導師の孫〜魔巧師エイアスの冒険〜   作:rOOd

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厄介ごとを招くのは慣れています 後編

        【残暑 夜中】

 

       [日本 木手邸]

 

「あ、あのよ、みよさん」

「なに、ブタゴリラくん」

「水虫を刺すようでわる「『水を刺す』っでしょ

 いくらなんでも汚いよ!!」」

 

 トンガリくんの鋭いツッコミを入れられ、私は

思わず笑った。

 

「うるせー、悪かったな!」

「もう、このやりとりは死ぬまで続きそうだよ」

「うるせーって言ってんだろ。それよりみよさん

 地下施設って言ってたが、そんなもん、どうや

 って造ったんだよ?」

 

 トンガリくんも、ブタゴリラくんの疑問に頷く

 

「そうだよ。あんな住宅地のド真ん中で大規模な

 地下施設を造るなんて無理だよ」

 

 私は小さく笑って首を横に振った。

 

「いいえ。工事なんてしていないわ」

「「えっ?」」

「ほら、奇天烈大百科には、『潜地球』っ ていう

 地中を自由に移動できる発明があるでしょ?」

 

 二人は同時に目を丸くした。

 

「あっ!」

「そうか!」

「地下研究施設は最初から別の場所で造られたの

 よ」

 

 おそらく、地下施設は宇宙規格の強度を備えた

構造物として、複数の区画に分けて建造された。

完成した各施設に『潜地球』の仕組みを組み込み

地中を移動させながら、木手家の真下まで運んで

きて互いを接続して完成した。

 トンガリくんは感心したように息をつく。

 

「なるほど・・・・・・。それなら大規模な工事をしな

 くても、誰にも気づかれず地下施設を設置でき

 るのね」

 

 ブタゴリラくんも腕を組みながら何度も頷いた

 

「さすがキテレツだぜ・・・・・・。そんなやり方なら

 秘密基地を造っても誰にもバレねぇわけだ」

 

 みんなが感心していると、ブタゴリラくんが新

たな疑問を口にした。

 

「みよさん、それなら出入り口は?」

「あ、そうだよ。出入り口が未だに見つかってい

 ない!」

「・・・・・・キテレツくんが残したあの手紙が地下施

 設の手掛かり・・・・・・たぶん、他にも手掛かりが

 隠させていると」

 

 私たちが物議を交わしていた・・・・・・

――その時だった。

 

 突然、私のスマホの着信音が・・・・・・。

 

「えっ!?この時間に!?」

 

 画面に表示されていたのは、春奈さんだった。

 嫌な予感が胸をよぎり、私は震える指で通話ボ

タンを押した。  

 

「もしもし!?」

『お、お義母さん!? こんな遅い時間に申し訳

 ありません!』

「は、春奈さん・・・・・・どうしたの?」

『そ、それが英光が・・・・・・英光が意識不明で病院

 に運ばれたんです!』

 

  その言葉を聞いた瞬間、私の全身から血の気

が引いた。

 手からスマホが滑り落ちる。

 しかし、それを近 くにいたトンガリが、とっさ

に受け止めた。

 

「は、春奈さん!?」

「尖さん!?」 

「どこの病院ですか!?」

「えっ!?」

「英光は、どこの病院に搬送されたんですか!?」

 

 私たちは病院の場所を聞くと、放心したままの

みよさんの腕を引き、慌てて呼んだタクシーへ乗

り込んだ。

「運転手さん!この病院までお願いします!」

「お願いします! 一秒でも早く!」

 

 私たちは英光の無事を祈りながら、病院へと向

かった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜     

       【陽春 早朝】

  [アールスハイド王国 国境の森]

 

 

「・・・・・・い、痛い」

 

 僕はバァちゃん、そして昨日助けた子と一緒に

ジィちゃんの家へ向かって歩いていた。 

 

「自業自得だよ」

 

 ボコボコに腫れ上がった僕の顔を見て、バァち

ゃんは冷ややかな視線を向けた。

 

「ぼ、僕はバァちゃんの言う通りにしただけなの

 に・・・・・・」

「何か文句でもあるのかい?」

「・・・・・・・・・・・・あ、ありません」

 

 そんなやり取りをしていると、一人の子がおず

おずと、こちらを見つめていた。

 昨日、僕が助けた男の子――いや、本当は男装

していた少女。

 僕が名前を聞いた際、彼女はステラと名乗った

 僕はモジモジしているステラに声をかけた。

 

「・・・・・・君さ、男装しているなら、最初にそう言

 ってよ」

 

 僕は頬を膨らませ、不満そうに口を尖らせる。

 

「君のせいで、僕はバァちゃんから制裁を受けた

 んだから」

 

