胎内回帰願望《パンチーファンシー》 作:来い!ゲンスルー!
物言わぬウボォーの魂は念空間に押し込めて、勝手に成仏しないようにしておき、めちゃくちゃ殺ってるらしい古巣の方は「もう知らねーわ」と放っておくことに決めて、街中を散策する。
ウボォーを奪ったのはアニンに苦言を呈されたが、さすがに元仲間が天に召されそうになっているのを見過ごす事は出来ない。どうも代償を払う代わりに、ワルキューレさながらエインヘリアルとしてウボォーを運用出来るようにするところだったようだが、そこは申し訳ない。
しかし旅団も、顔が割れている連中が賞金首になったらしい。一人20億だそうだ。突き出してやろうか。団員が一人でいる所を見つけたら捕まえて、賞金受け取るのもありかもしれない。
「ここはなかなか逸品がありませんね、リリコ。やはり掘り出し物を見つけるにも、ある程度規模のあるオークション会場である必要があるのでは?」
「まあいいじゃねーか。どうせ暇潰しなんだしよー。あっ、そういえばウボォーも賞金首だった気がする。首持ってくるんだった!」
「え、えげつないですね。ところであの遺体の人とはどういう関係なんです?……いえ、やっぱり言わなくていいです。私、聞きたくない」
アニンが耳を塞ぐ。完全に警戒態勢に入った。取り繕う気もないのか、体がぷるぷる震えている。天下の物騒代表であるフロアマスターの癖に、妙に肝が小さかった。
アニンから目を離し、周囲を見渡す。ここは古物を扱う店だらけの、いわゆる蚤の市だった。要するに古物を寄せ集めて形作られる一種の市場だ。家から商品を持ち寄ってくるものもいる。家具の処理にはちょうどいいんだろう。
商品を細かく見ていくと、金属の装飾品などはまれに質の高い物があることもわかる。多分、母親が使っていた物とかだろう。逆にそれ以外はよくわからない。金属製品に使われる技術だとか、念具に使われる念能力補助用の神字とかは見分けがつくのだが、それ以外はわからん。
例えば、あそこの銀髪の少年が持ってるのはベンニー=ドロン作のほにゃららナイフで、その作られた経緯からマニアの間で価格が高騰しがち。
「あれ、キルアじゃねーか。おいマセガキー」
ベンズナイフを持つ後ろ姿と、オーラの雰囲気から直感で声を掛ける。そばにはゴンと、肉体年齢おっさんのレオリオがいた。そう、確かレオリオだったはずだ。
「ん? おいキルア呼ばれてるぞ。マセガキだってよ」
「あ? 纏しか覚えてねー雑魚が何言ってんだレオリオ?……って泣き虫ババアじゃねーか! よっ、久しぶり!」
「……キルア、お前オレはまだしも嬢ちゃんになんて口の利き方だ! ってあーッ! ヒソカからオレ達を守ってくれた激強少女!!」
キルアが煽ってきて、レオリオは指を指してきて、ゴンはその後ろで「ごめん」と舌を出しながら手を振ってくる。やっぱりゴンは私の子分だわさー。
再会に身を浸すのも程々に、私達はゴン達に近づいていき、レオリオに対するものも含めて軽く挨拶する。
「私はリリコ=マジルカ。久しぶりー」
「私はアニン=フロラッシュです。一応、久しぶりですね」
アニンと二人で声をあげる。レオリオはアニンの容姿に釘付けになったが、何かがレオリオの頭をよぎったのか、頭を振って正気を取り戻したようだった。レオリオが拳を前に出してグットサインを作る。
「おう! オレはレオリオ=パラディナイト! よろしく!」
見た目通り快活に声を出してくる。レオリオは前の試験の事柄もあってか、私達に対して随分好印象を持っているようだった。もちろんレオリオの人柄も相当数を占めているだろうが。
あまり話したことがないという微妙な間柄を超えて、私達は合流する。集団の人数は一気に増え、5人。これにキルアが「ちょうどいい」と仕切り出し、何やらお金を稼ぐぞと言い出した。
でもゴンは、それに私達を巻き込むのは悪いと言い出し、なんか金銭トラブルがあったのか、道の真ん中で喧嘩しだした。なので私は、そっと彼らを適当な裏路地へと捨て置く事で、事態に対処した。
レオリオも苦笑いだ。
「悪いな。とりあえずカフェで一杯どうだ? リリコはゴン達の師匠なんだろ? 離れてた間のあいつらの話、色々聞いてみてーな」
真剣な顔でお願いしてくるレオリオ。こうして見ると、おっさんにはない純情を感じる。断る理由も特にないので、私はOKした。その後、喧嘩を終えてちょっとボロボロで戻ってきたゴンとキルアが戻ってくる。どっちもそっぽ向いてる。これは前途多難だ。
◆
ゴン達に連れ添って来たカフェで一息つく。私達はひとつのテーブルを囲うように座っていた。その様子は、外から見ると美人な妻(アニン)、実業家の夫(レオリオ)、その他子供と言った感じだ。周囲からも、たまに羨む声が聞こえてくる。
それにレオリオは照れくさくなって耳を赤らめていた。そしてそれを、キルアが主となって茶化す。カフェでの時間はそうやって過ぎていった。
アイスティーを一杯飲み、気を落ち着ける。半目を開くと、騒がしい男子と静かな女子という、ある意味鉄板の状況になっていた。
「なあゴン、キルア。お前たちお金が欲しいのかー?」
問いかける形ではあるが、お金が欲しいのはわかっている。なぜお金が欲しいのかと言えば、オークションの為だろう。オークションで何が欲しいかと言えば、芸術品に興味があるとは思えないから、化石とか子供が憧れるようなものだろう。多分な。
「そりゃほしーよ。一応ししょーだから教えるけど、G.I.っていう超すげーゲーム買うのに大金が必要だからさ。そんで今は資金稼ぎ中」
「まあ全然稼げるどころかマイナスなんだけどね。でも最近、いい稼ぎできそうなもの見つけたから、今それを稼ぐのと並行して追ってるんだ」
「そっ、幻影旅団ってやつ。なんと一人あたり20億!」
キルアの目が輝き、一人狩って20億、二人で40億と金勘定を始める。確かに彼らは犯罪者と言うには身内に情があり過ぎるけど、キルアは言っている意味をわかっているのだろうか?
