無下限、六眼持って転生したけどサイタマが居ない   作:一般通過ドブカス

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本作のボロスはアニメ版仕様です。崩星咆哮砲で地球を砕けます。


10話

 「―――チッ」

 

 無限に広がる宇宙のように無数の光が煌めく広大な領域の中、五条は()()()佇んでいた。

 五条は当然ながら、初手の領域展開で決着がつかない場合も想定していた。それは、ボロスに無量空処の効果が薄い場合や、ボロスが何かしら必中効果を無効化する手段を持っている場合、そもそも無量空処の効果が無い場合など様々な想定をしていたが、結果は想定の中でも最悪な部類のものとなった。

 

 「……勘と純粋な速度で避けられたか」

 

 黒閃を経験していない五条が現在領域を展開してからその外殻を閉じきるまでにかかる時間は約0.00001秒。

 さらに、五条は外殻を閉じる視覚的効果より必中効果の発動を優先しているため、領域に引き込むまでの速度は外殻を閉じる速度よりも大幅に早くなっている。その速度は、災害レベル竜の怪人であろうと、知っていてもそうそう避けられるものではなかった。

 

 五条は、ボロスがこれを回避するだけのスピードを持っていることを察していたが、呪力は他者から探知できない上に完全に初見の技であるため、可能な限り広範囲に領域を広げればボロスを領域内に引き込める可能性は十分にあると判断していた。

 しかし、ボロスは必中効果の適用すら回避して見せた。

 

 「ま、領域展開は避けられることが分かっただけでも良しとするか」

 

 これで決まってくれれば嬉しかったが、初手の領域展開を避けられるのは五条にとって致命傷にはならない。むしろ、戦闘終盤で領域展開を回避されていたら詰んでいたので、それよりは遥かにマシだと気持ちを切り替え、領域を解いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボロスの眼前で展開されていた黒い球が崩れてゆく。そして、先ほどまで立っていた場所と同じ場所に五条は佇んでいた。

 

 「素晴らしい! この俺が敗北の可能性を感じたのは幼少の時以来だ!」

 

 ボロスは五条が領域展開を行った瞬間、無限に等しいほどの戦闘経験の中で培った己の勘に従い即座に全力で後方に飛びのいていた。そして、部屋の壁をいくつか突き抜けてまで領域範囲の遥か後方に飛び退いた後に全身が粟立つような感覚を覚え、自身にそのような感情を抱かせる強者がいる事実に歓喜した。

 

 「今ので終わりなんて言ってくれるなよ!」

 

 ボロスが五条へと迫り鋭い突きを放つが、五条はそれを余裕をもって受け止める。ボロスは五条の実力を測るように次第に速度を上げながら攻め立てるが、五条はその全てに余裕を持って対処し、反撃する際には、ボロスに悟られないように注意しながら鎧を砕かないように手加減すらしていた。

 

 「(……思った通り、力を封印している状態のボロスなら無下限呪術が使えなくても問題はない)」

 

 これが、五条が初手の領域展開が失敗に終わっても十分に挽回が可能であると判断した根拠であった。仮に、今ボロスが自ら鎧を砕いて切り札を切っていたら、五条はあっけなく敗北しただろう。だが、ボロスはそれをしないと五条は読んでいた。五条は初めの賭けには負けたが、この賭けには勝利したのだ。

 

 ボロスは力を封印したままでも、五条がこれまで対峙してきたどの怪人よりも速く、そして強かった。しかし、今のボロスではどれだけ巧みな攻撃をしようと、純粋な身体能力の差によって五条には通用しない。

 

 「くくっ、いいぞ。これほどの肉体をも併せ持つ者がいるとはな」

 

 笑いながらも止まることのないボロスの攻撃をいなし続ける中、その時が来たことを感じた五条は、一際力を込めた一撃をボロスの鎧に叩きつけ、柱に向けて吹き飛ばした。

 

 

 

 

