』』
3……2……1……カウントがゼロになる瞬間をじっと見据えて
『『アクセラレーション!!』』
Dホイールが凄まじい勢いで駆け出していく。街の中を駆け抜けながらデュエルを行うライディングデュエル。この日のデュエルは雨の中、コモンズのスラムを駆け抜ける危険なデュエルになった。
「最初は、俺がリードしてたんだ.」
ユーゴは、あの日の出来事を噛み締めるようにそう振り返る。
『クリアウィング・シンクロ・ドラゴンでダイレクトアタック!』
『ぐっああぁぁぁ!?』
シンジLP3000→500
雨の中で受けた大きなダメージが衝撃となってDホイールの車体を揺らす。
『シンジ、危ねぇ!』
『チッ!』
そんな状況で、目の前にはコーナー。しかしシンジはここで操縦をオートからマニュアルへ変更。持ち前のライディングテクニックでブレーキをかけつつ車体を横に滑らせ、まるでドリフトするようにコーナーを曲がる。
『危ねぇ危ねぇ、流石に今のはヒヤヒヤしたぜ。』
『シンジ……もういいだろ!こんなことしても何にもならねぇ!』
『……そうかもな。みんながみんな、俺みたいに考えてる訳じゃねぇ。
ほんの僅かな仲間を除けば、俺が焚き付ける"同志"は、大体がコモンズが憎いとか引き摺り下ろしてやりたいとか、そういう感情で動く暴徒だろうさ。』
ユーゴの言葉に、シンジはそう言う。淡々としたその言葉に、ユーゴは吠える
『ンなことして何になるんだよ!?そんな奴らが大暴れしたらどうなるか、分からんねぇお前じゃねぇだろ!!お前本当にこの街をブッ壊す気か!?』
『
その時、ユーゴは見た。
『あぁ、そうだ。俺はこの街を……』
バイザー越しでも分かるような、どす黒く、そして熱い
『お前たちの愛した……このイカれちまったシティを!』
執念の、炎
『ブッ壊す!俺のターン!ドローッ!……俺は魔法カード、武装蜂起を発動!』
そのカードの名前は、まるでこれからシンジが行おうとしていることを象徴しているかのようで
『効果でフィールドにデッキから
その後、武装蜂起のさらなる効果でコイツをそのまま墓地に送る!』
現れたのはシンジの扱う
『
俺が手札に加えるのはデビルドーザー!』
手札に加えられたのは、墓地の昆虫族を除外することで特殊召喚される昆虫族の上位モンスター
『デビルドーザーで、墓地の
そして除外された
墓地に落ちるだけでは終わらない。さらに除外されることで、現れたのは鈴虫のようなモンスターの幻影がさらなる虫を呼び寄せる
『昆虫族モンスター一体を墓地へ送る、そして、墓地へ送られた樹冠の甲帝ベアグラムの効果!
3体の昆虫族モンスターを除外することで、墓地からコイツを特殊召喚できる!』
現れたのは、巨大な棍棒のようなものを構えた虫のケンタウロスとでも称するべきモンスター攻撃力は
ベアグラム ATK3400
『三千……四百……』
『懐かしいな。最初に見つけたレアカードだった。トップス共の中じゃ外れ扱いされてるカードで、昆虫族デッキなんざ誰も使って居なかった。』
下らない理由で捨てられたカードたち。シンジのデッキの中の昆虫族モンスターには、そうした場所から拾い、かき集めたカードが多く入っている。
『分かるか?ユーゴ、あいつらにとってデッキは、デュエルは魂じゃねぇ。金で買える強力な力ってだけだ。』
既にトップスの人間はデュエリストとしての魂を失っている。でなきゃカードを捨てるなんて真似はしない。
『セキュリティは守らねぇ。腐っていくこの街も、苦しんでる俺らも!奴らが考えてるのは適当な理由で俺たちを検挙して、功績を上げて金を稼ぐことだけだ。
その上層部はさらに何を考えてるか分からねぇ!お前なら分かるだろ!?』
ユーゴの痛む背中は、つい最近までセキュリティに受けて居た"仕打ち"が原因だ。そしてそんなことになったのは、ユーゴの幼馴染リンを捕まえようとしたセキュリティから逃すためだ。
『トップスの上、評議会は何もしねぇ!現状維持してトップスとコモンズを対立させつつ、金持ち共に経済を回させる今の現状が1番都合がいいからだ!』
祈っても、権力に願っても、言葉で訴えかけても、世界は変えられない。
『シンジ……!』
『だから俺が変える!俺の魂で、デュエルで!世界をひっくり返す!バトルだ!』
『違う……違ぇよシンジ、そんなのは……!』
『デビルドーザーで、クリアウィング・シンクロ・ドラゴンを攻撃!』
『ぐあっ!?』
ユーゴLP2600→2300
ユーゴの言葉は、エースモンスターが砕け散った爆音に遮られる。デビルドーザーの効果でユーゴのデッキから一枚、カードが墓地へと落ちるが何も変えられない
『樹冠の甲帝ベアグラムで、ダイレクトアタック!』
『シンジーーーッ!』
ユーゴLP2300→0 ピーッ!
