無下限、六眼持って転生したけどサイタマが居ない   作:一般通過ドブカス

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8話

数日後

 その日は、今にも雷が落ちそうな曇天であった。久しぶりの雨かつ隕石の後のタイミングという事で、五条は朝から深海王が来るのは今日じゃないかと疑っていた。

 

 「先生の順位がC級2位になっています。あと少しでB級に昇格できます」

 

 「もうか。もうちょっとランクをじっくり上げてく感じを楽しみたかったな~」

 

 ジェノスがその高性能なサイボーグの機能を無駄遣いしながら家事をしていると、協会から支給されている端末から着信音が鳴り響いた。

 

 「失礼。もしもし。J市? 少し遠いな……わかった……間に合うかわからないが今から現場に向かう」

 

 聞こえてくるジェノスのことがから察するに、どうやら怪人が現れ、緊急に出動を要請されたようだった。

 

 「先生、海人族と名乗る連中が数匹でJ市に出現し暴れているようです。たまたま居合わせたA級ヒーローが一人で戦いを挑むも、苦戦中とのことです」

 

 五条はジェノスからそう言われたことで、深海王が来たことを確信していた。そしてその時、テレビが緊急放送に切り替わって中継が始まった。

 

  「J市に現れた複数の怪獣は自らを海人族と名乗り、目についた人々に襲い掛かろうとしてます。ただいまヒーローが進行を食い止めようと抵抗していますが、体力の限界が近いようで取材陣の目から見ても疲労が伝わってきます。災害レベル虎!! 市民は決して近づかぬよう……」

 

 「……よし、行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 五条とジェノスがJ市にたどり着くと、ぽつりぽつりと雨が降り始めてきた。

 

 「んー、ちょっと上から見てみるか」

 

 五条はジェノスを脇に抱え、無下限呪術を用いてJ市の上空へ躍り出た。そして、空を飛び始めてからすぐにジェノスが強化された視力でビルが倒壊していく様子を確認した。

 

 「! 先生、おそらくあそこです」

 

 五条がジェノスが示した場所の上空に瞬時にたどり着くと、ちょうど全裸のソニックが一時撤退を決めたところだった。

 この時、五条は飛んできたことで到着するのが早くなり、深海王が避難シェルターにつく前に見つけてしまったことに気がついたが、来てしまったものは仕方ないとこのまま戦うことにした。

 

 「先生、怪人と変質者を確認しました」

 

 「変態は帰ったみたいだし放っておくとして。ジェノス、修行もかねて初めは君ひとりでやってみようか」

 

 五条は、雨を浴びて巨大化した深海王を直接見て余裕で対処できると判断し、一先ずジェノスに戦わせることに決めた。ジェノスを足元にあったビルの屋上に下ろすと、ジェノスは持っていたアタッシュケースを展開し、その両腕に強化装甲を纏った。

 

 「油断しないようにね」

 

 「はい、先生! 俺が排除して見せます!」

 

 屋上から深海王へ向けて高速で落下する勢いそのままに、ジェノスは深海王の頭を地面に叩きつけるように殴ると、その拳から大規模な爆発を引き起こした。まばゆい光と轟音が辺りを包みこむ中、全長2mほどの人型の姿に戻された深海王の拳がジェノスの背後から振り下ろされた。

 五条の言葉によって警戒を解いてなかったジェノスは、その振り下ろされた拳を胸部装甲の一部を削られながらも紙一重で回避することに成功した。

 

 「キレたわ。グチャグチャにしてあげる」

 

 「……今ので仕留めきれないか」

 

 頭部が陥没し、焦げ付いた全身から煙をあげる深海王は、地面にめり込んだ拳をゆっくりと引き抜きながらジェノスへ向き直った。そして、ジェノスはエネルギーを全身に巡らせると、両手からエネルギーを放出することで超高速で深海王へと飛び掛かる。

 

 ジェノスの蹴りと深海王の拳が、双方の顔面に同時にヒットした。ジェノスと深海王は足を止め、その場で両者譲らぬ近接選が繰り広げられた。二人の力が互角に思われたのは初めだけで、深海王は放つ攻撃の威力が一撃ごとに強力なものになっていく。

 

 「何ッ!?」

 

 ついに深海王は防御すらしなくなり、その一撃はビルを数個巻き込んでジェノスを吹き飛ばした。

 破損したパーツから電気が漏れ出ながらも立ち上がったジェノスだったが、その眼前に巨大化し再び本来の姿となった深海王が降り立った。

 

 「私に軽傷を負わせたことは高く評価するわ。もう治ったけどね」

 

 ジェノスは即座に両手から焼却砲を放った。しかし、深海王はその強靭な脚力による爆発的な加速により容易く回避し、ジェノスの背後から叩き落すようにして手を振り抜いた。

 

