~リーネ誘拐事件の真相~
リーネには魔の気配を感知する特別な能力があった。人間に成り済ました魔族の正体を見破れる力を持つリーネについて、魔族にとって都合が悪く、リーネは殺される予定だった。
同時期、イギリスが西側魔族に陥落したという情報はガルディアが知るずっと以前からヤクラの知るところであった。
ヤクラか危惧していたのはガルディアが西側魔族によって既に陥落している可能性だった
リーネの持つ擬態を見破る能力についてヤクラは信用していなかった。人間にそのような超能力はなく、西側魔族がリーネに成り済ましているのだと思っていたヤクラはリーネを誘拐し、どの程度の西側魔族がガルディアに侵入していのかを尋問をした。
尋問の末、西側魔族とリーネに関係性がない事が判明すると、ヤクラはリーネを利用しようと思い立つ。
擬態を見破る力は魔族でも希な力であるが、リーネの場合、その力の質が突出していた。
西側のスパイ魔族を探しだすのに都合の良い力を持ったリーネについて、殺さずに魔界に持ち帰る計画をしていた。その最中、部下からリーネが王宮に入ったとの情報が届けられた。
あり得ないことだった。既にリーネは誘拐している。リーネ不在の王宮について、これを機に西側魔族がリーネに成り済まして入り込んだのだろうか。あるいは部下が勝手に王家潜入の計画を先走りしているのだろうか。あるいはリーネが本当に修道院から脱出したのだろうか。
魔族がリーネに擬態をしているかどうかは私には判断できない。誘拐してリーネの元へ連れていき、確認するのが良いかもしれない。
だが正体が西側魔族だったとしても、どの程度ガルディアに侵食しているかについては拷問や尋問をした末に必ず判るとは限らないだろう。
西側との関わりがあるのなら今すぐに捉えるよりも泳がせてボロが出るまで待つ方が得策かもしれない。
コウモリを張りつかせて様子を観察させている隙に、私は一度アジトである修道院に戻った。
考えたくはないが、仲間から裏切り者が出ていて西側に関係している可能性も決して0ではなかったから。
案の定、部下の数は合っている。裏切り者はいないのだろう。だとしたら、やはり西側魔族がリーネに扮して入り込んだのか?
その可能性よりも、王宮側が用意した影武者である可能性が高いだろう。
擬態を見破れるリーネが不在となっては、王宮は魔族に狙われやすくなるだろうから。
王宮側が用意した影武者だとすると、あまりに短絡的な発想をする王宮であり、笑いがこみ上げてくる。
警戒するべきは、バカな王のいる場所ではない。やはり議会と軍部なのだろう。
マスケットタイプの効率的な銃が量産されている事、それが最も驚異である。
もしもアジトが銃を持った軍に包囲されるとしたら、私なら助かるとしても部下は全滅するだろう。
そうなる前には、ここから撤退しなければならない。
私が次に何をすべきか考えているとコウモリから情報が伝達される。
カエルが真っ直ぐこちらに向かっているという情報だった。
カエルにアジトがバレるのは厄介であり、私は直ぐにカエルを殺しに向かおうとしたが、もう一つの連絡が来る
ガルディアの諜報部が赤髪男をマークしていて、同じくアジト方面に向かっているという。
今カエルをやるにしても諜報部に目撃される恐れがある。そうなったら軍部が出動してくる可能性が高い。
カエルも諜報部も同時に仕留めれば良いのだろうが、確実に成功する保障はない。
外で決着をつけるよりも修道院の中で決着をつける方が目撃者を作らない上では有効かもれない。
悩んでいるとカエルが院内に入り込んだという情報が届く。カエルは既にミアンヌ達を制圧していて、ここがアジトなのだと知りつつあった。
~魔法陣について~
「人間に擬態する魔法は魔王様が生み出した」
我ら魔族の身体の中には魔のエネルギーがあるものの、そのエネルギーを使って魔法を使うという芸当は我々にはできなかった。魔王様は魔法の使えない我らに魔法が使える様になる方法を与えて下さった。
魔法陣というもので、決められた図形を書き、決められた呪文を唱える事で魔法が発動する。図の大きさや細かさで魔法は大きく変化し、細かいルールはあるものの、応用が効く便利なものであった。
例えば複雑な魔法は呪文が長くなりがちだが、呪文そのものを短簡略化してくれる魔法陣もあって、人間に擬態する魔法陣と合わせて体の一部にでも書き込んでおけば、【大臣チェーンジ!】と叫ぶだけて、いつでも擬態魔法が発動した。魔王様は我らにとっては神様な存在で、魔王様さえいてくれれば、我等は世界を牛耳れると思っていた。
