TS女子寮生活 作:道草クウ
TS女子寮1
◯日記 五月四日(月)
このありえない状況を整理するために、今日から日記をつけることにした。
誰かに見られた時のために弁明しておくが、これは俺の妄想とか、創作とかではなくて、この身に実際に起きたことである。
朝起きたら女になっていた。
は? 意味わからん誰か助けて。
ちょうど昨日、GWの帰省から早めに寮に戻ってきたばかりだった。早めに戻ったからか運動部連中くらいしかいなくて、起きた時にはみんなもう部活に行っていたのは幸いだった。飢えた男子校運動部どもの群れに美少女がいたらなにされるかわからん。
あ、そうそう。結構可愛くなっていた。割と絶世の美少女。いやどうでもいいんだけど。
意味わからなすぎて途方に暮れていたら、知らない女性に拉致された。
車に押し込まれて、なぜか同系列の女子校の寮に連れてこられた。
今日から俺はこっちの学校に通うのだという。
なにこれ、誰かの陰謀? 寝てる間に薬でも飲まされた? もしかしてこの学校、闇の組織だったりする?
彼女は女子校の教師らしく、「うちの学校ではたまにこういうことあるのよね~。性転換は初めてだけど」なんて慣れた感じで言われた。
おい、そんな軽いノリで性転換を受け入れるな。もっと深刻そうにしろ。
で、問題はもう一個あって。
同じ寮に幼馴染の
これから俺、どうなっちゃうのー!? ちゃんと男に戻れてると信じるからな、未来の俺!
◯
「……で、それを信じろって? あなたが、あの
「いやマジなんだって。俺も信じたくないんだけど」
ソファに腰かけて足と腕を組んだ少女は、
彼女は幼馴染であり、今日からルームメイトになった……らしい。
兎乃は部屋着なのか、ショートパンツにトレーナーという服装だった。足はさらけ出され、目のやり場に困る。
どうやら、彼女も早めに寮に戻っていたらしい。
高校二年生になり一ヶ月、GWで束の間の帰省から戻った……そんなタイミングだ。
俺が通っていたのは男子校、こっちは女子校で、同じ学校法人が運営している私立の高校である。兄弟校? 姉妹校? というやつだ。
兎乃と会うのはなにげに久しぶりだった。
幼稚園、小学校、中学校とずっと一緒だった。クラスも一緒になることが多くて、小学校高学年くらいまではよく一緒に遊んでいたと思う。
でも、いつからか……互いに性別というものを意識するようになってからか、疎遠になっていた。
中学校では、顔を合わせてもほとんど会話しなくなった。俺も兎乃も、同性の友達とばかり話していたと思う。
高校も、この学校に入学したのは母から聞いて知っていた。
でも、同系列とはいえ違う学校。さらには寮に入っていたから、まったく会う機会がなかったのだ。
久方ぶりに見た兎乃は……なんというか、綺麗になっていた。
着飾っていない部屋着だというのに、垢抜けた雰囲気と大人びた顔つきで思わず見惚れてしまう。身体も女性らしく成長し、同じ部屋にいるというだけで緊張してくる。小さい頃は、よく二人で遊んでいたというのに。
「なに見てるの?」
「成長したなって」
「虎白は小さくなったね」
たしかに。
兎乃が言うように、俺は美少女になっただけでなく、身体が全体的に小さくなっているのだ。
175cmあった身長は、150cm程度に。他にも、肩幅や手足、頭……なにからなにまで小さくなっていた。おかげで、普通に動くだけでも違和感がすごい。
ちなみに、胸はほんのちょっとだけ大きくなっていた。ほぼ誤差みたいなものだけど。
……いや、大きかったら色々困りそうだし、いいんだけどさ。なんか悔しい。
兎乃は女子にしては背が高く155cmくらいはある。身長が逆転してしまった。
「ん? ってか、信じてくれるんだな。俺が超絶美少女になったこと」
「自分で超絶美少女とか言っちゃうの……?」
「鏡見た瞬間惚れそうになったね」
「この状況でおかしなことを言い始めるあたり、間違いなく虎白だね……」
謎の理論で確信してくれた。
「いいのか? もっと疑えよ」
「なんでそっちが食い下がってくるのよ」
「証明のために、俺しか知らない兎乃の恥ずかしい過去を列挙するからさ」
「ぜっったいにやめて!」
ばっと立ち上がり、顔を真っ赤にする兎乃。
幼少期に長い時を過ごした相手だ。当然、他の人が知らないこともいっぱい知っている。
「小三の時、教育実習の先生が好きだったこととか言おうと思ったのに。いやー、あの時の兎乃は目がキラキラしてたなぁ」
「虎白こそ、好きな子にイモムシをプレゼントして泣かせたこと忘れてないからね」
「よーし、傷つけ合うのはやめよう! 平和が一番!」
危ない、お互いジャブだから夜悶絶するくらいのダメージで済んでいるが、このまま行けば致命傷級の過去が飛び出してくるかもしれない。
死ぬなら男の姿で死にたい……!
「待って、てことは私、虎白と同棲するの……?」
「安心してくれ。手を出しようがない」
「ばか。下ネタ言うな」
「下ネタの判定広すぎない?」
兎乃はクッションを両手で抱き、顔を
「ちょっと嬉しいかも……」
「ん? なんて?」
「なんでもない!」
クッションが飛んできた。
おいやめろ、俺はひ弱な小柄美少女だぞ。
「と、とにかく! 変なことしたら怒るから!」
「もう怒ってるじゃねえか」
「だいたい、虎白こそ受け入れすぎじゃない?」
「わからんすぎて逆に面白くなってきた」
そりゃあ、不安だし元に戻りたいけど。
割と楽観的なんだ、俺。兎乃も知ってると思うけど。
「しかし、マジで意味わからないよなぁ」
「説明しよう!」
そう叫びながら扉を開いたのは、俺を拉致した女性だった。
「あ、
兎乃は面識があるようで、驚きもしない。
和良比先生とやらは「はい、これ君の荷物ね」と段ボールを置いた。
着の身着のまま連れて来られた俺の荷物を、寮に取りに行ってくれたのだ。
「あ、ども」
「汐月。そのちんちくりんは、間違いなく尾野虎白だよ」
「おい誰がちんちくりんだ」
グラマラスな先生からしたら、そうかもだけど。
「それで、説明って?」
「うむ。君の性転換は、おそらくこの学校に長年伝わる、とある現象によるものだ」
和良比先生は腕を組み、もったいぶってから口を開く。
「夢煩い。そう呼ばれている」