胎内回帰願望《パンチーファンシー》   作:来い!ゲンスルー!

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ハンター試験編
第9話


オリンピック、天空闘技場、ハンター試験。直近で私が興味を持っている事柄だ。ただオリンピックは一時的とはいえカキンで特徴を公表された以上、積極的な参加は難しい。何らかの武術の使い手という、念能力者を表す曖昧な表現も良くなかった。

 

さすがに国の代表ともなると注目度が桁違い。まあそういう点では天空闘技場もあれではあるが、あそこは格闘家の聖地なのでそういう少女がいても問題ない。だから行きたい候補としてはオリンピックを除いた二つが有力だ。

 

そしてハンター試験についてはもう申し込んでいる。不安要素があるとすれば昨年ヒソカがハンター試験を受けたことか。なんでも試験官を半殺しにして不合格になったらしい。何か気に食わない事があったのだろう。あのヒソカの事だ。それなら再び寄りつく事はあるまい。

 

だが神出鬼没な殺人鬼ほど怖いものは無い。次は一瞬で殺せるようにショットの練習をしておこう。ヒソカレベルの相手でも眉間を打ち抜ける程度にはなっておかなければ。一抜けした旅団も怖いから尚更だ。いざという時はショットガンで戦おう。今ならウボォーギンも殺せるはずだ。あの頃のままならだが。

 

準備も整ったし、ハンター試験に行こう。試験会場はなんと電子魔術を使ったらパパっとわかってしまったので事前のふるい落としには参加しなくていい。

 

なんでもふるい落としは試験官の印象次第なところも場所によってはあるらしいため、ありがたいことだ。私は早速身支度を整え、悪くない気分で家の扉から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

新しくもなく古くもなく、中庸な印象を受ける門構え。隣には巨大で荘厳なビルがそびえ立ち、そのせいで見栄えではあまりにも霞んでいる姿。端的に言って偽の情報を掴まされたと思ってしまう。

 

「飯処ごはん」ハンター試験会場として指定されている場所。そこはあまりにも普遍的な定食屋だった。

 

後ろでは隣の立派な建築物のおかげか、そこそこ人の声を感じる。だがあまりにも寂しい場所だ。さっきそこにいた受験生達も愚痴を言っていた。子供と青年とオヤジの、随分アンバランスな三人だったが………。

 

まあいい。とりあえず店に入ろう。扉に手を掛けて、よくある鈴の音と共に店に入る。

 

「らっしゃい。ご注文は?」

 

暑そうな厨房から店のオヤジが声を掛けてきた。

 

店内は思ったより落ち着いた雰囲気だ。

 

「ステーキ定食」

 

前に入っていった狐目の男の人に倣い指を立てて言う。意味は特にない。

 

「焼き方は?」

「弱火でじっくり」

「あいよ」

 

店のオヤジが私の注文を聞くと、返事をしてそのまま業務に戻っていった。いや試験案内は?と思ったら傍に控えていた女の子が案内してくれるようだ。思ったよりも家を遅く出ちゃったから急がないと。

 

少し急ぎ足で店員について行く。幸いなことだが、目的の場所へはすぐ着いた。正確には目的の場所一歩手前か。店の奥の部屋まで案内された。そして扉を閉められる。同時に部屋が動き出すのがわかった。部屋式のエレベーターだろうか?

 

起動はゆっくりしたものだが、確かに下へと降りていく。僅かな揺れが現実的な努力を感じさせた。ちょっとした浮遊感を感じる。相当な層を跨いでいるからか。

 

誰もいない部屋で降りていくのを感じながら、申し訳程度に目の前に置かれているステーキを食べる。移動中は私もどうしようもないので、悠長に肉を口に含んでいると、体が浮き上がると共に部屋が揺れる感覚が収まった。

 

ここからどうなるのか。ちょっと真剣に辺りを見回すと、横にあった壁が自動ドアのごとく開くのが分かった。手に持っていた食器を机に置く。開けた道の先には、照明で薄く照らされたほの暗い地下空間があった。

 

部屋に用意されていた椅子を立つ。視界の先にあっただけの空間から、地下施設独特の空気感を感じられた。扉を跨いで周囲を見回すと、ごった煮になった人の集団と異様な雰囲気を纏ったいわゆる念能力者がいた。思ったより念能力者が多い。

 

「ようこそハンター試験へ!番号札をどうぞ」

 

視界の端で緑色の頭が見えた。声につられて下を見ると、やはり緑色の体色をした人がいる。ハンター協会で信頼厚いというビーンズさんだ。多分魔獣。喋る謎の人型生物はだいたい魔獣だ。ちょい適当だが。

 

私は447番と書かれた番号札を受け取って、受験生の塊の中へ入る。周囲には能力者特有の圧力と若干怖気付く空気が感じられた。見回していくと、私の前に入った三人組もいるのが見えた。

 

確かゴン、クラピカ、レオリオだったか。一人だけオヤジがいるから印象に残っている。しかしこんな念能力者が受験するなんて聞いてない。確か昨年は数人程度だったはず。まあそういう時期という事か。