 「……さぁ、第二ラウンドだ」

 

 柱へとめり込んだボロスが立ち上がると同時に、その身にまとった鎧が砕け散ってゆく。

 

 「強大すぎる俺のパワーを封印する役目を持つ鎧が、いま砕かれた!」

 

 稲妻のように全身に青白い光を纏いながら、ボロスの肉体が先ほどまでとは比べようがないほど強靭なものへと変貌していく。

 

 「ヌ……ゥゥウウウウッッオオオオォォオォォォォ!!」

 

 ボロスの目が見開かれると同時に、その全身からあふれ出した膨大なエネルギーの余波が、紫色の光を放つ衝撃波となって周囲を襲った。

 しかし、その衝撃が五条に届くことはない。既に、焼き切れた術式の修復は完了していた。

 

 「行くぞッ!」

 

 ボロスが先ほどの焼き増しのように五条へ向けて突きを放つ。その速度、威力は全力の五条をもってしても決して侮れないものとなっていた。

 

 「(……強い! 覚悟はしていたが、ここまで強いのか!!)」

 

 ボロスが放った拳を無限の壁を纏った手で受け止め蹴りを放つも、ボロスは的確にその蹴りを防ぎ反撃の一撃を放つ。無論それは無限の壁に阻まれ、ガードしないことでワンテンポ早く動いた五条の蹴りがボロスの腹部に突き刺さった。

 

 「面白い、力を解放した俺の攻撃が届かないとは! さぁ、どこまで防げる!」

 

 五条とボロスが加速する。広大な宇宙船をその余波で次々と破壊しながら、五条とボロスは幾度も拳を交わし合った。

 五条とボロスの戦闘は、ボロスが無下限呪術を突破出来ないことによって五条優位のものとなっていた。しかし、その状況を楽しむボロスに対して、五条は攻めきれない現状に焦りを抱いていた。

 

 「蒼! 赫!!」

 

 ボロスの攻撃を無限の壁で受け止めた隙をついて殴り飛ばすことに成功した五条は、ボロスを蒼で拘束し、その隙に赫を放った。ボロスが蒼で拘束された時間は刹那にも満たないものであったが、赫を回避しきれないと判断したボロスは両腕を交差させその衝撃を受け止める。

 その隙に蒼を用いた高速移動でボロスの背後に回った五条の蹴りが、ボロスの後頭部に直撃した。

 

 「位相 波羅蜜 光の柱」

 

 ボロスが振り返りながら振り抜いた裏拳を、蒼を応用しボロスの後頭部に触れていた足を吸着させることでボロスの意表をついた挙動で回避しつつ指をボロスの眼前へと持ってゆく。

 

 「赫!!」

 

 赫による爆発の煙が晴れたとき、そこには片腕を失ったボロスが立っていた。しかし、次の瞬間にはその腕は再生しており、多少エネルギーを消耗させることは出来ているかもしれないが、決して有効打とはなっていなかった。

 

 「(メテオリックバーストを使われる前に仕留めないと不味い! だがッ……)」

 

 「いい動きだ! さすがに強いな!」

 

 五条は自身の勘が告げる身震いするほどの危機感に従い、ボロスを仕留めるために自身の周囲に三つの蒼を展開した。そして、ボロスに組み付くように接近すると、打撃と同時に使用する蒼を用いた吸着と周囲を旋回させてい蒼への超高速移動をフル活用した接近戦を仕掛けた。 

 

 ボロスは反撃しても無限の壁に阻まれるため防御に徹するが、五条はボロスの防御の上から蒼の引力を用いた強力な打撃を繰り出し、その当てた部分を吸いつかせることで強引に軸とする変則的な動きでボロスを揺さぶる。

 無論、この程度ではボロスは反応して見せる。しかし、僅かに反応が遅れるボロスに対して、五条は畳みかけるように蒼での高速移動を織り交ぜ、不規則なリズムでボロスを攻め立てた。

 