 「―――それはもう食らわないわよ」

 

 「ぐッ!」

 

 深海王の振り下ろした腕によって地面が爆発したかのように破壊された。ジェノスは背部の2つの放出孔からエネルギーを放出することで辛うじで致命傷を回避することに成功したが、躱しきれなかった右腕は一瞬にして粉砕されていた。

 

 「(速い!! そして……)」

 

 ジェノスは稲妻のような軌道で深海王へ迫り、その全身に全方位から無数の連撃を仕掛けるが深海王は全く動じていない。このままでは埒が明かないと判断したジェノスが焼却砲を放とうとしたその瞬間、ジェノスは地面に叩き落とされ、その反動でビルの側面にめり込んだ。

 

 「(……強い!! クソッ、今ので大半の部位が破壊された)」

 

 「あなたの攻撃、あの砲撃以外はまるで痛くないわ」

 

 ジェノスの体は既に限界であり、瓦礫から脱出することすらままならなかった。そんなジェノスにとどめを刺すべく、深海王がその足を向ける。

 

――――ジャスティスクラッシュ!

 

 深海王の背中に自転車が叩きつけられた。

 

 「正義の自転車乗り、無免ライダー参上!!!」

 

 そこには、C級トップの無免ライダーの姿があった。

 

 「よ、よせ!」

 

 ジェノスは、深海王の強さを身をもって理解しているため無謀な突撃を止めようとしたが、無免ライダーはジェノスに一瞬だけ目配せすると深海王へと駆け出した。

 

 「おりゃ!」

 

 無免ライダーが全力で振り抜いた拳は、深海王にとっては皮膚に触れられた程度の印象しか感じなかった。すぐに興味を失った深海王によって雑に振り払われた無免ライダーは、宙を舞いその背から地面に落下した。 

 深海王は無免ライダーには目もくれず、ジェノスへ歩み寄る。

 

 「あー、ごめんね。トドメ刺すの遅れちゃって」

 

――――ジャスティスタックル

 

 深海王は、自身の脚に縋りつく無免ライダーに思わず顔を向けた。

 

 「……い、今だ」

 

 「―――焼却!!!」

 

 ボロボロになった無免ライダーが決死の覚悟で生み出した隙をジェノスは見逃さなかった。深海王の意識が無免ライダーに向いた瞬間、ジェノスは瓦礫の下で密かにチャージしていた最大出力の焼却砲を解き放った。

 

 「―――やってくれたわね」

 

 雨により本来の姿を取り戻した深海王は、完全に不意を突いて放たれた焼却砲ですら回避して見せた。しかし、その片腕は焼却砲に飲まれたのか焼けただれていた。

 

 「むおっ」

 

 深海王の回避に巻き込まれる形で跳ね飛ばされていた無免ライダーが地面に落ちる寸前、無免ライダーは五条に首根っこを掴む形でキャッチされていた。

 そんな五条と無免ライダーを見下ろすように立つ深海王がその拳を振り下ろす。

 

 「死ね」

 

 「んー、油断してなくてもこの姿の深海王は無理だったか」

 

 五条の無限に阻まれ、深海王の拳が停止した。

 

 「あなた……私の殴打を防ぐなんてやるわね。今までのゴミとは明らかに違うわ」

 

 「悪いけど、君程度じゃ何をやっても僕には届かないよ」

 

 その単純な挑発に乗った深海王は、五条に対して全力で殴り掛かった。

 

 「赫」

 

 自身に迫る深海王の拳をものともせずに深海王の懐に入り込んだ五条は、その胸部に手をあてると上空へ向けて赫を放った。

 胸部を円形に抉り飛ばされた深海王の体が崩れ落ちる。

 

 「き、君は一体……」

 

 その様子を見ていた無免ライダーは思わず声をあげたが、怪人が倒された安堵から気を失ってしまった。五条はそんな無免ライダーが救急車に乗せられるのと、ジェノスがクセーノ博士の回収ドローンで回収されていく姿を見送ってからJ市を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 五条とジェノスは、パラシュートで投下してくれた郵便を回収してその手紙を読んでいた。ジェノスには無数のファンレターが届いており、五条には応援と非難の手紙が7:3の割合で10通ほど来ていた。実は、五条は六眼が綺麗で目立つため、原作のサイタマよりは若干ではあるが知名度があるのだ。

 そして、最後に開いた協会からの手紙には、五条をC級一位として認定する内容が書かれていた。

 

 「(よし、原作通りこのタイミングでC級一位になったか。まあ、昇級のタイミングを合わせる必要はない可能性は全然あるけど、バタフライエフェクトでとんでもない事になったら困るからな)」

 

