TS女子寮生活 作:道草クウ
TS女子寮2
◯日記 五月四日(月)メモ
この女子校には「夢煩い」という超常現象があるらしい。
曰く、それは少女の願い(夢)によって引き起こされる。
曰く、一見して願いが叶ったかのような、超常現象が起こる。
曰く、止めるには、本人がそれを願う必要がある。
……で、俺はなんで男に戻らないんだ? めっちゃ願ってるけど??
◯
「夢煩い……なんか、より謎が深まったな」
「和良比先生、色々知ってそうなのに帰っちゃったし」
再び二人きりになった部屋で、
「とりあえず、戻るまではここで暮らしていいか? 男子寮に戻るわけにもいかないし」
「うん。でも、他の子たちもいるから……」
「ああ……」
見たところ、寮のシステムや間取りは、男子寮と同じようだ。
一般的なイメージとは違うかもしれない。
まず、マンション一棟がまるまる寮となっている。部屋は2LDK。つまり、キッチンとリビング兼ダイニングがあり、寝室が2つある形式だ。もちろん、浴室やトイレもある。
生徒の自立のため、生徒四人程度で共同生活を送る……ルームシェアみたいなシステムになっている。
「この部屋には私の他に2人、女の子がいるの。まだ帰省中だけど、どう説明しよう……」
「隠したほうがいいよな、やっぱり」
「うん。見た目は女の子なんだし。騙してるみたいで申し訳ないけど」
なぜか性転換しているとはいえ、俺は男だ。
男と一緒に生活するなんて、普通は嫌だろう。
余計なトラブルを回避する意味でも、とりあえずは隠しておきたい。
「あっ、でも隠してるからって、2人に変なことしちゃだめだからね!?」
「しねえよ」
「私、見張ってるから」
兎乃が腕を組んで、じーっと俺を見つめる。
昔から、怒らせたら怖いからなぁ。……いや、変なことするつもりなんてないけど。
「ところで……部屋は?」
ちらりと、寝室に続く2つの扉を見る。
ルームメイトは4人。寝室は2つ。当然、誰かと相部屋だ。
「今は、私が一人部屋だから……」
「よかった。兎乃と一緒か」
「よかっ……!? な、なんで!?」
「いやだって、俺が男だって知ってる奴じゃないとまずいだろ」
「なんだ、そういうこと……」
安心したような、ちょっと不満げなような、微妙な表情をする兎乃。
「それに、ルームメイトは気が合う奴のほうがいいしな!」
「! そ、そうよね! まあ? 一応幼馴染だし?」
一転、急に顔が綻ぶ。
なんだか、昔に戻ったみたいだ。だいぶ疎遠だったけど、これならうまくやれようである。
ふふん、と嬉しそうな兎乃を置いて、俺は段ボールを抱え上げた。
「そっかそっか、
「じゃあ、荷物運ばせてもらうな」
「おっけー。……ん? 待っ……!」
慌てたような声が聞こえたのと、扉を開いたのはほぼ同時だった。
視界には、二段ベッドと2つの勉強机。そして……。
洗濯バサミで吊るされた、下着。
「だめえええええ」
「いてっ」
飛びかかってきた兎乃に押し倒される。
いや、普通に受け止めようとしたんだけど、ひ弱な今の身体では無理だった。辛うじて受け身に成功し、頭を打つことは回避する。
俺に覆いかぶさる形になった兎乃は、顔を真っ赤にしながら俺を睨む。
「見た?」
「まあ、なんだ。いつの間に、大人っぽい下着を買うように……」
「見すぎ」
ぺしっと軽くチョップされた。ひどい。
「べ、別に、寮で他の子に見られるから、ちょっと見栄張りたいっていうか……」
「なんの言い訳にもなってないぞ」
「はあ……。油断してたぁ」
兎乃は立ち上がり、寝室に入る。俺を睨んでから、扉をぴしゃりと閉めた。
「片付けるから、ちょっと待ってて」
「へいへい」
扉の向こうから聞こえる声に、肩をすくめて応える。
しかし、前途多難だな……。
このくらいの事故、一緒に暮らしていたら何度も起きそうだ。
気をつけないと……。
男に戻った時、さらに険悪になりかねない。
「入っていいよ」
ソファでゆっくりしていると、兎乃に呼ばれた。
部屋は綺麗に整頓されていて、衣類の類はまったく見えない。
「おー、片付いたな」
「忘れろばか」
「ごめんごめん」
からかいすぎると、いよいよ本気で怒られそうだ。
黙って自分の荷物を運び入れ、荷解きをする。
「……当たり前だけど、男ものしかないな」
今の服装も、ジャージの裾をまくって無理やりサイズを合わせている。身長がだいぶ縮んでいるから、Tシャツもだぼだぼだ。
クローゼットの内側に貼られている姿見が目に入る。
うん! オーバーサイズでも可愛いな!
「なに自分を見てニヤニヤしてるのよ」
「いやぁ、我ながら美少女だなって」
「本当に可愛いのがなんかむかつく」
「すまんな」
「私の方が可愛いけどね!!」
まさか幼馴染と可愛さで競うことになるとは。
そんな調子で、女子寮生活が始まった。