無下限、六眼持って転生したけどサイタマが居ない   作:一般通過ドブカス

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誰かと話す際に主人公の一人称と口調が変わるのは五条悟をリスペクトしてあえて変えてる設定です。読みにくかったら教えて下さい…


2話

 「緊急速報です。D市に巨大生物が出現しD市が消滅しました! 災害レベルは鬼、巨大生物は隣のB市に接近中の模様とのことです!」

 

 テレビが緊急速報に切り替わり、アナウンサーの焦った声が部屋に響いた。

 

 「D市が消滅ってことは、今日だったか」

 

 五条は食べていたカップラーメンの残りを一気にすすると寝間着のシャツを脱ぎ捨て、急いで新宿決戦の際に某現代最強が着ていたような服装へと着替えた。

 五条は二年ほど前から、怪人と対峙する際はなるべくこの衣装を着ることにしていた。特に深い理由はなく、せっかく六眼、無下限呪術を持っているので服装も本家にあやかったものにしているだけだ。

 ちなみに、目隠しはしていない。五条は、この世界に転生してからの三年間で自分に流れているもの以外の呪力を観測したことがなかった。自分の呪力を見る分には初めにあった頭痛以降は負荷を感じたことが無いうえに、そもそも世界に呪力がないため、目隠しをしたら周りを知覚できず本当にただの目隠しになってしまうのだ。

 

 「よし、行くか。……D市とB市ってどっちだっけ」

 

 外に出た五条は曖昧な記憶を頼りにおおよそD市があるであろう方向に当たりをつけると、ものすごい勢いで飛び立った。

 しばらく高速で飛行していると、地平の彼方にゆっくりと歩を進めている巨人が見えてきた。

 

 「あそこか。目印があると助かるな」

 

 五条は飛行を一度止め、遥か彼方にいる巨人の頭上辺りまで障害物がないことを確認すると、蒼による超高速移動を開始した。

 

 「……ん? 結構遠いな」

 

 五条は一瞬で巨人の元まで行けると思っていたが、意外と時間がかかることに驚いた。そして、それは巨人のあまりの巨大さゆえに距離感を見誤ったことが原因だった。

 

 「で、デカい……え? こんなデカいのか?? 嘘だろ、さすがにデカすぎんだろ……」

 

 五条はゆっくりと歩みを進める巨人、マルゴリの元にたどり着いたが、そのあまりの大きさに語彙力を失っていた。

 マルゴリは公式の設定では270メートルとされているが、その描写ではサイズ感が不透明に思える要素が存在していた。そして、五条の目の前に立っているマルゴリは山を見下ろすほどの巨躯であり、その身長は確実に数キロメートルはあるように思われた。

 

 「羽虫になった気分だ……」

 

 五条はマルゴリの左肩に降り立つと、その頬に様子見がてら赫を放った。

 

 「ぬおッ!?」

 

 炸裂した赫はマルゴリの頬を大きく抉り飛ばしたが、それはあくまで五条視点での話であり、マルゴリの巨躯からすると人間が蜂に刺されたようなものだった。

 マルゴリは突然訪れた痛みに頬に手を当てたたらを踏んだが、その程度のリアクションにとどまっていた。

 

 「スケールが違いすぎるとしんどいな……」

 

 五条は、虚式「茈」を放ったとしても当たり所次第では倒しきれないと感じていた。そんなことを考えていた五条だったが、ふと、何かが落下しているのを見つけた。

 

 「弟よ! 助けてくれ!!」

 

 それは、マルゴリの兄、フケガオだった。フケガオはマルゴリの左肩に乗っていたのだが、先ほどマルゴリがたたらを踏んだ際の衝撃で空に弾き飛ばされていた。

 マルゴリもまた落下するフケガオの存在に気づき、彼の下にその巨大な手を差し出した。

 

 

 

 ベチンッ

 

 

 

 

 「兄さあああああああああああああああああん!!!!!」

 

 マルゴリの手には、落下の衝撃に耐えられずに物言わぬ肉塊と化したフケガオの姿が。

 

 「おおおおおおおおおおおおおおお! どうしてこうなった! 俺はただ強さを求めていただけなのにっ、やっと最強の男になれたっていうのに」

 

 五条は、荒れ狂うマルゴリの肩に乗ったままその意識を自身の内を巡る呪力に集中させた。

 

 「ぬ――――ッ! 誰だか知らんがお前のせいで兄さんが死んだ、許せん」

 

 そう言いながら、マルゴリは五条を掴もうと手を伸ばした。あまりの手の大きさに掌が閉じたように見えたが、その掌の中では無限の壁に阻まれて五条に触れることは出来ていなかった。

 

 「なにっ? 動かん」

 

 「……ちょうどいいし、実験に付き合ってもらうよ」 

 

 五条を掴めずに困惑するマルゴリの掌の中で、掌印を組み呪力を高めていた五条は静かにつぶやいた。

 

――――領域展開「無量空処」

 