 

なんとなく納得する。転生者も世界の一員なのだからそういう事もあるだろう。やはり時期なのかもしれない。心をそうやって落ち着かせている。これほどの数の能力者は心臓に悪い。

 

だがそうしていると、そのうち一人の能力者が声を掛けてきた。かなり強い気配を持つものだ。

 

「やあリリコ♥久しぶり♦」

 

無駄にファンシーな服装。

顔にトランプの模様のような化粧。

粘ついた声。

 

思わずある人物を連想して不躾な視線をその人物にぶつけると、どうやら不幸なことに声を掛けてきたのはそのある人物らしかった。

 

「今年は去年よりもさらに豊作だね♠でも残念♣みんないい子だから戦ってくれそうにない♠ああところでボクがなんで五体満足なのか気になっているだろう?」

「いや別に」

「そんな寂しい事言うなよ♠ある村に現人神として崇められていた子がいてね♣『業の炉心(コンデンサー)』という能力を持っていたんだけど……♦確か魔法少女とか言ってたかな?」

 

その能力に直してもらったんだ♠と、ある人物ことヒソカが言う。それはまた、なんとも運がいい事だ。右腕が無くなっていれば私がこうして遭遇した時に殺しやすくなっていたのに。

 

「そんな睨むなよ♦興奮しちゃうじゃないか♠」

「そういえば旅団はどうなったんだー?」

「ああそれ?結構恥ずかしかったけどリリコが送ったボクのアホ面で許して貰ったよ♠でもマチには避けられ気味かな♣少しとはいえ君の世話を見ていた訳だから♦母性って奴だね♥」

 

嬉しいんだかなんだか、どちらにせよヒソカが言うと洒落にならない。言ったあと笑みを深めているし、やはり変態だ。私は若干身を引いた。ヒソカが明らかに落ち込んだのが見えた。

 

同時に遠くで何かのベルが響く。結構ぎりぎりだったらしい。周りの受験生達はみなその音色に顔を向けた。見ると、受験生の塊の先頭の方で誰かがベルを持ちながら話している。試験官らしい。サトツ、と言うようだ。

 

サトツが言うにはここで試験の受付は締め切りするらしい。他にはいくつか受験生にはわかりきっている警告をし、それが終わると受験生の先導を買ってでて歩き出した。つまり試験開始という事だろう。

 

「いいのかい僕と一緒にいて?♦避けられ気味だけど♠」

「良くないけどもう知り合いなのはバレちまっただろ?だからいいも悪いもねーんだよもー」

「確かに♥ごめんね♣」

「謝るなら話しかけて来るなよなー」

 

無意味そのものなヒソカとの会話をする傍らで、40人程はいる念能力者を眺める。全員念能力だけでかなりの使い手だ。おそらくヒソカの話に出ていた転生者らしき魔法少女も周りの奴らと同等程度の使い手だったのだろう。

 

だからこそヒソカの傷を完全に癒せた。だがその後は?⋯⋯察するにあまりある。ヒソカの言い草からして、最終的にいい様に利用されて殺されたのだろう。名無。

 

「どうしたの突然祈って?♥」

「魔法少女の旅路を祈ってた」

「ああ……彼女すごい強かったよ♠純粋な念能力者としての実力は僕を上回ってたかな♦ただ能力のせいで相当雁字搦めだったからね♣惜しい子だったよ♠」

 

実質的な死の宣告に、ヒソカから視線を切り前を見る。変態の語りを聞く気にはならなかった。前を向くと、階段を昇る受験生達の姿があった。試験官の先導ペースもかなり上がっている。道の脇の方では、脱落した受験生が呻いていた。

 

そして階段を登っていく途中で聞こえた衝撃の情報として、あのオヤジだと思っていたレオリオはまだ十代らしい。何か変だ。肉体年齢は確かにオヤジの域だったハズ。おそらく相当の苦労があったのだろう。

 

光が見えてきた。階段を昇る試験官の動きはもはや人間では無い。なにかの魔獣なのではなかろうか?顔も人形みたいに生気がないし。あるいはそういう能力か?まあ私もできなくは無いんだけど。

 

地下空間に反響する足音が軽くなっていく。先にある光が終わりを示していた。私たちはそれでも相変わらず適当に会話を繰り広げる。主に旅団の近況とかだ。

 

団長は私が最近回復しているのを知っていて、それでも放置してくれているようだ。いつでも戻ってきてもいいらしい。いや私も幻影旅団仲良しサークルには戻りたいのだが、あまりに内実が物騒なので戻ろうにも戻れないのだ。なんでそんな物騒な集団なのかの理由も知らないし。

 

地上の光もだいぶ目の前になってきた。ちょっとペースを早める。結局合否は試験官次第なので、早く地下空間を出るに越したことはない。階段をいくらか飛ばしていって、弾道を描くように跳躍した。

 

かなり早めの組に属していたので、前には誰もいない。故に邪魔するものはなく、一息に何段かほど階段を飛ばす。地上の光が目に入った。足にさらに力を込める。そして再び跳躍し、光の中に身を突っ込ませた。

