バカな子ほど可愛いと言うけれど 作:道長(最近灯に目覚めた)
正統派ガンダムファンの皆さん、すいません。
なんか頭空っぽの話を書きたかったんです。
「お父様の裏切り者―!」
叫んだ少女をなんとか避難させると、キラ・ヤマトは姉から貰った、割りと機密よりな気がする最新タブレットで連絡を取った。2コール後に目当ての人物が出た。
「姉さん⁉ 今どこに!」
「キラ? 最低限の指示が終わったからこっちからかけるところだったの。どうせシェルターはいっぱいでしょ。地図アプリをアクティブにして、ナビゲートするから。そしたらお友達を連れて機密ブロックまで来てくれる? 最悪の最悪は回避出来ると思うから」
いつも通りの少しハスキーがかったダウナー気味の声。間違いなく自分の義姉であるホシミ・ヤマトの声だった。
「っ。姉さんは何か知ってたの!?」
「知らないよ。でも覚悟はしてた。私はキラが生きてれば良いけど、キラはそうじゃないでしょ。急いで。出来れば20分以内」
「いつも勝手だよね姉さんは! 分かった。すぐ行く!」
昔からそうだが姉はやるだけやって後始末はぶん投げる癖がある。他人の目がある時は体裁を繕うが、家族だけになると途端にだらしなくなるのだ。自分もアスランがいると甘えっぱなしになるから強くは言えないが、流石にハイスクールに入った後、全裸で居間に出る真似はしない。
そんな姉だが、基本的に家族を裏切るようなことはしな……、あった。忘れられる訳が無い。自分が精○した翌日の夜、自室のベッドで襲われた。自分は訳も分からずされるがままで、両親が気付いて入ってきたのは全てが終わった後だった。姉さんは何故か分からないがベッドサイドでココア○ガレットを咥えていた。姉さんは当然父さんに拳骨を落とされ、ボクは母さんに抱きしめられていた。
父さんが「なんでこんなことをした!?」と問い詰めると、姉さんは「キラのパンツを嗅いだら精○の匂いがしてムラムラしてつい」と言った。
もう一度拳骨が落とされた。すると姉さんは頭をさすりながら
「血が繋がってないから問題ないじゃん」
衝撃の発言に思考停止するボク、息を呑む両親。全裸で正座する姉。最初に口を開いたのは母さんだった。
「あのねキラ。貴方は私の姉夫婦から託された子なの」
その時、心の隅でずっと引っ掛かっていた「なんで自分をコーディネーターとして生んだのか」という疑問が氷解した。ショックだったけど、それでも二人から愛されていることを実感できた。今では例え血が繋がってなくとも自分は2人の子どもで、2人はボクの両親だと胸を張って言える。
そんな様子を「私のおかげで家族の絆が深まった」と言わんばかりのドヤ顔でいる姉には、もう一度拳骨が落ちた。
後日、姉は強制的に留学させられた。父さんは「学年のテストで1位になるまで帰ってくるな」と勘当同然で送り出したのだった。地元の学校でも真ん中より下といった順位をウロウロしている姉だ。学年1位なんて土台無理に決まっている。父さんとしては卒業する頃には頭が冷えて、自分の馬鹿さ加減が分かるだろうとのことだった。ボクにちゃんと謝れたら許してやるつもりだと。
年度末にコーディネーターが混じっている中、首席の成績表を携えて、飛び級で卒業してきた姉が堂々と帰宅してきた。この人、本当にバカなんだなって思った。
あの時の両親の心底申し訳なさそうな顔は今でも鮮明に覚えている。大丈夫だよ。父さん。母さん。アレでも僕の姉さんだから。
帰ってきて早速ボクを部屋に連れ込もうとしたので、当然父さんに拳骨を落とされ、翌日予定を早めてモルゲンレーテの社員として社員寮に送られた。
