胎内回帰願望《パンチーファンシー》   作:来い!ゲンスルー!

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第11話

私達が乗っていた飛行船は何日か空を旅して、ある場所にたどり着いた。そこは塔の上。地上からは相当離れている摩天楼。

 

そこに飛行船は一時だけ停泊し、委員会の人がここが三次試験会場であり、合格条件は塔……トリックタワーの下へと降りることだと告げると、飛行船は空高くへと登って行った。

 

つまり現在私達は、寒空の下に立たされているという訳だ。もっとも、それを受験生の誰かが気にする訳では無いが。ともかく、そうして試験は始まった。同時に、ここから念能力者たちの暴走が始まった。

 

初めに動いたのは、オーラの弓を携えた能力者だった。彼女は非能力者には見えないそれを掲げると、それで念能力者以外の全員を穿った。そしてそれによって非能力者達は、行動できなくは無いが、極度の酩酊状態に陥ったかのように意識を混濁させられた。

 

多分そういう能力だろう。それを皮切りに、能力者達は「能力を使っても問題ない状態になった」と判断し、少数は力を使うことで塔の下へと降り立った。代表的なのは、意識を奪った操作系と思しき弓使い。

 

それを中心にワルキューレ、重力操作使いなどなど。塔の上からまるで散歩でもするかのように地面の元へと。異世界にあってもなお、それはまるで現実味のない光景だった。一応私もそれに混ざることはできたが、このハンター試験には期待して来たので。それにまあ最悪クリアできなくても構わないのだ。

 

駄目だったならまた挑戦すればいい。ハンター試験は毎年開催されるし、今のところ人員も制限されていない。いわゆる目的意識の差と言うやつだ。それに、降りる方法への道ももう見つけたし。

 

塔の床を触ってみればわかる。頑丈な石の材質に頑丈な構造。さすが高いだけはある建築物。そしてそれとは別に、若干質感の違う、沈む床。これは仕掛け罠とかでよくある落とし穴だ。

 

周りにいた人も、気づけばちょっとだけ少なくなっている。何人かが気づいたのだろう。魔術で浅く探ってみた感じ、問題もないし。

 

私は軽く石床を叩くと、意を決して仕掛け穴に足を突っ込んだ。視界が一瞬黒く暗転する。

 

 

 

 

 

 

落ちた先には、先客が一人いた。まるで劇画のような逆立つ髪を持つ男だ。肌の色も赤く、煮えたぎるような真紅に近い色で、人間だとは思えない。試験中ちらっと見えたが、やはり魔獣か。いや、それにしては人間っぽい。

 

「おお〜、でっけー」

 

その威容に素直に感心する。逆立つ髪に赤色の肌、大きな体躯。まるで太古の英雄みたいだ。こういうのは嫌いじゃない。

 

「君はヒソカと一緒にいた子か。よろしく頼む」

 

男は体躯だけでなく性格も堂々たるもので、どこか厳かな声と共に手を差し出してくる。まさに漢って感じだ。かっけー。

 

「ああ、よろしくなーってあつー!」

 

熱い! それになんかすごい震えてる。

 

なんだこの暴発寸前みたいな温度は!?

普通に怖い!

 

「あ、すまない。おれはエネルギーの変換効率が高すぎて、オーラで体を強化しても平均体温が50度くらいになってしまうんだ。今は200度くらいか。実はヒソカと一緒にいた君相手で随分緊張してしまってな」

 

男が気まずそうに佇む。そういうことなら仕方ない。そういう人間もいるだろう。逆にちょっといたたまれなくなった私は、できるだけ警戒させないように歩み寄り、背中に手を置いてこっちこそと謝る。わざわざ肌に触れたのは「気にしてない」と表すためだ。

 

それに向こうも若干びっくりしつつ、安堵のため息を吐く。和解ついでにお互い名前を交換すると、意外とすぐ仲良くなれた。

 

「そうか。お前リナウジ=ポーニョって言うのか! なんかの部族みたいな名前だなー」

「ああ実際そうだ。おれはそういう部族の生まれでな。おかげでこの体質も“すごいやつ”としてしか扱われなかった。まあ周りにやけどさせたのは苦い思い出だが」

「そっかそっかー。リナウジって呼んでいいかー?」

 

お互い緊張も解けたところで、しばらくアナウンスがないので床に座って話し出す。まずは一歩踏み込んでみて、ファーストネームで呼ぶ許可を貰い、お互い呼び合う。その後はなんかテキトーに話して、気づいたらまあまあ時間が経っていた。

 

天井の上にある気配も、随分少なくなってきたのを感じる。まさかハズレ部屋なんてないと思うが……。ちょっとリナウジとの間に不安な空気が流れる。大丈夫だとは思うが、万が一ということもある。

 

しかしそれも杞憂。天井の上にあった気配が全部なくなった頃、試験官からアナウンスがあった。本来部屋に必要な人数は集まらなかったが、試験を始めると。

 

