胎内回帰願望《パンチーファンシー》   作:来い!ゲンスルー!

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グリードアイランド編
第20話


電子内特攻渡航(マリンバードストライク)》で仕留めた有力者が、証明用も含めて3人。制約諸々もあったので、およそ一ヶ月半は拘束状態だった。非念能力者を相手にするにしては、あまりにも重い制約だ。

 

けど、相手が「国」とか「体制」になると思えば、ローリスク・ハイリターンだ。もっとも探知系能力者に嗅ぎつけられている可能性はあるから、決してノーリスクとは言えない。

 

拘束期間のあいだは、幻影旅団……もといクロロ達に、マジに全力で守ってもらった。

 

ウボォーの蘇生は、ぶっちゃけ魂さえ確保できていれば簡単だった。適当な謎肉を加工して肉体を組み上げて、そこに魂をぶち込めばいいだけだからだ。実際それで割とあっさり蘇った。まあ念能力のほとんどは失っていたが。大事なのはそこじゃない。

 

その後アニンやレオリオ達には、連絡の遅れを込めて謝罪。携帯を開くとたまに届くリナウジからの連絡も、拘束中の数少ない楽しみだった。どうやら奇遇なことに、リナウジはG.I.を始めたらしい。

 

これも戦闘系能力者の運命か。その道中でビスケという人物と仲良くなったそうで、ベタベタ触ってくるのがちょっと嫌だとぼやいていた。

 

残念なことに、アニンは使っていいと私が言った分の金を遠慮なくぶち込んでも、当たり前のようにバッテラにはかなわなかったらしい。バッテラの雇われになるのも嫌なようで、今は別のゲーム機本体を捜索中だそうだ。なんのこっちゃ。

 

私の能力のでたらめさについては、マチをはじめ元旅団組にそこそこ驚かれた。だが元々アウトロー側だった彼らは「そういうもんだ」と割とあっさり受け入れてくれた。

 

ヒソカはなにかぶつぶつ言っていた。だが旅団でもないやつをそこに置いておく意味もないので、仮称「流星街組」に尻を蹴られてその辺に捨てられた。最後にはヒソカも素直に「団長とやらせてくれ」と懇願してきたものの、それならと流星街組全員でヒソカをボコボコの憂き目に遭わせていた。

 

そういう道のりを経て、私はようやく社会復帰を果たしたわけだ。

 

「行くのか、リリコ?」

「ああ。世話になったよ、クロロ。また会おうな」

「そうだね。今度は埃っぽいココ(流星街)なんかじゃなくて、どこかもっといい場所で会おう。もしくは、オレがここをそういう場所にするよ。なんだか久しぶりだな、こういうワクワクする感じ」

 

すっかり「インテリヤクザ」から「好青年」寄りになったクロロが、笑顔でゴミ山の流星街を見渡す。ここには本当に、ありとあらゆるものが捨てられていた。何を捨てても許される街。「何者も拒まない」というのは誇張でもなんでもなさそうだ。

 

笑うクロロにつられて、私も自然と笑顔になる。私はそのまま、流れで流星街組に別れを告げた。今更だが、このネーミング、すごいマフィア組織っぽい。でもマフィアにも色々あるし、A級賞金首なんて不名誉よりはマシだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

適当な街中で、アニンと合流する。開口一番、すごい勢いで叱られた。事情があるのは察していたけど、一ヶ月近くほぼ音信不通は違うでしょう、と。反論の余地もないので、私は素直に反省姿勢を取るしかなかった。

 

私が黙って頭を下げていると、今度はG.I.の愚痴が始まった。まあわかる。念的な制約があるにせよ、本気でやるなら100本以上だって増産できただろうに。それをしていない。おかげでこちらは遊べない状態。拡張条件も参加者からオーラを徴収すればどうとでもなったはずだ。

 