必死の呼びかけも虚しく、ベアグラムの一撃がユーゴに突き刺さり、Dホイールから敗北を告げる強制停止が行われる。
この雨で滑り、体勢を崩してしまったユーゴは地面に投げ出され、転がることになった。
「シンジ……もしかして、あの指名手配犯のシンジ・ウェーバー?」
その言葉に、ユーゴは無言で頷く。それからチームを去ったシンジは、セキュリティに対する破壊行為などを行い、今ではシティのお尋ね者だ.
「あれから、コモンズとトップスの仲はますます悪くなっちまった。コモンズってだけでマトモに入れてくれねぇ店も出来たし、セキュリティの締め付けも。」
この約束は、そういった事態を引き起こさないために、仲間たちと結んだはずの誓いだった。
「いくらトップスの連中からクズだと言われても、本当に街を壊して誰かを泣かせるようなクズになっちゃいけねぇ。そう言う約束だったはずなのに……俺は守れなかった。」
「そんな、ユーゴは……」
「いや、俺たちは誰もシンジを止められなかったんだ。」
誓いを守れなかった責任は自分にもあると、ユーゴは言う。
「……二つ目の約束は?」
「あいつを……リンを、何があっても守り通すって約束だ。」
話題を逸らそうとしたエミィの問いかけの返答は、自分への誓いだった。
「それって、セキュリティに攫われそうになったって言う……」
その言葉に、ユーゴは頷く。
「あぁ、5年前だ。あの時、俺たちは小さなやつだったけど、初めてライディングデュエルの大会で優勝した、その帰り道だった。」
いきなり、帰り道でセキュリティのDホイーラー、デュエルチェイサーが声をかけてきたと言う。
「トップスの居住地への不法侵入の容疑で、俺たちを捕まえるってな。何かがおかしいってんで慌てて逃げたんだ。」
コモンズは捕まれば収容所に放り込まれる。そう考えて居たから。だが、1人の逃亡犯を追いかけるにしては、彼らはあまりにも執拗だった。
「最初は1人のデュエルチェイサーだけだったのが、デュエルで倒しても倒しても、別のデュエルチェイサーが追いかけてきてた。
オマケに検問まで出てきてな。コイツはヤベェってなって、リンをクロウ……俺の仲間に預けて囮になったんだ。」
最終的に四方を包囲されて捕まったユーゴを待って居たのは、拷問だった。
「それって、そのシンジって人が背中がどうとか言ってた……」
その言葉に頷き、ユーゴは背中を向け、来ているライダースーツのジッパーを下ろし、背中を見せる。
「ヒッ……!」
「悪い……口で言うより、こうした方が伝わるんじゃねぇかって思ってな。」
そこに広がっている光景に、エミィは思わず息を呑み、目を背けた。急いでライディングスーツを戻しながら、ユーゴは言う。
「アイツらは、リンが何処にいるのか何度も聞いてきた。だからこう思ったんだ。リンがここにきたら、絶対今より酷い目に合う。だから絶対に、リンをここに来させちゃいけねぇ、俺が守らないといけねぇって。」
拳を固く握りそう言うユーゴ。その言葉にエミィは俯くが、
「でも、守れなかった。」
苦しそうにそう言うユーゴに、ハッとして思わず目を向ける。
「あぁいうこともあって、結局それ以来リンには隠れ家で不自由な生活をさせちまってた。
本当は直接ステージに応援に来たいだろうに、いっつも応援は放送見せてやるしか出来なくってな……あの日は、パーツあさりの帰りだった。いきなり通話が来たんだ、追われてるから助けてくれって……
急いで向かったけど、間に合わなかった。」
駆けつけたユーゴが見たのは、フードで顔を隠した男が、気絶したリンを担いでいる姿だった。
「そいつはリアルソリッドビジョンの魔法カードで目眩しをして、そのまま消えちまったんだ。」
誓ったはずなのに、また守れなかった。
「俺は……俺も、守れなかったんだ。シンジ達との絆も、リンも。この分じゃ、アイツとリンと一緒にキングになるっつう約束も、守れるか分からねぇ。」
