転生しました
【残暑 昼過ぎ】
[日本 木手邸]
「・・・・・・・・・・・・・・・」
私は居間で、英光が見つけた夫の手紙をじっと
見つめながらため息をついた。
「・・・・・・・・・・・・キテレツくんらしいわ」
手紙の中は白紙だった。
けれど、その白紙に込められた本当の意図がわ
かるのは、幼馴染の私たちだけ。
自分の秘密をこんな形で残すなんて・・・・・・。
敬愛する奇天烈斎様の真似をしなくてもいいの に・・・・・・。
でも、木手家に嫁いだ私は、彼が託した意味の
重さを十分に理解できた。
『木手の秘密は世に明かしてはならない』
そう、もし秘密が世間に知られれば、必ず人の
世に災いが降りかかる。
「・・・・・・トラブルは、いつもブタゴリラくんか
コロちゃんのどちらかが原因だったけど」
でも、今回のトラブルは世界を巻き込むかもし
れない。
相変わらずね、コロちゃん。
それとねえ、キテレツくん。
来世で再会したら、絶対におしおきよ。
私はそう思いながらスマホを手に取り、ブタゴ
リラくんとトンガリくんに電話をかけた。
「キテレツくん、私たちを置いてけぼりにしたら
どうなるかわかってるわよね〜」
私は不敵な笑みを浮かべながら、コール音に耳
を傾けた。
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【白秋 日の出】
[アールスハイド王国 とある港町]
「こうやって海辺の朝日を浴びるのもオツだね」
たまたま朝早く目を覚ました私は、仕事で滞在
している港町の海辺を散歩していた。
「・・・・・・潮の匂い。普段とは違う朝日の光。
なんだか贅沢に感じるよ」
しばらくのんびり歩いていると、かすかな声が
聞こえてきた。
・・・・・・オギャー・・・・・・。
「・・・・・・・・・? 赤ん坊の泣き声?」
・・・・・・・・・オギャー・・・・・・。
浜辺の方から聞こえてくるような気がする。
気になって泣き声のする方向へ歩いていくと、
たどり着いたのは砂浜だった。
しかし、赤ん坊どころか人影すら見当たらない
「気のせいかい? いや、やっぱり聞こえる!」
まさかと思い、しゃがみ込んで砂地に耳を当て
る。
音に集中すると――
・・・・・・オギャー・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・オギャー・・・・・・・・・。
「なんで砂の中に赤ん坊がいるんだい!?」
私は急いで護身用の杖を異空間収納ボックスか
ら取り出し、詠唱を唱えた。
「蒼き奔流よ! 地を吹き飛ばせ!」
近くの海水を操り、砂を丁寧に押しのけながら
掘り進めていく。
すると、子供が入るほどの大きさの、豪華な装
飾が施された宝箱が現れた。
バギッ!!
「ふんっ!」
水の刃で南京錠を切断し、宝箱の蓋を開ける。
そこには――ぐったりとした赤ん坊が入ってい
た。
「しっかりしな。すぐに良くなるよ!」
私は慌てて赤ん坊を抱き上げ、治癒魔法を施し
ながら声をかけ続けた。
青ざめていた顔に少しずつ生気が戻っていく。
そして――
オギャーッ!!
オギャーッ!!
オギャーッ!!
赤ん坊は大きな声で泣き始めた。
「ふぅ・・・・・・よかった」
その姿を見てようやく安堵した私は、力が抜け
たようにその場へ座り込んだ。
だが、冷静さを取り戻すにつれ、今度は怒りが
込み上げてくる。
「どこの誰がやったか知らないけど、なんてひど
いことを・・・・・・!
久々に血が頭にのぼってきたよ!!」
さっきまで泣いていた赤ん坊は、興奮した私の
体温が心地良かったのか、いつの間にかすやすや
と眠っていた。
「よく見ると、この辺りの住人の特徴がないね・・・
・・・・・・」
この港町の住人は海辺で暮らしているため、褐
色の肌を持つ者が多い。
しかし、この赤ん坊は銀髪に雪のように白い肌
をしていた。
その違和感について考えながら、朝日に照らさ
れる寝顔を見つめる。
そして、私は苦笑した。
「・・・・・・この子を育てろってことなのかい?」
とりあえず宿へ戻ろう。
そう思い立ち上がった私は、赤ん坊を抱いて歩
き出した。
「・・・・・・天命だね」
そして数週間後。
別れた元夫から、家の近くの山道で魔物に襲わ
れ壊滅した旅の一団から赤ん坊を助けたという連
絡を受けた私は、思わずため息をついた。
「私たちは昔から似た者夫婦だとからかわれてい
たけど・・・・・・・・・
まさか、ここまで状況が一致するとはね・・・」
この時はまだ知らなかった。
私が救った子――エイアス=ボーウェン。
そして元夫マーリンが拾った子――
シン=ウォルフォード。
二人の少年が、やがて世界の危機へ立ち向かう
存在になることを。
私も、マーリンも。
誰一人として想像していなかった。
ーto be continuedー
次回 エイアスの日常