無下限、六眼持って転生したけどサイタマが居ない   作:一般通過ドブカス

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9話

――――流水岩砕拳

 

 バングの両腕が流れるように空間をなぞる。それを見ていた五条は、ただそれだけの動作でバングの周囲の空気が流れたことを感じ取り、その洗練された動作を目に焼き付けていた。そして、改めて流水岩砕拳の、この世界の武術の異常性を感じた。

 

 「(やっぱり、この世界では武術として完成した技とそうでない攻撃では効果に天と地ほどの差が生まれている)」

 

 この世界の武術家にとっては、武術を極めると超常の力を発揮出来たり、あらゆるものを受け流したり、攻撃と共に斬撃を放ったりすることが可能になるのは当たり前の事だ。だが、五条にとってそれはもはや魔法と何ら変わらない非現実的な力だった。

 

 「(だからこそ、この世界の超常の武術を身につけることで更に強くなることができる。サイタマには必要なくても、俺にはこの技術が必要だ)」

 

 五条はこの世界においても非常に高いレベルで近接戦闘を行うことが出来るが、それは前世の武術の域を出ないため自身の限界以上の力は発揮できない。

 わかりやすく言えば、今の五条がどんなに工夫して物を殴っても斬撃など発生しないのだ。だからこそ、この世界の武術に期待していた。

 

 「まぁ、こんな感じじゃ。どうじゃ、やってみんか? ジェノス君も勘がよさそうだからすぐに身につけることができるかもしれんぞ?」

 

 「いや、俺は遠慮します。俺が求めるものは護身術ではなく絶対的な破壊力です」

 

 五条は、バングから流水岩砕拳を習う約束を取り付けてから既に数回この道場を訪れていた。そして、今日は珍しくジェノスもついて来ていた。

 

 「貴様! 流水岩砕拳を愚弄するか! バング先生の一番弟子チャランコ参る!」

 

 「―――ぐえッまいった」

 

 ジェノスに対して怒りを見せたチャランコだったが、喉を掴まれて壁に押し付けられたことで一瞬で降参した。

 

 「これが一番弟子? バング、お前の道場は実力者揃いと聞いていたんだが」

 

 「ん……まぁ、弟子の一人が暴れおっての……」

 

 五条はこの道場にチャランコしか居ないことから察していたが、神を除けば五条の原作知識の範囲内では最大の壁と考えていたガロウに関するストーリーは順調に進んでいるようだった。

 

 「そうだ、ジェノス。時間があるならさわりだけでも流水岩砕拳を学んでおいた方がいいと思うよ」

 

 「―――やります」

 

 五条が今後現れる人型に近い怪人たちのことを思い出して流水岩砕拳を進めると、その理由を聞くまでもなくジェノスはあっさりと習うことを決めた。

 その時、息を切らし立ち上がるのもやっとのヒーロー協会の職員がバングの道場の扉を勢いよく開いた。

 

 「シルバーファング様! ヒーロー協会の者です! この度、S級ヒーローに非常招集がかけられました!」

 

 そして、その職員はバングに協会本部まで来るように頼むと、ジェノスを見つけるとジェノスにも召集を伝えた。

 

 「S級が呼ばれるということは先生の力も必要になるかもしれない。一緒に来てくれますか?」

 

 「……ああ」

 

 五条が原作知識として知っているのは怪人協会編が終わったところまで。そして、そこまでに登場した敵の中で別格と認識していたのがボロスとガロウだ。そして今日、五条はその片割れであるボロスと戦うこととなる。

 五条は、この世界に転生して以来、最大となる緊張を味わっていた。しかし、ここを超えられなければ先は無いため、逃げるという選択肢はなかった。

 

 「(ま、ガロウの最終形態に比べたら遥かにマシだろう。それに、案外簡単に倒せる可能性もある)」

 

 五条は自分にそう言い聞かせると、ひそかに闘志を高ぶらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 五条とジェノスとバングの三人はA市にあるヒーロー協会本部に来ていた。三人が協会本部に入ると、アトミック侍が声をかけて来た。そして、アトミック侍と会話をしていると、4人の後ろから怒りをはらんだ声が物凄い勢いでまくし立てた。

 

 「ちょっと誰よB級の雑魚なんて連れてきたの! 私たちに対して失礼だとか思わないの!? 呼ばれても普通来るかしら? どういう神経してんの? S級とお近づきになりたいとか浅い考えでここに来たんでしょ!? 不愉快。消えて」

