胎内回帰願望《パンチーファンシー》   作:来い!ゲンスルー!

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第19話

瓦礫の積み上がった廃墟ビル。天井はところどころ抜け落ちていて、冷たい風が吹き抜けている。その真ん中で、私は団員達に囲まれながら話していた。

 

どこか、周囲から拒絶の気配を感じる。お前はこれ以上踏み込んでくるな。お門違いだ。そう言われているような気がした。それだけ、ここにいる連中には複雑な事情があるのだろう。

 

それでも私は、今しか見ない。団員達とは、顔合わせと、馴染むためにちょっと行動を共にした程度だ。一番仲がいいシャルナークでさえ、せいぜい何回か盗みを一緒にやって、数ヶ月過ごしただけ。

 

マチにしたって、数年来の付き合いなんてとても言えない距離感だ。それでも私は、友達には一線を超え続けるようなことはしてほしくない。特にヒソカみたいなやからとは、できれば一生関わってほしくない。そこで今も、私を眺めている真性のイカレ野郎みたいな。

 

私の話をひと通り聞き終えたクロロが、本を閉じる。瞳をわずかに見開き、考え込んでいるのがわかった。沈黙が辺りを満たす。団員達は、クロロにすべてを預けるように静かに控えている。そこで、クロロが出した答えは……。

 

「言っていることは正しい。信用しよう。だが信頼には値しない。無論、無条件でやると言うなら信頼もしよう。ヒソカの番号をやってもいい。どうする?」

 

静かに目を見開いたクロロが、どこか不穏な気配をまとって詰問してくる。優しげな声音の裏に、厳しい選択を迫る響きがあった。突然流れ弾を食らったヒソカが「え?」みたいな顔をしている。ざまあない。

 

「第三の選択肢っていうのは……ないよなー。でもクロロ、別のやり方もあるんじゃないか? 小さかった頃はともかく、今は力があるだろ? なんなら私もやりたいことを手伝うぞ。本気でやれば政治家の罪を捏造することも出来る。時間をかければウボォーの蘇生だって……」

 

ウボォーの蘇生。それを交渉条件にする。それが成功したら、代わりにクロロ達は旅団としての活動をやめて、別の道を探す。悪くない取引のはずだ。私が言った通り、クロロにはその選択肢を引き寄せるだけの力がある。

 

 

 

「ふむ、なるほど。いい能力だな。奪うか……? 冗談だ。裏切っていない仲間を痛ぶるような真似はしない。だが、そうだな。考えてみると、確かに今の俺たちは立場が違う。選べる側だ」

 

クロロの「冗談」に、特攻隊長フェイタンが真っ先に反応して構えかける。それを手で制したクロロは、再び思考へと潜った。どこか芝居がかった動きだと感じるのは、きっと私だけだろう。団員達も不安そうにクロロを見つめている。理由は明白だが、あのヒソカですら。

 

「そうだな」

 

クロロの顔つきが変わる。自嘲めいた色が混じった気配を帯び始めた。躊躇っているのかもしれない。揺れているのかもしれない。幻影としての自分か、それ以外か。今のクロロなら、確かにどんな盤面でもある程度は操れるだろうから。

 

「実験しよう。オレのやり方か。違う僕のやり方か。色褪せた過去を追うのも、悪くないかもしれない」

 

……それはつまり。

 

「待てクロロッ!」

 

クロロの言葉に場の空気が傾きかけたところで、ノブナガが声をあげた。顔を怒りで染め上げている。言わずにはいられないといった感じだ。

 

「ウボォーは殉じた! だったらあんたも───!」

 

悲痛の混じった声が廃墟に響く。誰よりもウボォーの復活を願っているだろうその男が、それでも「使命」を優先した。それほどのものなのだろう。だが、それでも。

 