「で、どうするんです? 私、バッテラに雇われるのは嫌なんですよ。契約でクリア報酬取られますし。なんとか考えてくださいよ」

「無茶言うなよー。一応“考え”はあるんだぞ? でもそれ使うと、また私が困るかもしれないからさ。今度も私が行動不能になっていいのか?」

「それは困ります。別の方法を考えましょう」

 

アニンが足を止めて、さっきまでの期待顔から一転、狼狽した表情になる。さすがに、また長期音信不通になるのはごめんだと思っているようだ。さっきの説教も、割と本気だったし。

 

そのまま、特に答えも出ないまま二人で街をぶらつく。ゴンとキルアは連絡のないあいだに、バッテラに雇われてG.I.へ入ったらしい。二人の目当てはクリア報酬そのものではなく、ジンが作ったというそのゲームに触れることの方だそうだ。

 

私もアニンも、クリア報酬が本命。ゴン達にとっては「あのジンが作った」という事実の方が重たいのだろう。なんで強くなるのか、なんで旅をするのか。ちゃんと聞いたことはないので、あくまで憶測だけど。

 

適当に散策していると、ビリヤード台の置いてあるバーが目に入った。特に用事もないので、そのまま入店する。場違いな組み合わせの私達が入ってきたせいで、店内の視線が一瞬こちらに集まった。

 

それらを無視して、空いているビリヤード台に手を置く。お互いほぼ初心者なので、ルールを覚えて慣れるまでに少々時間がかかった。

 

「思いついたんですけど、バッテラを脅しませんか? 彼、絶対使ってないゲーム機余らせてますよ。この間のオークションだけで7本ですからね?」

「それは普通に脅迫罪なー。誤魔化すにしてもタダじゃ済まないぞ」

「では、どうしましょう。私のエインヘリアルの中に、願いを叶えてくれるようなとんでもない人はいませんし。あ、いっそバッテラ本人にクリア報酬で何が欲しいのか聞いてみませんか? それ次第で考えましょう」

 

球をスポットに沈めて一得点を奪ったアニンが、ふてぶてしい結論を口にする。これで本人は超臆病なんだから、バランスがいいのか悪いのか。普通なら「できる」とわかっていても踏み込まない方へ、平然と踏み込む。だからこそ、臆病さで釣り合いが取れているのかもしれない。

 

とはいえ、私もアニンの案には賛成だった。G.I.の中身については、プレイヤー自体が少なくて情報が出回っていない。だがその辺は大量にプレイヤーを雇っているバッテラ本人が一番詳しいはずだ。そして「クリア報酬が何なのか」「なぜそれを欲しがっているのか」さえ分かれば、すり合わせ次第でバッテラと手を組み、ゲーム機本体を穏当に入手するルートも見える。

 

「行けますね、これ」

「そうだなー。うん」

 

ビリヤード台越しに視線が絡む。自然と顔が合い、お互いの考えが噛み合っているのを確認する。読んでいることまで含めて、ガッチリ一致した。私達は思わず手を取り合う。これでやり方次第では、バッテラから穏当にゲーム機を引っこ抜くことができる。なんだか私までG.I.が楽しみになってきた。

 

会計を済ませて店を出る。ビリヤードもなかなか楽しかったが、その次に待っているのは、念能力者が全力で遊べるレベルの超級ゲーム。私達はバッテラの現在地を確認し、プロハンターの立場を使って面会を申し込むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、君たちが面会希望者か」

 

大きなビルの一室。いかにも来客用といった調度品で固められた部屋で、私は念能力者とは別種の覇気を持つ老人バッテラと向かい合う。だが決して傲慢ではない。業界人としての責任と経験が、その覇気を形作っているのだと分かる。

 

「G.I.についての話だったな。プレイヤー志望者でもあると聞いている。天空闘技場のフロアマスターとその連れ。審査などしなくても強さは分かる。だがそれなら、先の審査会に参加すればすぐに合格できたはずだ」

