胎内回帰願望《パンチーファンシー》   作:来い!ゲンスルー!

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第12話

三次試験の72時間タイマーも終わり、四次試験。塔を出た先の草葉が生い茂るそこで、私達は次の試験の説明をされた。四次試験、狩るものと狩られるもの。この試験では受験生の番号札を狩る対象とし、くじ引きでその対象が誰かを決定するようだ。

 

そして番号札にはそれぞれ点数が振られる。自分の番号札は三点、獲物の番号札も三点、それ以外は一点。合計六点得られればクリア。試験会場は無人島であるゼビル島。

 

島に降りる順番は試験の成績上位順となる。だいたいそんな事を、すごく胡散臭いリッポーという三次試験官が教えてくれた。今はその説明を聞き終えて船の上だ。ゼビル島に向かっているらしい。

 

船が波を切り裂いて進んでいく。ガイドのねーちゃんが試験前の緊迫した空気に耐えきれず、なんとか話を切り上げて船内へ戻っていった。我々受験生はお互いを監視するために、甲板で吹きさらしだ。

 

受験生の胸にあった番号札は、当然のように全員隠している。念能力者がこうも多いと警戒も一入だろう。能力者の数は限りなく少数という訳では無いが、数十人単位で同じ空間を共有するのは稀だ。警戒は当然とも言える。

 

島が見えてきた。そろそろ着くだろう。

 

 

 

 

 

 

私の獲物は426番。私自身の番号は447番。魔術で記憶を掘り返す感じ、獲物は特段念能力者という訳でもないし、武術の達人という訳でもない。万が一能力者だったとしたら相当な脅威だが、まあ無いだろう。

 

「五番の方スタート!」

 

島の脇に止められた船から、自分の番が来たことで降りる。目の前には鬱蒼とした森林が広がっていた。そして足元には、肌を撫でる程度の高さの草。人の手が入っていないだけあって、随分自然豊かな島だ。

 

周囲を見回しながら島の中へ入っていく。ある程度船から離れると、肉体を魔力で変質させ、霊体化する。この状態だと自分は相手に干渉できないが、相手も私に干渉できなくなる。

 

そこら辺の木を適当に見繕って触ろうとする。頭上で木の葉が揺れるのがわかった。それを知って、私はより強く木の葉の音を鳴らそうと、さらに木の表面に強く触れようとする。が、空振った。

 

何度も何度も木を揺らそうとするが、空振るばかり。どうやら霊体化はちゃんと機能しているようだ。こういう所が私の魔術の便利なところ。戦闘能力で言えば念を用いないと片手落ちだが、それ以外ではこれ以上ない効果を発揮する。心底親しみやすい能力だ。

 

霊体になった体で、空に円を描くように舞う。それっぽく木の頂上に座り込み、そこから受験生用の船を見張る。426番が出るのを待つのだ。そして出てきたところを霊体化解除からの番号札奪取。もしかしたら抵抗されるかもしれないが、それもまた一興。

 

 

 

 

 

 

 

四次試験完! 実質終わってしまった。下を見ると、何やら騒いでいる人間がいる。どこを見ていいのかわからないのか、私がいる方向とはまるで違う方向に指差し、何事かを言っている。

 

私はここだぞ。木の上だ。

 

樹齢数百年はあるだろう立派な木。実体化しているので、ももの内側に木の冷たい感触が走る。ちょっと前に雨が降ったから、それを引きずっているのだろう。

 

さてどうするか。リナウジの方に行ってもいいが、あの巨体で私がターゲットだったら怖いし……ゴンの方に行くか。あの才能の原石は念能力者連中のただ中に放り込むには惜しい。私もあんな才能があれば、親をボコってとっとと自立していたのに。

 

座っていた木の太枝から立ち上がる。目にオーラを凝らして凝。風が私の髪を撫で、一瞬視界を遮る。それを邪魔だと払い除けて、ゴンを探した。初日だからまだ生きてると思われるが……。

 

 

 

 

 

 

軽い体を利用して森の木を踏み台にし、光が反射するように鋭角に飛び抜ける。気配が近くなってきている。目標までもうすぐらしい。森林が僅かに途切れる。でもゴンまではまだある。そこで私は天高く飛んだ。何mか、何十mか。

 

空気を揺らしながら空中で体勢を整える。体が飛ぶ瞬間に作った推進力が無くなってきて、落下し始める。ゴンはちょうど真下。私は頭から落ちるように加速した。

 

「ばあぁぁ!」

 

影が重なる。ゴンの顔と私の顔が上下で相対した。一瞬の交差で、私はその表情を見つめる。ゴンは私が落ちてきた事など知らないかのように、集中した顔つきで前を見ていた。そこに私が落ちていく。

 

「うわぁぁぁぁぁ!?」

 

叫び声が響いた。なにかに襲われたかのようだ。かなり素早い反応速度で、私の顔が真ん前に来て声が響いた辺りで、ゴンは思わず釣竿を手放して腰を抜かした。

 

「な、なに!? 人!? 敵!?」

 

