胎内回帰願望《パンチーファンシー》   作:来い!ゲンスルー!

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第14話

天空闘技場を歩きながら、私としては小癪な再会をしたゴンの話を聞く。あのキルアとの不穏な別れから、色々あったようだった。どうもゴンにとっては、自分の意思で言ったならともかく、言わされたキルアに、そしてキルアにそう言わせた誰かに怒りがあったらしく、ゴンはキルアの実家へと乗り込む決意を固めたという。

 

念を覚えた自分なら絶対できる!と。実に念能力者らしい、自信に満ち溢れた覚悟で、連れのクラピカやレオリオと共にキルアの実家の山へと登る決意を固めたらしい。だが道中は困難を極めた。そもそも「試しの門」という正式な来客用の門がゴン以外開けられず、ゴンも開けるので精一杯。

 

こんなんじゃキルアに会えないと連れのレオリオが言い出し、なんだかんだあって鍛錬を開始。ゴンはそれに加えて念の訓練も行い、練をある程度覚えるまでになったようだ。

 

そうして、キルアの実家の使用人のゼブロやシークアントの協力などもあり、いよいよ敷地を跨ぎ、そこからも執事のカナリアやキルアの母子などの妨害もありつつ、最後は執事長のゴトーを認めさせてキルアと再会。なんとも王道エピソードだ。

 

多分ゴンはこの世界の主人公と言うやつなんだろう。もしくは闇系のキルアか。まあそういうのには関わりやすい運命だし、別にいいが。

 

「でね!この子がそのキルア!リリコはあんまり話したことないと思うけど、改めてよろしくね!」

「うっす。覚えてるかわかんねーけどオレ、キルア。よろしく」

 

ゴンに話を振られたキルアが、若干萎縮気味に頭を下げてくる。念を覚えてはいるようだから、年季の違いに気後れしているのだろう。

 

と言っても私も、最近ようやく念能力だけでもヒソカに張り合えるようになっただけで、まともに戦うとかになるとまだ微妙なのだが。まあ魔術がある分、本命の能力はまだ作ってないから、そこ次第もあるか。

 

「覚えてるぞ。よろしくなー」

 

ちょいと離れた距離にいるキルアに答える。主にヒソカに関わってたからか、そのせいも含めて避けられている気がする。間のゴンが、キルアも巻き込んでまた話し始めた。

 

どうやらゴン達は200階までもう登りあげているらしい。ファイトマネーが出るのは200階以前らしいから、もうお金は貰えていないようだ。そして今まで稼いだファイトマネーを聞いたところ、二人で相当稼いだらしい。

 

これだからハンターは稼げるのだろう。なぜならハンター試験をクリアできる時点で実力が一般人とは桁が違うから。そしてその試験をクリアできる技術は、必ずどこかで通用する。もちろん私が幻影旅団で盗みやった時よりはだいぶ少ないが。

 

「それでね、200階に登るちょっと前にウイングさんって人が接触してきて、今その人に面倒見てもらってるんだ!」

「ああ、ま、あんたの念指導書があったからぶっちゃけ必要なかったけどな。でもセンパイの指導は意外とためになるよ」

 

生意気そうに語るキルア。緊張感が解けたのか、ちょっと距離が近づいた。話をしながら、私達は天空闘技場を出て、そのゴン達がお世話になっているというウイングさんのところに向かう。

 

そこまでの道行きは、天空闘技場正面入口と比べると随分人通りが少ない。完全に民間用の土地という風景だ。それでもゴン達は通い慣れているのか、変わらない風景を迷いなく歩いていく。そしてある一軒家に着くと、付属の呼び鈴に手を添えた。

 

 

 

 

 

 

呼び鈴の音で家主がドタドタと扉を開けてきて、中に招き入れられる。私くらいの年頃の少女が男所帯にいていいのかという心配はされたが、「全員ぶっ飛ばせるから大丈夫」と答えて家主の顔を引き攣らせ、無事中へ入ることができた。

 

せっかくの来客だからと、お茶を出されて歓迎される。少々の話し合いの末、私とそのウイングさんは向き合った。それと家の中には、あの広告映像のズシもいた。

 

「それで、ゴンさん達の指導方針……ですか。それはその200階闘士のヒソカ選手の依頼で?それともご自身の意思で?」

「まあ半々だなー。機会が巡ってきたから見る気になった。でも師匠がもういるんじゃ、私いらねーかもな」

「いえ、あなたの念指導書は見せて貰ってはいませんが、ゴンさん達の為になっているので一概にそうとも言えないかと。ですが困りましたね」

 

今ゴン達の師匠を務めているウイングが、何か悩み始める。ヒソカがゴンに注目しているというのは、確かに頭の痛い問題だろう。

 

私の指導が悪くないと言うなら、指導方針の衝突も有り得る。そして見たところ今のゴン達は基礎固めの状態っぽいので、私の指導方針とは確かにズレるだろう。私はとにかく実践!経験!というタイプだから。

 

「ヒソカが心配なら、私がヒソカを天空闘技場からおさらばさせる方法もあるぞ。今あいつ、私との戦闘にトラウマ持ってるから、そこをついてバトれば余裕で勝てる」

 

ヒソカの今の天空闘技場の成績は8勝3敗。うち負けは余裕こいての不戦敗がほとんど。4敗したら200階から追放されるから、私ならそこをつける。

 

「はっ!?マジかよ!?あ、あのヒソカがトラウマ!?」

「うえっ!?」

「ッス!?」

 

