【残暑 昼過ぎ】
[日本 木手邸]
遠方から来てもらった尖さんと熊田さんを玄関
にあいさつを交わす。
「尖さん、そして熊田さん本日は遠方よりご足労
いただき、ありがとうございます」
「みよさん、肩ぐるまのあいさつは抜き「“堅苦し
いあいさつは抜き”でしょ!」」
緊張感を緩ませる熊田さんの言い間違い・・・・・・
そこに尖さんのツッコミ・・・・・・。
子どもの頃から変わらない日常茶飯事・・・・・・
「うるせー!昔から細かいんだよ、トンガリ!」
「全然細くないよ、ブタゴリラ!」
口ゲンカを始めた元悪童の二人を思わずクスッ
と笑いながら私は仲裁した。
「まあまあ、二人ともケンカはそれくらいで」
私は二人を応接間に案内してソファに座り、今
回のお声掛けの理由を話し始める。
「実は夫の手紙が見つかったの・・・・・・」
「木手の手紙?」
「もしかして遺書?」
ゲンコツ!?
「い、いた〜〜!?何するの、ブタゴリラ!」
「ストレートに言うな!」
「普通はそう思うでしょ!」
「なら、もう少しオンプラードを突って「オブラ
ートに包むでしょ!何言ってるか全然わからな
いよ!!」」
このままでは埒が明かないと思った私はコボン
と咳払いをして仕切り直し、説明を続けた。
「この手紙は英光が見つけたの」
「エイコウが?」
「ええ、主人が大切にしていたアルバムに挟んで
あったの」
「「アルバム?」」
私はそう言うと二人は首を傾げたのでそのアル
バムについて説明を求めてきた。
それは子どもの頃の写真がぎっしりと貼り付け
たアルバムで生前孫たちと一緒に見ていた。
発見された手紙は家の前で撮った家族写真のペ
ージに挟んでいたと。
それは聴いた熊田さんは私に質問した。
「木手の家ってガキの頃の?」
「ええ」
「・・・・・・あそこってまだ残っていたよな」
「ええっ!?そうなの?」
「なんだ、トンガリは知らなかったのか?」
「知らなかったよ」
「オレも詳しく知らねぇが、キテレツの葬儀の時
コンチが木手の実家にはお化けが出るとか言っ
ていたな」
そう、キテレツくんの実家はまだ残っている。
しかも、夜な夜な不気味なうめき声が聞こえた
や家の位置が微妙にズレていたなど怪談じみたウ
ワサが後を絶たないという。
そのため、近所では幽霊屋敷と言われていると
私が説明したら、尖さんが全身をカタカタ震わせ
て聞き返した。
「そ、そのウワサってホント?」
「それがわからないのよ。いつの間にか子どもた
ちの間で広まったらしいの」
「だろうな、コンチも小学生の孫から聞いただけ
とか言ってたし」
「ええ、真相は誰にもわからないの」
「とりあえず、その一件は後で調べるとしてよ。
みよさん、キテレツ手紙には何て書いてあった
んだよ?」
「それが・・・・・・」
私は封筒から一枚の三つ折りされた紙を出して
二人の前に置いた。
「「白紙?」」
二人の言葉に私が頷くと熊田さんと尖さんは主
人の意図に気づいたようだった。
「・・・・・・みよさん」
「これって・・・・・・」
「ええ、アレを使えば・・・・・・おそらく」
「あいつ、先祖の宝探しをマネたのか?」
「けど、これはキテレツの秘密ということ?」
トンガリの言葉に頷くみよさんは俺たちの顔を
見てこう頼んできた。
「トンガリくん、ブタゴリラくん」
「「・・・・・・・・・」」
「私たちで探し出しましょう!キテレツくんの終
生最後の発明品を!」
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【陽春 夕暮れ】
[アールスハイド王国 国境付近の村]
「う〜ん、シンにもう少しで会えるな〜」
「そうだね」
エルスを旅立って6日目。
長旅でずっと馬車に乗っていたから疲れた〜。
カチカチに固まった肩をほぐすため、両腕を上
げて背伸びをしながら今日の目的地を見る。
「しかし、この村も久しぶりだね」
「まあね、今日はさっさと宿で休むかい」
やっとジィちゃんたちが住んでいる森に到着し
たが、ジィちゃん家は人里離れた森の奥だ。
だから、今日は森の近くにある村の宿で一泊し