 「グオッ!?」

 

 ついにボロスの防御にほころびが生まれ、五条の拳がその腹に突き刺さった。そして、体をくの字に折ったボロスの頭上に高速移動した五条によってその頭に容赦なくかかと落としが放たれ、ボロスはクレーターを作りながら床へめり込んだ。

 

――――虚式「茈」

 

 打ち出された仮想の質量が、射線上の全てのものを破壊しながら宇宙船の中を突き進んでいった。

 

 「―――クハハハハハ! 今のはひやりとしたぞ!!」

 

 五条の背後の床を突き破り、無傷のボロスが五条の眼前へと着地した。

 

 「(これだ……。虚式「茈」なら致命傷を狙えるが、撃つ前のほんの僅かな溜めで確実に躱される……!)」

 

 「このボロスの攻撃がこうも通じない者はお前が初めてだ! だが、これならどうだ! はぁッ!」

 

 ボロスが纏うエネルギーが急速に高まり、胸部の瞳から収束されたエネルギー波が放たれた。

 

 「体内にある莫大なエネルギーの放出! 打撃とは次元の違う威力だ!」

 

 そのエネルギー波は轟音とともに五条の後方数キロ先まで船を破壊し、その爆発で天井すら破壊し尽くしたことで空が見えていた。

 

 「……これでも無傷か。実に素晴らしい。ただの防壁ではないな」

 

 「生憎だけど、タネを明かすつもりはないよ」

 

 ボロスが放ったエネルギー波は赫を優に超える威力を持つほどだったが、どれほど威力が高かろうと無限の壁が突破されることはない。五条は当然のように無傷で佇んでいた。

 

 「構わんさ。……その力に敬意を表し、俺も本気を見せよう!!」

 

 ボロスの全身から膨大なエネルギーが溢れ出る。暴れまわるエネルギーはボロスの意思によって収束され、余すことなくその身を包み込んだ。

 

――――メテオリックバースト

 

 それは、体内エネルギーの放出を推進力として、生物の限界を超えた速度、パワーを引き出すボロスの切り札。肉体が圧縮され、その身に稲妻のような文様が広がったボロスは、空間が歪むほどの波動を纏い五条へと真っすぐに飛び込むと、本日三度目となる突進からの突きを放った。

 

 「(ッ!? 速い! 速すぎる!!)」

 

 その一撃は無限の壁に阻まれ五条に届くことはないが、その余波で先ほどのエネルギー波以上の衝撃が後ろに突き抜けた。

 そして、五条は自身の嫌な予感が的中したことを悟った。いや、メテオリックバーストを使用したボロスを一目見た瞬間からわかっていた。今のボロスは、五条の全力を遥かに上回っていると。

 

 「……純粋なパワーでの突破は不可能か。ならば、これならどうだ!」

 

 ボロスの次の行動を見て、五条は自身の勘が警鐘を鳴らしていた理由をはっきりと理解した。

 

 「オオオオォォオォォォ!!」

 

 膨大なエネルギーで構成された紫色の光を放つ二つの球体が、青白い閃光を迸らせながらボロスの両腕へと収束していく。あまりのエネルギー密度に自身の両腕を引き裂かれながらもボロスは圧縮をやめなかった。

 極限まで圧縮されたエネルギーは、最後に強烈な光を放ち周囲を破壊し尽くすと、ついにボロスの両方の拳へと収束した。

 

 「今、星の表面を消し飛ばせるほどのエネルギーをこの拳に圧縮した」

 

 その拳は常にプラズマが迸りつつ、どこか揺らめくように不安定に揺れ動いて見えた。

 それを見た五条の全身に悪寒が走り、咄嗟に無下限バリアの出力を最大まで高めた。

 

 「崩拳。かつてこのボロスに抗った者の一人、あらゆる攻撃を防ぐとまで言われた障壁使いを打ち崩すために生み出した技だ!!」

 

