【残暑 夕方】
[都内 木手の生家]
朝一番にトンガリくんとブタゴリラくんからビ
デオチャットでキテレツくんの隠した発明品を一
緒に探そうと連絡がきた。
「ありがとう、二人とも」
私は涙をにじませて二人に感謝の言葉を言うと
二人はニカッと笑い、当然だと返した。
「あたりめぇだろ、みよさん!」
「そうだよ、探そう!キテレツの遺産を!!」
二人の言葉に私が頷くとトンガリくんがこれか
らのことを聞いてきた。
「みよさん、キテレツの発明品はおそらく・・・」
「えぇ、あそこ以外考えられないわ」
「だろうな。よし!オレたちいろいろと準備をす
る物とかあるから昼過ぎに合流しようぜ!」
「ブタゴリラ、準備する物って?」
トンガリくんの質問にブタゴリラくんは怒鳴り
散らすように答えた。
「懐中電灯やスコップなんかといろいろ必要だろ
トンガリ!」
「ちょっ!懐中電灯はわかるけど、スコップって
まさかどこか掘り起こす気?」
「あたぼうよ!」
当然だと胸を張って言うブタゴリラくんにため
息を吐きながらツッコミを入れるトンガリくん。
「ブタゴリラ、歳を考えてよ!」
「若い頃から身体は鍛えてるんだろ、トンガリ」
「昔と今を比べないでよ!」
弱気なトンガリくんにブタゴリラくんは一喝を
した。
「ガキの頃から先が見えない冒険したろ!」
「ただ無鉄砲に突っ込んでいっただけでしょ〜!
主にブタゴリラかコロ助が〜!!」
「てめー、人のことを言えるか〜!?」
「ふたりとも止めて!」
ケンカを始めた二人を仲裁した後、昼過ぎに合
流すると決めたので私も宝探しの準備を始めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〜昼過ぎ〜
大荷物を持った私たちは予定通り合流した。
閑静な住宅街の中で時代に取り残された空き家
・・・・・・いや想い出が詰まる場所の前で私たちは立
ち尽くした。
「・・・・・・・・・まさか本当にまだあったなんて」
トンガリくんがキテレツくんの家を見て驚いて
いるとブタゴリラくんがからかう。
「なんだよ、トンガリ。オレたちがウソをついて
いたと思っていたのか」
「・・・・・・ここに来るのは数十年ぶりだもの」
「まあな・・・・・・」
「私もここへ来るのは何時以来かしら」
しばらく、私たちはキテレツくんの家をボーッ
と見ていつの間にか全員涙を流していた。
「あっ!?今『みよちゃん』って聞こえた・・・」
トンガリがそう言うとオレも聞こえた気がした
「あぁ、『ゲッ、ブタゴリラ』と・・・・・・」
二人の言葉につられて私も聞こえた気がした。
「えぇ『あと、トンガリナリか〜』・・・・・・」
私たちは想い出が心の底から湧き上がって誰も
話さず動けずにいるとブタゴリラくんが私たちに
一喝した。
「感傷はここまでだ、二人とも!」
「そうね、ブタゴリラくん」
「うん、見つけ出そうキテレツの遺産を」
「お〜よ!」
「ええ!」
みよさんは手提げバッグから手紙を出し、神通
鏡をかけて白紙を見て呟く。
「これがキテレツくんが私たちに残したメッセー
ジ・・・・・・・・・」
『我が機械仕掛けの友は取り戻す。それが戻るこ
とができない過去であろうとまだ見ぬ未来であ
ろうとも・・・・・・その希望は私の原点に残した』
私たちは子どもの頃に戻ったようにお宝探しを
始めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〜三時間後〜
・・・・・・窓から外を見るともう夕方だった。
「うえっ!ゴボッ!!ブタゴリラ!?」
「ゴボッ!ゲボッ!なんだトンガリ!?」
二階で探していた私は一階のブタゴリラに声が
かけた。
「なにか見つけた?」
「ガラクタのガの字もねえよ!」
「こっちも同じだよ〜」
長い間放置させていた空き家だから床や天井の
板が腐っているから床が抜けて転んだり、壁に手
を置いたら崩れて倒れたりと散々だ。
「あ〜、腰痛て〜。トンガリ大丈夫か?」
「こっちは膝が〜。ブタゴリラ今日はここまでに
しよう!」
「そうだな。夏でもそろそろきり上げねえと真っ
暗になるか」
外に出るとみよさんがから濡れタオルと冷たい
麦茶のペットボトルをもらった。
「二人とも、ご苦労さま」
「ゴホゴホ・・・・・・みよさんサンキュー」
「うえ!ゲホゲホ・・・・・・ありがとう、みよさん」
庭に折りたたみ椅子を置き、そこに三人で座り
汗と埃で汚れた顔を拭き、暑さで乾いた喉を潤す
ため、麦茶をゴクゴクと飲み干すオレとトンガリ
「プハッ!生き返った!なあトンガリ」
「いや〜、まったくだよ。この歳になると重労働
はこたえる〜」
「暑い中、こんなことさせてごめんなさい」
みよさんの謝罪にオレとトンガリは笑ってこう
返事した。
「いいよ、みよさん」
「そうそう自分たちでやるって言ったんだから」
私とみよさん、ブタゴリラは自分の担当した場
所の成果を話した。
「っで、なにが見つかった?」
「成果0だよ、トンガリ」
「私の方も同じね」
私が担当していたボロアパートをチラッと見た
トンガリくんが質問した。