そんなバカな姉だが、本当に困っている時は頼りになる。あと家族に対しては遠慮しないが、その外、例えばボクの友人に迷惑をかけることはしない。だからアスランが来ている時は、過干渉しない普通の姉だった。母さんが忙しい時はご飯も作ってくれたから、アスランにとっては良い姉に映ったと思う。
「おーい。キラー」
「みんな! 着いてきて、機密ブロックで姉さんが待ってる」
「機密ブロック!? 大丈夫なのかよ……」
「分からない。けどここにいるよりはマシだと思う」
時折不安の声を漏らしながらも、何とかみんなを指定ポイントに連れて行くと、前を開けた白衣にパンツスタイル、そして口に棒付きキャンディというスタイルで壁に背を預けて待っていた。ただし白衣は所々破けており、手には血の跡がある。
「姉さん! 大丈夫!?」
「おかえりキラ、こういう事態だから一悶着あってね。身体は大したことないから気にしないで。っと。ひーふーみーやーとー、揃ってるかね。はーい、みんなこれ首にかけて。これから貴方達を民間協力者として船に乗せるから」
「ちょっ! 自分でつけるよ!」
4つのIDカードはトールに押し付けたのに、何故か自分だけ、姉の手自ら首に下げられた。
「こういう時でも相変わらずね、ホシミさんは」
苦笑するミリアリアに釣られるように他の皆も小さな笑いが零れた。緊張しっぱなしでこわばった身体から、少しだけ力が抜けた。
こういう時だけは本当に頼りになる。こういう時だけは。何とかなりそうに思えるから。
「もう少しちゃんと説明すると、これから貴方達を戦闘行為に巻き込まれた臨時の民間協力者として、軍事機密の塊の船に乗せます」
「えっ、それ大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
カズイの素朴な疑問に即答する姉。カズイの覇気のない特徴的なたれ目が、その言葉でますます垂れ下がった。
「でも今から空いてるシェルターを探すのはもっと危険でしょ。それにこれからザフトと本格的な戦闘が始まるとなると、脱出艇より船の方がまだ安全」
「オーブは中立国だろ!? なんでザフトが……」
姉さんとサイの言葉にボクを含めたみんなの間で驚きと戸惑いが広がる。それを見た姉さんは心底面白くなさそうに飴を噛み砕いて
「ザフトが想像以上に優秀だったのか、連邦が間抜けだったのか、それともオーブの上で何かあったのか……。答えられなくてごめんなさいね。なんにせよ、まずは生き残らないと。文句はお互い、脱出してからにしましょう。キラ以外は私が艦に案内するから」
「はぁ……、また無茶ぶり?」
思わず盛大なため息が出た。こういう切羽詰まった時に無茶をさせられるのは大抵自分なのだ。夏休みの宿題だってそう。絵日記1か月分とか何を考えて任せたのだろう。
「キラの見たものが私の全て」とキメ顔で言っていたが、どうフォローしてもバカを絵に描いたような図だった。あまりに見事過ぎて、最終日だけは描いても良いなと、思うくらいには。
勿論すぐに父さんの拳骨が落ちた。
「もう1個下のブロックにキラ用に作ったMSがあるから、それを地表部分まで動かして。場所はタブレットで案内するから」
「えっ。何それは」
今日一番の衝撃が走った。
「何のためにキラの部屋に馬鹿でかいシミュレーター置いたと思ってるのよ」
「アレ、姉さんの部屋に置いておけなくなった粗大ゴミじゃなかったの? アレのせいでベッド入れられなくて、布団で寝る羽目になってたんだけど?」
「その粗大ゴミでこの子達とよく遊んでたでしょ。おかげで色々データが取れたから助かったけど」
「それはまぁ……」
「でも、何でキラ用にMSを?」
トールのもっともな疑問に全員の目が姉さんに向く。ちなみにトールは、ゲームとして置いていったシミュレーターで、自分の次にスコアが良かったりする。次点は意外にもミリアリアだ。