「ん? なんだよその顔。幻影旅団がやべー奴らってのはわかってるよ」
「ほー、まあ団員見つけたら呼べな。タダで捕獲手伝うぞい」
「マジか! じゃあ念空間で楽勝だな!」
「やった! これで目標額に届くかも!」
喧嘩していたのも遠く昔か、朗報にゴンとキルアが手を叩き合う。レオリオは「良いのか」と囁いてきたが、団員は私も探しているので、まあウィンウィンだった。
「そうか。良かったなお前ら! リリコちゃん先生に感謝しろよ!」
「なんでお前に言われなきゃなんねーんだよ。言われなくても感謝してるよ。お前以外にはな」
「キルア、一言多いよ」
にたりと笑うキルアに、レオリオはぶちぎれる。そんな状態でも、お互い用事があることは頭に入れていたのか、レオリオはブチ切れながらも会計の準備をするという器用さも見せた。
キルア達もお金稼ぎに戻る気になったのか、こちらに気を使うレオリオに着いていく。それをレオリオは虫を払うように、私達の方へ追い返していた。
自然と別れる空気になったので、私はアニンと顔を見合わせる。私の手下の顧客が幻影旅団の賞金獲得競走に参加していたので、このあとはウボォーの首を届けに行く算段だ。
生死を問わないとの事なので、20億まるまるゲットになる。これでウボォーの魂は確保していると言うのだからたまらない。魂は旅団と接触したら交渉に使うつもりだ。それで決め手になるとは思っていないが、揺さぶりくらいは出来るはずだ。
◆
ゴン達が旅団を見つけたらしい。1500万の賞金を情報にかけたらしいので、その分は私の方で補填しよう。アニンには街の散策を中断して先に帰ってもらうように言っておいた。それで話を聞いていたアニンも察したのか、深くは突っ込まずに帰ってくれた。
電話をくれたレオリオ曰く、団員の位置は完全に割れているらしい。私はそのままの勢いで、聞かされた場所へと向かう。さすがに行ったことがない場所へは転移できないので、街中の屋根伝いにそこへ向かって走る。
どちらかと言うと、一般の店などが立ち並ぶそこに向かって家々を何百棟も飛び越え、近づいていく。風景はやがて姿を変え、目的地の元へと。
気配を絶って、眼下を流れる人の群れに身を紛れさせる。視界が低くなり、まるで目的地が遠くへ行ったかのように思わせた。それでも確実に一歩ずつ近づいていき、やがて私は一組の男女の前に立った。
「よー、久しぶりだなマチ、ノブナガ。ヒソカは元気にしてるか?」
無駄に艶のいい髪の毛をしているノブナガと、怜悧さの中に温かさを持つマチ。平凡な野外型の飲食席で退屈そうに座っていた二人は、私を見ると少し目を見開いた。
「あんたこそ、ヒソカと戦った時の後遺症は大丈夫なの? まあ見たところもう直したようだけど。それならヒソカをぶっ殺して戻ってくれば良かったのに」
「そうだな。おめー見たところ結構強くなってるじゃねーか。能力次第じゃヒソカを殺せると思うぜ? あんな変態ピエロ、うちが劇団だとしてもこれっぽちもいらねーしな。どうだ? 戻ってくる気はあるか?」
二人の視線が私に突き刺さる。マチはともかく、ノブナガからも勧誘されるのは意外だ。いやこれはヒソカがストレスすぎるのか。今のところ私以外の転生者でヒソカに関わったのは、不憫な魔法少女だけだから当然か。
「戻る気はねーんだけどなー。ウボォーの事で話があんだよ」
私からその名前が出た瞬間、二人の眼差しが鋭く変化する。マチは私をある程度理解しているから敵意は見せていないが、ノブナガは控えめに自身の獲物へ手を掛けた。
「どういうことだ。説明しろ」
「まあ落ち着きな……リリコ」
マチがノブナガの肩に手を置き、押さえながら私に顎で説明するよう促してくる。もちろん聞かれなくとも話す気だったので、ひとまずそのウボォーの事で団長に会いたいことを伝える。裏切りでは無いことをちゃんと告げつつ、ここには耳があるかもだから話したくない、と言っておく。
「……嘘は言ってないようだね。いいだろう。着いてきな」
「おいマチ! ちょ、待てって!」
マチの先導に、ひとまず安堵しながら着いていく。これがマチでなかったら、話が拗れていただろう。
マチの後ろについて、飲食席のテーブルを後にする。携帯越しにレオリオから連絡が来ているのを感じたが、申し訳なく思いながらも携帯の通信を切る。ウボォーの20億は彼に渡そう。
マチはクズだけど書いてて楽しい。
マチネキィ〜!お前はリリコの光だァ!
なおチョイ役レオリオ→書くのは楽しいけど特に縁もないという感じに……。こんな物騒なリリコさんに関わらないだけいいのかもしれない