 五条を中心に黒い球が急激に膨張していき、反応する間もなくマルゴリへと迫る。しかし、マルゴリがあまりにも巨大であったため、その頭部の半分ほどを飲み込んだ時点でピシリと音を立てて黒い球にヒビが走った。

 

 「むっ」

 

 五条は、これ以上領域の外殻を広げると領域が崩壊することを察し、このままマルゴリを領域内に収めることを諦めた。

 

 「(やっぱり、外殻を拡大していくには限界があるか。それに、ここまで巨大だと領域内に収まりきらず領域を閉じることが出来ない。このままだと領域が完成しないまま数瞬後には崩壊する)」

 

 刹那の思考を終え、五条はあらかじめ考えていた次のプランへと移行した。

 それは、領域内の空間の拡張。五条は、領域内の空間はそのままに外殻だけを縮小できるなら、領域の外殻はそのままに領域内の空間の拡張をすることも可能なはずと考えていた。

 五条が領域内の空間を拡張しようとすると、想定していたよりも簡単に拡張することができた。そもそも、領域内は外殻よりも遥かに広い空間となっているため、それを拡大することは外殻を変化させるよりも感覚的に行いやすかったのだ。

 

 「(いけるが、馬鹿みたいに呪力が持っていかれるな)」

 

 感覚的には比較的容易とはいえ、マルゴリを引き込めるほどに空間を拡張するには、六眼をもつ五条ですらかなり疲弊するほどの呪力を消費しなければならなかった。

 そしてようやく領域が完成すると、外殻からはみ出していたマルゴリの体が吸い込まれるようにして領域内に収納された。それでも、今回の領域展開はかなり無理があったのか、領域の外殻には大きな亀裂が走り、その他にも無数のひび割れが起こっていた。

 

 「……ふぅ、なかなか際どかったな。でも、次があればもっと上手くやれる」

 

 五条は、無限に広がる宇宙のような自身の領域の中、山のようなマルゴリを見上げるように立っていた。

 

 「僕の記憶の限りでは、神は物理的に巨大に描かれていたんだ。だから、巨大な対象を領域内に引き込めるかをここで試せて良かったよ。まぁ、神には無量空処が通用しない可能性の方が高そうだけどね」

 

 ビキッ、ビキッと音が鳴り、黒い破片が零れ落ちると共に全方向から光が差し込み始めた。

 

 「おっと、そろそろ限界かな。ま、いい練習になったよ。ありがとう。って言っても、聞こえてないか」

 

 黒い破片が無数に舞い、木漏れ日のような光が降り注ぐ中で一際大きな何かが砕けるような音が響き渡り、次の瞬間、領域は崩壊した。

 

 時間にして僅か数秒程度の領域展開であったが、無量空処の威力は絶大であった。脳にありえないほどの負荷をかけられたマルゴリは、顔の穴という穴から血を垂れ流し立ったまま絶命していた。

 マルゴリの体から力が抜け、ゆっくりと膝をつくように崩れ落ちてゆく。そして、轟音を轟かせながらその巨体が完全に地面に沈んだ。

 マルゴリが倒れこむ直前にその肩から飛び降りていた五条は、術式が回復するまで待った後に家に帰るために飛び上がった。

 

 「あ」

 

 五条は、崩れ落ちたマルゴリの体によって、B市の半分ほどが破壊されていることに気が付いた。

 

 「ま、まぁ、消滅よりはかなりましでしょ」

 

 五条は普段の三割増しほどのスピードで飛び去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 部屋の中でくつろぐ五条の眼前を、一匹の蚊がゆっくりと飛んでいた。そして、蚊は五条の手に止まろうとしたが、無限の壁に阻まれて空中で羽ばたき続けていた。蚊は手に止まることはできないと判断したのか再び飛び立ち、顔や足など様々な場所から血を吸おうと飛び回っていた。

 

 「無下限バリア便利だな。虫刺されとは一生無縁の生活ができそうだ」

 

 蚊は必死に五条の周りを飛び回るが、どう足掻いても五条に触れることができなかった。

 

 「蒼」

 

 五条の周りを飛んでいた蚊は、生み出された小さな蒼に呆気なく吸い込まれて消滅した。蚊を始末した五条はしばらくぼーっとしていたが、切り替わったニュースの内容をみて、外に出る準備を始めた。

 

 「番組の途中ですが臨時ニュースをお伝えします。Z市に大量の蚊の群れが向かっています!! 住民は絶対に外に出ないようにしてください―――」

 

 「モスキート娘が来たってことは、本格的に原作が始まる。上手いことやらないとな」

 

 着替えを終えた五条は改めて覚悟を決めて外へと駆け出し、一先ず辺りを見渡すためにマンションの屋上へと飛びのった。

 

 「うわ、実際に見るとさすがにあの数はキモイな」

 

 五条は、少し先の上空にて膨大な数の蚊が蠢き黒い雲のようになっているのが見え、無下限呪術があるため問題ないのは分かっていても近づきたくないと感じていた。

 

 「仕方ない、さっさとジェノスを見つけるか」

 

