ラ・フォンティーヌ
寓話「狼と子羊」より
オスマンは2名の部下と副官を伴って首相官邸に設置された
しばらく歩くと幾人かの兵が部下達に怒号を飛ばしていた。
「ここの土嚢はもう少し高く積み上げろ!」
「土嚢が足りん!お前とお前!取りに行ってこい」
「机?無いよりマシだ,とっとと持ってこい!」
敵が迫りつつある為急ピッチで防御陣地の仕上げを行っていた
モグラ共が軍内に潜んでいる可能性があった為、バリケードの構築の期間もここ2日程しか無かったが彼等は実に良く働いてくれていた。
そんな彼等を尻目に進んでいくと、立派な防御陣地が構築された官邸中央広場に到着し、そこに集まっていた士官達を発見する。
「隊長,局長との打ち合わせはよろしいのですか?」
「ああ,それから機関銃も使って良いそうだ」
「なんと」
出迎えた士官は少し驚いた。
集合した部下に対し穏やかな顔で言った。
「戦友諸君,仕事の時間だ」
士官の一人が軽口を叩く。
「豚共のリサイクルは必要ですか?」
オスマンは拳銃の撃鉄を起こすと言った。
「アブドゥッラー中尉,今回我々は餌を寄越せと喚く豚に理性を叩き込むのが任務だぞ、
公費で購入された弾丸は適切に使用しないといけないのだ」
軽い笑みを浮かべたアブドゥッラー中尉は頭を指で叩いた。
「了解しました。
要するに豚の頭蓋に弾を撃ち込んで知性という概念を叩き込むって事ですね。」
別の下士官がわざとらしく顔を顰めた。
「公費で知性を処方するならば豚に叩き込む前に,日夜『
朗らかな笑い声が響いた。
「いやぁ、全く首相閣下がお留守で良かった」
最古参の准尉が意外そうな顔をした。
「意外です。少佐殿があの与党を支持していらっしゃるとは」
オスマンが苦笑いする。
「いやいや,公僕といえど忠義を誓う相手くらい選ぶさ,祖国の官邸を守る方が
再び笑いが巻き起こり,皆が一頻り笑い終える。
「各員!作戦を開始せよ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
暴徒が威嚇射撃を行いながら叫ぶ。
売国奴共は出て行け!
外国の走狗ども!恥を知れ!
外国に股を開く娼婦共を吊るしてやれ!
「 アブドゥッラー中尉、裏門の憲兵隊を任せる、二 三匹は捕まえてくれ」
「ではお喋りオウムをお土産にいたしましょう」
特別行動隊は3手に分かれた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ドカン、
の次は、
パン,パン,ドドドドドッ。
投げられた手榴弾は盛大に起爆し、官邸内へと侵入し中央広場へと進撃を続けていた暴徒と持っていた銃器と暴徒の威勢の良さとを吹き飛ばした。
土嚢のバリケードの裏に潜み爆風をやり過ごした憲兵たちが射撃を開始する。
暴徒への射撃には小銃だけでなく、軽機関銃も参加していた。
1899年製軽機関銃は発射速度の遅い機関銃だったが、強力な8mmルベル弾の速射は憲兵隊の暴徒制圧を支援には充分すぎる威力を有している。
小銃弾が敵を撃ち倒し,機関銃の弾丸が突撃する者,怯む者,逃げる者,銃を構える者一切合切全てを薙ぎ払う。
クソッ・・・軍隊が出て来るなんて話が違うぞ!
この売女め!
よそ者に腰でも、振ってろ!
くたばれ、売国奴め!
小銃の射撃音と機関銃による猛烈な制圧射撃音と罵声が響く中,オスマンは独りごちた。
「全く,ヴァザンティン語がお上手な猿は嫌いだ」
なにが平和だ!
恥を知れ!
当てずっぽうも同然な暴徒の射撃は土嚢にふせがれる。
しかしその言葉はオスマンの憤りを憤怒へと昇華するには十分であった。
「貴様らは何もしないで我らの血で贖った平和が無価値だと?」
銃撃でズタボロになった国旗が目に付く。
挙句愛国を謳う口をでもって祖国の旗を撃つ?
亡き戦友たちとの記憶,戦友たちの最後の記憶,粗末な墓が脳裏を過ぎる。
「ふむ,成る程成る程……」
手榴弾を手に掴む。
「少佐殿?」
声をかけた先任下士官に目配せする。
先任下士官は一息吐いた後に建物の影に隠れていた暴徒目掛けて小銃射撃をした。
国家に殉じた愛国者の血でもって贖った平和に唾を吐き,挙げ句の果てに帝国の国旗に銃撃?
豚共 国旗を尊べ!
それは我が帝国の旗だ!
「戦争がしたい?
よろしい,望みを叶えてやる!」
屠殺してやる,この世に一匹も残さず!!
ピンを引き抜いた手榴弾を投擲、暴徒を爆殺し,吹き飛ばす。
土嚢の裏から顔を出した兵士が混乱する暴徒を射殺する。
「掃射」
機関銃が再び唸り声を響かせ、生き残りが真っ赤な花を咲かせてバタバタと死んだ。
屈辱と憎悪に満ちた眼でオスマンは吐き捨てた。
「どうした豚ども!,これが戦争だ!!,,愛国者の屍で閉じた地獄だ!」
オスマンが部下達に手で射撃を止めるよう片手をあげると,官邸前には静寂が訪れた。
土埃と硝煙が晴れれば、そこには瀕死の暴徒ががチラホラといる程度であった。
地面を這いずる生き残りの前に歩み出る。
「うっ,,うぁ,腕,,,,痛い,,助け,,,,,,,,」
曇りない晴れ渡った青空を見つめる。
「,,,,聞こえんな」
徐に拳銃を向け生き残りの体に銃弾を叩き込んでいく。
「貴様ら糞共の望み通り開いてやったのだ!