 

「すっげー!」

 

誰かの声が聞こえた。緑が視界一杯に広がる。声がした方を見ると、こちらをやけに輝いた目で見つめてくる少年と、引き気味の銀髪の子供がいた。

 

「今の見たキルア!?」

 

「あ、ああ。見たけど関わるのはやめようぜゴン。ってゴン!」

 

「ねえキミー!今の階段から10mくらい飛んだけどどうやったのー!?」

 

銀髪の少年とやり取りしていた少年が、会話の流れをぶった切ってこっちに寄ってくる。確かゴンとキルアだったか。興味深そうに私の元に向かってきて、「どうやったの?」と純真な目で見つめてくるゴンに、私は適当に答えた。

 

「んー?まあこうやってこうした感じだな」

「えーと、こうやってこうみたいな?」

「違う違う。まあわかりやすく言うと自分は絶対できるという自信を纏うような感じで飛ぶんだよ。見たところお前には向いてるんじゃないかー?わかんないけど」

「うーんやってみる!」

 

首を傾げたゴンは、わかったのかなんなのか、私から少し離れて準備運動をした。そして気合いの構えを取り、跳躍。気のせいでなければそれは、僅かながらオーラも伴っているように見えた。

 

「あ!できた!いつもより1mくらい長く飛べたよ!」

 

「いや飛べるんかい!」

 

「キルアもやってみなよ!」

 

「いや無理だろ!お前どうなってんだ?嘘だとは思えねーけど」

 

キルアに同意である。恐ろしい才能だ。私自身、念能力に関しては元々知っていながら親元を離れるまで習得の毛がなかったのに。これは将来、大物になる子かもしれない。じゃれ合い私を忘れた様子の少年たちを見て、私はそっと離れる。青春だな。

 

 

 

 

 

 

ゴンとキルアがじゃれ合うことしばらく、地上に到着した受験生も増えてきた。ヒソカも遊んでいるゴンを見ると僅かに目を細め、そこら辺に待機し始めた。逸る気持ちを抑えられていない。才能の原石に興奮しているようだ。そのまま警戒を解いてくれればショットで殺せるのだが。

 

背後で駆動音が響いた。地下道が閉じる音だ。階段の方から人の声が聞こえる。それが閉じるシャッター越しに見えた。体力の限界を超えて根性でそこまでたどり着いたのだろう。だがそこで力尽きた。それを表すように、地下道からの唯一の出口である扉が、今音を立てて閉じられた。

 

地下道を超えて緑の絨毯を踏んだ受験生達が、後続が途絶えた事で視線を前に向ける。試験官はその反応を見て、端的に指を立てて今私達がいるこの場所について説明してくれた。見下ろすと見えてくる霧香る森。ここは詐欺師の塒という通称の場所らしい。

 

二次試験会場へは、この眼下にある森を通って行くようだ。森からは、不気味な怪物の声が聞こえる。そしてそれは間違いではなく、森の中では日夜ヘンテコな怪物が騙し合いをしているとか何とか。

 

「うそだ!ソイツはうそをついている!」

 

試験官の説明も「注意しないと死にますよ」との一言で締められ、一次試験が再開しようとしていた時、どこからかそんな声が聞こえてきた。試験官は嘘をついているらしい。声が聞こえた方を見ると、傷だらけの男が地下道の扉横に寄りかかっていた。

 

男が言うには、試験官は偽物らしかった。果たして試験の審査委員会の目を掻い潜ってどうやって試験会場に来られるのだろうか?男はその答えとして、試験官のサトツに良く似た人面猿という生物を受験生の前に突き出した。なんでも人に化けるらしい。

 

だからと言って答えになっているとは思えないが。ヒソカもそう思ったのか、はたまた面倒くさくなったのか、ここでオーラを立ち上らせて動いた。静かに殺意を込めて、念を込めたトランプを二方向に発射。

 

同時に私もその隙を見て、ヒソカの背後に忍び寄った。気配を消して、オーラすら纏わない魔術的攻撃を放つ。

 

「っ!?危ないねぇ♦」

 

避けられた。攻撃を向けられた試験官と偽試験官の方は………試験官のサトツだけがトランプを受けとめられたようだ。さすが試験官と言うべきかある程度余裕もあるようで、混沌とした状況にため息を吐いている。申し訳ない。

 

「はぁ、44番、447番。それぞれの意図は理解しますが、以降できるだけ混乱を招く行為はしないようにしてください」

 

落ち着きはらった態度で、試験官に窘められる。つい反射的に動いてしまった。反省するべきだろう。他に迷惑を掛けるのはあまり良くは無い。遵法意識はなくとも周りに迷惑ばかり掛けては生きていけないのもまた事実なのだ。旅団ほど突き抜けているならともかく。

 

ひとまず落ち着いた私達の様子を見ながら、試験官が今度こそ二次試験会場へ案内することを宣言して歩き始める。周りは受験生達の足音でにわかに騒がしくなり始めた。そうして、私達は眼下に広がる霧の森へと入っていった。

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