「それはね。20連勤を迎えた深夜だったわ。いつものようにカフェイン入りのキャンディを舐めながら、他人の提案したGAT―Xシリーズを製造している時、ふと思ったの。なんでこの仕事しているんだろうって」
「社会人って大変だなぁ……」
カズイの呟きに返すものは一人もいなかった。自分も数年後、終わりのないデスマーチが日常になるなど、考えるだけで嫌になる。マーチならまだいい。ロンドだったらどうしよう。
「あんまりにも虚しくなったからこう考えたの。そうだ。キラのためとMS作って、ついでに他のも組み上げちゃえば良いじゃん。って」
「もしかしてキラのお姉さんって…?」
「気を遣わなくてもいいよ、ミリィ。前から言ってるでしょ。この人バカだって。カズイ、これでも姉さんと付き合いたい?」
「……まだ行けるよ」
心底悩んだ表情をしつつ頷いた。カズイはまだ幻想を捨てきれないようだ。
何故か周りからは「良いお姉さんだな」と、羨ましがられていたが、
そんなに欲しいならもらってくれよと思っていた。でもカズイにこのバカ姉を押し付けるのは、友人として申し訳なさすぎる。
「キラのためにMSを作ると考えたら急に力が湧いてきてね。張り切り過ぎて毎日3本だったエナドリが6本に増えちゃった」
「むしろ健康状態悪化してません?」
「それにキラの乗るMSを自分色に染め上げると思うと……、なんていうか……その…下品なんですが…フフ……興奮……しちゃいましてね」
「キラ、コレは無理だ」
「いいんだよカズイ。ボクも友達に身内の恥を押し付けずに済んで良かった……」
ひび割れていた幻想を、完全に打ち砕かれたカズイが呻くように告白した。やっと分かってくれたんだね。ボクの苦労が。
「とまぁ、同時に性欲も満たされたから仕事が進むこと進むこと。元々量産案や技術実証用に実験機の枠はあったし、出来レースとは言え、コンペ用に試作した私発案のHフレームはあったから、出来ちゃったんだなー、これが。諸々の新技術含めて」
「性欲って……、いや。キラ。なんかゴメン」
「本当にキラが乗るハメになるとは思ってなかったけど。無駄話終わり。行きましょうか」
「今の流れからよく軍艦案内出来ますね」
「大丈夫。ボクがいなければ、ちょっと危ないだけの成人女性だから……」
「まだ危ないのかよ……」
ドン引きしつつも何とか、みんな姉さんについていってくれた。
「ナビを見るにこの辺りなんだけど……、あった」
緊急時用の階段を下り、非常灯便りの暗い通路を歩くことしばらく。開けた区画に出ると一体の巨人が横たわっていた。姉が言った通り、非常電源に切り替わっているが、電気系統はまだ生きている。コックピットに入って、動かすことは十分可能だろう。マニュアルを見れば然程労せず、コックピットシートに滑り込むことが出来た。
「なんか気持ち悪い位馴染むな、このシート。起動の手順は……」
メインスイッチを押しコンソールを操作する。機体名は『ファルケン』と言うらしい。直感的に噛み合う操作とレイアウトだ。他の人も絡んでいるのだろうが、この辺りの仕事は流石姉さんと、唸るしかない。本人の前で言えばドヤ顔と共に押し倒してくるだろうから絶対に言わないけど。操作が終わるとメインカメラが点灯し、OSが現在の機体コンディションを表示する。
「動力系は問題なし、PS装甲も起動、テスラ・ドライブは……テスラ・ドライブ?」
他の単語はゼミで大抵1回位は聞いたことだし、PS装甲はシンプルに何か特殊な装甲なのだと理解できた。ただテスラ・ドライブという単語は聞いたことが無い。どうやら機体の機動系統に関わる機能のようだ。妙に気になって詳細を開いてみると、
