すっ――と、
ここから半径三〇〇メートル先には立ち入り禁止のバリケードテープが張られている。
そこに立つ警備の者に見られないように“
(昼間、アイツが暴れていたのはこの辺りのはず……)
見渡せば、辺りは崩れたビルや崩壊した道路の残骸だらけで、昼間までの活気ある街並みの面影など何処にもなかった。
意識を集中させるが燁斗の零気は感じられない……感じられるのは三〇〇メートル先にいる人たちの零気だけだ。
(周りを見てもいない……ってことは建物の下敷きに!?)
近くの崩壊した建物に走り寄る。
零気で強化すれば、少女の力でも瓦礫を持ち上げられ――
「――!?」
不意に……体に電流が流れるような感覚が走った。
だがすぐにこの感覚は
「この、感覚……」
美亜は他者の零気を感じ取れるが、それにしてもこんな電流が流れるような感じ方はしない……それでも感じたということは、
……この零気の持ち主は、
そして、
「……ッ、」
直感が示した方向……その方向には――半透明に揺らめく、ドーム型の何かがあった。
遠くからでは確認できない、近くからでないと存在に気づけない不可思議な存在。
――電流を思わせる零気は、そのドームより漏れ出ていた。
「なに……アレ……、」
恐れとは逆に、足はドームへと近づいていく。
近づいたとしても、ドームからは何の反応もない。
反応はない。
……反応ない。
――反応は――――/
「ッ!?」
ドームに亀裂が走った。
反射的にその場から飛び退き……、
――
ドームを突き破り、天を貫く
……これには見覚えがある。
レイシが繰り出した零気の輝き。その後に来るものは――零気の雨。
その考えに至りすぐに対処しようとして……
「――――イィィィィィラッッッ!!」
砕け散るドームの入れ替えになるように――
斬ッッッ!! ……レイシの
狙われたのはもちろんその場にいた美亜だ。
「く――!?」
反射的に生み出した
衝撃はルステナを握る右手を一瞬で麻痺させ、その身を後方にある、崩れ落ちたビルへ叩きつけるほど。
……叩きつける、そんなレベルではなかった。
斬撃の衝撃はビルを貫通させる威力だった……美亜の体はビルを貫き、向かい側へと飛ばされる。
「っ――!」
ビルを貫いた美亜の体には『
おかげでビルの衝撃を幾分か和らげることができた。
着地と同時に空を見上げる。
「レウゥゥゥゥリァアアッ!!」
上からの追撃。
それを
攻撃は止まない。
薙ぎ払い、袈裟懸け、切り上げ、突き。
それらを躱し、流し、受け、
(っ……コイツ、腕が……)
どうやって治したのか……普通に考えれば零術だが――コイツの零術は、体の部位を治す領域にまで達しているというのか……。
「ぐ……!」
昼間の時にはまだ
最初の戦闘の時に学習したのか……。
いまカウンターを入れれば、間違いなく切られるという予感がある……だからといってこのまま怒涛の剣舞を受け続けていては倒せない。
焦る。考える。思考する。
周りに
――鈴杷市を覆う蒼炎に気づかないほどに。
◆
カーテン越しでも見える
眠りから覚ました光に唸った――その、次の瞬間、
「あ――、ぐ……!」
――昼間にも感じた、胸に
跳ね起き、ベッドの上で悶え苦しむ。
その激痛の切っ掛けとなったのは、燁斗の
――燁斗が
過去は忘れてしまっても、体と――
その痛みが思い出させようとしてくる……
「はぁ……、あ――ッ……!」
感じるのは――嫌悪感、不快感、憎悪、忌避――そして、
「お、え……ッ!」
噛み合わない感情に吐き気を覚えた。
親近感……? ふざけるな……街をこんなにして、あまつさえお兄ちゃんをあんな目に遭わせるようなヤツに、親近感など覚えてたまるか――。
でも、
なんで、
どうして……?
振り払おうとした
親近感どころじゃない……アイツは、
「やめて……」
アイツは……
「やめろ――」
――――
「――――黙れッッッ!!」
拒絶を示した瞬間、
いや、一瞬のことでそれは突風に見えたが――吹き荒れた
「ふぅ――、はぁ――」
深呼吸をし、無くなった窓からベランダに出る。
感覚が伝えてくる――
「不快な考えが無くならないなら……答えは一つだよね」
ガシッ、と顔に巻かれた包帯を掴み、力任せに引き剥がす。
「不快の元を絶てばいいんだ――」
剥がされた包帯の下に……