血溜まりに浸れる感謝の声はどうした?」
獣の如き凶相を浮かべる。
「平和のために、喜んで死ね!!」
拳銃の弾が尽きガチガチと虚しい音が響いた。
ーーーーーーーー
「抵抗を排除,多少の生き残りが転がっている程度かと」
准尉が周囲の確認を終え、制圧の完了をオスマンに簡潔に伝える。
そこでオスマンはそういえば、と目的を思い出す。
「ああ,いやそうだ何匹か捕まえねばとのことだったか」
今思い出したかのようの首を掻くと,民兵共の腹を突いて回り、地面に転がっている男の胸元に軽く銃剣を突き立てた。
「手を上げて頂けると捕虜を取り易くて簡単なのですが?」
ーーーーーーーーーー
その頃東通用門では熾烈と言うにはまばらで、散発的と言うには絡み合った銃声が響いている。
フセイン・ヒュスニュ・エフェンディ大尉はそれを聞きながら、狂乱しながらこちらに銃撃をしてくる暴徒を土嚢のバリケードの裏から見回した。
隣の下士官が吐き捨てた。
「使い方がなってない、酷いもんですな」
「違いない、狂乱する新兵未満
おまけにガキまでいる。
ここまで酷いと泣けてくる」
ボルトアクションライフルのコッキングレバーを引きながら愚痴を言った。
「あぁガキですか……ばれると上が煩いんですよね。
爆破できれば一発で解決するんですが」
ショットガンのフォアエンドを引き弾を装填する。
「なに、俺たち二人が黙っていれば問題は?」
「ないですな」
そう言うとフセインは立ち上がりライフルを構え狙いを定め、引き金を引く
「全く平和になって豊かになるのは良いが、アホが豊作なのは困る
せめてガキの面倒ぐらいちゃんと見てもらわねばな」
叫びながら突っ込んで来る暴徒がライフル弾を浴びてもんどり打って倒れた。
「全くです。
的が小さいくせに無駄に機敏で狙いにくい」
拳銃を片手に至近距離まで来た少年の首から上が吹き飛ぶ。
眼の前で起こった光景に暴徒達が動揺するが,憲兵達はそれらに狙いを定め次々に射殺していく。
「面倒極まりない。
吹き飛ばせばよかろうものを」
「許可さえあれば首相官邸ごと発破するんですがねぇ」
「同感だ、榴弾をぶち込んでやりたい」
二人は忌々しさを言葉に滲ませながら職務を遂行する。
官邸での鎮圧戦は佳境を迎えていた。
ーーーーーーーーーー
ヴァザンティン帝国第一士官学校
帝国国内に数ある士官学校の中でも多くの高級軍人を育成・輩出してきた名門士官学校にて首席士官候補生は校長室へ呼び出され、渋顔の校長から下された命令に困惑の表情を隠せずにいた。
「候補生。配属先に変更があった。首都第2連隊へは赴かなくてよろしい」
「はっ!?」
校長は書類に目線を傾け、困惑顔の候補生へ向けて同情にも似た声質で淡々と続ける。
「首席には配属先を選べる慣例があるが、慣例は慣例に過ぎん。……軍とは上から命令されれば否応なしに従うしかないのだ。軍の理不尽さを一つ学べたな候補生」
事態を飲み込めていないであろう困惑顔の首席士官候補生に校長は慰めの言葉をかけた。
「あぁ、安心しろ、栄転だ。
形式的にはともかく実質的・・・にはな」
何とも言えぬ表情を浮かべた候補生に学長は諭すように伝える。
まぁこれからの彼の苦労を思えばとても喜べたものではないだろうが……
「明朝9時までに第二憲兵局に出頭するように。
詳細は辞令を読め、以上だ」
「はっ!」
書類の入った封筒を差し出され、候補生はそれを受け取り僅かに逡巡しながらも敬礼し、退出する。
それを見送りながらアルビオン連合王国製の紙煙草を懐から取り出し火を着ける。
「特務の狂人共め、遂に青田刈りか。参謀本部も参謀本部だ。
よりにもよって首席を辞令一枚で一本抜きとは!」
一服して机の引き出しから取り出した大衆向けの新聞に眼を向ける。
そこにはいかにも庶民向けの形容し難い不快な文言が羅列されていた。
『退役軍人手当て減額か!?』
『弱腰外交の露見!不服溢れる調印式!』
『条約反対派首相官邸襲撃!国内情勢不安定加速!?』
『首相官邸で銃撃戦!軍が対応!?』
「……特務の憲兵どもも必要悪か。
だが行動主義者の排外主義もいかがわしいが、協調主義者の妥協も同じ穴の狢だ」
国内の混乱、国民の不満、軍人の質の著しい低下。
懸案事項はヴァザンティン帝国建国以来、類を見ない程山積している。
ここ最近の参謀本部の動向も怪しい事この上ない。
「……軍はどうなるのだ?」
校長は深々と煙を吐いた。
戦闘シーン書くの難しすぎる…。
12月14日 文章一部改変しました。