これは、1番大事な約束。幼馴染と共に何度も語り合った、自分の原点。2人の夢だった。だが、その夢に飛ぶための片翼は、奪われてしまった。
「2人で……キングに……」
「アイツ、今どうしてるんだろうな……寂しがってんのかな、泣いてんのかな……それとも、もっと辛い目に遭ってんのかなぁ……」
それは、今まで落ち込む自分を励まそうと明るく振る舞って居たユーゴの、深い苦しみだった。
「……攫ったのは、融合次元の人、なんだよね?」
「あぁ……推定、らしいけどな。」
「……じゃあ、ユーゴはあの人たちと一緒に戦うの?」
「……あぁ、リンを取り返さなくちゃならねぇ。今度こそ、守ってやんねぇと……」
そう言うユーゴは、そこでエミィの顔を見てハッとする。
「わ、悪い!元気付けるつもりだったのに、俺ってば何言って……俺はその、そう言うわけだから俺に比べれば全然情けなくねえっていうか….」
「ちょっと、分かった気がする。」
「え?」
思わず吐露してしまった感情に慌てて捲し立てるユーゴは、エミィの言葉に固まった。
「大切なんだね、その、リンって子が。」
「お、おう……」
改めて面と向かって言われると恥ずかしいのか、顔を少し赤らめながら言う姿に、エミィは、ふっと笑った。
「うん、決めた。ユーゴ、ボクも一緒に戦わせてよ。」
「えっ?でもお前……」
「うん、怖いよ。戦うのは……負けて何かを失うのは、すっごく怖い。でも……今のボクには何もないんだ。」
守るべきものは失ってしまい、傷だけが残ってる。そもそも、守ると言う話だって、ユーゴの様に強く固い決意を持てていた訳でもない。
「だからまずは、見つけたいんだ、ボクの守りたいものを。」
「エミィ……」
「それとさ、何にも守れなかったみたいな風に言ってるけど、そんなことはないはずだよ。」
「え?」
キョトンとした顔をするユーゴに、笑顔を向けて自分を指さした
「だってユーゴは、ボクのことを助けてくれたじゃない。何も知らないボクのことを、ただビルから落ちてってたからってだけで、こんな世界に来ることになってまで、がむしゃらに、真っ直ぐに、一直線に。」
だから嫌だよと、彼女は言う
「ボクの命を守ってくれた人が、何も守れなかったなんて、自分を責めるみたいに言うのは、悲しいよ。」
「……そうか、そうだよな。」
暗い雰囲気を纏うエミィを前に、つられる様に溢してしまった自分の闇、だがそれが少しだけ、紛れた気がした。
「改めてユーゴ、助けてくれてありがとう!」
「おう、どういたしまして……だな!」
2人が本格的に赤馬零児に協力しに行くと約束したのは、その翌日のことだった。
オリキャラ一口解説
さがすもの 氷日エミィ
トップスの大企業、フリージア・ムーヴメントの社長令嬢。
両親に愛され育った一人娘で、将来はDホイーラーになる、そしてジャックに挑戦すると言って聞かず、デュエルの腕を磨き続けて居た.
両親は自分たちの会社を継いで欲しかったが、娘の夢を応援することを決意。すくすくと愛され育っていったエミィだったが、仮面の女性に家族でいるところを襲われ、デュエルを挑むも敗北
リアルなダメージが発生するデュエルで傷を負い、ビルの上から投げ出されたところを飛び込んできたユーゴが助けた。
最初は心が折れかけて居たが、ユーゴと会話することで『ユーゴみたいに誰かを守れる存在になりたい』と戦うことを決意する。
守る理由はまだなく、トラウマに蓋をしただけの状況をどう乗り越えていくか。理由を探す彼女の旅が始まる。
次回、素良とデュエルするのは……
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いい加減遊矢をデュエルさせるんだよ!
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遊矢の妹勝観ちゃんがデュエルします