呆気に取られた表情で焦りを浮かべながら、ゴンが近くに転がっている竿を取ろうとする。おぼつかない手つきで探っていた。それを見た私は、軽く念力っぽい基礎的な魔術で支援する。

 

ゴンの手に竿が収まり、一瞬で精神を落ち着かせて目線をこちらに向ける。それによって、ゴンはようやく目の前の存在を認識して目を丸くさせた。かなり混乱気味のようだ。

 

「よー船ぶりだなー」

 

言葉も出ない様子のゴンに、手を振って意識を現実へ引き戻す。それでゴンは正気に戻ったのか、一瞬体を緊張させると、頭を振ってこちらに返事を返してきた。

 

「うん、船ぶりだね。もしかしてリリコのターゲットはオレ……なんて言う問いに意味ないよね。やろうと思えばとっくに取れてるもん」

「まあ確かにな。ちなみに私はもうターゲットを狩ってる。ゴンのターゲットはどうだー?」

「うーん、オレは相手がヒソカなんだけど、取れるのかなーって。ヒソカが本気で動くと目で追えないから」

 

警戒するのを無駄だと悟ったのか、ゴンがいっそ開けっぴろげに悩みを打ち明けてくる。言い草からして取る方法自体は考えているようだ。だが通じるか不安なのだろう。

 

「ならちょうどいいなー。私暇してたし、修行見てやろうか?」

「え!? いいの!? ……えーとじゃあまずオレ、こういうことやってたんだけど……」

 

背後で川が流れる音がする。鳥が鳴き、カエルが飛んでいた。私の視界の先には、川岸と、そこから境界を分かつように続く森林があった。ゴンはここで釣竿を使って訓練していたようだ。

 

主に鳥などをヒソカの番号札に見立て、釣竿で捕まえる。もちろん傷つけないように柔らかい素材を竿の針先につけて。自分の中で明確な線引きがあるのだろう。イカれているが強い少年だ。私は適当に生きているから真似はできない。素直に尊敬する。

 

 

 

 

 

「じゃあ行くぞー」

「押忍!」

 

 

 

 

指導については、私なりに正しい念知識に則り、ゴンに向いた指導をする事にした。念能力に関してはかなりの重要事項だったので、死ぬくらいの気持ちで知識を収集したから、間違いないだろう。

 

見たところゴンは直感型っぽいので、感覚的な指導を施した。具体的には、第一段階として目隠しをしての気配察知。オーラを目覚めさせない程度の弱いオーラをゴンに飛ばしたり、実際に攻撃してみたり。それをオーラで感知できなければ罰ゲーム、などなど。

 

二段階目は、朧げにオーラを感知できるようになったら、いよいよ瞑想だ。周囲の気配を感じる事から始まり、やがては自分のうちにある生命エネルギーを感知する。元々人間はある程度オーラを体の周りに漂わせているからできる修行だなー。

 

そうやって修行を施せば、天才であればほんの数日で念を覚えられる、らしい。が、その前にワルキューレが修行している私達を空から監視していたので、風の弾で落としてやった。それで安心して修行を続行できるようになり、ゴンは無事念能力の基礎を覚えた。

 

本当に基礎も基礎だけだけど。

 

それでも驚異的な速さだ。

 

後のことに関しては、自分で師匠を見つけてもいいし、私直筆の念的なあれそれを読んで修行してもいい。ゴンにはそう言っておいた。

 

そしてこの試験では、ゴンの「ヒソカに対し気配を絶ってからの不意打ち」という作戦は据え置きで、後はとにかく念で強化された身体能力で何とかすればいいという、漠然とした作戦で続けることになった。

 

まあ万が一失敗しても殺されることは無いだろうし、いつの間にか覚えていた絶を使えば念能力者からも逃げ切れるだろうから、後のことはゴン自身に任せておいた。ゴンからは試験が終わったら修行の続きを見て欲しいと言われたが、そんなもん巡り合わせ次第である。

 

 

 

 

 

 

霊体化し、空から地上を見守る。ある一角で、ヒソカが飢えた獣のような気配を醸し出していた。そしてそのヒソカがいる場所からちょっと遠く、運良く念能力者に見つからず、しかし運悪くヒソカの近くを歩いてしまっている受験生がいた。

 

当然そんなもの、戦いを欲するヒソカにとっては餌でしかなく、それから程なくして、その受験生はヒソカに見つかった。総毛が立つように身構える受験生。ヒソカは相変わらず頭のおかしいフォームで獲物に向かって走り寄って、喰らい潰さんと迫る。

 

恐怖に濡れた受験生の顔。狂気に揺れたヒソカの顔。両者の姿が血塗られた交差を交わした時、間に一筋の一閃が走った。受験生が崩れ落ちる。ヒソカは一閃の元に注目した。ついでに自分の胸元を見る。

 

番号札がない。

 

そして一瞬だけだが、ヒソカは確かに見たはずだ。ゴンの姿を。それはヒソカにとっては魅力的で、惜しく映るはず。開花の瞬間を自分が最初に見るはずだったのにと。まったくざまあないぞ。笑える。

 

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