「いいね」

「──ハ?」

「もういいね、ノブナガ。直接の仇は討った。社会的な仇も、リリコの話が本当ならいくらでも取れるね。旅団にこだわる理由は、もう意地以外ゼロよ」

「アア!? その意地が重要なんだろうがッ! なんだお前ら揃いも揃って! それじゃ殉じて死んだウボォー……クソ! 生き返るのか! おめえら卑怯だぞ! だいたいウボォーをそのまま生き返らせられんのかよ!?」

 

ノブナガの疑問はもっともだ。それは他の団員も気にしていた事だろう。視線が一斉に私に集中する。マチでさえ、本当にできるのかと疑いを含んでいた。だが逆に言えば、ここでやってみせれば信頼も得られる。

 

「人格はウボォーの魂を捕らえてるから100%。ただ肉体は未知数だなー。それでも信じれないなら、信じてくれとしか言えない。でも少なくとも、政治家とか資産家をどうこう出来るのは嘘じゃねーぞ」

 

元々、小物相手ならいくらでも無双できた。画面越しの相手相手になら、いくらでも時間を練れるからだ。でも政治家相手には、そうもいかない。だが能力の段階を上げれば、政治家も射程に入る。

 

私の能力は「魔術っぽい事」が出来る能力。魔術っぽい事が出来る以上、未熟な頃ならともかく、制御さえ取れれば、念の成立に重要な「想像力による補正」をある程度すっ飛ばせる。つまり、魔術に限っては比較的強力な能力を作りやすい。

 

「決まったな。話は終わりだ、ノブナガ。もちろんリリコの話が嘘だったとしたら、旅団はまた再建する。だがウボォーが蘇るのは、お前も望むところだろう。本当に生き返ったかどうかは、結果を見ればいい」

 

クロロが場を断ち切るように、唯一はっきりと不満を述べたノブナガを名指しする。有無を言わせぬ響きに、ノブナガも息を詰めるしかなかった。これで少なくとも、旅団としての活動は一時中断される。

 

 

 

 

「待ってくれよ団長♦ 僕はリリコと何度も戦った事があるから言うけど、そんなの不可能だ♠ 転移、水の弾丸、強力な操作系能力、具現化能力、見えない弾丸♥ いずれも念的な制約はあるけど、総合的に見ると人間の限界を超えている♣ 強さに見合わない♦ もちろんジョイント型という線が濃厚だけど♠」

 

今まで黙っていたヒソカが、私の怪しい点を一気に指摘してくる。だが一見、援護してきているような論説だ。しかし実際は、「姿を見せていない奴がいる」という警告。だがそんなことはクロロもとうに理解している。ヒソカにしては珍しく稚拙な指摘だ。私達はすでに、「出来るか出来ないか」ではなく「やるかどうか」の話をしている。

 

「筋の通った言葉だ。参考にしよう。ところで、これはオレ対リリコの交渉事の話だ。お前らは関係ない。少し、二人にさせてくれるか?」

 

邪魔はするな。言外に団員全員へ向けられたクロロの一言。団員達もそれを理解し、自主的に外へ出て行く。もはや誰もヒソカには関心を向けない。彼らが気にしているのは、ただ結果だけだ。

 

ヒソカも、私がいる状況では動けない。自分で言ったように、私が底を見せたようでまだまだ未知数に見えるからだ。

 

暗い廃墟の中。団員達の足音が消え、私達は真正面から向き合う。暗闇に、蝋燭がぽつりと火を吹いてランプ代わりに灯った。クロロの前で、影が揺れる。団員達の気配が完全に離れるまで、そこには沈黙だけがあった。

 

 

 

 

私達以外、誰も居なくなったそこで私は告げる。

 

「思うに、私は暗黒大陸の“なにか”を経由して生まれたと思うんだよな。その目星も、もうついてる」

「ほう」

「人間の世界である六大陸。メビウス湖。その外側に広がる、あまりにも巨大な大陸、暗黒大陸。そこで人類が知った五大厄災」

 

紙を取り出し、さらさらと書き記す。人類が接触した、あるいは「持ち帰らされて」しまった五つの脅威を。

 