て明日の早朝に出発する。
村に入るとハンターが多いのに気づいた僕は疑
問を持ち、バァちゃんに尋ねた。
「ねぇ、なんかハンターが多いような気がするん
だけど。何かあったの?」
「最近、この辺も物騒なんだよ」
「物騒?」
「最近、村周辺の魔物の遭遇が多いんだよ」
バァちゃんの話だと去年から帝国側の魔物が増
え、こっちにも迷い込んでいるらしい。
そのため、王国軍がハンター協会に国境に近い
村々の警備を強化する政令を通達し、各地のハン
ターが長期滞在していると。
「でも、それって帝国の方で魔物討伐とかすれば
いいんじゃない?」
「あの帝国が慈善事業をすると思うかい?」
「・・・・・・無いな」
僕は帝国のことをよく知らないが、いい噂を聞
いたことがない。
ブルースフィア帝国は簡単に言えば独裁国家。
おまけに現在の皇帝が帝国史上最悪だと揶揄さ
れるほどの卑劣漢。
常にアールスハイドを滅ぼそうと企でいるので
政府の頭痛の種である。
さらにこんな話もあちこちで耳に入るのでバァ
ちゃんに質問した。
「そういえば、十年以内にアールスハイドと帝国
が戦争をするって本当?」
「そういう話もときどき聞くね」
「でも、魔物が増えているのに戦争ってさすがに
ないよね」
僕がそう言うとバァちゃんが沈黙した。
「・・・・・・・・・」
「えっ!?ま、まさかホントに?」
「現在、アールスハイドの方は戦争をしないため
外交に力を注いでいるよ」
「・・・・・・・・・」
「けど、それも難しそうだね」
渋い顔のバァちゃんを見て本当なんだと感じた
しかし、アールスハイド王国も大変だな。
もしも戦争が勃発した場合、勝利するのは・・・
・・・アールスハイドだと思う。
僕がなぜ、そんなふうに予想する理由は簡単だ
ブルースフィア帝国の内政は脆弱だからだ。
あの国は統率が無いに等しい。
選民主義のみで繋がっている帝国貴族たちが国
のために戦う意志など一欠片も無いだろ。
戦後はたぶん、帝国側からたくさんの亡命者が
アールスハイドや他の国になだれ込んでくるよ。
本当にハタ迷惑な国だな。
「まあ、戦争が起こるかどうかはまだ先のことだ
よ。今、気にしても仕方ないよ」
「うん、そうだね」
そうこう言っているうちに村の宿に前に着いた
「さて、エイアス。私はこれから商談だからアン
タは部屋でおとなしくしていな」
「商談?」
「この辺の村々の代表から魔物対策の魔導具を依
頼されたんだよ」
ふ~ん、バァちゃんにそんな依頼が。
なら、アレを試すチャンスだな。
僕は異空間収納ボックスを開き、魔導書と同じ
サイズの魔導具を取り出した。
「バァちゃん、その商談に僕も参加していい?」
「?参加してどうするんだい」
「この魔導具を「没収だよ!?」」
僕の話を遮り、魔導具を取り上げたバァちゃん
「ちょっ!?な、何すんの!」
「アンタの作るもんはロクな結果にならないのを
忘れたのかい!」
ギロッと睨見つけるバァちゃんの目に僕は固ま
った。
「こ・・・今回のは大丈夫だよ」
「そう言って、毎度とてつもない騒ぎを起こす人
間の言葉を信じると思っているのかい」
し、失礼な。
毎度ロクな結果にならないって言い過ぎだ。
そりゃ、バァちゃんが所有する倉庫や納屋で実
験中の魔導具が暴発して建物を爆破解体させた。
エルス首都周辺の習いたての魔法で森林や野原
を焼失させた。
他にもいろいろとやったけど、人害はゼロだよ
「いたたたっ!?」
と思っていたら、右ほぼをつねられた。
「アンタね〜!人に危害を加えなければいいと思
っているだろ〜!」
「ち、ちがひ・・・・・・ましゅ」
バァちゃんの腕をペシペシと軽く叩いて“この手
離してアピール”をする。
「たくっ、この破天荒さは誰に似たんだか」
「ジィ、ジィ・・・ちゃ・・・・・・てしぉう?」
「おバカ!」
ようやく、手を離してくれたバァちゃんはため
息をついて僕に命令を下した。
「ともかく、部屋でおとなしくしてな!」
僕はとてつもない怒気を纏ったバァちゃんに渋
々従うしかなかった。
ーto be continuedー
次回 おせっかい