そばで聞いていたゴンや、ウイングの弟子らしいズシが思わず声をあげる。それをウイングは、オーラを込めた一瞥で沈めさせると、再び私に向き合った。

 

「あなたがそれほどの実力者だと言うなら、尚更あなたの指導方針は否定できない。見たところ、あなたは過酷な環境で強くなった方なのでしょう。私では、トラウマがあったとしてもヒソカ選手にはとてもではないが敵わない」

 

肩を落としながらウイングは言い切る。だがこれは運の差がかなり大きなものだ。私は既に私なりに魔術を運用しているから、それも実力のうちだと思っているが、そこにはやはり運の要素が大きく絡んでいる。それは切っても切れないものだ。

 

だから私の指導方針が「正しい」とも言えない。魔術がなければ、その過酷な環境には耐えられなかったからだ。そこで私はウイングに提案する。

 

「んー、じゃあ半々にしよう。その方がお互い補い合えると思うぞー。多分な。私は実践に落とし込むのが得意。ウイングさんは多分、武術の厳格かつ的確な指導が得意。それでいいんじゃねーのー?」

「なるほど。私の頭がどうやら硬かったようですね。ヒソカ選手については緊急性も無さそうですし、折り合い所はそこら辺が最適ですか」

 

私とウイングの間で結論が出る。ゴン達の修行は、私とウイングの両者で見ることが決まった。ついでにウイングの弟子のズシもそれに加わり、三人組の修行を見ることになった。

 

報酬がなかったらさすがに投げ出していたかもしれない。勢いで言ったが、本当はゴンだけ見るつもりだった。だが見たところ、キルアにもゴン以上の才能があり、ズシも悪くない才能を持っている。こんなもの小癪だが、育てない方が損だ。

 

それにおかげで、いい能力を思いついた。私の指導方針では広い場所が必要だから、それを作る能力。だが空間魔術はもう転移に使っているので、魔術だとできなくは無いが難しい。そこで、魔術で得た感覚を念能力に流用する。

 

能力名は

奈落の底で待つ(メイドインアビス)』!

 

体の底、魂の中に念空間を作り、そこを物置にしたり、修行空間や安全地帯として使う能力だ。加えてこれに転移を合わせれば、緊急性がなければ絶対安全の転移ができる。まあ緊急性ある時に全然安全じゃないからシンプルライトの転移魔術なのだが。

 

「それじゃあ早速修行しよう!ちょっと待っててな。今から修行場所を作る能力を作るから」

 

魂の中に空間を見立てるのは、シンシンドロームで前にやっているから難しくない。今までは系統を気にしていなかったが、この場合何系統になるのか。私は操作系能力者だから、魂の操作みたいな?

 

まあ我ながら悪くない系統だ。自分の作ったルールを何かに強制する系統。これのおかげで魔術も、器用貧乏から尖らせる事が出来た。私にはこれ以上なくハマった系統だ。

 

「は、はい?今から能力作るんですか?な、なかなか個性的ですね。それなりに考えてのものなのかもしれませんが」

「違うぜこいつ。試験中ヒソカとつるんでたし、やっぱいかれてんだよ」

「キルア、小さな声でもそういうの言っちゃいけないよ。でもリリコ、そんな簡単に能力作っちゃっていいの?」

「あ、アグレッシブすぎるっす。自分じゃ考えらんねーっす」

 

四人四様の返答。ゴンの疑問ももっともだが、これは結構悪くない能力だ。制約は追加する必要があるが、転移魔術を使えば、あるいは敵を周囲にまったく被害を及ぼさない形で封じ込める事が出来る。

 

もちろんそれで敵を殺すなんてことは、別個の能力者として転移と念空間が存在しないと難しいだろうが、敵との間に「完全に勝ちか負けかのみ」にできるのは、大きいひとつの手段だ。

 

「よっしゃできた。折角だしウイングさん含めて全員参加な!」

 

魔術で結構魂に触れていたので、比較的簡単に能力の構築を完成させる。胸の奥に何か異物感ができた。内に没入していた意識を周りに戻す。ゴン達は突然の事に口を横に開いていた。

 

「わ、私もですか!?まあ修行を見て貰えるならありがたいですが……うわっ、光が」

 

驚くウイングを前に、転移魔術を発動させる。光が辺りを満たす。閃光が視界を支配した。体の感覚が物質から非物質に切り替わる。光の筋を私達は辿った。

 

次に目を開けると、そこには一瞬前とは違う光景があった。無機質な空間だ。まるで私が能力を貰った場所のよう。視線を少しずらすと、横にいたゴン達は慣れない輝きに尻もちをついていた。ウイングはさすが、体勢を維持しているようだ。

 

そんな彼らを見て、私は腕を空に掲げ、魔術を発動する。私の直上で風が渦巻いた。目線の先のゴン達の顔が引き攣る。腕をワタワタさせて静止を求めてきた。だが止めない。

 

「言っただろ、実践形式で実戦形式だってよー。敵は待ってくれないぞ。反射神経の強化と、攻撃と相対した時の取捨選択だ。私も風の弾に混じって攻撃するから、上手く対応しろよー」

 

後退るゴン達を見ながら、風の弾丸を回す。まあ実戦形式と言っても、念能力者には大した威力じゃない。ゴン達でも耐えられる程度だ。ただもちろん私も攻撃に参加するので、簡単にとはいかないが。

 

とにかくそうやって修行を始めていく。ちなみに、突然の能力発動には当然怒られた。怒ったウイングさんは、結構怖かったと言っておこう。

 

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