 ここで躊躇っていては、ジェノスがモスキート娘相手に自爆し、初っ端から原作からかけ離れた展開になってしまう。五条は上空に浮かび上がりながら蚊の大群に近づいていき、ジェノスを見つけたため一つ横の通路に着地した。そして、ジェノスがいる通路に駆け出しながら、ジェノスが気がつくように少々わざとらしく叫んだ。

 

 「うわ、キモイな!!」

 

 「!」

 

 五条の声に反応し、即座に片腕を失っていたジェノスが振り返った。そして、立ち去るように警告をした。

 

 「そこのお前、避難していろ。あの群れは意思を持っている。こちらに気付けばすぐ襲ってくるぞ」

 

 ジェノスの言葉の直後、二人の視界に影が差した。二人が同時に空を見上げると、上空に集まっていた膨大な数の蚊がダウンバーストのように降り注いだ。

 

――――ズドンッ!

 

 蚊は瞬く間に二人を飲み込んだが、蚊の海の中で光が瞬いた直後に大爆発が起き、一瞬にして殲滅された。

 燃え盛る炎の中、爆発の中心にてジェノスは残る右手を握り締めた。

 

 「お前を発見時に周囲500メートル以内に生体反応が無い事は確認済みだった。ここなら遠慮なく吹き飛ばすことが………」

 

 そこまで言ってから、ジェノスはようやく五条の存在を思い出し、焦りとともに五条がいた後ろを振り返った。

 

 「しまった! 一人巻き添えに……」

 

 「いやー、あの数の蚊はさすがに気持ち悪かったから助かったよ」

 

 ジェノスはあの爆発の中、炎を寄せ付けず平然と佇んでいる五条を見て思わず目を見開いたが、その直後に上空からモスキート娘の笑い声が聞こえたため、状況を思い出し臨戦態勢に入った。

 

 「ほほほほほほほほほっ、その子たちは必要なくなったのよ。バカねぇ。だって―――」

 

 次の瞬間、モスキート娘の姿がぶれるとほぼ同時に、ジェノスは背後から胴体を引き裂かれた。

 

 「―――こんなに強くなったんですもの」

 

 胴体が引きちぎれかけながらも、ジェノスは振り向きざまに高速で回転させ威力を増幅させた右腕を振りぬいた。しかし、モスキート娘がジェノスでは捉えきれない速度で移動したことで、その拳はいとも容易く空を切った。

 

 「あははははは! そんなパンチじゃ蚊も殺せ―――」

 

 モスキート娘はジェノスの周囲を高速で飛び回りながら、その鋼鉄の体をそぎ落としていこうとしたが、突き出した爪が差し込まれた手によって止められた。

 

 「―――何よあんた」

 

 「んー、通りすがりの一般人ってことで」

 

 五条は、ジェノスの胴体が盛大に切り裂かれたのを見て、万が一にでも自爆が成功してしまってはまずいので早めにモスキート娘の攻撃を止めることにした。

 

 「ふざけた奴ね。……まあいいわ、あんたから先に殺してあげる!」

 

 モスキート娘は五条の前後左右に高速で移動した後、眼前に突っ込んできたかと思うと、瞬時に上空へ躍り出て急降下をしながら両手の爪で五条を切り捨てようとした。

 

 「死になさい!!」 

 

 モスキート娘の想定では、前後左右へのフェイントで揺さぶり、視界を覆うように眼前に飛び込んだ瞬間に上空へ急上昇することで相手の視界から消え、上からの認識不可能な一撃で仕留めるはずだった。しかし、五条はその動きを普通に捉えていたため、モスキート娘が急降下を開始したタイミングで上を向いた。

 

 「へ?」

 

 五条と目が合ったモスキート娘は動揺するも、そのまま五条の頭へ爪を振り下ろした。そして、自身の爪が五条の眼前で停止したことに目を丸くした。

 

 「な、何よこれ―――」

 

 「赫」

 

 モスキート娘は、射線上にあって巻き込まれたビルの一部とともにその姿を消した。

 

 「ま、こんなもんか」

 

 「……!!」

 

 五条が容易くモスキート娘を降した姿を目撃したジェノスは、驚愕のあまり声を出すことが出来なかった。しかし、立ち去ろうとする五条を見て慌てて声をかけた。

 

 「ちょっと待った!!」

 

 「ん?」

 

 ジェノスに声を掛けられ五条は、少し緊張しながらも平静を装って振り返った。

 

 「俺は単独で正義活動をしているサイボーグ、ジェノスという者だ! ぜひ名前を教えてほしい!」

 

 「五条だ」

 

 「弟子にしていただきたい!!」

 

 「お、おお……」

 

 五条は、原作通りの展開に持っていくことが出来た安堵と、これから本格的にサイタマが戦った強敵たちと戦わなくてはならない憂鬱から曖昧な声を漏らすことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 モスキート娘は五条により倒されたが、その様子を観察している者がいた。

 

 「これはいいサンプルになりそうだ。無理矢理にでも彼の体を調べさせてもらおう。使者を送って彼を招待しろ。我々の「進化の家」にね……」

 

 「了解」

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