 

バッテラが、わずかに疑いを込めた視線でこちらを見る。純粋な疑問も混じっている目だ。まあ、私達にも事情はある。主に、かなり素直な欲求方面で。説明してもいいが、その前に、確認しておきたいことがある。

 

「もちろんそうなんですけど、お互い信頼が大事だと思いませんか?」

「……つまり?」

「クリア報酬がどんなものか。クリア報酬を求める理由。それを教えていただけませんか? 理由次第では、500億がなくても私達は協力しますよ。約束します。なんならプレイのためにこちらからお金を払ってもいい」

 

「それはッ………。……わかった。今はプレイヤーが一人でも欲しい。時間がもう無いんだ。だがこれは、口外しないでくれ。頼む」

 

必死の懇願に、私達は頷く。一応安心したように息をついたバッテラが、静かに語り出した。クリア報酬で欲しいのは「大天使の息吹」と「魔女の若返り薬」。効果はそれぞれ、治癒と若返り。

 

欲しい理由は、昔交通事故に遭って意識不明のまま眠り続けている恋人を治療し、できる限り長く一緒にいたいから。

 

地位も金もいらない。ただ一緒に………涙ながらにバッテラはそう話した。

 

なかなか「都合がいい」話だ。もちろん、バッテラにとって恋人が都合がいいという意味ではない。私達にとって状況が非常に噛み合っている、という意味でだ。

 

「私達も、G.I.については知り合いからある程度聞いています。詳細は聞いていませんが、曰く“仮想現実”。そして“念能力者専用ゲーム”だと。あとはおおよそ予想がつきます」

「考えている通りだ。だからこそ私は無数のプレイヤーを雇っている。……が、その大半は私の見る目の無さもあって、途中でゲームを投げ出してしまった」

「それなら話は早い。私の能力を使いましょう。魔女の若返り薬を持っている人はいますか? 大天使の息吹は? その人達への支払い分、お金の用意をしてください」

「あ、ああ。魔女の若返り薬は、複数のプレイヤーが所持している。大天使の息吹は……おそらく、ある一組がその気になれば所持できる状態だろう。だが、それが一体なんだと───」

 

困惑と警戒が混じったまなざしで、バッテラが私を見る。その反応も無理はない。いろいろすっ飛ばした話だ。そこで、私は淡々と能力の説明をする。

 

奈落の底で待つ(メイドインアビス)

 

魂の内側に念空間を作り、そこを“場所”として扱う能力。これがあれば、恋人をG.I.の中へそのまま連れて行けるし、空間側での生命維持も可能だ。つまり、必要なのは「アイテム」だけ。そのアイテムも、バッテラが雇っているプレイヤーが相手なら、お金での交渉が十分通用する。

 

だから「お金の用意をしてくれ」と言うわけだ。

 

「な……るほど。理解した。そして、おそらくこれが最後の機会だろう。正直、信用するにはあまりにも関係構築が浅すぎる。だが私は、もう信じるしかない。病院から独立できる電源タンクをすぐに用意しよう。彼女の輸送も手配する。もちろん、ゲーム機は譲り渡す。約束を守ってくれるというなら、私の全財産も、クリア報酬の権利も渡そう」

 

どうやらバッテラは、賭けに出てくれたらしい。それだけ、恋人の状態が深刻だということだろう。

 

まあ、問題はない。私の念空間に恋人を入れてくれれば、魂の中という性質もあって、式さえ組めば肉体状態を保つくらいのことは難しくない。つまり、治療前に寿命以外で死ぬことはまずない。

 

バッテラには言わないが、これでお互い完全にウィンウィンの関係を築けたと言っていい。隣のアニンも、悲壮な覚悟のバッテラの前では喜色を見せないようにしているが、内心は静かにガッツポーズを決めている。人助けができて、しかもG.I.に正式参戦できるのだから、当然だろう。

 

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