「重力制御に慣性制御だって!? 絶対に今作れちゃいけないモノだろ、姉さん! こんなのを諸々の新技術に纏めないでくれ!」
明らかにヤバい代物に、血の気が引いていくのが分かる。ハッタリかと思ったが、姉がこういったもので嘘をつくとは思えない。となれば本当にそう、なのだろう。疑似反重力装置は技術的に可能だったはずだが、MSに搭載できるサイズのものは出来ていなかったはず。
「突っ込みたいことは山ほどあるけど……、今は地上部に上がらないと」
ほぼ同時刻 資源衛生コロニー ヘリオポリス セクターS 第37工場区
「どうしますか大尉? 仮に『ジンと』Xシリーズに乗ったコーディネーター相手に何とか出来る自信、あります?」
「ないわ! 今だって不意打ちと性能差で勝っただけなんですから!」
「同じく。戦っても勝てないだろうけど、今逃げてもアークエンジェルが拿捕されるだけなんで、秘密兵器が来るまで耐えてください」
状況は連邦軍技術士官のマリュー・ラミアスと、モルゲンレーテから一時的に出向しているホシミ・ヤマトにとって最悪の最悪の一歩手前だった。モルゲンレーテが連合の依頼を受けて秘密裏に開発した5機の新型試作MSと新造戦艦、徹底的な情報封鎖の元で開発、製造されたそれを、移送日目前という時にザフトから察知されたのだ。ザフトの襲撃があった時点で、関係者達は優先度を決め直した。
まず移動に必要な新造戦艦『アークエンジェル』の安全は必須。その上これを動かすにはシンプルにマンパワーが必要となる。そのため大半はこっちに動くことになる。
次に新型MSについてだが、汎用性と完成度が高い『ストライク』が最優先、続いて『ミラージュコロイド』搭載機である『ブリッツ』、そこから『イージス』、『バスター』、『デュエル』と決めた。そして動ける技術屋達で、一番詳しかったのが前述の2人だったため確保に向かったという訳だ。特にホシミは唯一と言っていいモルゲンレーテ開発部の関係者だった。
マリューに子守りを全部押し付けただけとも言える。
予定通り工場区に着いた訳だが、既にザフト軍が侵入していた。何とか二人がかりで『ストライク』を奪取しようとしたザフト兵を対処し、辛うじて『ストライク』を起動したと思ったら、ザフトのMS『ジン』に強襲され、破れかぶれの神風特攻で運良く1機撃墜というのが先程までの状況。
今はおかわりのジンが来ているし、残り4機のG兵器も起動し始めている。あまりに分が悪い。相手の事情は知らないが、ここで数任せに平押しされたら詰みじゃね? と思うくらいには。
「秘密兵器? 何をしてるんですか、少尉!」
「いやー、仕事ばっかで息が詰まったんで、気分転換に実験ついでにやってみたら思いの外いけちゃってですね」
「このおバカ! ビームライフルにギロチンバーストなんて余計な機能を付けて施設を吹き飛ばしたのに、まだ懲りてなかったの!?」
「そんな大げさな。機材の一部といけ好かない上官のカツラが吹っ飛んだだけじゃないですか。あれでナチュラル名乗るってどうなんですかね?」
「あれは痛快でしたが、始末書何枚書いたと思ってるんですか!」
「いっぱい、おっぱい」
「なんで所々小学生並みの知能になるのよ。アナタは」
マリューはホシミがバカであることを知っていた。マリューというより技術部全員が。バカがバカなものを作って、バカな結果を生み出すことを何度も見てきたのである。良くも悪くも。
今回は良い方に転びますように……! マリューは祈りながら、改めてアーマーシュナイダーを構えた。
この『ストライク』のOSも、彼女のバカの成果のため、バカの一言で切り捨てられないのが、このバカの厄介な点だった。モルゲンレーテも扱いに困ったから、リスクを承知で出向させたのである。