 

 五条が振り向くと、そこには予想通り戦慄のタツマキがいた。五条は実際に見たタツマキが思っていたより小さくなく、女性として小さい方ではあるが一般的な範囲内の身長に収まっていることに衝撃を受けた。

 

 「(ちんちくりんなイラストの印象が強すぎて幼女くらいの大きさだと思ってたわ……)」

 

 さらに、タツマキの服装があまりにも薄っぺらい布な上に際どいものだったことに困惑した。

 

 「(この服装、現実で着てるのはもはやただの痴女だろ……なんで誰も突っ込まないんだ。この服で飛び回るとか正気か?)」

 

 「もう大体集まっているようです。席につきましょう」

 

 五条がそんなことを考えていると、ジェノスが指定されていた部屋に歩き出した。

 

 「無視する気? ちょっと……!!」

 

 五条も一先ずタツマキはスルーすることに決め、ジェノスの後に続いた。

 

 会議室にはS級一位のブラスト、S級六位のメタルナイトを除いた全てのS級ヒーローが集結していた。B級の五条がしれっと座っていることに関しては、何人かが疑問を抱いたが特に言及することはなかった。

 

 「早速本題に入らせていただこう」

 

 ヒーロー協会の幹部の一人、シッチはそう告げると、今回S級全員に召集をかけた理由を話し始めた。

 その内容は、的中率100%を誇る預言者が残した最後の預言、「地球がやばい」という予言に対処する心構えをしておいて欲しいという内容だった。その説明を終えた直後、室内に揺れと轟音が響いたと思いきや、一瞬にしてA市が破壊された。

 

 「わあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 シッチがあげた叫び声に皆が気がとられてるとき、覚悟を決めていた五条はすぐに天井に赫を放ち穴をあけると外へと飛び出した。A市が壊滅している様子が見て取れたが、こうなる事は既に覚悟していたため、五条が動揺することはない。

 

 A市に関しては、無下限呪術の規模では砲撃を防ぎ切ることは出来ない上、事前に五条が何かを言ったところでタツマキが動くとは思えないため初めから諦めていた。

 

 「これが船か……実際に見るとスケールが違いすぎるな。砲弾もデカすぎんだろ……」

 

 五条の眼前で宇宙船から放たれた砲弾が停止するが、砲弾があまりにも巨大すぎるため五条は前が何も見えなくなってしまった。

 

 「ふぅ……ここが正念場だ。気合い入れていくか! 赫!」

 

 五条は砲弾を貫くように赫を放ち、宇宙船に穴をあけるとそこから内部へと侵入した。

 五条が危険を承知で一人でボロスと戦おうとしている理由は明白だった。ボロスに勝てない程度の力しか無いのならば、どのみちガロウか神に殺されて死ぬ。仮にここでS級ヒーローと協力して生き延びたとしても、どのみち死ぬのなら五条にとって意味はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 五条は、宇宙船内部に蒼と赫を撒き散らして破壊しながら突き進んでいた。六眼を持つ五条にとってこの程度で消耗することはないため、宇宙船があまりにも広いこともあって容赦なく無下限呪術を使用していく。

 

 「ふはははは、よくぞここまで来たな侵入者! だが、ここまでだ! このグロリバースを倒すことなど不可能なのだから!」

 

 壁を突き破った先の広い空間に出ると、頭と両手が鋭い牙の生えた口になっており、全身に棘が生えた宇宙人が高らかに名乗りを上げた。

 

 「オレ様のアシッドブレスで溶けてなくなれ!」

 

 「赫」

 

 グロリバースが酸のブレスを吐く中、五条は適当に赫を放った。

 

 「ぐおッ!?」

 

 赫が直撃したグロリバースだったが、その鎧のような外骨格は砕けただけで倒れることはなかった。その様子を見た五条は、グロリバースへの認識を改める。

 

 「(おいおい、サイタマに瞬殺された印象しかなかったが、普通に今まで戦ってきた怪人の中でも強い方だな。この酸も、まともに当たれば危険そうだ)」

 

 グロリバースが放たブレスの後を見てみると、頑強な素材で作られているはずの宇宙船の床が何層にもかけて溶けているのが見て取れた。

 