 五条へ届いた協会からの手紙には続きがあり、Z市の支部に呼び出されていたので顔を出すことにした。

 

 「なんか協会に呼び出されてくるから行ってくるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まずは、C級ランキング一位おめでとう。今日の面接は我々4人で担当させてもらう」

 

 「よろしく頼むよ」

 

 ヒーロー協会Z市支部の一室にて、五条は4人の面接官の前に腰かけていた。

 

 「C級ランキングでトップに立った者にはB級ランカーへの昇格権が与えられる。ま、ずっとC級にいたいならそれでもOKだけれども。どうする五条君。B級に上がるか? 順位はまた最下位からスタートになるが……」

 

 「それじゃ、B級になってみるよ」

 

 五条としてはここでC級にとどまるメリットは何もないため、B級昇格を即断した。

 

 「そうか、昇格希望か……」

 

 面接官のうちの一人がそう呟き紙に何かを書き記すと、4人のうち唯一の女性の面接官が五条に紙を差し出した。

 

 「では、簡単な質疑応答と精神分析のマークシートに記入してもらいます」

 

 

 

 

 「―――五条君……彼か……例の深海王を()()()という」

 

 ヒーロー協会Z市支部の別室にて、モニターを通して五条の面接の様子を観察する幹部達の姿があった。

 

 「どう思う? 実力は確かだと思うが……」

 

 「身体能力は体力試験の総合最高記録という折り紙つきだ」

 

 そう尋ねた幹部に対し、偶然カメラに写っていた五条が深海王を倒した際の映像を流しながら眼鏡をかけた女性の幹部が答える。

 

 「確かに、実力だけで言えばS級相当はあるでしょう。ですが、彼は素性が不明であり、さらにこの映像を見るに身体能力を強化する超能力という自己申告は虚偽か一部の能力のみ申告したのでしょう。当然、全てを申告する義務はありませんが、情報を秘匿していることは事実です。無論、ただの在野の実力者の可能性もありますが、超能力者となるとタツマキの存在を考慮すると慎重に扱わざるを得ないかと」

 

 これは、五条が呪力の存在を誤魔化すために超能力だと申告した上で、無下限呪術という切り札を教える気はないため、身体能力の向上のみを申請した故に起きた弊害だった。

 

 これまで、S級2位であり協会の主力となっているヒーロー、戦慄のタツマキを狙う刺客として、何処かの組織によって生み出されたB級やA級ヒーロー相当の超能力者等がヒーロー名簿に登録して協会内部に潜り込むという事件が数件発生していた。

 その刺客は行動を起こしタツマキによって既に処分されているが、同じようなことを起こさないため、ヒーロー協会は超能力者、特に強力な力を持つものには警戒を強くしていた。

 

 そこに現れたのが、素性が知れないにも関わらずS級に届く実力がある五条であった。

 

 「確かに、タツマキの機嫌を損ねる訳にはいかないか。今は真面目に活動している上、昇格を希望していることだしもう少し泳がせてみようじゃないか。間者であれば、B級になって()()と接触すれば何か尻尾を出すかもしれない」

 

 それは協会の深読みでしかなかったが、そのおかげで五条はサイタマと同様のランクの推移となり、いきなりS級として登録されて頭を抱える羽目にならなくて済んでいたのだった。

 

 「相談役と連絡がとれました。つなぎます」

 

 PCの前で作業していた職員が幹部達に声をかけた。そして、モニターにA級一位ヒーローである"イケメン仮面"アマイマスクが映し出された。

 

 「もしもし。ドラマ撮影の合間だ。手短に済ませたい」

 

 「いつもお世話になります。今回C級一位がB級昇格を希望しています。いつも通り、昇格の最終判断をいただきたいと……」

 

 その言葉に対し、アマイマスクはあまり興味が無いようだった。実際、彼が口を出したかったのはA級以上のヒーローに関することだけだったのだ。

 

 「B級昇格か……そんなの僕を通さなくたっていいよ。C級やB級なんてどうだってかまわない。とはいえ、まぁいい。見てやる」

 

 アマイマスクは、面接中の五条の映像を見ると率直な感想を述べた。

 

 「ほう、随分と綺麗な目をしている。磨くと光るかもしれない。……だが、オーラはC級かB級って感じだな。不祥事さえ起こさなければいいよ。昇格で」

 

 仮に呪力を感じ取ることが出来ていたら、ここでアマイマスクが五条に興味を持ち面倒なことになっていたかもしれないが、この世界における呪力の性質により幸いなことにそうはならなかった。

 こうして、五条はB級101位となった。




呪力がこの世界で感知できない設定はアマイマスクに注目されたくなかったのも理由の一つです。呪力感じられたら一目で強いのバレて即S級ルート…
次回、やっとボロスの船が来てくれます。
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