 ステラは申し訳なさそうに目を伏せた。

 

「えっ・・・・・・あっ・・・・・・ご、ごめんなさい・・・・・・

 あの、私・・・・・・・・・最初は、一人でお風呂に入っ

 ていたんです」

 

 それは、バァちゃんの指示だった。

 逃走中で何日も入浴できていなかった彼女を気

の毒に思い、バァちゃんが「今日はお風呂に入っ

て、さっさと寝なさい」と勧めたのだ。

 ステラは、その言葉に従ったにすぎない。

 

「でも、あなたが急に入ってきたから・・・・・・」

 

 その後、まだ追っ手が近くにいるかもしれない

と考えたバァちゃんは、護衛のために「お前も一

緒に入れ」と僕に命じた。

 僕は渋々その命令に従ったなのに。

 

「だから、とっさに男の子のふりを続けるしかな

 くて・・・・・・」

 

 プシューッ!

 

 ステラは顔を真っ赤に染め、恥ずかしそうにう

つむいた。

 

「だったら、その前に『入ってくるな』と言って

 ほしかったよ」

 

「・・・・・・そんな余裕、ありませんでした」

 

 その姿を見て、僕は大きくため息をついた。

 

「まあ、君をこれ以上責めるつもりはないよ。

 でも、あの後バァちゃんに拳骨を何発も落とさ

 れて、顔がこんなにボコボコになった僕の身に

 もなってほしいな」

「ほ、本当にごめんなさい・・・・・・」

 

 ステラは何度も頭を下げ、心から謝罪した。

 

「もう、そのくらいにしておやり」

 

 バァちゃんはステラをそっと庇うように前へ出

た。

 

「この子はちゃんと反省している。これ以上責め

 るのはよしな、男らしくないよ」

「うっ!? な、なんだよ。そもそもバァちゃん

 の命令が原因じゃないか!」

 

 僕は思わず声を上げた。

 

「だいたい、僕はその命令どおりに動いただけ。

 なんで、僕だけが拳骨を食らうんだよ!」

 

 怒りの表情のバァちゃんは腕を組み、呆れたよ

うに怒鳴った。

 

「うるさいよ!嫁入り前の娘の身体を見るのは万

 死に値するよ!」

「ぐぬぬ・・・・・・」

 

 何も言い返せず、僕は悔しそうに唇を噛んだ。

 

「・・・・・・ご、ごめんなさい」

 

 ステラは再び小さく頭を下げ、その様子を見た

僕は、もう責める気も失せて深いため息をついた

 

 そうこうしているうちに、僕たちはジィちゃん

の家へとたどり着いた。

 

「ただいま」

 

 家の扉を開けて、ジィちゃんが姿を現した。

 

「おお、エイアスお帰り――って、おいっ!」

 

 僕の顔を見た瞬間、ジィちゃんは目を見開いて

固まった。

 

「エイアス!? なんじゃ、その腫れ上がったの

 顔は!?」 

 

 ジィちゃんは血相を変えて駆け寄ってきた。 

 

「・・・・・・メリダ」

「ああ、私がやったよ」

 

 バァちゃんは悪びれる様子もなく、あっさり頷

いた。

 

「お、お前なぁ!いくら何でもやりすぎじゃろ! 

 これは幼児虐待じゃ!」

「躾だよ」

 

 バァちゃんは即座に言い返す。  

 

「どこが躾じゃ! 顔が原形を留めてないじゃな

 いか!」

「安心おし。ちゃんと手加減はしてある」

「どこが手加減だ!」

 

 ジィちゃんは頭を抱え、大きくため息をついた

 

「まったく・・・・・・エイアス、お前も災難じゃな」

「本当にそう思うよ・・・・・・」

 

僕は遠い目をしながら、小さく頷いた。

 

「ところで、ジィちゃん。シンは?」

「狩りに出かけたよ」

 

 その答えを聞いた途端、バァちゃんが顔色を変

えた。

「なっ!? 一人で森の中に!?」

 

 一方、ジィちゃんは呑気に笑う。 

 

「おおっ! なら今夜はご馳走だね」

「うむ、そうじゃな」

 

 バァちゃんは額に手を当て、大きくため息をつ

いた。

 

「アンタら、夕飯より先にシンの心配をしな!」

 

 僕たちは顔を見合わせ、笑いしながらバァちゃ

んを宥める。

 

「バァちゃん、シンなら大丈夫だよ。ジィちゃん

 直伝の魔法を使えるんだから」

「うむ。魔法も腕っぷしも、その辺のハンターよ

 り上じゃ。心配はいらん」

 

 バァちゃんは呆れたように肩を落とした。

 

「・・・・・・アンタら、本当にお気楽なんだから」

 

ーto be continuedー

 

 

 

 




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