試験内容は「集合知」。人数が少ない分不利にはなるが、そのあたりは勘弁してくれるとの事だ。そうやって試験は開始された。集合知と言われたので、まずはその言葉通り、簡単なクイズから。

 

そして内容は徐々に難易度を上昇させていき、最後はタイトルの集合知とは名ばかりの、個人の閃きゲームだった。あるいはそれも含めての集合知なのだろうか。

 

内容は単純で、これまで一緒に集合知を行ってきた仲間と離れ、一人個室に入ることを強要される。それを断れば当然失格だ。そして個室に入ると、問題が提示される。

 

[今別々の部屋にいる〇〇が用意された紙に書いた数字は?]と。この場合はリナウジな訳だが、向こうは向こうで紙に数字を書くことを指示されていたらしい。

 

そしてこれに120秒以内に答えられなければ失格との事だったが、まあどうにかして見える手段があることは間違いなかったので、時間ギリギリまでは仕掛けなどを探してみようと決めた。

 

それで、だいたい残り時間30秒くらいの頃だったか。なかなか見つけるのが困難な仕掛けをどうにか発見し、用意されていた部屋間中継カメラ映像を利用する事で回答した。もちろん間違いだったら申し訳ないので、最後に魔術の念視で保険を掛けた上での回答だ。

 

結果はもちろん正解。集合知とは「集まり合わせる知」と読める訳だから、本来とは別の意味になるが、「相手に合わせる知識」、それもまた集合知と読むこともできる。そしてハンター受験生というのは得てして我が濃い。でもハンターは、時に協調もしなくてはならない職業だ。だからこその集合知。

 

その点を私達はクリアした。つまり三次試験合格だ。

 

 

 

 

 

 

トリックタワー攻略に、私達が要した時間は、クイズでかなり長考したこともあったので10時間30分程。最大のクリア所要時間が71時間59分なので、かなり余裕を持ってのクリアだと言えるだろう。

 

ただ試験終了の72時間が終わるまでは、クリア者の共用スペースで過ごさなきゃいけないのが難点か。ここに到着してから、やはり視線を感じる。石の無機質な床に、塔と同じ円形のドーム。

 

三次試験を終えた受験生達も出てきた脱出口の前で待機しているのが基本で、トイレ以外ではずっと姿を晒している状態。赤色の大男と、ヒソカと一緒にいた謎少女では、やはり目立つのは否めなかった。

 

「あー、暇だなー。リナウジ私の作品でも見るか?」

「ほお、なにか作っている人間なのか? リリコは。できれば見たいな。しかしどこにあるんだ? いまいち見えないが」

「ここにあるんだよ。驚くかもしれねーけど」

 

私の能力は魔術っぽい事が出来る能力。そして魔術と言えば、やはり魂は外せない。例えば魂に物を収納する術とか。

 

「ぉお、お腹から物が出てきたな」

「そっ、名付けて《小さな収納箱(シンシンドローム)》だなー」

「それは便利でいいな。おれもそういう力にしたかったくらいだ」

「だろー?」

 

答えながら腹から出した物の中身を探る。小さなとは言うが、腐っても魔術とかなんだとかを作っている中枢の部分なので、取り出した物は大型のバックパックで、かなり大きい。

 

その中から作品を探すのは一苦労だ。特に私の作品の出来はいいものの売らなかった物を雑多に入れているので、入っている物は覚えていても、どこにあるかは分からない。

 

「おっ、あった。どうだよこれ? この体だと似合うだろー?」

「ああ、似合っている。ティアラと言うやつか。初めてみるな」

「リナウジは部族暮らしだったもんなー。何年くらいそこにいたんだ?」

「旅に出る前だから、だいたい二年くらい前か。ご飯が美味しいのが特徴のところだ。ヴリジョルと言う部族でな。知らないかもしれないが、ある国ではうちの部族の料理が郷土料理になっているんだ」

 

リナウジの横顔が、懐かしむものへと変わる。思い出を語るのが心地いいみたいだ。私は親がクソだったから気にならなかったが、リナウジもリナウジなりに色々経験してそうなったのだろう。あるいは幼くしてこの世界に生まれ直したという可能性もあるか。どこか幼げな雰囲気もあるから、そうなのかもしれない。

 

「おやおや、もう他の受験生と仲良くなったのかい?♠ 妬けるねぇ♦」

 

リナウジと話していると、粘ついた声が耳に入った。顔をあげると、いたのは配給されている食事のトレイを持ったヒソカ。ついでに何故か腹を軽く負傷している。これはまあ、おそらくわざとだろう。

 

「もう食事配られてるよ♣ それと僕と一緒に食べな───ああ♣」

 

ヒソカがなにか言っているが、気にせず対応に困っているリナウジを連れて食事を取りに行く。

 

この石造りの狭い空間はなかなか退屈だが、その中で食事は楽しみのひとつだからだ。後ろで残念そうな声が聞こえるものの、当然の事だと言っておこう。変態と一緒に食べる奴はいない。

 

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