 「俺様の肉体を砕いたのはボロス様以外ではお前が初めてだ!! だが、これならどうだ! クロスバイト! からの、スクリュー尻尾突き!」

 

 グロリバースは阿修羅カブトとは比にならない速度で五条の背後に回り込むと、その両手の牙を五条の首と脇腹らに突き立て、尻尾を高速で回転させながら心臓へ向けて突き刺した。

 

 「位相 波羅蜜 光の柱 術式反転「赫」」

 

 グロリバースの攻撃は無限の壁に阻まれ五条には届かない。そして、完全詠唱を行った赫によってその上体を消し飛ばされた。

 

 グロリバースを倒した後もボロスの場所を探すついでに宇宙船を破壊し、無限に湧き出る戦闘員を倒しながら進む五条の頭に直接声が鳴り響いた。

 

 「(侵入者に警告する。退去せよ。それ以上踏み込んでみろ! お前を殺すぞ!)」

 

 「退去しろっていわれてもね。出口の場所なんて知らないよ」

 

 そう言って、五条は右の通路に足を向けた。

 

 「こっちであってる?」

 

 「(ああ、そのまままっすぐ行って突き当りの階段を上がれ)」

 

 その声を聞いた五条は、反対側に走り出した。

 

 「(ままま待て、そっちはまずい!)」

 

 その後も頭に響く声が焦る方向に進路を取り続けると、五条の前に一際大きな扉が現れた。

 

 「ここか。お邪魔しま~す!」

 

 五条は扉の中心に赫を放ち粉砕すると共に、部屋の中に飛び込んだ。

 

 「まさか短時間でここまで来ようとは。ようこそ我が船へ」

 

 五条の姿を見たボロスは、その体から大してエネルギーを感じないにも関わらず自身の勘が過去最大級の強敵だと訴えてくる事実に驚き、迷わずに自身の勘を信じた。

 

 「これは……思ったよりもヤバイかもな」

 

 一方で、五条はボロスの力の片鱗を感じとり、自分の想定を遥かに上回る強者である可能性が生まれた事に冷や汗を流した。

 さらには、ボロスは五条の倍ほどの巨躯であり、その想定外の大きさに体術戦における戦術を練り直す必要があった。

 

 「おい」

 

 飛んできた無数の瓦礫が五条に当たる前に停止した。

 

 「貴様は宇宙一の念動力使い……ゲリュガンシュプが―――」

 

 「位相 波羅蜜 光の柱 術式反転「赫」。悪いね。君と遊んでる余裕はないんだ」

 

 五条はゲリュガンシュプをグロリバースと同格と判断して瞬殺すると、ボロスへと向き直った。

 

 「俺の配下をことごとく……素晴らしい!」

 

 五条とボロスは、お互いの間合いを図るようにゆっくりと距離を縮めてゆく。

 

 「戦う前に名を聞いておこう。俺は暗黒盗賊団"ダークマター"の頭目であり、全宇宙の覇者ボロスという者だ」

 

 「僕はしがないプロヒーロー、五条という者だ。出来れば、こんな辺境の星は放っておいて欲しかったんだが」

 

 五条のその言葉を聞いたボロスは嬉しそうに告げた。

 

 「予言があったのだ。宇宙中を荒らし回り俺に刃向かう者も誰一人いなくなり、退屈してたんだ。そんな時にある占い師が言ったんだ。遠く離れたこの星に俺と対等に戦い楽しませることができる者がいるとな。20年前のことだ。ここまで来るのに時間がかかった……。手下どもはあの予言は俺達を一時的に遠ざけるためのデマだったと思っているが、いま確信した。―――さぁ、俺の生に刺激を与えてくれ。そのために来たんだ」

 

 両者が立ち止まり、ゆっくりと構えを取った、

 

――――領域展開 無量空処

 

 狙うは封殺。互いに無数の未知の手札を持ち合わせる中、五条はボロスの危険性を最大限高く見積もったが故に賭けに出た。初撃にて、必殺の意思を込めた最強の切り札が解き放たれる。

 領域は瞬く間に広がり、両者が立っていた空間全てを飲み込んだ。




白金精子<覚醒ガロウ(白金精子戦後)<<覚醒ガロウ(サイタマ戦で成長)=ボロス<<<ガロウ宇宙的恐怖モード<<<超えられない壁<<<サイタマ くらいの感覚で書いてます。
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