バカの産物は要らないが、バカの成果は欲しい。そんな感じである。表向きはWin-Winの関係、モルゲンレーテからすれば一人勝ち、連邦から見れば貧乏くじ、後の歴史からみればどこもかしこも一人のバカに屈したLoser。勝者のいない悲しい戦いがそこにあった。
OSに関しては独断でヘリオポリスのカレッジ所属のナチュラルからデータを測定、『ストライク』に試験的に組み込まれたそれは、最低限の戦闘行動を可能にしていた。元々そのカレッジのカトー教授に依頼はしていたそうだから、ギリギリお咎めなしで済んでいる。時々やたら計算高いバカになるのも困りものだ。
『ストライク』のコックピットにアラート音が鳴る。反射的にペダルを踏んでその場から飛びのけば、『ジン』の76mm徹甲弾が地面を穿つ。
「一旦隠れましょう、大尉」
「そうね。よいしょっと」
ジンの位置を確認しつつ、適当な建物に隠れて物理的な視覚を切る。熱源で位置はバレるだろうが、あっちが優位な以上、無駄弾を使うのに多少は躊躇するだろう。成りたての新兵じゃあるまいし。というのが2人の考えだった。
PS装甲のおかげで貫通はまずないが、それを維持するためには電力が必要であり、当たればバッテリーを無駄に使う。だが回避をすればそれはそれでバッテリーを食うため、いずれPS装甲は維持できなくなる。反撃に転じたいが、飛び道具はなしで、武器は持っているナイフ二本。いくら本体性能は上回っているとはいえ、射撃戦に徹せられるだけでこっちは辛い。
何なら絶賛強奪されている4機の内1機でも、ザフト軍お得意のスタンドプレーで突っ込んで来たら負ける自信が、マリュー達にはあった。幸い、まだ起動途中のようだが。
「回避パターンが大振り過ぎますね。要修正っと。やっぱり全身PS装甲は効率悪いですね。少なくとも被弾時のみ本格稼働するようにすればいいのに」
「おっしゃる通りだけど、技術が追い付いてないんだから仕方ないじゃない」
「出来ますよ」
「えっ?」
「正確には違いますが、PS装甲を通常の装甲で覆って、被弾時のみ本格稼働するようにすれば、大して防御力を落とさずに電力消費量を抑えられます。最終的には通常装甲も取っ払えるかな」
「被弾の判別はどうするのかしら?」
「衝撃を感知して発動……だけだと遅くなるので、機体周辺の環境情報も基準にすればいいんじゃないかと。そもそも外的環境に左右されやすいビームライフルを、少なくとも静止物体には確実に当てられる計算能力を持つCPU積んでるんですから、それを一部防御機構に反映させれば十分可能じゃないですか。まぁ実践データは山ほど必要でしょうが」
「さっきまでおっぱいとか言ってた人間の話とは思えないわね……。きゃっ……!」
機体が揺れる。痺れを切らせた『ジン』が発砲してきたのだ。熱源センサーを確認して場所を変えつつ感覚的に距離を取る。地上走行の際、推進剤とAMBACで姿勢制御をしているとは言え、強引に2人乗りしている割りに乗り物酔いが起きるほどの揺れは感じていない。
ちなみにこの辺りの衝撃吸収機構のハード面の開発には、バカが一枚噛んでいたりする。出来レースとは言え、一応の対案として独自フレームを開発していた癖に、コンペ相手にアドバイスする余裕がバカにはあった。
「あーあ。ザフトにとっては弾丸一発ですら貴重でしょうに。あれでも正規兵ですよね? ○俗で童○捨てた男みたいにイきり散らかしてくるじゃないですか」
「男なんていつまで経っても子どもなのよって、戦場で言うセリフじゃないわね。これ」
「キラの初めてはあんなに可愛かったのに。やっぱり弟がナンバーワン!」
「アナタの口からキラって言う子の名前が出る度に、ナチュラルの私が毎回同情するのよね。見ず知らずのコーディネーターのはずなのに」
