三人称視点
誠斗の修行が始まって1ヶ月、紅魔館の大図書館にセリア達は集まっていた。
定期的に行う誠斗関連の話し合いの場だ。
誠斗が就寝した夜に行われている。
紅魔館の住人は、主人が吸血鬼だからか夜が本格的な仕事の時間になることが多い。
今回はレミリアも集まりに参加していた。
「さて、今回集まってもらった理由は、当然誠斗のことよ」
「だから今回はお嬢様もいらっしゃるんですね」
「ねえパチェ、どうしてこれまでは私を呼んでくれなかったの?
みんなで仲間外れにして、私、寂しいんだけど」
「だって貴方、誠斗の事に対して興味無さそうだったんだもの」
レミリアからグサッという音が聞こえそうな雰囲気が漂った。
親友からグサリとされたレミリアを放置して、他のメンバーで会議が始まった。
「まず、あの子を飛ばした乱れについてね。
結論から言うと、あの子が元いた場所は“極東の何処か”くらいしかわからなかったわ」
「じゃあ日本じゃねえか?あいつ日系だろ?名前も日本出身っぽいし」
「確かにそう考えるのが自然ね。私も十中八九日本から飛ばされたと思ってるわ」
「何処に居たかは分かりませんが、少なくとも、出身国の当たりはつけられましたね」
「やっと一歩って感じだけどね」
セリアの言葉に全員が頷く。
まだわかったのは日本出身ということだけ。
だが日本の何処かまでは特定は出来ていない。
何より、記憶喪失の原因も不明だ。
「乱れが小さ過ぎて、これ以上の調査は難しいわね」
「そうですか」
「じゃあ、次は記憶の件だな」
「そっちも大体当たりはつけたわ。頭を打っただけなら、時間経過で回復する」
「でも回復していないという事は……」
「要因は精神的なもの、か」
「そうなるとカウンセリングが必要みたいですね」
「そこはセリアに任せるわ。この中で誠斗が一番懐いてるのはセリアだし。
まあ詳しい要因がわからない以上、手探りになるでしょうけど」
セリアはパチュリーの言葉に頷く。
次は誠斗の修行に関してだった。
最初にパチュリーが話し始める。
「誠斗は覚えが良いわね。適正属性とはいえ、もう雷の付与魔法を覚えたわ」
「へえ〜、こっちも銃に慣れるのが早えなと思ってたがそっちもか」
「流石に1ヶ月では霊力を練るなんて事はまだ無理ですね。発勁は覚えましたが」
「無月はどう?」
「………まだまだ荒削りだが、悪くない。将来的には魔人とやり合える」
無月がそう評価を下す。
修行状況は悪くないらしい。
そんな中、やっとダメージから回復したレミリアが口を開いた。
「どうやら大分馴染んできたみたいね」
「レミィ、やけに立ち直るのが遅かったわね」
「パチェ、肉体的なダメージの回復は容易だけど、精神的ダメージの回復は難しいのよ」
「そう。で、どうしたのよ急に」
「流石に酷過ぎない?それはそれとして、
一度あの子にしっかりと挨拶をしようと思ってるの」
「!?」
「お嬢様が、誠斗に?」
「マジかよ」
「レミィ、頭でも打った?」
「ちょっと何よ!私が誠斗に会うって言ったのがそんなに信じられない?」
「だって、セリア以外の人間を嫌ってるレミィが、よ。
みんな驚くに決まってるわ」
「私だって変わろうとは思ってるわよ。
それに、あの子ももう紅魔館の一員よ。一度会っておいた方がいいでしょ?」
レミリアの言葉に全員が呆気に取られる。
レミリアが人間嫌いを治そうとしていること。
そして、レミリア自身が誠斗の事を紅魔館の仲間と呼んだ事。
この2つに。
セリアは後者を聞いて感涙しているが。
「お嬢様、誠斗くんの事を認めて下さるんですか」
「ええ、あの子がここに来てもう半年以上が経つわ。
なのに主である私が、いつまでも認めないっていうのもね。
誠斗に何か確執がある訳でもないしね」
レミリアがそう答えた。
そして、誠斗とレミリアが会う予定が急速に立てられた。
2日後、誠斗はセリアに連れられ、レミリアのいる部屋に向かっていた。
「不安?」
「………うん」
「大丈夫、お嬢様なら悪いようにはならないから」
セリアは誠斗の不安を和らげる。
そして部屋の前に着く。
「………準備は良い?」
「……はい!」
「良い声!じゃあ行こっか」
セリアがゆっくりと扉を開ける。
部屋には左側に無月とファング、右側にパチュリー、コア、美鈴が立っていた。
そして、部屋の最奥の玉座にレミリアが座っている。
セリアは誠斗に小さくエールを送り、ファングの隣に立つ。
誠斗は不安そうにしながらも、辿々しい歩みで奥へ進むみ、レミリアの前に立った。
「初めまして、私はこの紅魔館の主レミリア・スカーレットよ」
「十六夜……誠斗……です」
「そう緊張せず、楽にしなさい。
さて、単刀直入に言うわ。私は貴方を紅魔館の一員として向かい入れたいと思っているわ。
ただ、何も肩書きがないのもあれだと思うのよ。
そこで、貴方を美鈴の部下にするわ。この屋敷の役に立って見せなさい」
それを聞いた一同(特に急に言われた美鈴と少々過保護気味なセリア)は呆気に取られた。
現在・紅魔館
霊夢視点
「そのあと、誠斗は元気良く「はい!」って返事したのよ。
終わった後、みんなに鬼詰めされたんだけどね」
「そりゃいきなりそんな事言われたら詰められるでしょ」
レミリアの思い付きに振り回されていたんだろう当時の紅魔館のメンバーに私は少し同情した。
それにしても……
「誠斗の記憶はいつ戻ったの?」
「わからないわ、少なくとも、紅魔館にいた間は戻っていなかったから」
「そっちは本人に聞くしかないか……
そういえば、そのセリアと無月とファングの3人って、会った事ないけど、今何してるの?」
「………続きを話すわよ」
レミリアは話を逸らした。
何か聞かれたくない事だったのか、それとも、これから話すのか。
私はレミリアの話に再び耳を傾けた。