「みよさんはとなりのボロアパートの方を探して
たんだよね?」
「えぇ、そうよ」
「今さらだけどさ、なんで勉三さんが住んでいた
あのボロアパートがまだあるの?」
トンガリの言葉でオレもハッと気づき、みよさ
んに説明を求めた。
「生前のキテレツくんが土地ごと買い取ったらし
いのよ・・・・・・」
「「えぇ〜〜!?」」
みよさんは頭を抱えながらため息を吐き、キテ
レツの言葉足らずに愚痴をこぼす。
「亡くなった後に判明したのよ・・・・・・」
「あいつめ、こういうところは変わってないな。
ねぇ〜ブタゴリラ!」
「まったくだ。金があるからってやり過ぎだろ」
「税理士から聞かされた時、流石にあきれ果てた
わ〜」
キテレツくんの奇行さにあきれ果てる私たちは
アパートの件はひとまず置いといて自分たちに見
落としがないかを話し合う。
「オレたち、隅から隅まで探したよな?」
「そうだね、もう探す場所は・・・・・・」
「けど、ここにあるはずなのよ。キテレツくんの
残した発明品は!」
私の言葉に二人は頷き、ブタゴリラくんが考察
を語り出した。
「確かに書いてあった『原点』はキテレツの家の
はずだ。なあ、トンガリ」
「私もブタゴリラと同意見さ。けどね、何もない
場所から見つけようがないよ。みよさん」
私の言葉で考え込むみよさんはある仮説を呟く
「・・・・・・地下」
「「えっ?」」
私は人差し指を下に向けて言った。
「発明品は地下にあるかもしれない!」
みよさんがそう断言したので私とブタゴリラは
めんをくらった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【陽春 夕暮れ】
[アールスハイド王国 国境]
「この辺りか?」
僕は脱国者を助けるために村の宿をこっそりと
抜けた。
索敵魔法を頼りに遭遇する可能性が高い場所を
特定し、人に見つからないように高い木の太い枝
を飛び移りながら目的地までたどり着いた。
高い木から見下ろして来るのを待つこと数分後
両手を縄で縛られて逃げる美少年を軽装備の騎士
3人が追いかけていた。
「・・・・・・よし、予想通り来たな」
あっ!男の子が木の根に足をひっかけて転んだ
あらら、息を切らした騎士たちに囲まれた男の
子が両腕を掴まれてジタバタと暴れてるよ。
なんかギャーギャー叫んでいるし。
流石に距離があるからよく聞こえないか。
よし、そろそろ助けてやるか。
僕は右手の人形型魔導具に魔力を供給した。
黒い人形は大人サイズにどんどんと膨れて忍者
の姿に変貌し、僕は後ろの蓋を開けて乗り込む。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〜帝国騎士〜
「たくっ、手こずらせやがって!」
護送途中のクソガキは俺たちの休憩中に隙を見
つけて逃げ出しやがった。
「は、離せ!離せ!離せというに外道ども!!」
このガキはアールスハイド王国の国境にたどり
着こうとしていたのでマジで焦ったが、直前で捕
まえてよかった〜。
「さっさと帰るぞ!」
両腕を俺と同僚で掴み上げ、もう一人が周囲の
監視をし、帝国の方に引きずりながら戻ろうとし
た時、右側の同僚が鬱憤を晴らすためにガキをか
らかい始める。
「フン、さっきから威勢はいいな。恥辱を受ける
覚悟はできてるのか?アアン!」
右側で腕を掴んでいるバカがそう言うとガキは
顔を真っ赤にして叫ぶ。
「ふ、ふざけるな!?辱めを受けるならば!?」
「おっと!」
左側にいた俺は咄嗟に木の枝でこいつの口に噛
ませた。
「ふぐっ!?」
「あぶねー間一髪〜!」
こいつ舌を噛みちぎろうとしやがった。
監視のやつがすぐさま木の枝を利用して簡易の
猿轡をガキにつけた。
「ふぐっ!?んーー!?」
安心した俺は右側のバカにバカヤロー!とドヤ
した。
「す、すまん!!?」
「むやみに挑発するな!こいつを自決してみろ!
俺らの首が飛ぶだけじゃ済まねえぞ!!」
「すまんって!?」
「あの皇帝の機嫌を損ねたら・・・・・・一族郎党が皆
殺しだ!!」
そう、ブルースフィアは選民主義の帝国貴族に
より成り立っている。
特に今の皇帝は選民意識が異常に高い。
ここ最近は穏健派を失脚させた皇帝の影響で同
じ貴族内でも階級が低い、才能が劣るなどと言い
身内を迫害するのも日常茶飯事だ。
「ともかく、こいつを皇帝に差し出さないと俺た
ちの立場は平民に格下げだぞ!」
俺の言葉で二人は怪訝な表情で叫ぶ。
「へ、平民!?じょ、冗談じゃねえ!!」
「平民だ!あんな家畜に格下げぇ〜!?ふ、ふざ
けんな!!」
「なら、さっさと行くぞ!!」
俺たちはズカズカと足音をたてて進んでいると
どこからか声かも聞こえた。
「待て!」
次の瞬間、俺たちの目の前に黒い服装した男が
現れた。
「な、なんだ!貴様は!?」
「その子を助けにきた者だ」
騎士たちはハァ〜ッ!と声を上げてドヤした。
「貴様、こいつの知り合いか!?」
「いや、赤の他人だ」
「おい、ならなぜ助けようとする!」
「・・・・・・理由は簡単さ。余計なお節介は英雄の
性だ」
ーto be continuedー
次回 天狗