「キラはC.Eイチ可愛いので。大尉は……まぁアリですね。キラが30過ぎても結婚しなかったらお願いします」
「アナタと親族になるくらいならアーマー乗りと結婚します。義理の姉妹で竿姉妹とかどこの地獄かしら」
「それにしてもどうしましょうか。移動するにしても接近出来なきゃ状況は変わりませんよ。こうなるとアークエンジェルから援護射撃が来るのを期待するしかありませんね」
「急にマトモなこと言われると、温度差で風邪引きそうになるのだけど」
「暖取ります? ここに体温まで再現したキラのお尻パッド(13歳ver)っていうのがあるんですけど」
「これ以上はキラ君の名誉のために喋らないであげて。お願い。……マズいわ。G兵器が動き始めてる」
「マジ? 本格稼働はこれからだし、安全確認のために起動手順はあえてややこしくしてたはずなんだけど。っぱないなコーディネーター」
ザフト兵が乗り込んだと思われる4機のGの内2機の装甲が色づいた。OSも『ストライク』とは違い無調整に近いが、移動するくらいは何とかなる。
「責任者の一人として妨害したいですが、この状態で下手に突っ込んで、ジンの76mmを受け続けたらバランサーが持つ自信はありません。そこからの復帰もどれほどかかるやら」
「となると生き延びるのが最優先ね。私は技術士官なのにどうして……」
本日何度目か分からないため息、横目でセンサー系を見ればさっきのジンがじりじりと間合いを詰めている。そろそろ移動しなくちゃいけないかしら、とマリューが身構えたところで、銃声と金属を殴りつけるような音と共に、ジンの腕がもげた。
「『アークエンジェル』!?」
「違います。どうやら秘密兵器が間に合ったようです」
音源を見れば1機のMSが宙に浮いている。G系列より若干細身かつ滑らかなシルエット、緑色の光を放つ3対6枚のウイングユニット。状況が状況なだけに、さながら戦場に舞い降りた天使に例えたいところだが、銃口を二つ持つ長大な銃を油断なく構える姿はどちらかと言えば狩人、或いは獲物を狙う猛禽類にも見える。
「えっ、何あれは」
『姉さん! 無事!?』
「キラ。早速で悪いんだけどあの黒いのを『オクスタンライフル』の実弾モードで狙ってくれる? 直撃コースで」
『えっ、でも……』
『ねえ、どうやってアレ浮いてるの? いくらコロニー内とは言え重力下よ。低空を気持ち悪いくらいヌルヌル滑ってたんだけど。明らかに『ストライカーパック』を付けた『ストライク』より性能上よね? ねえ? 聞いてる?」
「流石にPS装甲は抜けないから大丈夫。それはPS装甲持ち相手に、実弾で無力化するための実験兵装なの。機体は無事でも衝撃は殺しきれない。それでパイロットが気絶したり、バランサーがイカレれば無力化出来るでしょ? もちろん手足に当たれば、1本や2本そのまま持っていく威力は十分ある。有効射程内の話だけど」
「えっ、何それは」
『……わかったよ』
そう言うと、この場を一刻も早く離れようと背を向けた黒い機体に、発射音と同時に特殊徹甲弾が突き刺さる。
『かっ……あ』
黒い機体、『ブリッツ』はそのまま倒れ込み、復帰する気配はない。ハルバートン提督が「実弾兵器に対して無敵を誇る革命的な技術」と開発を推し進め、マリュー・ラミアスが実用化に漕ぎ着けたPS装甲が、実弾によって攻略された歴史的な瞬間である。その間、稼働から実に3分弱。ウルト○マンすら尺稼ぎ必要なスピード攻略である。
バカが作ったバカみたいな兵器の齎したバカみたいな結果に、マリュー・ラミアスは宇宙猫になった。
『ニコルゥ!』
『戻るぞイザーク! 俺たちの任務は機体の奪取だ。この状態では二の舞になるだけだぞ』
『アスラン! クソッ……』