 

──人飼いの獣パプ

 

──植物兵器ブリオン

 

──双尾の蛇ヘルベル

 

──ガス生命体アイ

 

──不死の病ゾバエ病

 

 

どれも危険度はAを超えうるとされる、規格外の存在。例えばさっきいたヒソカなど、どれだけ甘く見積もっても危険度C。良く見てもDの上位程度だ。最低ランクEに対して、たかが一〜二段階上、という世界。

 

しかもC程度ならヒソカを見れば分かる通り、「ちゃんと準備をしていれば」いつでも対処できる。だから本来、国家レベルではあまり問題視すらされない。一方でBを超えると危険度は一気に跳ね上がり、国単位での対応も必要になってくる。ましてAクラスともなれば、人類がいつ終わってもおかしくないレベルだ。

 

「思うに、多分私は人間界に持ち込まれたブリオンかアイによって───」

 

クロロに、私の予測を話す。情報収集の折に、たまたま掴んでしまった類の話だが、まあ今さら隠すようなものでもない。ここではあくまで「予測」として話すが、私の中ではほぼ確信に近い。クロロも「なるほど」と納得の声をあげた。

 

あとは……クロロがどんな選択を取るか次第だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マフィアンコミュニティの地下競売を襲った舐め腐った野郎ども──幻影旅団。その足取りが途絶えた。マフィアではそんな情報が出回った。ただし、唯一の手がかりとして、これ見よがしにマフィアの捜索網の中に“捨てられる”ように置いてあった、幻影旅団の遺体だけがあった。

 

当然、それは“唯一の成果”として回収され、マフィアのメンツを保つ為にも、幻影旅団の身元調査は即座に行われた。だが結果は白。真っ白。経歴その他、戸籍情報などがまるで見当たらない。

 

これは流星街の住民の特徴だ。そしてマフィアは、流星街から人材提供を受けることもある、微妙な共犯関係にある。

 

近年、流星街から発されたメッセージも記憶に新しい。

 

『我々は何ものも拒まない だから我々から何も奪うな』

 

流星街はその宣言と同時に、流星街の住民の一人が冤罪で捕まった際、それが発覚した瞬間、狂気じみた報復を敢行した。逮捕と捜査に関わった警察関係者を含め、「関わった者31名」に対して、「流星街の住民31人」による自爆テロ。

 

まるっきり生贄。まるで宗教儀式でもするかのように、流星街の住民は自らの命を、一人の為に投げ打った。そこに理屈はない。「何も拒まない。だから何も奪うな」たったそれだけのために。

 

そういう事情があるので、マフィアはこの件から全面的に手を引いた。

 

そして、その数日後。富豪や有力者の違法な密書やデータなどが次々に露見し、それがきっかけで失脚したする事が相次いだ。

 

また各国もその事態に対して異常な速さで動いた。もちろんその裏には不審の声も多かったが、その全てが話題にもならず、情報の海へ沈んでいった。

 

 

 

 

 

電子内特攻渡航(マリンバードストライク)

 

・雷魔術を使う

 

制約 :

1. 人の電子情報を操るため、その人の電子上に刻まれた半生すべてを読解する必要がある

2. 能力使用中は無防備である必要があり、また作業を途中で止めてはならない

3. 使用後10日は念能力も魔術も使えない。ただし本能力だけは使用できる(使うたびにペナルティ日数が加算される)

 

誓約 :

制約1を破ったら、対象の電子記録をすべて脳内に強制的に叩き込まれる

(情報量によって最低30日は身動きできなくなる)

制約2を破ったら、念能力を失う

 




多分幻影旅団救済。現行のハンタ読み切れてないからあれだけど暴走機関車ヒソカ絶許旅団になる前に提案できたからということでひとつ。

次章グリードアイランド編が最終章。見え透いた展開かと思いますが、できるだけ各キャラの格を保てるように作っています。なお戦闘描写は……んにゃび
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