【残暑 深夜】
[都内 高級ホテル]
私と熊田さんは、即断即決ができず、返答は明
日にすると伝えた。
そして、宿泊しているホテルのスカイラウンジ
バーでみよさんの頼み事について話し合っていた
「木手の遺産か。熊田さんどう思う?」
「どうと言われてもな。確実なのはとんでもない
発明品だろうな」
「そうですよね・・・・・・」
都内の夜景が一望できるVIP席で、お気に入
りのカクテルを嗜みながら、先立った木手のこと
を考えていた熊田さんは疑問を口にした。
「なんで、木手は俺たちに黙っていたんだ?」
「しゃべったら、熊田さんがコロ助を迎えに行く
というからでしょ」
「相変わらず悪びれた顔でからかうな。トンガリ
くん」
「事実でしょ。ブタゴリラくん」
ブタゴリラはフンッと鼻息を鳴らし、カクテル
を飲み干す。
それを見た私は、クスッと薄笑いを浮かべなが
らグラスの酒が空になった時だった。
追加注文に気付いたホールスタッフが席のそば
へ静かに歩み寄る。
「新しいものをお持ちいたしましょうか?」
「あぁ、ミリオン・ダラーを頼む」
「私はアメリカーノを」
「かしこまりました」
注文を終えると、熊田さんがコロ助の行方につ
いての考察を口にした。
「キテレツがあんなものを残して死んだ。つまり
ある程度手掛かりをつかんでいた」
「そうだろうね。でも、キテレツの発明品を使わ
なかったってことはさ」
「あぁ、奇天烈斎さんの発明品でもコロ助のもと
にたどり着けないか」
私たちはしばらく黙り込んだ。
やがて先ほど頼んだカクテルが届いた。
その時、熊田さんが急に笑い出した。
「クククッ!」
「な、なに?なに笑ってるの、ブタゴリラ!?」
「い、いやフルーツジュースだけのカクテルって
あるだろ」
「えっ?あ〜、あるね」
なんとなく言いたいことを察した私は、薄笑い
を浮かべながら熊田さんを見た。
「コロ助はもしここにいたらよ。それしか飲み過
ぎて、次の日は・・・・・・」
「ぶっ!?プッ、ククク」
私もブタゴリラも口元を押さえ、必死に笑いを
堪えた。
「クククッ!わ、笑うなよ、トンガリ。最高級の
バーで・・・・・・」
「わ、笑わせたのは、クククッ!ブ、ブタゴリラ
でしょ」
私たちは笑いを堪えながら顔を見合わせた。
そして同時に立ち上がり、固く握手を交わす。
「ブタゴリラ、取り戻そうコロ助を」
「あたぼうよ、俺がくたばる前にあいつをイジメ
て泣き面を拝んでやるよ」
「ウ~ン、コロ助かわいそう〜」
「安心しろ、お前と一緒にイジメてやる」
「えっ!?え、遠慮します」
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【陽春 夕暮れ】
[アールスハイド王国 国境付近の村]
僕はバァちゃんの命により自宅待機ならぬ宿舎
待機中だ。
バァちゃんに逆らって仕方ないので僕は部屋の
ベッドにブスッとした顔で横たわり、ちょっとだ
けスネていた。
「ハァー、僕はどんな時でも母に叱られるな」
そう、発明で問題を起こして叱られる。
前世でも今でも変わらない〜、僕は。
まあ、明日は久々にジィちゃんとシンと会える
んだし、おとなしくしてるか。
それに魔物以外で事件なんて・・・・・・。
ゾクッ!!
「えっ!?」
今、嫌な予感がしたのでベッドから起き上がり
辺りを見渡した。
「・・・・・・気のせい・・・・・・じゃないか。あー嫌だ。
この変なクセ、直せないかな」
前世で武道を極めたおかげか直感が鋭くなって
転生しても鍛え抜かれた直感はそのままだ。
だから、ときどきゾクッとした悪寒を感じる時
は高確率で事故や事件が起きるんだ。
けど、窓から外の景色を見たが・・・・・・。
「村は平穏そのものだな・・・・・・」
気になった僕はジィちゃんに教わった索敵魔法
を発動した。
村周辺の森を探索すると数人が国境付近にいる
のを確認できた。
「もしかして、脱国者狩りか?」
ブルースフィア帝国からの脱国者の数が年々増
えている。
その原因は穏健派の筆頭で帝位継承権を持つ帝
国公爵家当主が失脚らしい。
穏健派の残党が脱国するために国境を越えよう
とするが、その前に帝国の騎士たちの手により殺
されるそうだ。
その悪虐な所業をいつの間にか“脱国者狩り”と
呼ばれている。
さっきの索敵をした時、把握した人数は4人。
必死に移動しているのが脱国者か。
感知から察するに子どもだと思う。
残り三人は大人だから帝国の騎士たちか。
さて、僕はどうするかと悩んだ。
「うーん、帝国の騎士たちと戦うのはマズイよ。
けど、見て見ぬふりをするのもな〜」
導師の孫の僕が助けに行くといろいろと面倒な
ことになる。
けど、僕と同い年の子どもを見殺しにするのも
寝覚めが悪い。
けど、僕は正義のヒーローじゃない・・・・・・。
それに介入した後、下手するとアールスハイド
とブルースフィアの開戦のきっかけになりそうだ
「・・・・・・ヨシ!ハンターを使おう!!」
ハンターたちに“魔物の気配が遠くから感じたん
だ”とか言い、脱国者狩りとガチ合わせるように正
確な場所を教えれば脱国者が助かる可能性が・・・。
『何言ってるナリ、キテレツ!?』
「えっ!?」
今、声が・・・・・・。
アイツの声が聞こえた?
・・・・・・気のせいだよね。
だって、アイツはまだ・・・・・・。
『助けに行くナリよ!!』
「ーーッ!?」
コ、コロ助!?
『奇天烈斎さまの意志を忘れたナリか』
奇天烈斎様の意志・・・・・・。
『あの方の願いを受け継いだキテレツが人を助け
なくてどうするナリか!』
・・・・・・・・・変わらないな。
考えなしに動いて痛い目にあう。
その後の尻拭いはいつも僕だ。
「わかったよ、コロ助」
僕は異空間収納ボックスから二つの魔導具を取
り出した。
「まさか、こんなにも早く使うとは・・・・・・」
僕はシンとともに開発した魔法『ゲート』で発
動し、それと同時に左手に持つ球体の魔導具を起
動させ、自分の立体映像を出現させた。
「これで数時間は誤魔化せるだろう・・・たぶん」
僕は人形の魔導具右手に握りしめて『ゲート』
で現場付近まで空間移動する。
「コロ助。奇天烈斎様。自分の意志にて行動する
それが木手家の誇りです」
ーto be continuedー
次回 誇り