白と青の機体、『デュエル』が戻ろうとするが、赤い機体、『イージス』が進路を塞ぐ。するとそのまま連れていかれるように脱出ルートをたどり始めた。
『アスラン……?』
「……これ以上の追撃は不要よ、キラ。今のどさくさに紛れて『ジン』はいなくなったけど、まだ敵の増援が来るかもしれない。それに『オクスタンライフル』はエネルギーカートリッジの充填は済ませてないし、実弾マガジンの予備は無し。『ブリッツ』を回収しつつ一度アークエンジェルに向かいましょう」
幸い、通信を傍受した2人の動揺はマリューには伝わっていなかった。宇宙猫になっていたし、この場を切り抜けられた安堵感で気が緩んでいたからである。
「……待ちなさい」
「なんですか、大尉」
が、マリューの技術士官としての知識と感覚が、今の状況の異常を訴えてきた。もう常識から大分振り切れているが、それでも見逃せないし、聞き逃せないものがあった。
「あのMSとパイロットのことは後でゆっくり聞かせて貰うわ。多分だけど、乗っているのは件の義弟さんなんでしょう? 問題は多いですが、こうやって助けられているのは事実。民間協力者として扱えば……何とかなると思います。MSも元々実験機の枠はありましたから」
「おぉ。さすが大尉、話が分かるぅ~」
パチパチと拍手するホシミ。ただマリューにとって本題はそれではない。
「ところでなんで通信が遮断されていたはずの、4機のGのパイロットの会話が聞こえてきたのかしら」
「『ファルケン』は射撃戦機ですから高性能センサーを積んでるんですよ。だったらついでに電子戦が出来たら良いなって思って。同じ連合製ですからね。簡単だったと思いますよ。ロックオンのおまけで出来る位に」
「……」
いくら同じ連邦製だとしても最新鋭機、機密管理もあって通信のセキュリティは最高のものを使っている。いくら開発者と言っても簡単に傍受出来るものではない。
「そういえば『ジン』は撃たれるまで、あのMSのことに気が付いていなかったようだけど? なんなら今も『ストライク』のセンサーが正常に反応してないのよね」
「そりゃ射撃戦型ですし、狙撃役をこなすことがあると思えばジャマーは付けますよ。戦艦主砲を越える射程と、戦艦を一撃で落とすビーム兵器を積んでるからといって、先に見つかったら意味がないじゃないですか」
「加減しなさいこのおバカ! おバカだったわね」
1話でド○グナーⅠ~Ⅲに主人公たちが乗り込んで、ギ○ノス帝国と戦おうとしている時に、ライバルキャラのマイ○・プラートがいきなりギ○ノスを裏切って、味方として戦うような無茶苦茶振りにマリューは天を仰いだ。この脚本を考えたヤツは間違いなくバカだと。RTAかよ。
「ところで実はあと4人ほど、民間人連れ込んでるんですよ。大尉」
「お願いだからバカは休み休み言ってちょうだい」
文句はいくらでも受け付けます。適当に0評価でもぶち込んでください。
続き書く気はないので後の展開はイメージの範疇でいくらでも答えます。
ちなみにクルーゼはともかくレイは人並み程度には生きれそうですし、デュランダル議長はディスティニープランを黒歴史として封印してます。
主にバカがキラが遺伝子操作のせいで寿命が短かったらどうしよう、と思って作った試薬のせいです。
アウラは変わりませんが、一応ラクス以外のアコードも生き残る感じです。バカの騎士になります。バカな騎士かもしれません。
機体の元ネタはスパロボ産のビルトファルケンです。
適当にヤバそうな射撃機想像したら、何故か「全載せドラグナー強そうじゃね?」と思ってライバル機のファルゲンを思い出し、ビルトファルケンに発展しました。あとは第三次αの逆展開でベルグバウも候補でした。
第三次OGはまだですかね?