~リーネ誘拐事件以降~
ガルディアは擬態魔族への警戒をより徹底するようになった。
仲間同士にしか判らない合言葉を作るのを徹底するだけでなく、生活スタイルが変化した人間がいないかを互いに監視しあっていた。
隙をみて王権を手に入れようと画策していたヤクラだったが、とうとうそのチャンスは来なかった。魔族と人間の戦争は魔族側の敗北で終わり、動かせる配下も少なくなってしまった。
その頃、世界中に急速に広まっていた銃の存在。魔族の領域は縮小の一途をたどり、人間に擬態する力がない者は淘汰されていった。
生き残った魔族達は人間から隠れるべく(魔族の存在を忘れて貰うべく)
魔族に関する文献を探しては燃やし尽くした。
ガルディアでも魔族との戦争で死人が多くでていた。その痕跡となる墓も文献も多くあった。
欧州ではその死の原因を魔族によるものではなく、宗教を原因とした『30年戦争』に置き換え公式記録としていた為、ガルディアもそれを真似た。
それ以降の世界は魔族による被害が発生するとペスト等の感染症に置き換え、死体を見聞させないように仕向け、感染対策に人々の外出を控えさせたりした。そういて証拠(魔族)の隠蔽をするのだが、隠蔽といっても実質、殺処分である。
主要な権力者の多くはその頃には既に魔族にとって変わっていた。
身を守るが為にこそ、魔族や魔族の情報を消し去っていく。
日本では秀吉を起点にしてキリシタン狩りの名目で書物の検閲が行われ、魔族にとって都合の悪い書物は燃やされた。
中国では文化体格革命という名目で書物が徹底的に燃やされ、中東では宗教対立のどさくさに燃やされた。
奇しくも
世界から魔族がいなくなることで、人は安心し、人口は急激に増加していく。けれど人間同士による争いも増えていく。
第一次世界対戦や第二次世界大戦が起こる頃には人間界の権力闘争もややこしくなり、また戦後経済の急激な発展(技術革新)もあり、わざわざ人間関係のしがらみの多い王権を手に入れるよりも、民間人に成り済ます方が得策と考えてひっそりと生きていたヤクラ。
長生きだったヤクラはテレビで千年祭の開会式を観ていた。
まるでオリンピックのようなセレモニーが始まりブルーインパルスが空に駆ける。
派手な祭りであり、世界各国から要人やダンサー、アイドル等々が参加している。
そんな中で注目を浴びているいるのが発明品大会だった。世界各国、古今東西の発明家が参加し、その中にはガルディア人、ルッカアシュティアがいる。
ルッカな数々のAI特許を取得し、ロボット工学の学位を得て、博士号を得ている天才学生だった。
私には見覚えがあった。敗北を期したあのとき敵の中に同じ顔をした者、同じ名前を持つ女性がいた事を思い出した。
私にとってあの日の敗北は強く脳裏に刻まれている。私は擬態の技を利用し、負けた風景(消滅映像)を魅せることで逃亡が成功した。教会を明け渡たす事になった原因を探るべく、コウモリ達に関係者らを張り付かせていた。
クロノ達がトルース山の青き穴(ゲート)に消える。そんな不可解な現象について伝えられた私は400年経っても覚えていた。
そして赤髪男(後のガルディア保安部への潜入調べで判明した名前クロノ)が所持していた刀について。
私の硬い表皮にダメージを与えるような人間の武器は、未だかつてグランドリオンしか存在しなかった。グラドリオンよりも弱いもののその存在(刀)が危険だと理解した私はは刀の出所(主に生産国日本国内)を調査させていた。だが、それ無意味な調査だった。
クロノとルッカとリーネに間違われた女がトルース山で青い光に包まれて消失したという報告を覚えていた私はだったが、今でこそ判る。過去と現在を繋げるゲートに気付いて私は笑った。
テレポート原理からタイムラベル現象を生み出せる。擬態魔法を駆使して得てきた世界のハイテク情報。人間界の上層部が極秘扱いにして隠していた技術の一つにゲートを利用したタイムトラベルがある。
「そうか、そういうことだったのか…」
長年抱えていた不可解だった疑問が晴れる。そして同時に復讐(遊び)のチャンスが来たのだと思い立つ。
ヤクラは配下のコウモリにルッカを尾行するよう命令を出した。
クロノとマールを助けにゲートへと入るルッカとその後を追うコウモリ2匹