 ボロスの拳が無限の壁に接触する。その瞬間、膨大なエネルギーが極限まで圧縮されたことによって生み出された空間のゆがみが、無限の壁にひずみを作り出した。狙い通りの結果を得たボロスは、生み出された綻びに突きこむようにしてその拳をねじ込んだ。

 自身に迫りくる死を前に、五条の思考が急激に加速する。しかし、それでもボロスの拳は悠長に走馬灯を見ることすら許してくれない。五条がその一瞬の猶予で見た光景は、バングが放つ流麗な技の極致だった。

 

――――流水岩砕拳

 

 バングの道場に行くこと数回。それでも、初めて行った日から欠かさずに続けていた鍛錬は、五条の才と極限の状況が組み合わさることで、未熟とはいえその動きを技として昇華してみせた。

 流れる水の如く動いた五条の手がボロスの拳に触れる。そして、その力の方向を優しく誘導するようにしてボロスの一撃の直撃を回避してみせた。

 

 「ぐあッ!?」

 

 ボロスの一撃がかすった事で脇腹が弾け飛び、受け流した手も指の数が二本減っていた。今の一撃は、無限の壁を突破する際に僅かに減速していなければ、そして、流水岩砕拳を土壇場で習得できなければ確実に五条に死をもたらしていた。

 五条はボロスのあまりの強さに絶望すら感じるも、その意志とは裏腹に即座に反転術式で回復を行っていた。

 

 「ほう、再生するか! いいぞ! もっと俺を楽しませて見せろ!!」

 

 傷を即座に再生し、流水岩砕拳の構えを取った五条を見て、ボロスは嬉しそうに声を上げた。

 

 「―――クソッ!」

 

 無数の攻防の末、ボロスによって吹き飛ばされた五条は無下限呪術を用いて空中で制止すると、失った右腕を即座に再生する。しかし、頭上に現れたボロスが放つ連撃によって瞬く間に全身が削り取られていく。

 

 「(ジリ貧だ! 無下限を突破する時に減速するおかげで辛うじで直撃は避けられてるが、一手ミスっただけで死ぬ!!)」

 

 「ッ!! 赫!!」

 

 全身が虫食いのようになった五条は、反転術式で傷を負ったそばから再生しつつボロスの一瞬の隙を見逃さず赫を放った。

 

 「はぁッ!!」

 

 五条の放った赫はボロスの放つエネルギー波によって相殺され、両者の中心で大きな爆発を起こした。

 

 「(茈を撃つどころか、蒼と赫すら使う余裕がほとんど無い! どうする、どうすれば!)」

 

 爆炎を突き抜けて超高速で飛び回る五条に対し、ボロスまたエネルギーを推進力にすることで五条以上の速度で空を駆け回っていた。

 二筋の閃光が空を切り裂き、その閃光が衝突する度に大気を揺るがす衝撃が無数に広がった。

 

 「どうやら、勝敗が見えたようだな!!」

 

 ひたすら致命傷を避けながら空中を逃げ回るように飛び、僅かな隙を見出しては反撃しようとする五条だったが、不敵に笑ったボロスが放った一撃は未熟な流水岩砕拳では受け流しきれず、船の甲板へと叩き落された。

 

 「うぐッ、まさか……」

 

 五条は、ボロスが落下しながら叩きつけるように放った追撃を身をよじることで紙一重で躱した。

 

 「なかなか面白い技ではあったが、もう掴めた」

 

 跳ね起きた五条に対し、ボロスが神速で右腕を振り抜く。その攻撃を受け流そうと手を添えた瞬間、力の流れが強引に断ち切られた。

 

 「―――しくった」

 

 五条の左腕が弾け飛び、その体が大きく外へと流れる。五条は悟った、次の攻撃は躱すこともいなすことも出来ないと。

 自身に迫る二度目の死を前にして、五条は残った腕を動かしその呪力を集中させ―――

 

 ―――ボロスの腕が五条の心臓を貫いた

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